欧州中央銀行(ECB)は今週29日(木)の理事会で金利を据え置き、12月に利上げする――エコノミストの大半がそう見ている。利上げを予告された通貨は、本来なら買われやすい。それでもユーロドルは10月に入ってから、ECBの参照レートで1.1177〜1.1298ドルという狭い箱から出られずにいる。本記事は、この「利上げ予告でも上がらない」理由を図で分解し、今週の米連邦公開市場委員会(FOMC)とECBを越えた先の短期・中期の見通しを示す。
前回のユーロドル見通し(仏格下げ回避)以降に新しく加わったのは、ECBの今週の判断に関するロイター調査と、23日のユーロ圏PMI(購買担当者景気指数)の下振れ、そして週明けのアジア時間の値動きである。まず下の1枚を見てほしい。
結論の図:8月の1.17ドルから、10月は1.12ドルの箱へ
ユーロドルのECB参照レート(2026年8月3日〜10月23日)
読み方:8月21日の天井から下げ、10月は1.12ドル前後の狭い範囲で横ばいが続く。点線は10月の値幅(参照レートで1.1177〜1.1298ドル)。出所:欧州中央銀行の参照レート(Frankfurter経由)。終値ではない。
ECBの参照レートで見ると、ユーロドルは8月21日の1.1699ドルを天井に下げ続け、10月7日に1.1177ドルを付けた。以降の12営業日は1.1181〜1.1253ドルの範囲に収まっている。23日の参照レートは1.1193ドルで、25日・50日・75日の移動平均(1.1275ドル、1.1440ドル、1.1449ドル)をすべて下回る。下向きの流れの中で、底値圏の横ばいが続いている形だ。
なお参照レートはECBが中欧時間14時15分ごろに公表する値で、市場の終値ではない。23日(金)のニューヨーク市場の終値は情報源によって1.1202〜1.1204ドルで、本記事では1.1203ドルを「金曜終値」として使う。週明け26日は、FXStreetが日本時間10時26分に「ユーロは1.1200ドルの上で小高い」と伝えた。
なぜ利上げ予告でも上がらないのか――金利差は動かない
ユーロ圏と米国、利上げの理由を比べる
読み方:ユーロ圏の物価を押し上げているのはエネルギーで、コアは2.5%にとどまる。米欧とも12月の利上げが有力視されているため、政策金利の差(1.25〜1.50%)は縮みにくい。出所:欧州中央銀行、米連邦準備制度理事会、ユーロスタット。
ユーロ高の材料とされる「ECBの12月利上げ」は、ロイターの調査で73人中64人が予想する本命シナリオだ(今週の据え置き予想は73人中70人)。ところが米国も同じ方向を向いている。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月に0.25%利上げして政策金利を3.75〜4.00%とし、12月の追加利上げも有力視されている。両方が同じ12月に同じ幅で上げれば、ECBの預金金利2.50%との差(1.25〜1.50%)は変わらない。為替を動かすのは金利の水準ではなく、金利差の変化である。
もう一つの弱点は、ユーロ圏の利上げ理由が「景気の強さ」ではない点だ。9月のユーロ圏消費者物価(HICP)は前年比3.8%と8月の3.2%から加速したが、けん引役はエネルギーの18.8%で、食品とエネルギーを除くコア指数は2.5%にとどまる。一方で23日の10月PMI総合指数は51.9と予想の52.7を下回り、6月以来の低さだった。フランスは再び50を割った。原油高が物価を押し上げ、景気を冷やす。こうした状況で受け身に利上げする中銀の通貨は、強くなりにくい。
今週の日程――日本時間で並べる
今週のユーロドル関連日程(日本時間)
読み方:山場は29日(木)。米国は夏時間、欧州は25日に冬時間へ移ったため、ECBの発表は日本時間22時15分になる。出所:各中銀とifo研究所の公表日程。
山場は29日(木)である。午前3時にFOMCの声明が出て、同じ日の22時15分にECBが金利を発表する。米国はまだ夏時間で、欧州は25日に冬時間へ移ったため、ECBの発表は先週までより1時間遅い22時15分になる点に注意したい。FOMCは今回、経済見通し(SEP)を出さない。そのため声明の文言と議長会見で、12月利上げをどこまで示唆するかが焦点になる。
ECBについては、今回は据え置きがほぼ確実視されている。市場が見るのはラガルド総裁の会見で、12月の利上げをどれだけはっきり予告するかだ。10月のHICP速報は11月4日で、今週は出ない。各中銀の詳しい並びは来週の中銀番付でもまとめている。
注目の水準――金曜終値からの距離
注目水準と金曜終値1.1203ドルからの距離(pips)
読み方:上の節目までは97pips、下の節目までは26pipsしかない。箱の下限に近い位置で山場の週を迎える。1pip=0.0001ドル。出所:ECB参照レートから本誌計算、FOREX.com。
下値の目安は二つある。一つは10月の安値圏1.1177〜1.1180ドルで、参照レートの月内安値と、FOREX.comが挙げる支持線がほぼ重なる。ここを日足の終値で割り込むと、次の目安は同社が挙げる1.1113ドルまで空く。上値は1.1250ドルが最初の抵抗で、その先には25日移動平均の1.1275ドルと1.1300ドルが続く。1.1300ドルは10月1日の参照レート1.1298ドル、つまり月初の水準でもある。
上下の距離を比べると、下の節目(1.1177ドル)までは26pips(1pip=0.0001ドル)しかない。上の節目1.1300ドルまでは97pipsある。箱の下限に近い位置で山場の週を迎えるため、悪材料には下抜けの形で反応しやすい。
シナリオ:短期(2週間)と中期(年末)
| シナリオ | 確率(本誌) | 想定レンジ | きっかけ |
|---|---|---|---|
| 基本:箱の中で往復 | 50% | 1.1180〜1.1300ドル | FOMCもECBも12月利上げを示唆し、金利差は変わらない |
| 弱気:下抜け | 35% | 1.1113ドルを試す | FOMCが利上げ前倒しを示唆、またはフランス情勢の悪化 |
| 強気:上抜け | 15% | 1.1300〜1.1350ドル | ラガルド総裁が連続利上げを示唆し、米指標は鈍化 |
本誌は短期でやや弱気に傾く。根拠は三つある。金利差が縮む見込みが薄いこと、物価高の中身が景気を冷やすエネルギー主導であること、そして相場が箱の下限に近いことだ。逆に、この見方が崩れる条件ははっきりしている。日足の終値で1.1300ドルを上回れば、弱気の見方は撤回する。月初の水準を回復したことになり、25日移動平均も上抜けるためである。
中期(年末)は1.10〜1.14ドルのレンジ、中心は1.12ドル前後とみる。三菱UFJ銀行(MUFG)も年末1.12ドル、2027年1〜3月期1.14ドルと予想しており、ECBが12月と2027年1〜3月期に利上げして預金金利を3.00%にする道筋を描く。同行は基本シナリオ(確率45%)を1.08〜1.14ドルとし、信認危機シナリオ(15%)では1.02〜1.10ドルまでの下落もありうるとしている。本誌がユーロの反発を見込むのは、米国の利上げが止まる兆しが見えてからだ。それは早くても12月のFOMC以降になる。
個人投資家向けチェックリスト
| 確認するもの | 日時(日本時間) | ユーロ安に傾く結果 | ユーロ高に傾く結果 |
|---|---|---|---|
| 独Ifo企業景況感(10月) | 26日(月)18時30分 | 前月から悪化 | 改善 |
| FOMC声明・議長会見 | 29日(木)3時/3時30分 | 12月利上げを強く示唆 | 利上げ休止を示唆 |
| ECB政策金利・ラガルド会見 | 29日(木)22時15分/22時45分 | 12月利上げに慎重 | 12月と来年の連続利上げを示唆 |
| 仏10年国債と独国債の利回り差 | 連日 | 180bpを超えて拡大 | 150bp台へ縮小 |
| ユーロ圏HICP速報(10月) | 11月4日(水) | コアが2.5%以下 | コアが加速 |
フランス国債の不安がどこまで為替に響くかは、仏国債5%台を2011年と比べた記事で詳しく扱った。ユーロドルを取引する業者の選び方やスプレッドの基礎は、本誌のFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 理事会日程/欧州中央銀行、政策金利/欧州中央銀行
- FOMC日程/米連邦準備制度理事会
- 9月のユーロ圏HICP確報/ユーロスタット
- Ifo企業景況感の公表日程/ifo研究所
- カナダ銀行の発表日程/カナダ銀行
- ECBに関するロイター調査/ユーロネクスト(ロイター配信)
- 10月のユーロ圏PMI速報/FXStreet
- テクニカル水準/FOREX.com
- MUFGの予想/investingLive
- ECB参照レートの日次データ/Frankfurter(欧州中央銀行の公表値)
- 金曜終値/Investomine
データ基準日:2026年10月26日正午(日本時間)。ユーロドルの水準と移動平均は、ECBが中欧時間14時15分ごろに公表する参照レート(10月23日まで)で計算した。参照レートは終値ではない。「金曜終値」の1.1203ドルは23日のニューヨーク市場の引け値で、情報源により1.1202〜1.1204ドルの差がある。週明けの値動きはFXStreetの報道(日本時間26日10時26分)による。本誌は今回、リアルタイムの気配値を自前で取得できていない。12月の米利上げ予想は各種報道で示された見方で、市場の織り込み度合いは本誌で確認していない。シナリオの確率と撤退線は本誌の判断で、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















