売上高542億ドル、会社計画の上限を42億ドル上回る決算を出して、時間外の値幅はわずかだった。マイクロン・テクノロジーは9月30日の米国市場の引け後、6〜8月期(2026年度第4四半期)決算を発表した。通常取引の終値は1,065.11ドル。時間外では発表直後に上下へ振れたあと一時1,088ドル台まで買われたが、米東部時間18時45分には1,067.30ドルと、終値比0.2%高まで押し戻されている。6月の前回決算では翌日に15.74%高と踏み上げた銘柄である。数字は前回より強いのに、テープは前回よりはるかに静かだ。
筆者の見立てを先に書いておく。今回の材料は「予想を上回ったか」ではなく「伸び率がどこまで落ちるか」で値付けされている。前四半期比の売上高の伸びは、74.9%、73.7%のあと、今回は30.8%、会社計画どおりなら次は13.4%になる。水準はまだ上がるが、加速の局面は終わった。東京でメモリー関連を持っている向きは、今日の寄りでこの差をどう読むかが勝負になる。
決算の数字は、どこから見ても強い
まず中身を確認しておく。数字は会社が米証券取引委員会(SEC)に提出した決算資料から、市場予想はロイターが伝えたLSEGの集計からとった。
6〜8月期の売上高は542.29億ドル。6月に会社が示した計画は500億ドル±10億ドル、LSEGの市場予想は510.7億ドルだった。1年前の113.15億ドルと比べれば4.8倍である。調整後の1株利益は33.42ドルで、計画の31.00ドル±1.00ドル、市場予想の31.61ドルをともに上回った。調整後の粗利益率は87.0%で、計画の約86%を超えている。営業キャッシュフローは439.7億ドルと、1年前の57.3億ドルの7.7倍になった。
次の9〜11月期の計画は、売上高615億ドル±15億ドル、調整後1株利益38.15ドル±1.00ドル、調整後粗利益率約86.25%である。LSEGの市場予想は売上高570.2億ドル、1株利益35.40ドルだった。
通期でも売上高1,331.88億ドルと前年の3.6倍、調整後の純利益は867.6億ドルに達した。事業別ではデータセンター向けの「コア・データセンター」部門が180.02億ドルで、1年前の15.77億ドルから11倍強になっている。ロイターによれば、長期供給契約にもとづく顧客のコミットメントは6月時点の220億ドルから320億ドルへ、残存履行義務は約1,000億ドルから約1,500億ドルへ膨らんだ。2027年の高帯域幅メモリー(HBM)の生産分も、大半について契約を確保したという。
売上高は会社計画の上限(510億ドル)を約32億ドル、LSEG予想を約32億ドル上回った。次の四半期の計画615億ドルもLSEG予想を7.9%上回る。ここまでなら、6月と同じように翌日の窓開けがあっておかしくない数字だ。
それでもテープが静かな理由——伸び率の曲がり角
筆者がテープを読むときに見るのは、水準より傾きだ。四半期ごとの売上高を前の四半期と比べると、この1年の形がはっきりする。
マイクロンの売上高、前四半期比の伸び率
読み方:売上高は四半期ごとに過去最高を更新しているが、伸びの角度は7割超から3割、1割台へと寝てきている。売上高は113.15億ドル→136.43億ドル→238.60億ドル→414.56億ドル→542.29億ドル、計画の中心値は615億ドル。出所:マイクロンの決算発表(SEC提出)、12〜2月期の前の四半期(9〜11月期)の売上高は通期から本誌が算出、伸び率は本誌計算。
12〜2月期と3〜5月期は、いずれも前四半期比で7割超の伸びだった。この局面で出た6月の決算は、翌日15.74%高で1,213.56ドルという終値ベースの最高値をつけた。今回の6〜8月期は30.8%、会社計画の中心値なら9〜11月期は13.4%である。売上高は過去最高を更新し続けるが、伸びの角度は3四半期で5分の1以下まで寝てくる。
もう一つ、細かいが見落とせない数字がある。調整後粗利益率は6〜8月期の87.0%に対し、9〜11月期の計画は約86.25%。6月に示された6〜8月期の計画(約86%)は、直前の3〜5月期の実績84.9%を上回っていた。今回はその関係が逆になり、計画が直前の実績を下回った。会社は2027年度の設備投資を従来計画より増やすとし、米国での投資計画を2035年までに2,500億ドル超へ引き上げたとロイターは伝えている。増産の話は、裏を返せば将来の供給増の話でもある。メモリー相場を長く張ってきた向きなら、ここで耳が立つはずだ。
6月の教訓——決算翌日の高値が天井だった
6月の値動きは、今回を読むうえで最良の教材である。6月24日の決算を受けて25日に15.74%高の1,213.56ドルで引けたが、その後は戻り売りに押され、7月29日には739.00ドルまで下げた。決算翌日の終値から約5週間で39.1%安だ。会社の数字が悪くなったわけではない。9月30日の終値1,065.11ドルは、それでも6月の高値を12.2%下回ったままである。
マイクロン株の水準の地図(ドル)
読み方:6月の決算翌日の終値1,213.56ドルから7月29日の739.00ドルまで39.1%下げ、9月30日の終値1,065.11ドルはなお高値を12.2%下回る。筆者は1,032ドル割れを「材料出尽くし」、1,213.56ドル超えを「見立ての誤り」の目印とする。出所:ナスダック、ヤフー・ファイナンス、stockanalysis.comの日足と時間外の5分足。時間外の高値は取引時間中の値。
年初からの上昇率は終値ベースで約273%に達する(2025年末の終値285.41ドル比)。これだけ上がった銘柄では、良い決算は「買う理由」より「持ち高を軽くする機会」として使われやすい。時間外で1,088ドル台まで買われたところで売りが待っていたのは、その典型に見える。筆者はこれを投げではなく、利食いの順番待ちと読んでいる。
東京の寄りで何が起きるか
9月30日の東京市場で、日経平均は1,272円45銭高の6万6,753円72銭と3日ぶりに反発した。半導体株が買われ、メモリーに近い銘柄も上げて引けている。つまりマイクロン決算への期待は、ある程度先に織り込まれた状態で朝を迎える。
株探によれば、30日の終値はNAND型フラッシュメモリーのキオクシアホールディングス(285A)が1.20%高の1万8,095円、半導体試験装置のアドバンテスト(6857)が1.03%高の3万4,260円、製造装置の東京エレクトロン(8035)が2.69%高の1万1,815円、切断・研削装置のディスコ(6146)が1.36%高の5万7,450円だった。いずれもマイクロンの発表前に上げて引けている。
シカゴの日経平均先物(円建て)は6万7,115円で、大阪取引所の終値を35円下回った。現物の終値6万6,753円72銭とは約361円の上ザヤで、指数全体としては高く始まりやすい位置にいる。ただしこれは主に大阪の夜間取引までに積み上がった上げであり、マイクロンの時間外の値動きが静かだった以上、決算そのものが指数を一段押し上げる力は限られると筆者はみる。
筆者が一番気にしているのは、決算の中身が日本の銘柄ごとに逆向きの材料を含んでいる点だ。設備投資の上積みは、装置のアドバンテストや東京エレクトロンには素直な追い風になる。一方、キオクシアのように同じ製品を売る側にとって、競合の増産と粗利益率の計画の頭打ちは、手放しでは喜べない。昨夜の数字で装置株とメモリー株の値動きが割れるなら、市場は「量は増えるが、儲けの伸びは鈍る」と読んだことになる。
筆者の見立て——強気は崩さないが、追いかけない
結論は「中期は強気、目先は押し目待ち」である。根拠は3つ。第一に、ロイターが伝えた長期契約のコミットメントと残存履行義務が、3カ月でそれぞれ4〜5割増えたこと。需要の先食いというより、顧客が枠を取りにきている証拠だ。第二に、計画どおりなら9〜11月期も売上高は過去最高を更新し、1株利益は38ドル前後になる。第三に、それでも株価は6月高値を12%下回っており、7月の急落で過熱の一部は抜けている。
ただし、伸び率が寝てくる局面で決算翌日に飛びつくのは、6月に一度痛い目を見た型そのものだ。東京のメモリー関連も同じで、寄り付きの窓開けを追うより、日中の押しでどこまで売りが出るかを見てからでも遅くない。
逆になったら——見立てを捨てる水準
筆者が見立てを改めるのは次の2つのどちらかだ。マイクロン株が9月28日の日中安値1,032ドルを終値で割り込んだら、今回の決算は「材料出尽くし」と判定され、6月と同じ形の下げが始まったとみる。逆に、6月25日の終値1,213.56ドルを終値で超えてくるなら、伸び率の鈍化は織り込み済みで、筆者の押し目待ちは弱気すぎたことになる。その間にいる限りは、値幅の中の往来と割り切る。
今日の監視リスト
| 時刻(日本時間) | 見るもの | 筆者の着眼点 |
|---|---|---|
| 10月1日 8時50分 | 日銀短観(9月調査) | 大企業製造業の業況判断と、企業の想定為替レート |
| 10月1日 9時 | キオクシアとアドバンテストの寄り付き | 装置株とメモリー株で値動きが割れるか |
| 10月1日 9時〜15時30分 | 東京エレクトロン、ディスコの日中の押し | 寄りの高値を引けまで守れるか |
| 10月1日 22時30分〜 | マイクロンの米通常取引 | 1,032ドルと1,213.56ドルのどちらに向かうか |
| 10月1日 23時 | 米ISM製造業景況指数(9月) | 米長期金利を通じたハイテク株全体への影響 |
短観で企業の想定為替レートがどう動くかは、短観の事前整理で詳しく書いた。マイクロンの「2028年まで品不足」という会社の言い分をどこまで信じるかについては以前の分析を、キオクシアの値動きの癖についてはキオクシアの急騰急落の検証を合わせて読んでほしい。メモリー株全体の位置づけはメモリ株の見通しにまとめてある。
主な参照
- 6〜8月期と通期の決算、9〜11月期の計画、事業別売上高/マイクロン(SEC提出のフォーム8-K、2026年9月30日)
- 3〜5月期の決算と6〜8月期の会社計画、12〜2月期の売上高/マイクロン(SEC提出のフォーム8-K、2026年6月24日)
- LSEGの市場予想、長期契約のコミットメント、残存履行義務、HBMの契約状況、設備投資計画/ロイター(9月30日22時16分=協定世界時)
- 時間外の株価(米東部時間16時34分に1,082.49ドル)と決算の要約/株探・MINKABU PRESS
- マイクロンの日足(6月25日、7月29日、2025年12月31日の終値を含む)と時間外の5分足/stockanalysis.com、ヤフー・ファイナンス、ナスダック
- シカゴ日経平均先物/株探、日経平均の9月30日終値/株探
- 日本の半導体関連株の終値/株探
データ基準日:2026年9月30日の米国市場の終値と、同日の米東部時間18時45分(日本時間10月1日7時45分)時点の時間外取引の値。時間外の値は取引時間中のものであり、終値ではない。日本株と日経平均は9月30日の東京市場の終値。12〜2月期(第1四半期)の売上高136.43億ドルは、通期の売上高から他の3四半期を差し引いて本誌が算出した。前四半期比の伸び率、6月高値からの距離、年初来の上昇率は本誌の計算である。9〜11月期の伸び率13.4%は会社計画の中心値615億ドルにもとづく。市場予想は集計元により異なり、株探は売上高の予想を514.9億ドルとしている。長期契約のコミットメント、残存履行義務、HBMの契約状況、米国での投資計画はロイターの報道にもとづき、決算発表資料の本文では確認していない。日本企業とマイクロンの取引関係について本稿は何も主張していない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。












