ファナック(6954)が10月23日の大引け後に出した決算は、数字だけ見れば文句のない内容だった。7〜9月期の受注は前年同期比49.0%増の3,060億円に達し、今期の純利益予想も引き上げた。それでも26日の株価は5.37%高で寄り付いた後に失速し、終値は0.93%高にとどまった。何が評価され、何が上値を抑えたのかを5つにまとめる。
- 受注は3,060億円:前年同期比49.0%増。工作機械向けの制御装置(FA部門)は130.1%増だった。
- 純利益予想は2,283億円:従来の1,980億円から15.3%上方修正。前期比では37.1%増となる。
- 上げ幅の8割超を返上:寄り付き5,887円から終値5,639円へ。前週末比の上げは52円にとどまった。
- 重しは評価と中国:予想PERは約22.9倍。受注の約3割を中国が占める。
- 次の分かれ目は5,587円:前週末の終値で、決算前の水準にあたる。自社株買いは26日から始まった。
1. 受注3,060億円、工作機械向けが2.3倍
結論:今回の決算の主役は利益ではなく受注だった。7〜9月期の受注総額は3,060億円で、前年同期比49.0%増、前四半期比でも8.5%増だった。フィスコは四半期ベースで過去最高と伝えている。
根拠:部門別では、工作機械向けのFA部門が1,122億円で130.1%増と突出した。ロボット部門は1,034億円で12.6%増、小型の加工機などのロボマシン部門は512億円で72.3%増だった。会社資料は中国のFA需要の牽引役を4つ挙げた。AIデータセンター、半導体、人型ロボットの部品加工、新エネルギー車である。
ファナックの地域別受注(2026年7〜9月期、前年同期比)
読み方:伸び率はアジア(中国除く)と中国が突出し、欧州は5%台にとどまる。金額では中国が最大で、受注総額の約3割を占める。出所:ファナック「2027年3月期 第2四半期 決算説明会資料」(2026年10月23日)のグラフ数値。
次:受注は売上の先行指標である。この勢いが10〜12月期も続くかが、来期の増益幅を左右する。
2. 純利益予想を15%上方修正、売上は1兆円台へ
結論:2027年3月期の業績予想を、売上から純利益まですべて引き上げた。会社は、売上高が前期の過去最高を上回り1兆円を超えるとしている。
| 2027年3月期の予想 | 従来(7月31日) | 今回(10月23日) | 修正率 | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 9,481億円 | 1兆137億円 | +6.9% | +18.2% |
| 営業利益 | 2,180億円 | 2,407億円 | +10.4% | +31.0% |
| 経常利益 | 2,712億円 | 3,088億円 | +13.9% | +35.7% |
| 純利益 | 1,980億円 | 2,283億円 | +15.3% | +37.1% |
根拠:上期(4〜9月)の営業利益は1,167億円で、会社の上期計画1,044億円を11.7%上回った。7〜9月期単独では営業利益632億円、前年同期比45.1%増で、営業利益率は26.0%に上がった。株探に配信されたフィスコの記事は、7〜9月期の営業利益が市場予想を約70億円上回ったと伝えている。
次:下期の想定為替レートは1ドル150円、1ユーロ175円と、足元より円高に置いている。7〜9月期の実績は1ドル159円25銭だった。円安が続けば、為替だけで上振れ余地が残る。
3. 寄り付き5%高、終値は0.9%高
結論:26日の株価は、決算を素直に買った後で売り直された。寄り付きは前週末比300円高の5,887円で、9時8分に5,935円の高値を付けた。その後は12時30分に5,620円まで下げ、終値は52円高の5,639円だった。
根拠:高値からの上げ幅348円のうち、終値まで残ったのは52円だけだ。上げ幅の85%を返した計算になる。出来高は1,361万株で、直近20日平均の約2.8倍にのぼった。売買代金は約782億円、売買高加重平均価格(VWAP)は5,738円61銭だった。
次:終値がVWAPを約100円下回った。この日に買った投資家の多くが含み損を抱えた形で、戻り局面では売りが出やすい。23日夜の私設取引所(PTS)では8%超上げており、その水準で買った層の売りも重なりうる。
4. 上値を抑えた3つの材料
結論:失速の理由を会社や報道が特定したわけではない。本誌は、評価の高さ、中国依存、地合いの3点が重なったとみる。
根拠:1つ目は評価だ。新しい予想1株利益246円01銭で割ると、予想PERは約22.9倍になる。2つ目は中国である。受注3,060億円のうち中国は912億円と約3割を占め、前年同期比79.8%増と伸びも最大だった。3つ目は地合いで、26日の東証では機械株が0.93%下げ、半導体関連にも売りが続いた。米系の大手証券は弱気の判断を据え置き、目標株価を4,600円から4,900円に引き上げたと伝えられている。
次:前回の決算では、7月31日の発表後の8月3日に株価が14.31%下げた。決算後の値動きが一方向に続くとは限らない銘柄である。今回の終値はなお年初来で7%超安い。5月14日の52週高値8,880円(取引時間中)からは約36%下にある。
5. 次の分かれ目と、自社株買い
結論:本誌は当面の注目銘柄として、ファナックを「決算で反転を試す側」に置く。見る水準は3つだ。上は26日の高値5,935円、真ん中はVWAPの5,739円、下は決算前の終値5,587円である。
根拠:会社は上限1,000万株、500億円の自社株買いを決め、10月26日から2027年4月30日まで市場で買い付ける。中間配当は1株72円54銭で、前年同期の51円33銭から増える。需給の下支えは決算前より厚くなった。
次:終値で5,587円を割れば、決算の好材料は帳消しと読む。その場合の次の目安は23日の安値5,322円になる。逆に5,935円を終値で上抜ければ、決算を評価し直す動きとみる。日本株全体の地合いは26日の大引けの検証に、前場の流れは寄り付き1時間のまとめにある。
30秒まとめ:受注は49%増、純利益予想は15%上方修正と、決算の中身は強かった。それでも株価は寄り付きの上げの8割超を返し、0.93%高で引けた。5,587円を守れるかが、決算を市場が本当に評価したかの試金石になる。
主な参照
- 決算短信(業績、業績予想の修正、配当、自社株買い)/ファナック
- 決算説明会資料(受注の部門別・地域別、需要の説明、想定為替レート)/ファナック
- 10月26日の株価(始値・高値・安値・終値・出来高・売買代金・VWAP)/株探
- 市場予想との比較、受注の過去最高(フィスコ)/株探、23日夜のPTSでの値動き/株探
- 東証33業種の騰落率(機械)/株探(フィスコ)
- 日足の株価推移、52週の高値・安値、前回決算後の値動き/Yahoo!ファイナンス
- 決算の報道/日本経済新聞
データ基準日:2026年10月26日の東京市場の終値。業績と受注は会社資料の数値で、地域別の受注は説明会資料のグラフの数値を読み取った。予想PER、修正率、上げ幅の返上率は本誌の計算。市場予想との比較とアナリストの判断は報道にもとづくもので、証券会社名は公表されていない。出来高の20日平均比は概算である。注目水準と判断は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















