市場はこう信じている——決算が予想を上回れば、株は買われる。11月2日の米国市場の引け後、パランティア・テクノロジーズとアップルがそろってこの条件を満たした。パランティアの7〜9月期の売上高は前年同期比96%増の23億1,300万ドルで、アップルの7〜9月期(第4四半期)の売上高も1,144億8,000万ドルと市場予想を上回った。それでもCNBCによると、時間外取引でパランティアは「小幅高」、アップルは「ほぼ変わらず」にとどまった。
だが、上振れなら買いという通説は本当か。今日はこの通説を尋問する。証拠は3つ。パランティアの受注の中身、アップルの次の四半期の見通し、そして決算前に株価がすでにどこまで下げていたかである。
通説の陳述:数字はどこから見ても強い
通説を最も強い形で述べておく。パランティアが米証券取引委員会(SEC)に提出した決算資料によると、7〜9月期の売上高は前四半期比でも20%増え、初めて20億ドルを超えた。ヤフー・ファイナンスが伝えたブルームバーグ集計の市場予想は21億7,000万ドルで、会社が8月に示した見通し(21億6,000万〜21億6,400万ドル)も7%ほど上回った。1株利益(調整後)は0.44ドルで、予想の0.40ドルを上回った。
中身も強い。米国の民間企業向け売上高は148%増の9億8,400万ドルで、米政府向けの9億5,300万ドルを初めて上回った。調整後の営業利益率は62%。2026年通期の売上高見通しは85億3,000万〜85億3,400万ドルへ引き上げられ、アナリスト予想の82億ドルを4%上回った。10〜12月期の見通しは26億4,900万〜26億5,300万ドルである。
アップルも同じだ。SECに提出した資料によると、1株利益は2.10ドルで前年同期の1.85ドルから増え、CNBCが伝えた市場予想1.99ドルを上回った。iPhoneの売上高は17%増の575億8,300万ドルで、予想の565億4,000万ドルを上回った。中華圏の売上高は21%増の175億3,900万ドルである。ジョン・ターナス氏が9月1日に最高経営責任者(CEO)に就いてから、初めての決算でもあった。
尋問1:パランティアの「次の売上」は育っているか
証拠を見よう。売上高はすでに結ばれた契約から計上される。将来の売上を占うのは、その四半期にどれだけ新しい契約を取ったかである。パランティアが開示した7〜9月期の総契約額(TCV)は29億1,800万ドルで、前年同期比6%増にとどまった。米国の民間企業向けに絞っても14億6,300万ドルで11%増である。
売上高が96%増え、民間企業向けの売上高が148%増えている会社で、新規契約の伸びが1桁から10%台というのは、伸び方の差が大きすぎる。モトリーフールは決算直後の速報で、この点を「新規案件の減速」と見出しに取った。この説明には穴がある。売上の伸びが続くには、契約の伸びがいずれ追いつく必要がある。
公平のために言えば、総契約額は大型案件1件の有無で大きく振れる指標である。前年同期に大型の政府契約があれば、伸び率は低く見える。会社は通期見通しを引き上げており、少なくとも10〜12月期の売上が落ちる兆しはない。10〜12月期の見通しの中央値26億5,100万ドルは、7〜9月期から15%増える計算になる。尋問1の結論は「売上の勢いは本物、ただし受注の勢いが追いついていない」である。
パランティア7〜9月期:売上は倍増、受注は1割前後の伸び(前年同期比)
読み方:上の3本はすでに結んだ契約からの売上、下の2本はこの四半期に新しく取った契約の額である。売上の伸びに比べ、受注の伸びが極端に小さい。出所:パランティアの米証券取引委員会への提出資料(2026年11月2日)。
尋問2:アップルは「次の四半期」で負けていないか
アップルの場合、問題は過去ではなく未来の数字にある。CNBCによると、ケバン・パレク最高財務責任者(CFO)は10〜12月期の売上高を前年同期比7〜10%増と見通した。LSEGが集計した市場予想は11.4%増である。見通しの上限でも予想に届かない。サービス部門の伸びも8〜9%増と、7〜9月期の約10%増から鈍る見通しだ。
もう一つは粗利益率である。7〜9月期の粗利益率は47.9%で、予想の47.5%を上回った。だがアップルの発表資料によると、この数字には関税の還付で約1ポイントの上乗せが含まれる。1株利益のうち0.05ドルも関税還付によるものだ。10〜12月期の粗利益率の見通しは45〜46%で、4〜6月期の50.1%から大きく下がる。
原因は部品代である。ターナスCEOは決算説明会で「4〜6月期に比べてメモリーのコストが上がった」と述べ、値上げは「不本意ながら」行ったと語った。アップルは6月に幅広い製品で値上げし、iPhoneは100ドル上げている。値上げで部品高を吸収する戦略の限界が、見通しの数字に表れたと読める。iPad の売上高が10%減の62億2,900万ドルだったことも、値上げが需要を削る可能性を示す材料である。
尋問3:株価は決算前に、どこまで織り込んでいたか
最後に、通説の側からの反論を検討する。「上振れでも買われないのは、決算前にすでに期待が株価に入っていたからだ」という説明である。証拠は逆を指している。パランティアの11月2日の終値は178.34ドルで、10月9日に付けた1年間の最高終値209.05ドルから14.7%下にあった。年初からの騰落率は0.3%高とほぼゼロである。10月30日に6.27%、11月2日に3.13%と、決算直前の2営業日だけで1割近く下げていた。
アップルの終値は338.32ドルで、10月29日の最高終値348.91ドルから3.0%下にある。こちらは年初から24.4%上げており、期待はまだ株価に残っている。背景には相場全体の地合いもある。ナスダック100に連動する上場投資信託(ETF)のQQQは、11月2日の終値が10月6日の最高値から10.3%下にあり、一般に「調整局面」と呼ばれる1割安に入った。
つまり、パランティアは期待をかなり吐き出したあとでも上振れ決算で買われなかった。織り込み済みという説明は、パランティアについては成り立ちにくい。それより、AI関連株全体から資金が抜けている地合いの中で、個別の好決算が流れを変えられなかったと見るほうが証拠に合う。地合いの悪化は2日の寄り付き1時間の記事で追った。
生き残った主張と、死んだ主張
| 主張 | 判定 | 根拠 |
|---|---|---|
| パランティアの売上の勢いは本物 | 生き残った | 96%増、通期見通しを85億ドル台へ引き上げ |
| パランティアの受注も同じ勢い | 死んだ | 総契約額は6%増、民間向けでも11%増 |
| アップルは予想を上回った | 生き残った | 売上高・1株利益・iPhoneとも上振れ |
| アップルの利益率は安定している | 死んだ | 10〜12月期の粗利益率見通しは45〜46% |
| 買われないのは織り込み済みだから | パランティアでは死んだ | 決算前に最高値から14.7%安、年初来ほぼ横ばい |
評決
本誌の評決は「上振れなら買い」という通説に対し、否定側に65%である。2社とも決算そのものは強い。だが株価が反応しなかった理由は、それぞれの数字の中に説明が見つかる。パランティアは受注の伸びの鈍さ、アップルは利益率の見通しの低さである。地合いの悪さだけで説明する必要はない。
個人投資家にとっての実務的な意味は、決算発表の「上振れ」見出しを買いの合図にしないことである。パランティアでは総契約額、アップルでは粗利益率の見通しが、見出しより先に株価を動かした。両社の決算前の想定変動幅は今週の決算の記事に、アップルの過去の決算後の値動きは決算前の記事にまとめてある。
日本の投資家にとっての接点もある。アップルが嘆いたメモリーの値上がりは、メモリーを売る側にとっては追い風である。キオクシアホールディングスの決算はこちらで扱った。一方、アップルの日本での売上高は65億4,000万ドルで、前年同期の66億3,600万ドルから1.4%減った。中華圏の21%増とは対照的である。
再審条件
- パランティアが3日の通常取引で1年の最高終値からの下げ幅を縮め、190ドル台を回復したら。決算の評価が時間差で株価に届いたことになり、評決は肯定側へ動く。
- 10〜12月期にパランティアの総契約額の伸びが20%を超えたら。受注の鈍化が一時的だったことになる。
- アップルがメモリー価格の下落や追加の値上げで粗利益率の見通しを46%超に戻したら。利益率への懸念は後退する。
- ナスダック100が調整局面から抜け、AI関連株に資金が戻ったら。地合いの要因が大きかったことになり、65%の評決は下げる。
主な参照
- パランティアの7〜9月期決算と見通し(11月2日)/米証券取引委員会(パランティア提出資料)
- アップルの第4四半期決算(11月2日)/米証券取引委員会(アップル提出資料)、アップル
- アップルの見通し、市場予想、ターナスCEOの発言(11月2日17時44分=米東部時間時点)/CNBC
- 時間外取引の反応(11月2日17時7分=米東部時間)/CNBC
- パランティアの市場予想(ブルームバーグ集計)と通期予想/ヤフー・ファイナンス
- 新規案件の減速の指摘/モトリーフール
- 株価・ETFの日足終値/stockanalysis.com
データ基準日:株価は2026年11月2日(米国時間)の終値。時間外取引の値動きはCNBCの記述(パランティアは小幅高、アップルはほぼ変わらず)によるもので、具体的な価格は確認できていないため記載していない。最高終値・年初来騰落率・QQQの下落率は、stockanalysis.comの日足終値から本誌が計算した。会社見通し比の上振れ率と10〜12月期の伸び率も本誌計算である。評決の比率は本誌の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














