先週、1.43ドルの天井で3度はね返されたドルカナダは、今週に入ってあっさり1.41を割り込んだ。21日午後7時45分(日本時間)は1.4046カナダドル。1週間前の終値1.4217から1.2%のカナダドル高である。20日にはアルバータ州の住民投票が「残留」で終わり、カナダドルは一時1.4033まで買われた。9月22日以来の水準だ。筆者の見立ては、28日のカナダ銀行(中央銀行)の会合まで「戻り売り」。下の目標は1.39台前半、損切りは終値で1.4220超えに置く。
本誌は10月20日未明の記事で、カナダ銀行の利上げ確率が8割に達したのは先走りではないか、と問うた。そこから変わったのは二つ。アルバータの投票結果が出て政治の重しが外れたこと、そしてドルカナダが50日移動平均線の目前まで下げてきたことだ。以下、水準と需給の順に書く。
ドルカナダの水準の地図(カナダドル)
読み方:現在値のすぐ下に20日安値と50日線が重なる。ここを終値で割れると、200日線の1.3880まで目立った節目がない。損切りは14〜15日の終値の帯の上に置く。出所:Yahoo Financeの日足、移動平均は本誌計算。
テープ:1.43の三尊天井から一直線
値動きを順に追う。Yahoo Financeの日足で、ドルカナダの高値は10月5日が1.4293、9日が1.4297、14日が1.4299だった。14日の1.4299は2025年4月2日以来、約1年半ぶりの高値である。3度とも1.43の大台に届かず押し戻された。チャートの教科書が「トリプルトップ」と呼ぶ形だが、名前はどうでもいい。要は1.43で売りたい向きが3度とも勝った、ということだ。
14日の高値から21日の1.4046までの下げ幅は約250ポイント(0.0250カナダドル)、率にして1.8%。この間に起きたのは、カナダの利上げ観測の急浮上である。ロイターが伝えたLSEGのデータでは、市場が織り込む28日の利上げ確率は16日(金)の約30%から、19日に約80%へ跳ね上がった。週末をまたいで、相場の前提がひっくり返った格好だ。
需給:カナダドルを買わせた3つの材料
1. マックレム総裁の一言
火を付けたのはカナダ銀行のマックレム総裁だ。17日(土)、国際通貨基金(IMF)の会合が開かれていたバンコクで、インフレ見通しを引き上げる考えを示した。カナダの有力紙グローブ・アンド・メールによると、総裁は中東の紛争に「終わる兆しがない」と述べ、原油価格は7月時点の想定を「大きく上回っている」と語った。政策金利は2025年10月29日の利下げ以来2.25%で据え置かれている。
2. 9月CPIは見かけほど熱くない
カナダ統計局が19日に公表した9月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比3.1%上昇で、8月の3.0%から加速した。ただ、ロイター調査の予想3.2%は下回っている。中身を見ると、ガソリンが前年比27.8%上昇と全体を押し上げた一方、ガソリンを除くと2.2%で、8月の2.4%から鈍った。ここが筆者が「利上げ8割」を手放しでは信じない理由だ。インフレはガソリンの話で、物価全体に燃え広がってはいない。
3. アルバータの投票と金利差
19日のアルバータ州の住民投票は、州に残るか、分離を問う住民投票の法的手続きに入るかを問う、拘束力のない投票だった。ロイターとカナダのグローバル・ニュースは、選挙管理当局の集計をもとに残留が約76%と伝えた。確定値ではない。ロイターによると、市場関係者のチャンドラー氏(バノックバーン)は「市場から見て、これ以上ない結果だった」と評した。
ただし、相場を動かした主役は投票ではない。スコシアバンクのホルト氏はカナダドル高の主因を原油と利上げ観測に求めている。ロイターによると、カナダと米国の2年債の利回り差は今月前半の約160bpから146bpに縮んだ。米国の金利が高いままでも、カナダの金利が追いかけてくれば、米ドルを持つ理由は薄れる。投げたのは、1.43を背に米ドル買い・カナダドル売りを積んでいた向きだろう。
原油高でもカナダの実入りは削られている。WTI原油の期近物はYahoo Financeの集計で19日の清算値が1バレル103.66ドル、20日が101.79ドルだった。21日午後7時36分(日本時間)は100.04ドル近辺で、取引時間中の値である。一方、カナダ産重質油(WCS)のWTIに対する値引き幅は16日に27.00ドルと、前日の26.40ドルからさらに広がった(BOEレポート、ロイター配信)。WTIが高くても、カナダの生産者が受け取る値段はその分だけ伸びない。原油はカナダドルの追い風だが、見た目ほど強い風ではない。
水準の地図
上から順に書く。1.4293〜1.4299は3度の高値が並ぶ天井で、ここを終値で抜けたら筆者の見立ては完全に間違っていたことになる。その下の1.4200〜1.4220は14〜15日の終値が並ぶ帯で、損切りの置き場とする。1.4130は今週の戻りの節目だ。
下は1.4032が20日の安値。すぐ下の1.4005に50日移動平均線があり、1.40の大台と重なる。ここが今週最大の攻防点になる。割れれば次は200日移動平均線の1.3880まで目立った節目がない。移動平均と1週間・1カ月の変化率は、Yahoo Financeの日足終値から本誌が計算した。
筆者の見立て:28日までは戻り売り、ただし利上げ後の「事実売り」に警戒
結論を言い切る。28日の会合までの1週間は、ドルカナダの戻りを売る。1.4100〜1.4130への戻りが売り場で、目標は1.40割れから1.39台前半。根拠は3つある。第一に、1.43の天井が3度確認され、上値を買う理由が消えた。第二に、市場の利上げ織り込みはまだ揺れている。ロイターの集計で約80%、ブルームバーグのデータを引いたグローブ・アンド・メールの報道では約75%で、会合が近づき確率が100%に寄れば、その分だけカナダドルの買いが入る。第三に、米国側の材料が乏しい。米商務省経済分析局(BEA)の発表予定では、28日まで主要な統計がない。
確率で言えば、28日までに50日線と1.40を割り込み1.39台に入る展開を55%、1.40〜1.4130で揉み合う展開を30%、1.4220を超えて天井圏に戻る展開を15%とみる。1カ月の値幅は1.38〜1.43を想定する。
ただし、会合の当日は話が別だ。8割織り込んだ利上げが実際に来ても、カナダドルがさらに買われる保証はない。「噂で買って事実で売る」は相場の古い知恵で、ガソリンを除けば物価が鈍っている以上、カナダ銀行が「1回で様子を見る」と語れば、カナダドルは売り戻されやすい。ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)も利上げの織り込みは行き過ぎだと指摘している。会合をまたいでポジションを持つなら、量は半分に落とす。
逆になったら
損切りは終値で1.4220超え。ここを抜けるのは、利上げ観測がしぼむか、米国の金利が改めて上がるかのどちらかが起きたときだ。そのときは三尊天井の1.43を再び試す展開を覚悟し、売りは手じまう。なお、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に政策金利を3.75〜4.00%へ引き上げた。27〜28日の会合では据え置きが8割強織り込まれているとメディアは伝えている(CMEフェドウオッチの引用)。FRBの判断が利上げに傾くようなら、ドルカナダの下げは止まる。
監視リスト
| 日時(日本時間) | 材料 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 毎日 | WTI原油とWCSの値引き幅 | 100ドル割れが定着すれば、カナダドルの追い風が弱まる |
| 今週 | ドルカナダの1.4005(50日線) | 終値で割れるかどうか |
| 10月28日 22時45分 | カナダ銀行の政策金利発表と金融政策報告 | 利上げの有無と、追加利上げへの言及 |
| 10月29日 3時00分 | FOMCの結果発表 | 据え置きの場合、12月の利上げに含みを持たせるか |
| 10月29日 21時30分 | 米7〜9月期GDP速報値、9月の個人消費支出(PCE) | 米金利の次の方向 |
| 11月16日 | カナダ10月CPI | ガソリンを除く物価の鈍化が続くか |
これまでの経緯は利上げ確率8割を問うた記事と1.43からの反落を伝えた記事にある。原油の地政学リスクはこちらで扱った。FX業者の選び方などの基礎はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- ドルカナダの日足(高値・安値・終値、移動平均の計算元)/Yahoo Finance
- 政策金利2.25%と次回発表日(10月28日、金融政策報告)/カナダ銀行
- 9月CPI(3.1%、ガソリン27.8%、ガソリン除く2.2%)/カナダ統計局
- マックレム総裁の発言、OISが示す利上げ確率約75%、エコノミストの予想/グローブ・アンド・メール
- アルバータ住民投票後のカナダドル高、利上げ確率約80%、2年債の利回り差、チャンドラー氏の発言/ロイター(キットコ掲載)
- アルバータ住民投票の結果とホルト氏の見方/グローバル・ニュース
- WCSの値引き幅(11月渡し、10月16日)/BOEレポート(ロイター配信)
- FRBの政策金利(9月16日)とFOMCの日程/米連邦準備制度理事会
- 米経済統計の発表予定(GDP・PCEは10月29日)/米商務省経済分析局
データ基準日:2026年10月21日午後7時45分(日本時間)。ドルカナダの現在値は取引時間中の気配値で、終値ではない。1週間前の値(1.4217)と移動平均は、Yahoo Financeの日足の終値(スナップショット値で、公式の終値ではない)から本誌が計算した。WTI原油の19日と20日の値は清算値、21日の値は取引時間中の値である。利上げ確率は報道時点の値で、日々変わる。アルバータ住民投票の結果は報道ベースの暫定値で、確定値ではない。確率と見立て、損切りの水準は筆者の判断であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。外国為替証拠金取引は元本を上回る損失が生じる可能性がある。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















