アマゾン・ドット・コム(AMZN)は10月29日の米国市場の引け後に7〜9月期決算を発表し、株価は時間外取引で7.3%安の226ドルまで売られた。クラウド事業のAWSは前年同期比39%増と約5年ぶりの伸びで、営業利益も過去最高の281億ドルだった。それでも売られたのは、AIのデータセンターへの投資で直近12カ月のフリーキャッシュフロー(手元に残る現金)が424億ドルの流出に転じたからである。
まず下の4枚を見てほしい。成長の数字は良く、現金の数字は悪い。今回の決算は、この2つのどちらを市場が重く見るかの試験だった。初日の答えは「現金」である。本稿では図を使って、売りの理由と、次に株価が反発に向かうか下げが続くかを分ける価格帯を整理する。
AWSは5四半期連続で加速した
AWSの売上高の伸び率(前年同期比、為替の影響を除く)
読み方:伸び率は5四半期続けて上がった。直近の7〜9月期は売上高460億ドル、営業利益178億ドル。出所:アマゾンの決算発表資料の補足データ。
AWSの売上高は460億ドルで、為替の影響を除いた伸び率は2025年4〜6月期の17%から5四半期続けて上がり、39%に達した。営業利益は178億ドルで、前年同期の114億ドルから56%増えた。売上高に対する営業利益の比率は38.7%である。アンディ・ジャシーCEOは決算発表文の中で、AWSの売上高の伸びが2027年と2028年にいずれも40%を超えるとの見通しを示した。
決算説明会では、AWSの受注残高が5,780億ドルで、前年比3ケタの伸びだったと報じられている。設備を増やすそばから顧客が使い切っている、というのが会社側の説明である。成長の面だけを見れば、今回の決算に弱い数字はほとんどない。前日に12%安となったアルファベットの決算についてはこちらの記事で扱った。
売られた理由は現金の流出
直近12カ月のフリーキャッシュフロー(億ドル)
読み方:黒字182億ドルから5四半期で赤字424億ドルへ。直近12カ月の設備などの購入額(売却収入などを差し引き後)は2,107億ドルで、前年から82%増えた。出所:アマゾンの決算発表資料の補足データ。
問題はこの図である。直近12カ月のフリーキャッシュフローは、2025年4〜6月期時点の182億ドルの黒字から毎四半期減り、今回は424億ドルの赤字になった。7〜9月期の1四半期だけで、設備などの購入額は772億ドルと前年同期の351億ドルから2倍以上に膨らんだ。会社はその増加分の大半がAI向けの投資だと説明している。2026年通年の設備投資は約2,200億ドルという計画を据え置いた。
さらに、ジャシーCEOは説明会で2027年の設備投資が「大きく増える」と述べたと報じられている。つまり現金の流出は、少なくとも来年いっぱいは止まらない見通しである。AWSが40%で伸びても、投資がそれを上回る速さで増えれば、株主に残る現金は増えない。市場が今回確認したのはこの点だった。
見出しの数字は小さく予想を下回った
| 項目 | 7〜9月期の実績 | 市場予想・比較 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,019億ドル(+12%) | 予想2,022億ドル | わずかに未達 |
| 1株利益 | 1.89ドル | 予想1.97ドル | 未達(前年の投資評価益95億ドルの反動) |
| 営業利益 | 281億ドル(利益率13.9%) | 前年同期174億ドル | 過去最高 |
| 広告収入 | 196億ドル(為替除き+12%) | 前四半期は+26% | 減速(プライムデーの時期ずれ) |
| 10〜12月期の売上高見通し | 2,400億〜2,470億ドル | 予想2,445億ドル | 中央値2,435億ドルは予想を下回る |
| 10〜12月期の営業利益見通し | 285億〜335億ドル | 前年同期250億ドル | 増益の見通し |
見出しの数字にも小さな傷があった。1株利益は1.89ドルで予想の1.97ドルに届かなかった。ただし、これは前年の7〜9月期にアンソロピックへの投資で95億ドルの評価益が出ていた反動で、本業の弱さではない。広告収入の伸びが12%に落ちたのも、プライムデーが今年は4〜6月期に移ったためである。会社はプライムデーの時期ずれがなければ売上高の伸びは約4ポイント高かったと説明している。
10〜12月期の売上高見通しは2,400億〜2,470億ドルで、中央値は予想を0.4%下回る。差はわずかだが、現金の流出が焦点になっている局面では、こうした小さな未達も売りの材料に使われやすい。決算前に本誌がオプション市場が織り込む変動幅は7.4%と書いたが、時間外の7.3%安はほぼその幅に収まった。
過去4回の決算翌日は上げ3回、下げ1回
決算発表翌日の株価の変化(終値ベース)
読み方:過去4回は上げ3回・下げ1回。今回の値は翌日の終値ではなく、10月29日の時間外取引の最終値で、30日の通常取引で変わる。出所:ナスダックの日足終値と時間外データから本誌が計算。
過去4回の決算では、発表翌日の終値が上がったのが3回、下がったのが1回だった。下げた1回は2026年2月で、このときも焦点は設備投資の大きさだった。7月の決算後には15%高と大きく買われており、時間外の値動きがそのまま翌日の終値になるとは限らない。それでも、今回は前日の通常取引ですでに4.25%下げてから発表を迎えた点が違う。
分かれ目の価格帯
アマゾン株の分かれ目(ドル)
読み方:上は243ドル台の回復、下は214ドルの維持が分かれ目。200日移動平均はナスダックの日足終値から本誌が計算した。
上の線は243ドル台にある。29日の終値243.79ドルと、本誌が計算した200日移動平均の243.38ドルがほぼ重なる場所で、ここを取り戻せば時間外の下げは「投資への一時的な不安」で終わったと読める。下の線は214.01ドル、時間外の安値である。ここを終値で割り込むと、4月2日の終値209.77ドルが次の目安になる。この水準は本誌が確認した4月以降の終値の最安値である。
今後2週間のシナリオ
| シナリオ | 確率(本誌の見立て) | 値動きの目安 | 起こる条件 |
|---|---|---|---|
| A:戻り | 25% | 終値で235ドルを回復し、243ドル台をうかがう | アナリストの目標株価の引き下げが小幅にとどまり、AWSの40%成長が評価し直される |
| B:時間外の水準で落ち着く | 45% | 220〜235ドルでのもみ合い | 大手テック株全体の売りが一服し、決算材料の織り込みが進む |
| C:下げが続く | 30% | 220ドルを割り込み、214ドル、210ドルを試す | ナスダックの下げが続く、または米国の長期金利がさらに上がる |
本誌の見立てはBが中心である。成長の数字に崩れはなく、投げ売りが続く理由は乏しい。一方で、2027年の投資額が具体的に示されるまでは、現金の流出という論点は消えない。上に戻るにはもう一つ材料が要る、というのが今の位置だ。逆に、アマゾンが2027年の投資計画を数字で示し、それが市場の想定を大きく超えた場合は、Cの確率を引き上げる。
個人投資家のチェックリスト
- 30日の通常取引の終値:時間外の226ドルより上で引けるか。上なら売りは時間外で出尽くした可能性がある。
- 214.01ドル:時間外の安値。終値で割れたら、下げが続くシナリオCに傾いたと判断する。
- 243ドル台:29日の終値と200日移動平均。ここを回復するまでは戻りを「本物」と見ない。
- 2027年の設備投資の数字:会社が具体的な額を示した時点で、現金の流出がいつ止まるかを計算し直す。
- NISAなどで長く持つ人:AWSの成長が続くかが本題で、1日の値動きで判断を変える必要は薄い。買い増すなら一度に入れず、時期を分けるのが無難だ。
AWSの投資と利益率の関係は、前回4〜6月期の決算を扱ったこの記事でも詳しく説明している。今回はその投資の大きさが、ついにフリーキャッシュフローの赤字という形で表に出た決算だった。
主な参照
- 7〜9月期決算、10〜12月期の見通し、四半期ごとのAWS売上高・フリーキャッシュフロー/アマゾン(米証券取引委員会への提出書類)
- 市場予想(1株利益・売上高・10〜12月期の売上高)/モトリーフール
- 決算説明会の内容(受注残高、2027年の設備投資)/MarketBeat
- 株価(通常取引の終値、時間外取引の最終値・高値・安値、過去の日足終値)/ナスダック
データ基準日:2026年10月29日。通常取引の株価は同日の終値。時間外取引の226.00ドルは米東部時間19時59分59秒(日本時間30日8時59分)の約定値で、終値ではない。時間外の高値245.45ドルは米東部時間17時16分、安値214.01ドルは16時3分の値。200日・50日移動平均は、ナスダックの日足終値から本誌が計算した。受注残高と2027年の設備投資に関する発言は決算説明会の要約記事で報じられた内容で、本稿執筆時点で会社の公式な書き起こしでは確認できていない。市場予想は集計会社によって差がある。シナリオと確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















