来週から始まる米巨大テック決算の番付を発表する。東の横綱はマイクロソフト、西の横綱はアマゾン。大関にはインテルとアルファベットが並び、小結はアップルとした。並べる基準は二つだけだ。日本の投資家の財布にどれだけ響くか、そしてオプション市場の想定を超える「波乱」がどれだけ起きやすいか。業績予想を当てる番付ではない。株価がどれだけ動くかを格付けする番付である。
5社の発表は10月28日から11月2日(米国時間)に集中し、いずれも米国の取引終了後に出る。日本時間ではすべて早朝で、東京市場が開く前に結果が届く。しかも同じ週には米連邦公開市場委員会(FOMC、10月27〜28日)と日銀の金融政策決定会合(10月29〜30日)が重なる。日米の金融政策と巨大テックの決算が、3営業日のうちに続けて出てくる週になる。
オプション市場はすでに値段を付けている。本誌が10月21日の米国市場の取引時間中(米東部時間10時17分)のオプション価格から、決算日1日分に相当する変動幅を推計したところ、最大はインテルの上下8.6%、最小はアップルの上下3.5%だった。テスラとメタ、ネットフリックスの決算はすでにテスラのプレビューやメタのプレビューで扱ったため、本稿では外した。
オプションが織り込む決算1日分の変動幅(上下、%)
読み方:棒が長いほど、オプション市場は決算翌日に大きく動くと見ている。インテルが最大、アップルが最小。出所:ヤフー・ファイナンスのオプション価格(2026年10月21日、米東部時間10時17分、取引時間中の気配値の中値)から本誌が推計。決算をまたぐ満期と決算前の満期の価格差から、平日の値動き分を差し引いた。
番付表——5社の決算日程と織り込み
| 番付 | 銘柄 | 発表(米国時間) | 電話会見(日本時間) | 市場予想 1株利益/売上高 | 想定変動(決算1日分) | 過去8回の平均変動 | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | マイクロソフト(MSFT) | 10月28日(水)引け後 | 10月29日 6時30分 | 4.72ドル/907.2億ドル | ±4.7% | 7.0% | ◎ |
| 西の横綱 | アマゾン(AMZN) | 10月29日(木)引け後 | 10月30日 6時00分 | 1.96ドル/2,022.0億ドル | ±6.4% | 6.2% | ○ |
| 東の大関 | インテル(INTC) | 10月29日(木)引け後 | 10月30日 6時00分 | 0.40ドル/164.7億ドル | ±8.6% | 9.3% | △ |
| 西の大関 | アルファベット(GOOGL) | 10月28日(水)引け後 | 10月29日 5時30分 | 3.00ドル/1,278.5億ドル | ±5.2% | 4.1% | △ |
| 小結 | アップル(AAPL) | 11月2日(月)引け後 | 11月3日 7時00分 | 1.98ドル/1,133.6億ドル | ±3.5% | 2.5% | △ |
想定変動の出し方を説明しておく。決算日をまたぐ10月30日満期(アップルは11月6日満期)の権利行使価格が株価に最も近いコールとプットを足した値段は、満期までに株価がどれだけ動くかの目安になる。ただしそこには決算と関係のない平日の値動きも含まれる。そこで決算前に満期を迎える10月23日満期(アップルは10月30日満期)の値段から平日1日分の変動を割り出し、それを差し引いて決算日1日分を取り出した。満期までの全期間で見た値幅は、マイクロソフト5.5%、アルファベット6.4%、アマゾン7.3%、インテル11.3%、アップル5.2%である。
波乱の確率をどう出したか
判定の根拠は「想定を超えて動く確率」の本誌推計である。手順は単純だ。まず過去8回の決算で、翌日の値動きが今回の想定変動を超えた回数を数える。次に、その割合をそのまま信じず、40%という基準値と半々で混ぜる。オプションの値段には、決算をまたぐリスクへの保険料が上乗せされやすいと本誌はみている。そのため、何も手掛かりがなければ「想定を超える確率は半分より少し低い」と置く。8回という少ない標本に振り回されないための重しでもある。
| 銘柄 | 想定変動 | 過去8回で想定を超えた回数 | 本誌推計:想定を超える確率 | 前回決算の翌日 | 方向の見立て |
|---|---|---|---|---|---|
| マイクロソフト | ±4.7% | 5回 | 51% | +15.51% | やや上 |
| アマゾン | ±6.4% | 3回 | 39% | +15.32% | 中立 |
| インテル | ±8.6% | 2回 | 32% | −7.89% | やや下 |
| アルファベット | ±5.2% | 3回 | 39% | −7.13% | 中立 |
| アップル | ±3.5% | 2回 | 32% | −7.35% | やや下 |
東の横綱・マイクロソフト——◎
横綱に据えた理由は、オプションが同社を「おとなしすぎる」と見ている点にある。想定変動は±4.7%。だが過去8回の平均変動は7.0%で、想定を超えたのは8回中5回だった。2026年1月は翌日に9.99%安、7月は15.51%高。土俵際で大きく振れる力士だが、市場はその癖を値段に十分入れていない。本誌推計で想定を超える確率は51%、5社で最も高い。
見どころはクラウドのアジュールである。4〜6月期は43%増で、年間売上高が初めて1,000億ドルを超えた。会社側は7〜9月期のアジュール成長率を為替の影響を除いて約45%と示している。受注残に当たる商業部門の残存履行義務は6,780億ドルで、前年同期の1.84倍に膨らんだ。売上高の会社見通しは898.5億〜909.5億ドルで、市場予想の907.2億ドルは上限に近い。予想が上限付近に寄っているぶん、上振れの余地は小さい。1株利益は直近4四半期すべてで予想を上回ったが、株価の勝ち負けを決めてきたのはアジュールの伸びと設備投資の額だった。
方向の見立ては「やや上」とする。10月20日の終値531.87ドルは52週高値553.72ドルの3.9%下にあり、期待は過熱していない。この見方を捨てる条件は一つ。アジュール成長率が会社見通しの45%を下回ることだ。そうなれば想定変動の下限、およそ507ドルを割り込む展開を考える。
西の横綱・アマゾン——○
巨大テック4社の中で、オプションが最も大きな値動きを見込んでいるのがアマゾンである(±6.4%)。前回7月は翌日に15.32%高、2025年10月も9.58%高と、決算で一気に番付を上げてきた。一方で過去8回のうち想定を超えたのは3回にとどまる。想定変動はすでに十分に大きく、確率は39%と見る。
注意したいのは見かけの数字である。会社見通しは売上高1,970億〜2,020億ドル、前年同期比9〜12%増にとどまる。ただしこれはプライムデーが今年は4〜6月期に移った影響で、会社はそれがなければ増収率は約4ポイント高かったと説明している。営業利益の見通しは225億〜265億ドルで、前年同期の174億ドルを大きく上回る。1株利益も要注意だ。4〜6月期の1株利益5.75ドルは、アンソロピックなどへの投資の評価益を中心とする534億ドルの営業外収益で膨らんでいた。1株利益の予想比はあてにならない。見るべきは営業利益とクラウド部門AWSの伸びだ。AWSは4〜6月期に37%増の422億ドルだった。
日本から見た重みも大きい。決算翌朝の10月30日は日銀の決定会合の結論が出る日である。円相場と東京の半導体株が、同じ日に二つの材料を受け止めることになる。方向は中立。AWSの伸びが4〜6月期の37%を上回るかどうかが分かれ目になる。
東の大関・インテル——△
想定変動は5社で最大の±8.6%。過去8回の平均変動も9.3%と最も荒く、2026年4月は翌日に23.60%高、1月は17.03%安だった。ただし今回の想定はその荒さをかなり織り込んでいる。過去8回で想定を超えたのは2回で(2025年7月の8.53%安は僅差で届かなかった)、確率は32%と見る。判定は△だが、5社で最も荒れる力士であることに変わりはない。大関にとどめたのは、時価総額が約4,840億ドルと他の4社の5分の1以下で、指数への影響が限られるためだ。
気になるのは、予想のハードルの上がり方である。7〜9月期の1株利益予想は、90日前の0.27ドルから0.40ドルへ約46%引き上げられた。会社見通しの0.38ドルをすでに上回っている。売上高の会社見通しは158億〜168億ドルで、予想の164.7億ドルは中央値より上だ。前回7月は売上高が25%増の161億ドル、1株利益は市場予想(ヤフー・ファイナンス集計で0.22ドル)の約2倍の0.42ドルだったが、株価は翌日に7.89%下げた。好決算でも売られる地合いは変わっていない。10月20日の終値91.69ドルは52週高値142.35ドルから35.6%安い水準である。JPモルガンは10月19日に投資判断を「中立」へ引き上げたが、目標株価は85ドルで、現値より低い。方向は「やや下」とする。
日本との縁もある。ソフトバンクグループは2025年8月、インテル株を1株23ドルで20億ドル分引き受けると発表した。10月20日の終値はその約4倍に当たる。ソフトバンクグループが現在も同じ株数を保有しているかは、本稿では確認していない。
西の大関・アルファベット——△
想定変動は±5.2%で、過去8回の平均変動4.1%を上回る。過去8回で想定を超えたのは3回。オプションはすでに荒れる場所を見込んで値段を付けており、確率は39%にとどまる。判定を△としたのはこのためである。
中身は強い。4〜6月期のグーグル・クラウドは82%増の248億ドル、部門の営業利益は88億ドルだった。だが株価は決算翌日に7.13%下げた。四半期の設備投資は449億ドルに達し、フリーキャッシュフローは59億ドルの赤字に転じた。会社は2026年の設備投資見通しを1,950億〜2,050億ドルへ引き上げたと報じられている。1株利益の比較も当てにならない。4〜6月期の9.11ドルは、保有株式の評価益を中心とする980億ドルの営業外収益で膨らんでいた。今回も見るべきはクラウドの伸びと設備投資の額である。
10月20日の終値340.28ドルは52週高値408.61ドルを16.7%下回り、期待の剥落はある程度進んでいる。方向は中立とする。設備投資の見通しがさらに上がり、クラウドの伸びが80%を割れば、前回と同じ下げの型になる。
小結・アップル——△
時価総額は5社で最大の約4.97兆ドル(10月21日時点)。それでも想定変動は±3.5%と最小で、過去8回で想定を超えたのは2回だけだった。確率は32%。動きにくい力士だが、7月の決算では1株利益が予想を上回りながら翌日に7.35%下げた。番付を落とすときは大きく落ちる。
1株利益の予想は90日前の2.02ドルから1.98ドルへ約2%下がった。5社で予想が下がったのはアップルとアルファベットだけで、アルファベットは3.01ドルから3.00ドルへのほぼ横ばいだ。会社見通しは売上高の前年同期比9〜11%増で、市場予想の1,133.6億ドルはその上限に近い。4〜6月期の粗利益率50.1%には、関税還付による約2ポイントの上乗せが含まれていた。ループ・キャピタルは10月20日に投資判断を「ホールド(中立)」へ下げ、目標株価を370ドルから330ドルに引き下げた。10〜12月期のiPhone出荷予想を8,500万台から7,900万台へ減らしている。9月1日に就任したジョン・ターナス最高経営責任者(CEO)にとって初めての決算説明会になる。
日本の投資家には日程の癖がある。電話会見は日本時間11月3日の7時だが、この日は文化の日で東京市場は休みである。日本の関連株が反応するのは11月4日になり、その間に米国市場で1日分の値動きが先に出る。方向は「やや下」。10〜12月期の売上高見通しが市場の期待に届くかが焦点になる。
三賞——殊勲・敢闘・技能
- 殊勲賞・インテル:90日で1株利益予想を約46%押し上げさせた。これほど予想が動いた銘柄は5社にない。ただし予想が上がるほど、上回るための壁も高くなる。
- 敢闘賞・アマゾン:プライムデーの時期ずれで増収率が約4ポイント低く見える不利な条件でも、営業利益の見通しは前年同期比で最大5割強の増加を掲げた。
- 技能賞・マイクロソフト:過去8回の平均変動7.0%に対し、想定変動は±4.7%。時価総額1兆ドルを超える4社で、オプションの値段が過去の荒さより小さいのは同社だけである。
来場所の注目取組
| 日本時間 | イベント | 見どころ |
|---|---|---|
| 10月22日 早朝 | IBM決算(米国時間21日引け後) | 10月23日満期のオプションは±7%前後を織り込む |
| 10月29日 3時 | FOMCの結果発表 | 決算前夜の金利環境 |
| 10月29日 5時30分〜6時30分 | アルファベット、マイクロソフトの電話会見 | クラウドの伸びと設備投資 |
| 10月30日 6時 | アマゾン、インテルの電話会見 | AWSの伸び、インテルの粗利益率 |
| 10月30日 | 日銀の決定会合の結果と展望レポート | 円相場と東京市場が決算と同じ日に反応 |
| 11月3日 7時 | アップルの電話会見(東京は文化の日で休場) | 10〜12月期の見通し |
| 11月4日 早朝 | AMD決算(米国時間3日引け後) | 番付外。半導体株の締めくくり |
番付の結論をまとめる。波乱に最も近いのは、オプションが過去の荒さを値段に入れきっていないマイクロソフトだ。逆にアルファベットとアップルは、想定変動が過去の平均並みかそれ以上で、想定を超えて動く確率は低い。インテルは最も荒れるが、その荒れ方もすでに値段に入っている。日本の半導体株への波及は、国内半導体5社の決算プレビューとあわせて読んでほしい。今週のネットフリックス決算では、増益でも見通しの下方修正で売られた。今回の5社も、見るべきは見通しである。
主な参照
- 決算日程/マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、インテル、アップル、AMD
- 4〜6月期決算と見通し(米証券取引委員会への提出書類)/マイクロソフト、アルファベット、アマゾン、インテル、アップル
- マイクロソフトの7〜9月期の会社見通し(売上高、アジュール成長率)/マーケットビート
- アルファベットの2026年設備投資見通し/ザ・ネクスト・ウェブ
- アップルの7〜9月期の会社見通し/マックルーモアズ、ループ・キャピタルの格下げ/マックルーモアズ
- JPモルガンのインテル格上げ/マーケットビート、ソフトバンクグループのインテル出資/ソフトバンクグループ
- 市場予想、オプション価格、株価/ヤフー・ファイナンス、過去の決算日と週次の想定変動の照合/オプションスラム
- FOMCの日程/米連邦準備制度理事会、日銀の決定会合の日程/日本銀行
データ基準日:2026年10月21日。株価は10月20日の米国市場の終値。オプション価格と想定変動は10月21日の米国市場の取引時間中(米東部時間10時17分)の気配値の中値から本誌が推計したもので、終値ではなく、決算までに変わる。市場予想はヤフー・ファイナンスの10月21日時点の集計で、情報ベンダーにより差がある(マーケットビートではマイクロソフト4.71ドル、アルファベット3.03ドルなど)。マイクロソフトのアジュール見通し、アップルの売上高見通し、アルファベットの設備投資見通しは決算説明会での発言を報じた記事にもとづく。想定を超える確率と方向の見立ては本誌の推計・判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















