来週(10月19〜23日)は、日米の決算発表がそろって本格化する。米国ではネットフリックス(NFLX)、テスラ(TSLA)、IBM(IBM)、メタ・プラットフォームズ(META)が、日本ではディスコ(6146)とファナック(6954)が発表を予定する。この6社は過去8回の決算で、発表翌日に平均5.7〜8.2%動いてきた。日経平均が15日に3,318円安となった直後だけに、AIへの投資が続くかどうかを測る1週間になる。まず下の1枚を見てほしい。
※東証の株価は埋め込みでは表示できないため、ディスコは米国ADR(OTC:DSCSY、ドル建て)を表示している。円建ての株価とは一致しない場合がある。ファナックの米国ADRは表示確認ができていないため載せていない。
日本時間の発表スケジュール
来週の決算発表(日本時間)
読み方:米国4社の結果は東京の取引開始前にそろう。ディスコ株は22日にメタの結果、23日に自社の結果と、2日続けて決算に反応する。出所:各社の発表資料、ディスコのIRカレンダー、日本取引所グループの決算発表予定日一覧。
日時はすべて各社の発表資料で確かめた。米国はまだ夏時間で、日本との時差は13時間である。米国の4社はいずれも米国の取引終了後に発表するため、日本の投資家が結果を知るのは東京の取引が始まる前の早朝になる。メタとテスラ、IBMは同じ21日(米国時間)に重なり、日本時間22日の朝に結果がそろう。
この順番が日本株にとって重要だ。ディスコの決算発表は22日16時で、その日の東京の取引はメタの決算を受けて動く。つまりディスコ株は、22日の取引時間中にメタの設備投資の見通しに、23日に自社の決算に反応する。ファナックは23日(金)の取引終了後で、直近7回の決算短信はいずれも15時30分に公表されている(今回の時刻は会社から示されていない)。株価の反応は週明け26日になる。
決算翌日、どれだけ動いてきたか
決算翌日の平均値幅(過去8回、騰落率の絶対値の平均)
読み方:数字が大きいほど、決算で株価が大きく動きやすい。方向は含まない。いずれも2024年10月〜2026年7月の8回。IBMの7月14日の速報値公表(当日25.2%安)は含まない。出所:stockanalysis.com・株探・Yahoo Financeの日足終値から本誌計算。
過去8回の決算それぞれについて、発表日の終値から翌営業日の終値までの騰落率を計算し、その絶対値を平均した。最も大きいのはディスコの8.2%で、テスラの7.8%、メタの7.4%が続く。直近4回に絞ると、ディスコは10.3%、メタは9.6%、ファナックは9.1%まで広がる。値動きの大きさは年々増していると読める。
上がるか下がるかでみると、偏りがはっきりしている。ネットフリックスは2025年7月から5回続けて決算翌日に下げた。メタも直近4回のうち3回が下げで、8回では上げと下げが4回ずつである。逆にファナックは8回中6回が上げだった。ただしIBMの数字には注意がいる。7月14日に4〜6月期の速報値を前倒しで公表し、その日に株価が25.2%下げた。22日の正式発表の翌日は0.43%高にとどまっており、平均にはこの急落が入っていない。
前回の決算で何が起きたか
前回の決算翌日の騰落率
読み方:6社中5社が前回の決算翌日に7%超下げた。IBMは1週間前の7月14日に速報値を公表して25.2%下げており、正式発表の翌日はほぼ動かなかった。ファナックの翌営業日は8月3日。出所:stockanalysis.com・株探の日足終値から本誌計算。
6社のうちIBMを除く5社が、前回の決算の翌日に7%を超えて下げた。少なくとも日米の3社は、結果そのものよりも先の見通しが市場の期待に届かなかったことが売りの理由だった。ディスコは7〜9月期の営業利益の計画が559億円で、市場予想の600億円強を下回った(フィスコ)。ファナックは今期予想を引き上げたが、営業利益の上方修正が小幅でコンセンサスに届かず、14.31%下げた。ネットフリックスは7〜9月期の売上高見通しが128億6,000万ドルにとどまり、7.26%安となった。
来週も、この「見通しの壁」を越えられるかが焦点になる。とくにディスコは1四半期先の見通ししか出さない方針で、10〜12月期の計画がそのまま翌日の株価を決めやすい。
6社の論点と数字
| 銘柄 | 発表(日本時間) | 会社計画・市場予想 | 最大の焦点 |
|---|---|---|---|
| NFLX | 21日(水)5時01分、説明は5時45分 | 会社計画:売上高128億6,000万ドル、1株利益0.82ドル。市場予想0.82ドル(ナスダック掲載の集計、12社) | 10〜12月期の見通しと広告収入(年約30億ドルの計画) |
| TSLA | 22日(木)早朝、説明会は6時30分 | 市場予想:1株利益0.21ドル(同、10社。予想の幅は0.09〜0.52ドル) | 粗利益率と設備投資、フリーキャッシュフロー |
| IBM | 22日(木)早朝、説明会は6時 | 通期の売上高成長率は為替一定で4〜5%(会社計画)。市場予想2.87ドル(同、5社) | 7月に取りこぼした大型案件が成約したか |
| META | 22日(木)5時以降、説明会は5時30分 | 会社計画:売上高610億〜640億ドル。市場予想6.35ドル(同、11社) | 2027年の設備投資の初めての見通し |
| 6146 | 22日(木)16時 | 7〜9月期の会社計画(差し引き):売上高1,284億9,000万円、営業利益558億7,000万円 | 10〜12月期の計画が市場予想を上回るか |
| 6954 | 23日(金)取引終了後 | 7〜9月期の会社計画(差し引き):売上高2,349億7,000万円、営業利益509億1,000万円 | 受注の伸びが続くか、通期予想の再修正 |
ネットフリックス:期待が低いことが追い風
7〜9月期の会社計画は売上高が前年同期比11.7%増の128億6,000万ドル、営業利益率33.2%、1株利益0.82ドルである。市場予想はこの計画とほぼ同じで、上振れの余地は残る。株価は15日終値が72.61ドルで、52週高値の124.86ドルから4割強下げた。前回の決算の詳細はこの記事にまとめた。
テスラ:販売台数は前年割れ、利益率が試される
7〜9月期の納車台数は48万6,532台で、前年同期の49万7,099台を2.1%下回った(納車台数の記事)。4〜6月期は営業利益率が1.4%まで下がり、設備投資57億8,900万ドルでフリーキャッシュフローは10億9,200万ドルの赤字だった。市場予想の幅が0.09〜0.52ドルと広いのは、利益の読みが割れている表れである。
IBM:7月の「取りこぼし」を取り戻せるか
クリシュナ最高経営責任者(CEO)は7月14日の投資家宛ての書簡で、6月末に顧客がサーバーやメモリーの確保を優先し、多くの大型案件が予定どおり成約しなかったと説明した。株価は7月22日の205.77ドルから15日の234.12ドルまで13.8%戻している。成約がずれ込んだ案件が7〜9月期に入れば上振れ、再び遅れれば通期計画の引き下げにつながる。
メタ:設備投資の数字が日本の半導体株を動かす
2026年の設備投資計画は1,300億〜1,450億ドルで、4〜6月期のフリーキャッシュフローは7億8,400万ドルまで細った。株価は15日終値736.72ドルで52週高値(779.82ドル)に近く、期待は高い。米コアウィーブの社債急落でAI投資の持続性が問われている今、2027年の投資額をどう示すかが、ディスコなど日本の半導体関連株の22日の値動きを左右する(コアウィーブ社債の記事)。
ディスコ:最高の出荷額は株価に織り込み済みか
10月6日の速報で、7〜9月期の個別出荷額は前年同期比60.0%増の1,239億円と四半期の最高を更新し、個別売上高も38.9%増の1,185億円だった(速報の記事)。それでも株価は翌7日に6.29%下げ、16日終値の5万3,850円は6日の6万5,500円から17.8%安い。良い数字はすでに出ており、22日に問われるのは10〜12月期の計画だけである。
ファナック:受注は強いが、計画は控えめ
4〜6月期の受注高は2,819億円で前年同期比36.9%増だった(フィスコ)。上期の計画から逆算した7〜9月期の営業利益は509億円で、4〜6月期の535億円より少ない。控えめな計画を実績が上回るかが焦点になる。9月30日には日立製作所とフィジカルAIの共同事業化で提携しており、ロボット需要の見通しにも注目が集まる。
筆者の見立て:上がる確率はどれだけか
決算翌日に上がる確率(筆者の見積もり)
読み方:50%を上回れば上昇、下回れば下落の可能性が高いという筆者の見方。いずれも五分に近く、値幅の予想ではない。根拠は本文を参照。
ここからは筆者の見方である。決算翌日の株価が上がる確率を、過去の反応の偏りと、今回の期待の高さから見積もった。ネットフリックス、ディスコ、ファナックは上がる確率が55%、テスラ、IBM、メタは45%とみる。差はわずかで、どれも五分に近い。そう判断する最大の理由は、株価がすでにどこまで下げたかにある。
ネットフリックスは5回続けて決算後に下げ、株価は52週高値の6割を割った。ディスコも速報後の10日間で17.8%下げている。期待が低い銘柄は、見通しが市場予想並みでも売られにくい。逆にメタは高値圏にあり、設備投資が増えても減っても売られる理由になりうる。テスラは利益の予想が割れており、IBMは前回の急落からの戻りで「取り戻した」ことがすでに株価に入りかけている。なお、米国4社の値動きの幅をオプション市場から読み取った数字(予想変動率)は、引用できる公表値を確認できなかったため載せていない。
| 銘柄 | 上昇の確率(筆者) | 上昇のシナリオ | 下落のシナリオ |
|---|---|---|---|
| NFLX | 55% | 10〜12月期の見通しが会社の通期計画(510億〜514億ドル)の上限を意識させる | 売上高の伸びが11%台から一段と鈍る見通し |
| TSLA | 45% | 粗利益率が4〜6月期の16.8%から回復し、設備投資の負担が和らぐ | フリーキャッシュフローの赤字が続き、新製品の時期が後ずれ |
| IBM | 45% | ずれ込んだ大型案件が成約し、ソフトウェアの伸びが加速する | 案件の遅れが続き、通期の4〜5%成長を引き下げる |
| META | 45% | 売上高が計画の上限640億ドルに近く、投資の回収が見える | 2027年の設備投資を大きく増やし、フリーキャッシュフローの悪化が続く |
| 6146 | 55% | 10〜12月期の営業利益の計画が7〜9月期を上回る | 計画が保守的で市場予想を下回り、メタ次第で半導体株全体が売られる |
| 6954 | 55% | 受注の伸びが続き、通期予想を再び引き上げる | 部材高で利益率が下がり、7月と同じく修正幅が物足りない |
個人投資家のためのチェックリスト
- 翌日の値幅を先に決めておく。過去8回の平均で5.7〜8.2%動く銘柄ばかりである。決算をまたいで持つなら、その幅の下げに耐えられる量にとどめる(決算をまたぐかどうかの記事)。
- 結果より見通しを見る。前回は6社中5社が翌日に7%超下げ、ディスコ、ファナック、ネットフリックスは見通しの物足りなさが理由だった。
- 22日朝はメタから読む。メタの設備投資の見通しが、ディスコの決算前の値動きを決める。
- ディスコの反応は2日に分けて考える。22日はメタの結果、23日は自社の10〜12月期計画への反応である。
- ファナックの結果は週末をはさむ。反応は26日(月)で、週末の海外市場の動きも加わる。
この見方を捨てる条件:メタが22日朝に2027年の設備投資を2026年の計画並みかそれ以下と示し、なおかつ米ナスダック総合指数が22日に2%以上下げた場合は、AI投資の減速が意識されたと判断し、ディスコとファナックの上昇確率を40%に引き下げる。逆に、ネットフリックスが21日に10〜12月期の売上高の伸びを10%未満と示した場合は、同社の上昇確率を40%に引き下げる。
主な参照
- ネットフリックスの決算日程(2026年9月14日)/ネットフリックス、4〜6月期の株主宛て書簡と7〜9月期の計画/米証券取引委員会への提出資料
- テスラの決算日程と7〜9月期の生産・納車/テスラ(提出資料)、4〜6月期の決算資料/同
- IBMの決算日程(2026年10月7日)/IBMの発表(Investing News Network転載)、7月14日の速報値と書簡/IBM(提出資料)、4〜6月期決算と通期見通し/同
- メタの決算日程(2026年10月12日)/メタ、4〜6月期決算と見通し/メタ(提出資料)
- ディスコのIRカレンダー/ディスコ、7〜9月期の個別売上高・出荷額の速報(10月6日)と上期予想(7月23日)/適時開示(株探)、同
- ファナックの第1四半期決算短信と通期予想/ファナック、決算発表予定日一覧(10月15日現在)/日本取引所グループ
- 前回決算への市場の反応と市場予想との比較/株探(ディスコ、フィスコ配信)、株探(ファナック、フィスコ配信)
- 1株利益の市場予想(10月16日時点)/ナスダック・ドットコム、米国株の日足終値/stockanalysis.com、日本株の日足終値/株探
データ基準日:米国株は2026年10月15日の終値、日本株は10月16日の終値。決算翌日の騰落率は、発表日の終値から翌営業日の終値までの変化で、米国株はstockanalysis.com、日本株は株探の日足(2025年4月以前の分はYahoo Financeの日足)から本誌が計算した。米国株とYahoo Financeの数字は一致を確認している。ファナックの今回の発表時刻は会社から公表されておらず、取引終了後とする記述は直近7回の実績にもとづく。7〜9月期の会社計画(差し引き)は本誌の計算である。市場予想は集計の提供元や時点で異なる。オプション市場の予想変動率は引用できる公表値を確認できず、掲載していない。上昇確率は筆者の主観的な見方であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















