今週の米国決算について、オプション市場が織り込む値幅の番付を発表する。首位はネットフリックス(NFLX)の9.5%で、スペースX(SPCX)の9%、テキサス・インスツルメンツ(TXN)の8.4%が続く。米投資情報サイトのリスクリバーサルが10月18日に示した数字である。ただし過去8回の決算と比べると、織り込みが実績を上回る銘柄と、実績を下回る銘柄にはっきり分かれた。
本サイトは10月16日に来週の注目決算6社として、過去8回の値幅と上昇確率を整理した。本稿で新しいのは2点ある。1つは週末に出そろったオプションの織り込み値幅で、もう1つは前回扱わなかったテキサス・インスツルメンツ、スペースX、GEエアロスペース(GE)の3社である。数値は特に断りのない限り10月16日(金)の米国市場の終値にもとづく。
番付表:織り込み値幅と過去の実績
| 番付 | 銘柄 | 発表(日本時間) | 織り込み値幅 | 過去8回の平均値幅 | 織り込み超えの回数 | 日本株への波及 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | ネットフリックス(NFLX) | 21日(水)5時01分 | 9.5% | 7.1% | 8回中4回 | × |
| 西の横綱 | スペースX(SPCX) | 21日(水)5時30分の説明会前 | 9.0% | 比較できる実績なし | ― | △ |
| 東の大関 | テキサス・インスツルメンツ(TXN) | 22日(木)早朝、5時30分に説明会 | 8.4% | 8.7% | 8回中3回 | ◎ |
| 西の大関 | IBM(IBM) | 22日(木)早朝、6時に説明会 | 7.7% | 6.0% | 8回中2回 | △ |
| 関脇 | テスラ(TSLA) | 22日(木)早朝、6時30分に説明会 | 7.4% | 7.8% | 8回中3回 | ○ |
| 小結 | メタ(META) | 22日(木)早朝、5時30分に説明会 | 7.3% | 7.4% | 8回中5回 | ◎ |
| 前頭筆頭 | GEエアロスペース(GE) | 20日(火)夜(米国の取引開始前) | 6.2% | 5.3% | 8回中3回 | △ |
織り込み値幅は、決算をまたぐオプションの価格から逆算した「上下どちらかにこの程度は動きうる」という幅である。上がるか下がるかの予想は含まない。過去の実績と並べると、オプションがその銘柄を割高に値付けしているのか、割安に値付けしているのかが見える。
織り込み値幅と過去8回の平均値幅の差(ポイント)
読み方:プラスはオプションが過去の実績より大きな値動きを織り込んでいること、マイナスは実績より小さく織り込んでいることを示す。織り込み値幅はリスクリバーサル(10月18日)、過去8回の平均値幅はYahoo Financeの日足終値から編集部試算。スペースXは比較できる実績がないため除いた。
差が最も大きいのはネットフリックスで、織り込み9.5%に対し過去8回の平均は7.1%と、2.4ポイント上回る。IBMも1.7ポイント上回る。逆にテスラ、テキサス・インスツルメンツ、メタの3社は、織り込みが過去の平均をわずかに下回るか、ほぼ同じ水準にある。過去の動きに照らすと、この3社のオプションは決して高く値付けされていない。
星取表:過去8回の決算翌日
星取表:過去8回の決算後の騰落率(%)
| 銘柄(織り込み) | 24/10 | 25/1 | 25/4 | 25/7 | 25/10 | 26/1 | 26/4 | 26/7 | 超え |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ネットフリックス(9.5%) | ○ +11.1 | ○ +9.7 | ○ +1.5 | ● -5.1 | ● -10.1 | ● -2.2 | ● -9.7 | ● -7.3 | 4/8 |
| テキサス・インスツルメンツ(8.4%) | ○ +4.0 | ● -7.5 | ○ +6.6 | ● -13.3 | ● -5.6 | ○ +9.9 | ○ +19.4 | ● -3.1 | 3/8 |
| IBM(7.7%) | ● -6.2 | ○ +13.0 | ● -6.6 | ● -7.6 | ● -0.9 | ○ +5.1 | ● -8.2 | ○ +0.4 | 2/8 |
| テスラ(7.4%) | ○ +21.9 | ○ +2.9 | ○ +5.4 | ● -8.2 | ○ +2.3 | ● -3.5 | ● -3.6 | ● -14.5 | 3/8 |
| メタ(7.3%) | ● -4.1 | ○ +1.6 | ○ +4.2 | ○ +11.2 | ● -11.3 | ○ +10.4 | ● -8.6 | ● -8.0 | 5/8 |
| GEエアロスペース(6.2%) | ● -9.1 | ○ +6.6 | ○ +6.1 | ● -2.2 | ○ +1.3 | ● -7.4 | ● -5.6 | ● -4.1 | 3/8 |
読み方:○は上昇、●は下落。色付きの枠は、値幅が今回の織り込み値幅を超えた回を示す。列は決算の年月(2024年10月〜2026年7月)。GEは発表日当日、ほかは発表翌日の騰落率。出所:Yahoo Financeの日足終値、Nasdaqと各社の発表日から編集部試算。
星取表の白星は上昇、黒星は下落を示す。8回中の上昇回数は、メタ、テスラ、テキサス・インスツルメンツがそれぞれ4回、ネットフリックス、IBM、GEがそれぞれ3回だった。上昇の回数だけを確率とみなせば、50%か37.5%になる。ただし8回という少ない標本では、この差に統計的な意味はほとんどない。本稿が重視するのは方向ではなく、値幅の大きさである。
各取組の見どころ
テキサス・インスツルメンツ(評価◎):年初来59%高で迎える試験
アナログ半導体の最大手である。10月16日の終値は276.48ドルで、2025年末の173.49ドルから59.4%上昇した。説明会は米中部時間21日15時30分(日本時間22日5時30分)からと会社が公表している。会社は7月、7〜9月期の売上高を56億5,000万〜61億5,000万ドル、1株利益を2.23〜2.57ドルと見通したと報じられた。Yahoo Financeが集計する市場予想は売上高59億2,000万ドル、1株利益2.42ドルで、会社見通しの中ほどにある。
焦点は10〜12月期の売上高見通しと、値上げが続くかどうかである。過去8回の値幅は平均8.7%と今週の7社で最も大きく、2026年4月には19.43%上げ、2025年7月には13.34%下げた。日本ではルネサスエレクトロニクス(6723)とローム(6963)が同じアナログ・パワー半導体を手がける。両社の株価は10月13日から19日にかけて、それぞれ10.9%、11.1%下落した。同業の数字が出る22日朝は、両社の株価が反応しやすいとみる(編集部の見方)。
メタ(評価◎):市場予想は集計元で1ドル違う
決算発表は米国時間21日の取引終了後、説明会は東部時間16時30分(日本時間22日5時30分)からと会社が公表している。終値は709.33ドルで、年初来7.5%高である。1株利益の市場予想はYahoo Financeの集計で5.70ドル、Nasdaq(Zacks)の集計で6.67ドルと、およそ1ドルの開きがある。どちらの数字と比べるかで「予想超え」の見え方が変わるため、見出しの言葉だけで判断しないほうがよい。売上高の予想は633億9,000万ドルで、会社見通しの610億〜640億ドルの範囲内にある。
織り込み7.3%に対し、過去8回で値幅がこれを超えたのは5回と、7社で最も多い。2025年10月に11.33%下げ、2026年1月に10.40%上げた。日本株にとっては設備投資の見通しが重要で、半導体関連株の22日の寄り付きを左右しうる。Museをめぐる収益化の論点はメタのAIエージェントの記事で扱った。
テスラ(評価○):前回は14.5%安
会社の発表資料によると、決算は米国時間21日の取引終了後に公表し、説明会は中部時間16時30分(日本時間22日6時30分)から開く。終値は354.72ドルで年初来21.1%安。7〜9月期の納車台数は48万6,532台だった。1株利益の市場予想はYahoo Financeの集計で0.45ドル、Nasdaq(Zacks)の集計で0.21ドルと倍以上違う。ここでも比較の物差しに注意がいる。
前回7月22日の決算では、翌日に14.52%下げた。過去8回で最大の値幅は2024年10月の21.92%高である。パナソニックホールディングス(6752)の電池子会社はテスラ向けの販売比率が高いと報じられており、テスラの販売動向は同社の材料になる。パナソニック株は10月19日の終値3,977円で、13日から8.9%下げた。納車の内容はテスラの納車台数の記事で検証した。
ネットフリックス(評価×):織り込みが最も割高
会社の発表によると、決算は太平洋時間20日13時01分(日本時間21日5時01分)ごろに公表する。経営陣のビデオ説明は13時45分(同5時45分)からである。株式分割後の終値は70.53ドルで、年初来24.8%安。Yahoo Financeの集計では、1株利益の市場予想が0.82ドル、売上高が128億8,000万ドルである。
過去8回で値幅が9.5%を超えたのは4回あるが、いずれも9.7〜11.1%の範囲にとどまる。2025年7月から直近5回の決算は、いずれも翌日に下げている。織り込みが過去の平均を2.4ポイント上回るのは、この続落の記憶が価格に乗っているためとみる(編集部の見方)。日本の上場企業で直接連動する銘柄は見当たらない。
IBM、スペースX、GE(評価△)
IBMは米国時間21日17時(日本時間22日6時)から説明会を開く。終値は232.14ドルで年初来21.6%安。1株利益の市場予想は2.87ドルである。織り込み7.7%に対し過去8回の平均は6.0%で、値幅がこれを超えたのは2025年1月の12.96%高と2026年4月の8.25%安の2回だけだった。なお7月14日に速報値を前倒しで公表した際には、その日に株価が25%超下落している。平均にこの日は入っていない。
スペースXは米国時間20日の取引終了後に決算を公表し、東部時間16時30分(日本時間21日5時30分)から音声の説明会を開くと会社が公表した。6月12日の上場から2回目の決算で、過去の値幅を比べる材料がない。終値146.03ドルは、上場初日の終値160.95ドルを9.3%下回る。1株利益の予想は0.17ドルである。同社の初決算はスペースXの初決算ルポにまとめた。
GEエアロスペースは20日の米国の取引開始前に発表すると、Zacksなどの決算予定表に掲載されている。会社の発表資料では時刻を確認できていない。1株利益の予想は2.01〜2.02ドル。直近3回の決算はいずれも当日に下げた。IHI(7013)はGEの航空機エンジン計画に参画しており、10月19日の終値は2,578.5円である。
殊勲賞・敢闘賞・技能賞
- 殊勲賞:テキサス・インスツルメンツ。年初来59.4%高で、今週の7社で唯一大幅な上昇を保つ。過去の平均値幅8.7%も最大で、織り込みはそれを下回る。
- 敢闘賞:メタ。織り込みを超えた回数が8回中5回と最も多い。オプションの値付けは過去の実績並みで、上振れの余地を残す。
- 技能賞:IBM。織り込み7.7%に対し、超えたのは2回だけ。過去の実績に照らすと、オプションが最も強気に値付けしている銘柄の一つである。
場所全体の成績:S&P500は84%が予想超え
米調査会社ファクトセットによると、10月16日時点で7〜9月期の決算を発表したS&P500採用企業のうち、84%が1株利益で市場予想を上回った。5年平均の78%、10年平均の77%を上回る。発表済みの実績と未発表分の予想を合わせた増益率は29.0%である。ここまでの決算は全体として好調だが、日経平均が15日に3,318円下げたように、好決算と株価の上昇は別の話になっている。
同じリスクリバーサルによると、ナスダック100指数のオプションは今週の値幅を2.7%と織り込む。指数の2.7%に対し、個別株は6〜10%の幅を織り込んでいる。決算をまたいで持つかどうかの考え方は決算をまたぐか降りるかの記事にまとめた。
来場所の注目取組
- 20日(火)夜 GEエアロスペースが決算発表(米国の取引開始前、予定表による)。
- 21日(水)5時01分 ネットフリックス。5時30分にスペースXの説明会。
- 22日(木)5時30分〜6時30分 メタ、テキサス・インスツルメンツ、IBM、テスラの説明会。ラムリサーチも同日朝で、詳細はラムリサーチの記事にある。
- 22日(木) ディスコ(6146)が決算発表(株探の決算発表予定日)。
- 23日(金) ファナック(6954)が決算発表(同)。
- 27〜28日 米連邦公開市場委員会(FOMC)。
主な参照
- 織り込み値幅(2026年10月18日)/RiskReversal「The Week Ahead」
- 株価の日足終値と年初来騰落率/Yahoo Finance
- 過去の決算発表日/Nasdaq
- ネットフリックスの決算日程(2026年9月14日)/ネットフリックス
- メタの決算日程/メタ
- テスラの決算日程と納車台数(2026年10月2日)/テスラのフォーム8-K
- テキサス・インスツルメンツの説明会日程(2026年10月1日)/Investing News Network
- IBMの説明会日程(2026年10月7日)/Investing News Network
- スペースXの決算日程/スペースX
- テキサス・インスツルメンツの7〜9月期見通し(2026年7月22日)/Earnings Whispers
- S&P500の決算集計(2026年10月16日)/ファクトセット
- ディスコ・ファナックの決算発表予定日/株探
- パナソニックエナジーの供給先拡大(2025年11月、共同通信)/OANDA証券
- IHIのGEエンジン計画への参画/GEアビエーション
データ基準日:2026年10月19日(日本時間21時)。米国株の株価は10月16日(金)の終値、日本株は10月19日の終値である。織り込み値幅はリスクリバーサルが10月18日に公表した数値で、オプション価格の変化とともに発表直前まで動く。過去8回の値幅と上昇回数は編集部試算で、Yahoo Financeの日足終値と、Nasdaqおよび各社の過去の発表日にもとづく。ネットフリックスの株価は株式分割を調整した値である。市場予想は集計元により異なり、メタとテスラは本文で2つの集計を併記した。GEエアロスペースの発表日は決算予定表の掲載によるもので、会社の発表資料では確認できていない。テキサス・インスツルメンツの会社見通しは報道による。日本株への波及の評価とルネサス、ロームの連動に関する記述は編集部の見方である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。
















