来週の番付を発表する。東の横綱はカナダ銀行(中央銀行)だ。10月28日の会合で利上げに踏み切る確率を、金利スワップ市場は75%と織り込んでいる(10月19〜20日時点)。西の横綱は日銀である。10月30日の利上げ確率はわずか2%だが、12月までの利上げは80%織り込まれており、その「予告」が出るかどうかで円が動く。そして番付の最下位、序二段に置いたのは欧州中央銀行(ECB)だ。据え置きがほぼ確実で、波乱の余地が最も小さい。
10月27日から30日までの4日間に、米連邦準備制度理事会(FRB)、カナダ銀行、ECB、日銀の4つの中央銀行が相次いで政策を決める。同じ週にはマイクロソフト、アルファベット、アマゾン、インテルの決算、米国の7〜9月期国内総生産(GDP)と個人消費支出(PCE)物価指数、英国の予算案、東京都区部の消費者物価指数(CPI)まで重なる。1週間でこれほど材料が集中するのは珍しい。番付の物差しは一つ、「市場の織り込みが外れたときの値動きの大きさ」である。確率が高く織り込まれているものほど順位は下がる。
来週の中央銀行、市場が織り込む「利上げ」の確率
読み方:カナダ銀行だけが「利上げ優勢」で、残る3行は据え置きが本線である。日銀は10月ではなく12月までの80%が実質的な勝負どころ。出所:カナダ銀行はブルームバーグ集計の翌日物金利スワップ(グローブ・アンド・メール紙、10月19〜20日)、FRBはCME FedWatch(10月20〜22日の報道、残りは据え置き)、ECBはECBウォッチ、日銀はBBHの集計(10月23日)。
来週の番付表——織り込みと波乱度
| 番付 | イベント | 日時(日本時間) | 市場の織り込み | 筆者の見立て | 波乱度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | カナダ銀行の政策決定 | 10月28日(水)22時45分 | 利上げ75% | 利上げ70% | ◎ |
| 西の横綱 | 日銀の決定と展望リポート | 10月30日(金)昼ごろ | 10月利上げ2%、12月まで80% | 据え置き95%、12月の示唆が焦点 | ◎ |
| 東の大関 | マイクロソフト決算 | 10月29日(木)早朝 | — | クラウドの伸びが焦点 | ○ |
| 西の大関 | FOMC(米連邦公開市場委員会) | 10月29日(木)3時 | 据え置き8割強 | 据え置き85% | ○ |
| 東の関脇 | アマゾン・インテル決算 | 10月30日(金)早朝 | — | インテルは値幅大 | ○ |
| 西の関脇 | 米GDP・PCE物価指数 | 10月29日(木)夜 | — | 物価がFRBの12月を左右 | △ |
| 小結 | 英国の予算案 | 10月28日(水) | — | ポンドの下振れ要因 | △ |
| 序二段 | ECBの政策決定 | 10月29日(木)22時15分 | 据え置き9割超 | 据え置き95% | × |
表の読み方は単純だ。織り込みが50%に近いほど、どちらに転んでも値が動く。織り込みが95%を超えると、結果がその通りなら何も起きない。カナダ銀行の75%は「ほぼ決まり」ではなく、4回に1回は外れる数字である。日銀は10月の結果そのものではなく、12月の80%を補強するか崩すかで勝敗が決まる。
東の横綱・カナダ銀行——◎
政策金利は2.25%。2025年10月29日に2.50%から引き下げて以来、7会合連続で据え置いている。今回、市場は2.50%への利上げを75%織り込んだ。1週間前は約3割だったと報じられており、短期間で一気に土俵の景色が変わった。
引き金は物価だ。カナダ統計局が10月19日に発表した9月のCPIは前年同月比3.1%上昇で、8月の3.0%から加速した。ガソリンが27.8%上がっている。ただしガソリンを除くと2.2%で、8月の2.4%から鈍った。つまり物価を押し上げているのはエネルギーで、それ以外はむしろ落ち着いている。強気派と慎重派の議論はここで割れる。
デジャルダン証券のロイス・メンデス氏は「中央銀行はもはやエネルギー高の物価への影響を見過ごすことはできない」と書き、利上げ予想に転じた。モントリオール銀行のベンジャミン・ライツェス氏も利上げを予想しつつ、「利上げの根拠は盤石ではない」と認めている。筆者の見立ては利上げ70%。市場よりやや低く置いたのは、ガソリン抜きの物価が鈍っているからだ。据え置きなら、織り込みの75%が一気にはげ落ちる。同じ日に新しい金融政策報告も出るため、物価見通しの上方修正幅も見どころになる。ドルカナダの水準感はこちらで扱った。
西の横綱・日銀——◎(10月ではなく12月の取組)
日本の読者にとっては、こちらが本割の一番である。日銀は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げた。採決は7対2だった。10月23日に総務省が発表した9月の全国CPIは、生鮮食品を除く総合が前年同月比2.1%上昇、生鮮食品とエネルギーを除く総合が2.4%上昇だった。物価目標の2%を上回っている。
それでも、10月30日の利上げを市場はほぼ見込んでいない。米投資銀行BBHの集計では、金利スワップが織り込む10月の0.25%利上げは2%、12月18日までの利上げは80%である。9月に上げたばかりで2会合連続は急ぎすぎ、という見方が大勢だ。
だから勝負どころは決定文ではなく、同時に出る展望リポートと植田和男総裁の会見になる。物価見通しが上方修正され、「12月」を連想させる言葉が出れば円高方向へ、慎重な表現が並べば円安方向へ振れやすい。今週、円は安全資産として買われ、ドル円は158円台から156円台へ下げた(日本時間23日19時40分時点で156.7円前後、取引時間中)。日銀の会見がこの円高に追い風を足すのか、逆風になるのかが来週最大の分かれ目である。判定は◎。ドル円の水準はこの記事、銀行株への影響はこの記事で整理した。
東の大関・マイクロソフト——○
マイクロソフトは10月28日(米国時間)の引け後に7〜9月期決算を発表し、説明会は米東部時間17時30分、日本時間29日6時30分に始まる。株探が伝える日程では、アルファベットも同じ28日に決算を出す(アルファベット自身の日程発表は本稿執筆時点で確認できていない)。
今週のAI株安の出発点は、メタ・プラットフォームズの決算だった。売上高は予想を上回ったのに、AI投資にかかる費用の大きさが嫌われて株価は急落した。同じ物差しがマイクロソフトとアルファベットにも当てられる。クラウド事業の伸びが設備投資の重さに見合うかどうかだ。日本では、東京エレクトロンやアドバンテストといった半導体関連の値がさ株が、米大手の設備投資計画に連動しやすい。大関に置いたのは、この1社の結果が日経平均の方向まで左右しうるからである。過去の決算翌日の値幅は米テック5社の決算番付にまとめた。
西の大関・FOMC——○
FRBは9月16日に政策金利を0.25%引き上げ、誘導目標を3.75〜4.00%とした。採決は12対0だった。今回の10月27〜28日会合について、CME FedWatchが示す据え置きの確率は8割強と報じられている(10月20〜22日)。一方、12月8〜9日会合までの利上げは依然7割台で織り込まれているという。
据え置きはほぼ既定路線で、結果そのものの波乱度は小さい。問題は声明と会見が12月の利上げにどこまで含みを残すかだ。米10年債利回りは22日、AI株安を受けた安全資産への買いで5%を割り、4.95%で引けた。この債券高を声明が追認すれば日米金利差は縮み、円高が一段と進みやすい。判定は○。結果発表は日本時間29日午前3時で、日本の投資家は寝ている間に勝負がつく一番である。
関脇・小結——インテル、米物価、英国予算
インテルは10月29日(米国時間)の引け後に決算を発表する。説明会は日本時間30日6時で、アマゾンも同じ時刻に説明会を開く。インテル株は22日に85.49ドルで引け、6月の高値から4割近く安い。大きく下げてから迎える決算は、結果がどちらに出ても値幅が大きくなりやすい。過去の傾向はインテル決算プレビューに書いた。
西の関脇は29日の米GDPとPCE物価指数だ。FOMCの翌日に出るため、FRBの判断そのものは変えない。だが12月の利上げ確率は、この物価の数字で動く。小結には英国の予算案(28日)を置いた。英HSBCは予算案がポンドの下振れ要因になりうるとみている。英国の9月のCPIは3.5%上昇と高く、イングランド銀行は11月5日の会合で利上げに動くとの見方が多い。財政の中身次第で、その見方が揺らぐ。
序二段・ECB——×
ECBの中銀預金金利は9月16日から2.50%。10月29日の会合では据え置きが9割超の確率で見込まれている。為替情報サイトFXStreetの会合予想は、ユーロ圏の9月の物価が3.7%上昇と上振れたと伝えつつ、エネルギー以外への波及は限られているとして、次の利上げは新しい経済見通しが出る12月とみている。結果が予想どおりなら、相場はほぼ反応しない。判定は×。ただしユーロはフランスの財政不安を抱えており、ラガルド総裁の会見は日本時間29日22時45分から始まる。ユーロ円とユーロドルの見方はこの記事を参照してほしい。
殊勲賞・円——今週いちばん強かった
今週の殊勲賞は円に贈る。ドル円は今週初めの158円台から156円台へ、ユーロ円は177円台から175.5円前後へ下げた(いずれも日本時間23日19時40分時点、取引時間中)。ユーロ円の175.19円は過去1年の安値圏である。AI株の急落で安全資産としての円が買われ、米長期金利の急低下が日米金利差を縮めた。2つの追い風が同時に吹いた週だった。
来週の4中銀は、この円高の続き方を決める。FRBが12月の利上げに慎重な姿勢を見せ、日銀が12月の利上げを示唆すれば、日米双方から金利差が縮む。円高が続く組み合わせはこれだ。逆にFRBがタカ派的で、日銀が「急がない」なら円は売り戻されやすい。筆者は前者の確率をやや高く、55%とみる。
来場所の取組表(日本時間)
| 日付 | 海外 | 国内 |
|---|---|---|
| 10月27日(火) | FOMC初日、米消費者信頼感指数、シーゲイト決算 | 企業向けサービス価格指数、信越化学・キヤノン決算 |
| 10月28日(水) | 英国予算案、22時45分カナダ銀行、マイクロソフト・アルファベット決算(米国時間の引け後) | アドバンテスト・日立・NEC決算 |
| 10月29日(木) | 3時FOMC結果、米GDP・PCE物価指数、22時15分ECB、アマゾン・インテル・サンディスク決算(米国時間の引け後) | 日銀会合初日、2年債入札、イビデン・キーエンス決算 |
| 10月30日(金) | — | 東京都区部CPI、日銀決定と展望リポート、植田総裁会見、東京エレクトロン・キオクシア・村田製作所決算 |
| 11月3日(火) | 米中間選挙 | 文化の日で休場 |
株探によれば、来週の日経平均の予想レンジは6万1,000〜6万4,800円前後である。23日の終値は6万2,693円16銭。国内の半導体関連の決算日程は半導体株決算プレビューに詳しい。
主な参照
- FOMCの日程と9月16日の決定(3.75〜4.00%、12対0)/FRB、FRB声明
- FOMCの織り込み(据え置き8割強)/CME FedWatch、ソウル経済新聞
- 日銀の会合日程と9月18日の決定(1.25%、7対2)/日本銀行、日本銀行(声明)
- 日銀の織り込み(10月2%、12月80%)/FXStreet(BBH)
- 9月の全国CPI/総務省統計局
- カナダ銀行の政策金利と日程/カナダ銀行、カナダ銀行(日程)
- カナダ銀行の織り込みとエコノミストの発言/グローブ・アンド・メール
- カナダの9月CPI/カナダ統計局
- ECBの会合予想とユーロ圏の物価/FXStreet
- ECBの日程と政策金利/ECB、ECB(政策金利)、織り込み/ECBウォッチ
- 英国の9月CPI/英国家統計局、イングランド銀行の日程/イングランド銀行、予算案の日程/英財務省
- 決算日程/インテル、アマゾン、マイクロソフト(発表文)
- 来週の国内外の日程と日経平均の予想レンジ/株探(MINKABU PRESS)
- 為替・株価・債券利回り/Yahoo Finance
データ基準日:2026年10月23日。為替は日本時間23日19時40分時点の取引時間中の値で、終値ではない。日経平均は23日の終値、米国の株価と米10年債利回りは22日の終値である。市場の織り込み確率は集計元と時点によって異なり、日々変わる。FOMCの確率は報道ベースの数値で、本誌はCMEの画面を直接確認できていない。アルファベットの決算日は株探の報道によるもので、本稿執筆時点で同社の公式発表は確認できていない。ユーロ圏の9月の物価上昇率はFXStreetの報道によるもので、欧州連合統計局の公表値は本誌で確認できていない。英国予算案の発表時刻は確認できていない。日銀の決定公表は会合終了後で、時刻は決まっていない。番付、判定、筆者の見立ての確率は本誌の判断であり、将来の値動きを保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















