米AI開発企業のアンソロピックは11月2日、米ナスダック上場に伴う日本国内での株式募集について、有価証券届出書を関東財務局に提出した。国内募集の発行価額の総額は上限見込額で35億ドル、円換算で約5,529億円とされている。事務幹事はみずほ証券で、楽天証券とSBI証券を含む6社が申し込みを取り扱う。
発行株数と発行価格は未定である。届出書は、実際の募集額は今後の条件決定日に決まり、上限見込額と大幅に異なる可能性があるとしている。米国での上場は申請済みだが、11月2日時点で承認は得ていない。
国内募集の主要数値
| 項目 | 内容 | 出所 |
|---|---|---|
| 国内募集の上限見込額 | 35億ドル(約5,529億円) | 有価証券届出書(報道各社) |
| 届出書の提出先・提出日 | 関東財務局、2026年11月2日 | 同上 |
| 発行株数・発行価格 | 未定(条件決定日に決定) | 同上 |
| 事務幹事・幹事 | みずほ証券(事務幹事)、三菱UFJモルガン・スタンレー証券(幹事) | 同上 |
| 申し込みの取扱証券会社 | みずほ証券、ゴールドマン・サックス証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券、楽天証券、SBI証券 | 同上 |
| 上場予定市場・銘柄コード | 米ナスダック・グローバル・セレクト・マーケット、「ANT」(申請中) | 米SEC提出のForm S-1 |
| 上場する株式 | クラスA普通株式(会社による新株発行と既存株主の売り出し) | Form S-1 |
| 海外での公募 | 日本、英国、カナダ、オーストラリア、スイス、欧州経済領域の一部の国(各国での上場はなし) | Form S-1 |
| 主幹事(米国) | ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー | Form S-1 |
円換算額は報道によって小さな差がある。あたらしい経済とロイター通信は約5,529億円、日本経済新聞は約5,528億円、ブルームバーグは約5,530億円と伝えた。いずれも35億ドルの円換算で、差は換算レートと端数処理によるものである。
背景:10月26日のS-1公開提出
アンソロピックは6月1日、新規株式公開に向けた登録届出書の草案を米SECに非公開で提出したと発表していた。10月26日にはForm S-1を公開提出した。S-1では価格帯、株数、調達総額がいずれも空欄のままである。調達資金の使途は運転資本、営業費用、計算資源を含む設備投資などとしている。
S-1に記載された業績は次のとおり。2026年1〜6月期の売上高は162億8,600万ドルで、前年同期の11億6,300万ドルから約14倍になった。2025年通期の売上高は45億8,500万ドル、2024年通期は3億8,600万ドルだった。2026年1〜6月期の最終損益は807億4,800万ドルの赤字である。このうち約724億ドルは、転換社債やデリバティブなどの公正価値の変動による現金支出を伴わない損失だった。同期間の営業損失は6億9,300万ドルで、会社が示す調整後営業利益は16億1,800万ドルの黒字である。
アンソロピックの売上高(億ドル)
読み方:2026年1〜6月の半期の売上高は、2025年通期の約3.6倍、前年同期の約14倍だった。通期と半期が混在しているため、期間に注意して読む必要がある。出所:米SECに提出されたForm S-1(2026年10月26日)。
議決権の構造も上場後の株主に関係する。S-1によると、創業者側の法人が保有するクラスF株式が議決権の50.1%を持ち、同社は米国の上場規則上の「支配株主のいる会社」に当たる。上場前の資金調達では、5〜6月のシリーズH-1ラウンドで1株589.0095ドル、総額457億3,000万ドルの株式を発行した。S-1の詳しい読み方は目論見書をめぐる9月の記事と10月26日の米国市場の記事で扱っている。
比較:スペースXの国内募集と国内IPO
| 案件 | 日本での募集額 | 出所 |
|---|---|---|
| アンソロピック(2026年11月、上限見込額) | 35億ドル(約5,529億円) | 有価証券届出書(報道各社) |
| スペースX(2026年6月) | 約22億ドル(日本経済新聞は約3,470億円) | ロイター通信、日本経済新聞 |
| 国内IPOの募集・売り出し総額(2026年4〜9月) | 約2,000億円 | 日本経済新聞 |
日本経済新聞は、アンソロピックの国内募集の上限見込額がスペースXを6割上回ると報じた。35億ドルを約22億ドルで割ると約1.6倍で、この記述と一致する。同紙はまた、4〜9月の国内IPOの募集・売り出し総額約2,000億円の3倍近いと伝えた。共同通信は、外国企業のIPOに伴う日本での調達額として過去最大になる見込みと報じている。
スペースXは6月にナスダックへ上場した。上場後の値動きと需給はIPO株の需給の教科書で整理している。
評価額をめぐる報道
S-1に価格帯の記載がないため、届出書から企業価値は算出できない。報道ベースでは数字に幅がある。英フィナンシャル・タイムズと米フォーチュンは、投資家の間で約2兆ドルの評価額が想定されていると伝えた。ロイター通信はその後、一部の投資家の間で約1.5兆ドルが議論されていると報じた。シリーズHラウンド後の評価額は約9,650億ドルと報じられている。いずれも会社の発表ではない。
共同通信は、上場は11月中旬を目指していると伝えた。会社は上場日を公表していない。暗号資産の取引所ハイパーリキッド上では、アンソロピックの推定評価額を参照する上場前の無期限先物「ANTH」が取引されている。提供元のエントロピーによると、これは金融派生商品で、取引しても株式の所有権やIPOでの割当を受ける権利は得られない。
届出書の記載と未定の項目
11月2日時点で公表されていない項目は次のとおり。国内の需要申告期間、申込期間、払込日、申込単位、取扱証券会社ごとの配分は、報道ベースでは確認できない。新NISAの成長投資枠の対象になるかどうかについても、各社の発表は確認できていない。上場後に取引されるのはナスダックのドル建て株式で、円で申し込む場合も円換算額は為替相場の影響を受ける。
今後の日程
- 条件決定日:未定。国内募集の発行株数と発行価格はこの日に決まる。
- ナスダックの上場承認:申請済み、11月2日時点で未承認。
- 上場日:会社は未公表。共同通信は11月中旬を目指していると報道。
- Form S-1の訂正届出(S-1/A):11月2日時点でEDGARに未掲載。価格帯は訂正届出で示されるのが通例である。
主な参照
- アンソロピックのForm S-1(2026年10月26日提出)/米証券取引委員会(EDGAR)
- 国内募集の有価証券届出書の内容、取扱証券会社/あたらしい経済
- 国内募集額、スペースXとの比較、国内IPOとの比較/日本経済新聞
- 35億ドルの国内募集、スペースXの国内募集額、評価額をめぐる報道/ロイター通信(Investing.com掲載)
- 外国企業のIPOとして過去最大の見込み、上場時期の報道/共同通信(OANDA掲載)
データ基準日:2026年11月2日20時(日本時間)時点の公表情報。国内募集の金額と取扱証券会社は、関東財務局に提出された有価証券届出書を報じた各社の記事にもとづく。本誌は届出書の原本をEDINETで直接確認できていない。業績と議決権構造はForm S-1の記載による。評価額と上場時期は報道であり、会社の発表ではない。調整後営業利益は会社独自の指標で、米国会計基準の数値ではない。本稿はアンソロピックの株式の取得を勧誘するものではない。申し込みを検討する場合は、取扱証券会社が交付する目論見書を必ず確認していただきたい。本記事は情報提供を目的としたものであり、投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














