カナダ銀行(中央銀行)が28日(水)、2023年以来となる利上げに踏み切るかどうか。市場はその確率をおよそ8割とみている。ドルカナダ(USD/CAD)は26日の東京時間に1.4011カナダドル前後で推移しており、10月13日に付けた52週の終値高値1.4280から約1.9%下げた水準にある。同じ28日の深夜には米連邦公開市場委員会(FOMC)も結果を出す。まず下の1枚を見てほしい。
結論から書く。本誌の短期(11月上旬まで)の見通しは1.388〜1.415カナダドルのレンジで、やや下方向(カナダドル高)である。分岐点は10月23日の安値1.3970。ここを終値で割れば、200日移動平均の1.3882が次の目標になる。中期(12月末まで)は1.38〜1.42を想定し、中心は1.395とみる。ただし、利上げが「1回で打ち止め」と受け取られれば、カナダドルは材料出尽くしで売られる。その筋書きにも3割の重みを置く。
いまの位置――1.40を挟んだ攻防
ドルカナダの注目水準(カナダドル)
読み方:現在値は分岐点の1.3970のすぐ上にある。下に割れれば200日線、上は1.4150が本誌の撤退ライン。出所:Yahoo!ファイナンスの日足から本誌作成(2026年10月26日時点)。
カナダドルは23日まで対ドルで7営業日続伸し、ロイターによると2022年3月以来の長い連騰になった。週間でも約1%上げている。押し上げたのは利上げ観測と原油高である。米WTI原油先物は23日に1バレル103.27ドルで引け、26日の東京時間も101ドル台にある。カナダは原油の純輸出国で、原油高は通貨の支えになりやすい。
一方で、ドルカナダの50日移動平均は1.4012と、現在の水準とほぼ同じだ。7連騰で下げてきたドルカナダは、この線で止まっている。1.40の節目と50日線が重なる場所で、28日の2つの中銀会合を迎える形になる。
なぜ利上げなのか――物価の数字が割れている
カナダの9月の物価(前年同月比)
読み方:総合は3.1%だが、ガソリンを除くと2.2%、基調物価は2%を割る。利上げは原油高の波及を防ぐ予防的な色合いが濃い。出所:カナダ統計局(2026年10月19日発表)、カナダ銀行。
カナダ統計局が10月19日に発表した9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.1%上昇で、8月の3.0%から伸びが加速した。けん引したのはガソリンで、27.8%の上昇だった。ガソリンを除くと2.2%にとどまる。カナダ銀行が重視する基調的な物価指標は、トリム平均が1.8%、中央値が1.9%で、どちらも前月から下がって2%を割り込んだ。
つまり、利上げの根拠は「原油高が物価全体に広がる前に手を打つ」という予防である。基調物価が2%を下回るなかでの利上げは、続けて上げる理由が弱い。ロイターが10月21〜23日に実施したエコノミスト調査では、34人中19人が28日の利上げ(2.25%→2.50%)を予想した。前回の調査では8割が2026年中の据え置きを見込んでいたので、予想は短期間でひっくり返ったことになる。
景気は強くない――雇用は2カ月連続で減少
米国とカナダの金利(%)
読み方:カナダの政策金利は米国より1.75%ポイント低い。カナダが利上げし米国が据え置けば、この差は縮み、カナダドルの支えになる。出所:米連邦準備制度理事会、米財務省、カナダ銀行。
9月の雇用者数は6万8,000人減り、2カ月連続のマイナスだった。失業率は6.5%に上がっている。7月の国内総生産(GDP)は前月比横ばいで、8月の速報見込みは0.2%増にとどまる。景気が弱いなかでの利上げは、カナダドルにとって両刃の剣だ。金利差の面では支えになるが、景気悪化の懸念が強まれば通貨の重荷にもなる。
金利差も確認しておく。米国とカナダの2年国債利回りの差は、10月21日の1.49%ポイントから22日は1.43%ポイントに縮んだ。米国が4.65%、カナダが3.22%である。カナダが利上げし、米国が据え置けば、この差はさらに縮む。差の縮小は、ドルカナダの下落(カナダドル高)につながりやすい。
28日の夜――2つの中銀が続けて結果を出す
10月28日夜の発表時刻(日本時間)
読み方:カナダの結果から約4時間でFOMCの声明が出る。同じ夜に2回、値幅が広がる時間帯がある。出所:カナダ銀行、米連邦準備制度理事会、日本銀行の公表日程。
日本時間28日22時45分にカナダ銀行が政策金利と金融政策報告を公表し、23時30分ごろから総裁会見が始まる。そのおよそ4時間後、29日午前3時にFOMCの声明が出る。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に政策金利を3.75〜4.00%へ引き上げた。FXStreetはCMEのFedWatchを引用し、10月は据え置きの確率が90.6%、12月の利上げの確率が79.7%と伝えている。
個人投資家にとっての注意点は、同じ夜に値動きが2回来ることだ。カナダの結果でカナダドルが買われても、FOMCで12月の利上げが強く示されればドルが買い戻される。発表の前後は値幅が広がりやすく、成行注文や逆指値の滑り(想定より不利な価格での約定)に注意したい。各中銀の位置づけは今週の中銀番付でも整理している。
シナリオ表――確率と水準
28日のカナダ銀行:本誌のシナリオ確率
読み方:利上げは合計75%と、市場の約8割よりやや低く置いた。Bの場合、利上げでもカナダドルは売られうる。出所:本誌の見立て。
| シナリオ | 本誌の確率 | 中身 | ドルカナダの想定(11月上旬まで) |
|---|---|---|---|
| A:利上げ+追加に含み | 45% | 2.50%へ利上げし、原油高による物価の上振れに引き続き警戒を示す | 1.3970を割り、1.3882(200日線)へ。行き過ぎれば1.3760(9月安値) |
| B:利上げ+打ち止め示唆 | 30% | 2.50%へ利上げするが、基調物価の低さと雇用減を理由に様子見を示唆 | 材料出尽くしで1.405〜1.415へ戻す |
| C:据え置き | 25% | 2.25%に据え置き、12月に判断を先送り | カナダドル売りで1.415超え。1.4280(52週の終値高値)が視野 |
中期(12月末まで)の見通しは1.38〜1.42で、中心は1.395に置く。カナダ銀行の次の会合は12月9日、FOMCは12月8〜9日である。12月に米国が利上げし、カナダが据え置けば、金利差は再び広がる。その場合は1.42台への戻りもありうる。逆に原油が1バレル100ドル超を保ち、カナダが12月にも上げれば、1.38割れの可能性が出てくる。
円から見たカナダドル――1カナダドル112円
日本の投資家にとって身近なのはカナダドル円(CAD/JPY)だろう。26日15時50分すぎは1カナダドル=112円04銭前後で、ドル円157円00銭前後をドルカナダ1.4011で割った値とほぼ一致する。52週の終値ベースでは、高値が4月の117円18銭、安値が2025年11月の108円37銭だった。現在は200日移動平均の114円21銭を下回っている。
カナダドル円は、ドル円とドルカナダの2つの動きの掛け算で決まる。今週は日銀会合(29〜30日)もあり、円の側にも材料がある。ドル円の見方はドル円の今週の見通しにまとめた。原油の行方はブレント原油の記事に詳しい。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認すること | こうなれば | 見方を変える |
|---|---|---|
| 28日のカナダ銀行の声明 | 「さらなる引き締め」の文言が残る | シナリオAへ。1.3970割れを本線に |
| 総裁会見での基調物価の評価 | トリム平均・中央値の2%割れを強調 | シナリオBへ。カナダドルの戻り売りに警戒 |
| 29日午前3時のFOMC声明 | 12月の利上げを強く示唆 | ドル買い戻しで1.405超えも |
| WTI原油 | 1バレル95ドルを割り込む | カナダドル高の前提が崩れる |
| ドルカナダの終値 | 1.4150を上抜ける | 本誌の短期見通し(下方向)は撤回 |
本誌の撤退ラインは1.4150の終値上抜けである。そこを超えれば「利上げでカナダドル高」という見立ては外れたと認める。FX取引の基本や業者選びはFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 政策金利の推移(2.25%)と今後の公表日程/カナダ銀行、カナダ銀行(統計)
- 9月の消費者物価指数(2026年10月19日発表)/カナダ統計局、基調物価の指標/カナダ銀行
- 9月の労働力調査(10月9日発表)/カナダ統計局
- 7月のGDPと8月の速報見込み(9月29日発表)/カナダ統計局
- エコノミスト調査(10月21〜23日)/ロイター(Investing.com掲載)
- 利上げ確率約8割、カナダドルの7連騰、WTIの23日終値/ロイター(Kitco掲載)
- FRBの9月の利上げ/米連邦準備制度理事会、FedWatchの確率/FXStreet
- 米2年国債利回り/米財務省、カナダ2年国債利回り/カナダ銀行
- ドルカナダ・カナダドル円・WTIの価格と移動平均/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月26日。ドルカナダ、カナダドル円、ドル円、WTIは26日15時40〜57分ごろ(日本時間)の気配値で、取引時間中の数値であり終値ではない。52週の高値・安値と移動平均は日足終値から本誌が計算した。2年国債の金利差は10月22日の値。利上げ確率は情報源と時点により75〜87%と幅がある。FedWatchの確率はFXStreetの引用で、本誌はCMEの画面を直接確認していない。シナリオの確率と水準は本誌の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















