3連休をまたいで、東京市場は「史上最大の週間下げ幅」の直後という異常な位置から再開した。先週の日経平均は週間4,416円安(−6.4%)、17日金曜だけで−2,694円(−4.03%・下げ幅歴代5位)。キオクシアは2日連続の急落で6月高値の半値以下となり、米フィラデルフィア半導体指数(SOX)は週間9%超下げて弱気相場入りした。休場中の米市場(20日)は小動きに落ち着き(S&P500 −0.19%)、半導体には押し目買いが入った——ブロードコム+2%、マイクロン+1.9%、インテル+2.1%。これを受けて21日朝の東京は日経平均が一時800円高の64,900円台と自律反発で始まり、売り込まれたキオクシアにも買いが先行している(基準日2026年7月21日午前)。
問題はここからだ。この反発が「需給の整理が終わった合図」なのか「戻り売りの起点」なのかは、今週残り4営業日に密集するイベントが決める。水曜のテスラ・アルファベット、木曜のインテル・ディスコ、金曜の全国CPIと米関税失効——本稿は各日を「反発を支える条件」と「続落に傾ける条件」に振り分けた観戦ガイドである。
4営業日のイベント・カレンダー
米決算の結果が判明するのは日本時間の木・金早朝。東京の半導体株は「一晩遅れ」で審判を受け取る。
出所:各社IR・JPX・総務省統計局の公表日程(2026年7月21日時点)。
まず、先週なにが壊れたのか
壊れたのは業績ではなく「業績の先の期待」だ。TSMCが満点の決算を出しても売られたことが象徴する通り、AI・半導体は「良い数字」がすでに株価に入り切った状態で7月を迎えていた。そこに①TSMCのcapex増額が装置コスト・将来の供給増と読み替えられ②中国CXMTの記録的IPO(7/27上場)が「国家資本の増産」リスクを持ち込み③中国発の低コストAIモデルや米イラン戦闘の再燃が重なった。3月安値から6月高値まで約4割上げた「第二次AI相場」の踊り場に、信用買いの投げ(追証)が加速装置として乗った——それが週間4,416円安の解剖図である。重要なのは、この間DRAM・NANDの現物市況は崩れていないこと(TrendForceは7-9月期の契約価格をなお上昇と予測)。売られたのは18カ月先の期待であって、今日の需要ではない。
日別ガイド:その日に見るもの、反発条件と続落条件
| 日 | イベント | 反発を支える条件 | 続落に傾ける条件 |
|---|---|---|---|
| 7/21(火) | 骨太方針2026を閣議決定(日銀の自主性尊重を明記・PB黒字化目標は事実上棚上げ)。USTRの対日12.5%関税(301条)は判断期限を超過し発表待ち | 自律反発が後場まで持続し、長期金利が2.7%台前半で落ち着く | 財政拡張を嫌気した金利上昇の再燃。USTR発表で自動車除外が不明確な場合 |
| 7/22(水) | 米決算ピーク:テスラ・アルファベット・TI・IBM(結果は木曜早朝)。ティアフォー(593A)東証グロース上場・6月貿易統計 | アルファベットのcapexガイダンスが「増額なし+クラウド好調」の組み合わせ | テスラの納車・粗利率悪化(オプション市場は±7.6%の変動を織り込む)。ティアフォーの公開価格割れ |
| 7/23(木) | インテル決算(±15%の変動織り込み)・ECB理事会(2.25%据え置きが約88%)・ディスコ4-6月期決算 | ディスコの出荷・受注が堅調なら「装置需要は無傷」の実地証明になり半導体の反発を支える | ディスコの慎重ガイダンス。ECBのタカ派サプライズ(追加利上げ示唆) |
| 7/24(金) | 6月全国CPI 8:30(コア+1.6%予想・5月+1.4%から加速)・日米欧PMI速報・米122条関税が失効 | CPIが予想並みで「日銀は10月」の織り込み安定。301条未発動なら一時的な「関税の空白」は輸出株に追い風 | CPIの上振れで翌週の日銀会合前に利上げ前倒し観測が再燃 |
構図を一言でいえば、今週は「AI相場の審判週」ではなく「証拠集めの週」だ。審判そのもの——FRBと日銀——は来週に控える。だからこそ今週の決算とCPIは、来週の判定に提出される証拠として読むのが正しい。金曜に失効する米国の一律10%関税と後継の対日12.5%(301条)は、日本の一般輸出品の実効税率を決める今週最大のワイルドカードである——月曜が期限だったUSTRの判断は、本稿執筆時点でまだ発表されていない。
来週への布石:本当の審判は7月末に並ぶ
- 7/27(月):中国CXMTが上海上場。キオクシア半値の引き金になった「中国メモリー」の初値は、東京の半導体株の翌日の材料になる。
- 7/28(火):PayPal決算(買収攻防の只中)、米ハイパースケーラー決算週の開幕。
- 7/28-29:FOMC。据え置き+タカ派ガイダンスが本線。FRBは18日からブラックアウト入りしており、今週の発言は出ない。
- 7/30-31:日銀会合(展望レポート)。据え置きコンセンサス。金曜のCPIはこの会合の直前最後の物価データ。
- 7/31:米・医薬品232条関税(100%)が発効。日本勢は2025年合意の15%上限で概ね遮蔽だが、個別の適用条件に注意。
押し目買いを考える人のチェックリスト
- 需給の整理を確認してから。追証発生を伴う下げの後は、反発初日に全力を出さない。13週線(約65,300円)の回復が最初の目安。
- 「AI一律」をやめ、証拠の出る順に。木曜のディスコ→来週のハイパースケーラーcapexガイダンス→CXMT初値、と実需の証拠は順番に出る。証拠の前に買うのは投機、後に買うのは投資だ。
- 金曜のCPIは「翌週とセット」で。上振れなら日銀会合(7/30-31)への思惑で銀行株・円、下振れならグロースの反発と、資金の行き先が真逆になる。
- 関税ヘッドラインは初動を追わない。301条の発表があっても対日実効税率の本線は15%止まり——6月CPI後の乱高下と同様、見出しの往復に付き合わないこと。
- 先週の相場:株探(週末市況)、Bloomberg、Yahoo Finance(米市場)
- 21日朝の反発:日本経済新聞(寄り付き)
- 今週の日程:財経新聞(週間展望)、JPX(休業日)、各社IR(Tesla・Alphabet・Intel・GM)
- 決算プレビュー:CNBC(週間見通し)
免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を勧誘・推奨するものではない。日程・予想値は2026年7月21日午前時点の公表情報・市場コンセンサスであり変更され得る。「反発条件/続落条件」は編集部の整理である。投資判断はご自身の責任で行われたい。
先週の日経平均はなぜ史上最大の週間下げ幅になったのか?
AI・半導体の「良い数字が織り込み切った」状態に、TSMCのcapex増額(供給増・コスト増の読み替え)、中国CXMTの記録的IPO、米イラン戦闘の再燃が重なったためだ。週間4,416円安のうち17日だけで2,694円安(歴代5位)。信用買いの投げが下げを加速したが、DRAM・NANDの現物市況自体は崩れていない。
今週の最重要イベントはどれか?
国内は7月23日(木)のディスコ決算と7月24日(金)の全国CPI、海外は22日(水)のテスラ・アルファベット決算だ。ディスコは暴落後に出る国内半導体設備投資の最初の実地データで、CPI(コア+1.6%予想)は翌週の日銀会合直前の最後の物価指標になる。
米国の関税はどうなるのか?
3段構えで動く。USTRの対日12.5%関税(301条)は7月20日が判断期限だったが本稿時点で発表待ち。7月24日(金)には現行の一律10%関税(122条)が法定上限で自動失効する。301条が間に合わなければ一時的な「関税の空白」が生じ、機械・電機など一般輸出品には追い風になる。自動車の15%(232条)はどのシナリオでも変わらない。
いまは押し目買いのタイミングか?
反発初日に全力を出す場面ではない。追証を伴う下げの後は需給整理に時間がかかるためだ。13週線(約65,300円)の回復を確認し、木曜のディスコ決算→来週のハイパースケーラー決算→CXMT初値と、実需の証拠が出る順に段階的に判断するのが定石だ。
来週は何が控えているか?
本当の審判が並ぶ。7月27日に中国CXMTの上海上場、28-29日にFOMC(据え置き+タカ派が本線)、30-31日に日銀会合(展望レポート)、31日に米医薬品232条関税の発効。今週の決算とCPIは、この来週の判定に提出される証拠として読みたい。















