市場はこう信じている――ビットコインが8万ドルを割り込んだ以上、下げは加速する。26日の東京時間、ビットコインはCoinGeckoで7万9,525ドル(日本時間11時42分)と、24時間で1.70%下げた。8万ドル割れは24日(土)に続いて今週末2度目である。今日はこの「崩落説」を証言台に立たせる。
24日に公開したビットコイン来週の見通しでは、8万ドルの防衛を最大の論点に挙げた。その防衛線は週末に2度破られた。新しく加わった材料は三つある。週末の急落の中身、米現物ETF(上場投資信託)の週間の資金流出入、そして取引所への入金の内訳である。
通説の陳述:「8万ドルを割れば、次は7万5,000ドル」
通説を最も強い形で述べておく。ビットコインは10月9日から23日まで、おおむね8万1,400〜8万4,000ドルの範囲で推移した。その下限を割り、心理的な節目の8万ドルも割った。最高値は2025年10月6日の12万6,080ドルで、現在値はそこから36.9%下にある。下落基調の中で節目を割れば、損切りの売りが次の売りを呼ぶ。
材料も悪い。ザ・ブロックによると、24日の急落の引き金は、米国が中東の大使館や基地から職員を退避させているとの米ウォール・ストリート・ジャーナルの報道だった。今週は28日(米国時間)にFOMCの結果が出る。FRBは9月に利上げしており、12月の追加利上げも有力視されている。金融引き締めの局面で、リスク資産に追い風は吹きにくい。筋は通っている。
だが、本当か。証拠を三つの方向から見ていく。
尋問1:今日の安値は、土曜の安値を割ったのか
証拠を見よう。24日(土)のビットコインは、CoinGeckoの4時間足で7万9,263ドルまで下げた。ザ・ブロックは、米東部時間11時20分ごろに7万9,280ドル近辺の安値を付け、13時には8万138ドルまで戻したと伝えた。一方、26日の24時間の安値は7万9,377ドル(CoinGecko、日本時間11時41分まで)だ。今日の安値は土曜の安値より100ドル以上高い。
この説明には穴がある。「8万ドル割れで下げ加速」と言うなら、2度目の割れで安値を更新しているはずだ。現実には、同じ水準で2度止まっている。チャートの読み手が「二番底」と呼ぶ形の候補である。公平のために言えば、二番底は確定していない。8万1,400ドルを取り戻すまでは、底を付けたとは言えない。それでも「崩落が始まった」と言い切れる証拠はない。
尋問2:資金は本当に逃げているのか
米現物ビットコインETFの資金流出入(100万ドル、米国時間)
読み方:週後半は流出に転じたが、週全体では約3億ドルの流入が残った。8万ドル割れ(24日)の直前の週に、ETFの資金は差し引きで入っていた。出所:Decrypt(2026年10月25日公開の集計)。
米現物ビットコインETFの資金の流れを見る。ディクリプトの集計では、19〜21日の3日間で合計10億7,000万ドルが流入した。22日は6億3,560万ドル、23日は1億3,790万ドルの流出だった。週間では約3億100万ドルの流入となり、3週ぶりにプラスに転じた。週後半に流出へ転じたのは事実だが、週全体では資金はまだ入っている。
通説側の再反論も聞こう。10月の累計ではなお約3億1,400万ドルの流出で、週後半の流出の勢いが今週も続くなら、流入超の週は一度きりで終わる。ここは通説にも分がある。ただ、ETFの投資家が一斉に逃げているという絵とは合わない。
尋問3:売っているのは誰か
24日の急落では、暗号資産の先物などで強制決済(ロスカット)が相次いだ。ザ・ブロックがコイングラスの集計として伝えたところでは、24時間で8億1,526万ドル分が清算され、うち米東部時間13時までの4時間で4億3,644万ドル、その約93%にあたる4億415万ドルが買い持ちだった。借金で膨らんだ買いは、すでに一度大きく整理されている。
もう一つの手がかりは取引所への入金だ。複数の暗号資産メディアが伝えたクリプトクアントの分析によると、バイナンスへの個人投資家の30日間の入金額は55億ドルから107億5,000万ドルへ増え、6カ月ぶりの高水準になった。大口保有者(クジラ)の入金は8月末の59億ドルから38億ドルへ減っている。取引所への入金は売りの準備とみなされることが多い。今回売っているのは主に個人で、大口は静観している。これは本誌が23日の清算の記事で指摘した構図とも一致する。
公平のために言えば、大口の静観は「買い」を意味しない。保有企業最大手のストラテジーは、10月12〜18日に267ビットコインを平均8万2,900ドルで買い増したと米証券取引委員会(SEC)に届け出た。ただ、同社の平均取得価格は7万5,446ドルで、現在値はその約5%上にすぎない。この水準まで下げれば、「最大の買い手が含み損」という見出しが新たな売り材料になりうる。
生き残った主張と、死んだ主張
| 通説の主張 | 証拠 | 判定 |
|---|---|---|
| 8万ドル割れで下げが加速する | 2度目の割れでも、安値は土曜の7万9,263ドルを割っていない | ×(現時点では) |
| ETFから資金が逃げている | 週間では約3億100万ドルの流入、ただし週後半は流出 | △ |
| 買い持ちの投げ売りが続く | 24日に8億ドル超が清算済み、借金の買いは整理が進んだ | × |
| 引き締め局面でリスク資産に逆風 | FRBは9月に利上げ、12月の追加利上げも有力視 | ○ |
| 売り手は個人、大口は静観 | 個人の入金は6カ月ぶり高水準、大口の入金は減少 | ○(通説の補強ではなく、底堅さの根拠) |
評決:崩落説は6割の確率で外れる
本誌の評決はこうだ。「8万ドル割れは崩落の始まり」という通説は、今後2週間(11月6日ごろまで)で見て60%の確率で外れる。基本シナリオは7万8,000〜8万4,000ドルのもみ合いで、確率は50%とみる。上抜けて8万4,000ドルを超える確率は10%。7万9,263ドルを明確に割り、ストラテジーの取得価格7万5,446ドル近辺まで下げる確率は40%とみる。
40%という下落の確率は、決して小さくない。理由は日程にある。ロビンフッドは27日(米国時間)の取引終了後に決算を発表する。FOMCの声明は日本時間29日午前3時に出る。コインベースとストラテジーは29日(米国時間)の取引終了後に決算を発表し、日本時間では30日の朝になる。金利と業績の材料が4日間に集中する。
再審条件:評決を覆すデータ
- 日足の終値で7万9,000ドルを割る:2度止まった水準の下抜けで、本誌は評決を撤回し、通説側に立つ。
- ETFの流出が3日以上続く:週間で流入に転じた先週の流れが一度きりだったことになる。
- FOMCが利上げの前倒しを示唆する:12月を待たない引き締めは、リスク資産全体の前提を変える。
- 逆に8万1,400ドルを日足で回復する:10月のレンジに戻り、二番底の形が確定に近づく。
イーサリアムは同じ時刻に2,299ドルで、24時間で2.84%下げた。ビットコインより下げが大きい。リスクを減らす動きが、値動きの大きい銘柄から先に出ていることを示す。円建ての投資家にとっては、ドル円の動きも損益に効く点を付け加えておく。
主な参照
- 価格・最高値・日中の安値/CoinGecko
- 24日の急落と清算額/The Block、CoinDesk
- 米現物ETFの資金流出入/Decrypt
- 取引所への入金(クリプトクアント)/BeInCrypto
- ストラテジーの買い増し(10月19日の8-K)/米証券取引委員会
- 決算日程/ロビンフッド、コインベース
- FOMC日程/米連邦準備制度理事会
データ基準日:2026年10月26日11時42分(日本時間)。ビットコインとイーサリアムの価格はCoinGeckoの取引中の値で、24時間の高値・安値は日本時間11時41分までの値。24日の安値はCoinGeckoの4時間足とザ・ブロックの報道による。暗号資産は24時間取引のため終値の概念はなく、「日足の終値」は協定世界時0時の値を指す。ETFの資金流出入はディクリプトの集計(米国時間ベース)。クリプトクアントの入金データは複数メディアの報道によるもので、本誌は原データを確認していない。週明けの一部報道にある清算額の数字は確認できず、採用しなかった。評決とシナリオの確率は本誌の判断で、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















