オーストラリア準備銀行(RBA)は11月3日、政策金利を0.25%引き上げて4.85%にした。今年5回目の利上げで、市場の予想どおりだ。驚きは中身にあった。9人の委員のうち3人が据え置きに票を投じた。豪ドル米ドルは発表後、12時42分時点で0.6980ドル前後と、発表直前の12時30分の0.6996ドルから下げた。利上げを「事実で売る」反応だ。
要点は5つに絞れる。
- 利上げ:政策金利は4.60%から4.85%へ。年初からの上げ幅は計1.25%になった。
- 票割れ:6対3。3人が据え置きを主張し、利上げ継続への慎重論が表に出た。
- 物価見通しの上方修正:目標の上限3%に戻るのは2027年終盤と、従来より約3四半期遅れる。
- 次の一手は示さず:声明は「データを注視する」にとどめ、追加利上げを予告しなかった。
- 豪ドル:0.6980ドルと0.70ドルを割り込んだ。豪2年債利回りも下がった。
1. 利上げ:4.85%、年5回目
結論:利上げ自体は織り込み済みだった。前日夜の時点で、ASXの金利先物が示す利上げ確率は81%だった。
根拠:RBAは2月、3月、5月、9月に続いて今回も上げた。声明は、物価上昇が「幅広い品目に及んでいる」と指摘した。中東の紛争による燃料高に加え、国内の需給の逼迫が想定より少し強いとみる。燃料高が他の品目の値上げに波及している兆しにも触れた。
次:利上げは「上がる材料」として使い切られた。豪ドルを動かすのは、ここから先の利上げ観測の増減になる。
2. 票割れ:6対3が示す慎重論
結論:今回最大の材料は票の割れ方だ。6人が利上げ、3人が4.60%での据え置きを支持した。
根拠:声明は景気の減速も認めている。住宅価格は大きく下がり、失業率は上がった。RBAの新しい見通しでは、失業率は2026年12月の4.7%から2027年12月に4.9%、2028年12月に5.1%まで上がる。据え置き派の3人は、この雇用の弱さを重く見たと読める。
次:12月の会合では、据え置き派が4人以上に増えるかが焦点になる。3人のままなら利上げの余地は残り、増えれば打ち止めが近い。
3. 物価見通し:目標回帰は3四半期遅れ
RBAの11月見通し:トリム平均の物価上昇率(前年比、%)
読み方:基調の物価は2027年前半まで3.5%前後で高止まりし、目標の中心2.5%に届くのは2028年半ばになる。政策金利の想定は2027年6月4.9%、12月4.8%。出所:オーストラリア準備銀行「金融政策報告」2026年11月。
結論:RBAは物価見通しを大きく引き上げた。基調を示すトリム平均の物価上昇率は、2026年12月が3.6%、2027年6月が3.5%、2027年12月が2.9%だ。目標の中心2.5%に届くのは2028年半ばになる。
根拠:声明は、物価が目標の上限に戻るのは2027年終盤で、前回の見通しより約3四半期遅いとした。一部の予想インフレ率が上がっており、高い物価が定着するリスクが増しているとも書いた。見通しの前提となるブレント原油は2026年12月に1バレル109.5ドル、2027年6月に95.3ドルだ。
次:原油が前提より早く下がれば、物価見通しは下振れする。11月2日にブレントは7.6%下げて104.77ドルで清算した。原油の動きはケシュム島攻撃後の原油の記事で追っている。
4. 次の一手:市場は「あと1回弱」を想定
結論:RBAは追加利上げを予告しなかった。声明は「データと見通しの評価を注視して判断する」とした。
根拠:RBAの見通しは、市場の織り込みに沿った政策金利の想定を使う。その想定は2027年6月に4.9%、2027年12月に4.8%だ。今回の4.85%からは、ほぼ横ばいである。市場は追加利上げを多く見込んでおらず、2027年後半には小幅な利下げも描いている。
次:12月8日の次回会合までに、10月の雇用統計と月次の物価指標が出る。物価が強く、雇用が崩れなければ、追加利上げの観測が戻る。
5. 豪ドル:0.70ドルをはさむ往来
結論:豪ドルは利上げを売りで迎えた。12時42分時点で0.6980ドル、前日比0.26%安で、発表後の安値は0.6973ドルだった。政策金利に敏感な豪2年債の利回りは4.91%と、前日から0.036ポイント下がった。
根拠:利上げは織り込まれ、票割れと横ばいの金利想定が上値を抑える。一方で物価見通しの上方修正は、早い利下げの観測を封じる。上下の材料が打ち消し合う形だ。豪ドル円は110.18円前後で推移している。
次:筆者の見立てでは、1〜2週間は0.6950〜0.7070ドルの往来が本線(確率55%)だ。上は50日移動平均の0.7059ドルと先週高値の0.7068ドルが壁になる。0.7070ドルを終値で上抜ければ0.7120ドルを試す(25%)。0.6950ドルを終値で割れば10月中旬の安値0.6895ドルを試す(20%)。米国側では3日の中間選挙と6日の10月雇用統計が、米ドルを通じて豪ドルを揺らす。前日までの水準の分析はRBA前夜の豪ドル見通しにまとめた。
30秒まとめ:RBAは予想どおり4.85%へ利上げした。だが3人が反対し、市場の金利想定もほぼ横ばいで、利上げ局面の終わりが見え始めた。豪ドルは0.70ドルをはさんで方向感を欠き、0.6950ドルと0.7070ドルのどちらを先に抜けるかが次の合図になる。
主な参照
- 金融政策の決定と票決(11月3日)/オーストラリア準備銀行
- 経済見通し(物価、失業率、政策金利とブレントの想定)/オーストラリア準備銀行(金融政策報告)
- 前回9月29日の利上げ/オーストラリア準備銀行
- 11月2日のブレント清算値/NBCニュース
- 豪ドルの気配値と移動平均/トレーディングビュー
データ基準日:2026年11月3日(日本時間12時42分)。豪ドルの値は取引時間中の気配値(トレーディングビュー)で、終値ではない。利上げ確率81%は前日の本誌記事で引用したASX金利先物の値(シドニー時間3日0時50分)である。政策金利の想定は市場の織り込みに基づくRBAの前提で、RBAの予告ではない。シナリオの確率と水準は筆者の見立てで、将来の値動きを保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。アイキャッチ画像:Newtown grafitti/Flickr(CC BY)。












