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ドル円見通し|159円が上値抵抗、日米会合が焦点

Takashi Suzuki Takashi Suzuki
2026年10月16日
FX, オピニオン
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米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ議長は日本時間16日昼、10月の追加利上げについて何も約束しなかった。「会合の結果を前もって判断しない」。この一言で、米CPIと米PPIの上振れで膨らんだ10月利上げの見方は後退し、ドル指数は101.8台に下げた。それでもドル円は157円台後半から動かない。来週(10月19〜23日)と、日米の金融政策会合をまたぐ1カ月のドル円を、水準・日程・確率の3枚の図で読む。まず下の数字を見てほしい。

157.94円
ドル円(10月16日17時27分、取引時間中)
101.81
ドル指数(16日17時17分、15日終値は102.00)
27.7%
10月FOMCの利上げ確率(フェドウオッチ、16日。前日33.2%)
10月23日 8:30
9月の全国CPI。来週最大の材料

結論:来週は157〜159円の箱、1カ月では下抜けがやや優勢

ドル円の水準の地図(10月16日17時27分時点)

155161155.32円9/3〜4安値急落後の底156.40円9/30安値箱の底156.95円10/2安値1週間の下限157.44円10/5安値最初の支え157.94円現在値17時27分158.57円200日線DZH計算159.00円9/24高値1週間の上限160.38円9/2高値急落前の天井

読み方:オレンジは本誌が置く1週間の箱の上限と下限(日足終値で判断)。159円00銭の上には200日線より強い壁はなく、抜ければ9月2日の高値160円38銭が視野に入る。出所:Yahoo Financeの日足高値・安値(ロンドン時間区切り)、200日線はDZHフィナンシャルリサーチの計算。取引時間中の値を含む。

本誌の基本線は、来週のドル円が156円95銭〜159円00銭の箱にとどまるというものだ。確率は55%と置く。上の壁は2つある。DZHフィナンシャルリサーチの計算で158円57銭にある日足の200日移動平均線と、9月24日の高値159円00銭近辺(10月14日の高値158円95銭もその手前で止まった)だ。下は10月5日の安値157円44銭、10月2日の安値156円95銭と段になっている。図の水準はYahoo Financeの日足の高値・安値と、DZHのテクニカル水準から本誌が拾った。

1カ月の見通しでは、箱を下に抜ける確率を上に抜ける確率よりやや高く置く。理由は、10月30日に日本銀行が利上げに動く余地が残る一方、FRBの10月利上げ観測はしぼんだからだ。ただし160円前後から上には、4月末(160円前後)と7月末(164円目前)に当局が円買い介入に動いた記憶がある。上も下も、抜けた先では値動きが荒くなりやすい。

ウォーシュ議長は何を言い、何を言わなかったのか

10月FOMCでの0.25%利上げの確率(CMEフェドウオッチ)

1週間前17.7%10月15日(前日)33.2%10月16日27.7%

読み方:米CPI・PPIの上振れで33.2%まで上がった利上げ確率は、ウォーシュ議長が10月の判断を示さなかった16日に27.7%へ下がった。確率は取得時刻で変わり、CNBCは据え置き確率を72.3%と伝えた。出所:SBS(韓国)が引用したCMEフェドウオッチ(16日14時52分配信)。

発言の場は、バンコクで開かれた国際通貨基金(IMF)・世界銀行年次総会での、ゲオルギエバIMF専務理事との対談だった。IMFの日程では現地時間16日10時30分から30分間で、日本時間では12時30分にあたる。AP通信によると、議長は「FRBは物価の安定を実現すると明確にしてきた」「約1カ月前に緩和の度合いを1段階取り除いた」と、9月16日の利上げに触れた。そのうえで「会合の結果を前もって判断しない」「今年残りの会合で何をするかを、いま言うつもりはない」と述べた。韓国SBSは「FRBの新しい章であり、もうそれ(事前の示唆)はしない」との発言を伝えている。CNBCは、各国の中央銀行がそろって引き締めに動き「ただ乗りする者はいない」と議長が評価したと報じた。

言わなかったことのほうが相場を動かした。SBSが引用したCMEフェドウオッチでは、10月の0.25%利上げの確率は16日時点で27.7%と、前日の33.2%から下がった。1週間前は17.7%だった。米CPI・PPIの上振れで一度は上がった利上げの見方を、議長は後押ししなかったことになる。Yahoo Financeの15分足では、ドル円は対談が始まった12時30分台の158円08銭近辺から、13時30分台に157円79銭近辺まで下げた。動いたのは30銭足らずで、ドル指数も102.05から101.82へ0.2ほど下げただけだ。驚きは小さかった。

ドル円が159円を抜けない理由:金利差が動いていない

10月1日→15日の金利の変化(bp)

米10年債-14.0bp日本10年債-14.4bp米2年債-1.0bp日本2年債-2.6bp日米2年債の差+1.6bp日米10年債の差+0.4bp

読み方:日米とも長期金利は約14bp下がったが、差はほとんど変わっていない。2年債の差は2.84%ポイントから2.86%ポイントへ1.6bp広がっただけだ。出所:米財務省(イールドカーブ・レート)、財務省(国債金利情報)。いずれも各日の公表値から本誌計算。

10月に入ってから、日米の金利はどちらも下がった。米財務省の公表値で、米10年債利回りは10月1日の5.24%から15日に5.10%へ、財務省(日本)の公表値で日本の10年債は3.092%から2.948%へ、ほぼ同じ幅で下がっている。2年債も同じで、日米の2年債利回り差は15日時点で2.86%ポイントと、10月1日の2.84%ポイントからほとんど変わっていない。ドル円が157〜159円の箱から出られないのは、この金利差がまったく動いていないからだと本誌はみる。

上に抜けにくい理由はもう1つある。外為どっとコムに配信されたDZHの記事によると、片山財務相は15日、バンコクでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の後、「高い緊張感を持って金融市場の動向を注視する」と述べ、日米協調介入の時のメッセージから「全くぶれていない」と語った。一方で下にも抜けにくい。外為どっとコムの宇栄原宗平氏は、市場が来年9月までに日米とも3回の利上げを織り込み、金利差は縮まらない計算になると指摘する。円の実質金利がマイナスのままなら円は買われにくい。前回の米PPI後の記事で書いた「株安で米金利が下がる」流れは、日本の金利も一緒に下げるため、ドル円への効き目は小さい。

来週の日程:最大の材料は23日朝の全国CPI

来週と1カ月の主な日程(日本時間)

110/17(土)〜FRBが発言自粛期間に入る10月27〜28日のFOMCに向け、高官の金融政策発言が止まる210/21(水)8:50日本9月の貿易統計8月は1兆1,056億円の赤字。原油高による円売りの大きさを測る310/22(木)21:30米新規失業保険申請件数利上げ観測が後退したなかで、労働市場の強さを確かめる410/23(金)8:30日本9月の全国CPI ★来週最大の材料予想は総合・コア2.1%、生鮮食品とエネルギー除く2.3%510/23(金)22:45米10月のPMI速報(製造業・サービス業)日本の速報は同日9時30分610/29(木)3:00FOMCの結果発表(10月27〜28日開催)据え置きか、12月の利上げをどう示すか710/30(金)日銀会合の結果と展望レポート、東京都区部10月CPI(8:30)同日、財務省が9月29日〜10月28日の介入実績を公表

読み方:来週は日本の指標が中心で、FRBは発言を控える。1カ月の分かれ目は29日未明のFOMCと30日の日銀会合だ。出所:FRB、日本銀行、総務省統計局、財務省関税局、S&Pグローバル、米労働省。市場予想は外為どっとコム。

FRBの内規では、会合前の第2土曜日から高官は金融政策について発言しない。10月27〜28日の会合に向けて、17日からこの期間に入る。米国から新しい手がかりは出にくく、来週の主役は日本の指標になる。総務省の公表予定では、9月の全国消費者物価指数(CPI)は23日8時30分に出る。外為どっとコムによると、市場予想は総合・生鮮食品を除く総合(コア)とも前年同月比2.1%、生鮮食品とエネルギーを除く総合が2.3%だ。8月分は総合1.9%、コア1.7%だった。

先行指標の東京都区部9月分は、コアが8月の1.8%から2.7%へ跳ねた。ただし総務省の資料では、上昇幅0.9ポイントのうち水道料が0.24ポイント、保育所保育料が0.29ポイントを占める。どちらも東京都の施策の影響を受けやすい項目で、全国にそのまま当てはまるとは限らない。全国が予想を上回り、エネルギーを除く指数まで2%台半ばに乗れば、日銀の10月利上げの見方が強まって円買いの材料になる。小枝審議委員の講演で示された「利上げに過度に慎重になることはない」という論理を、数字が後押しするかどうかが焦点だ。

シナリオ:1週間と1カ月の確率

ドル円のシナリオ別の確率(本誌の見立て)

1週間:箱の中でもみ合い55%1週間:下抜け(円高)30%1週間:上抜け(円安)15%1カ月:レンジ継続45%1カ月:円高(155円前後)30%1カ月:円安・介入の試し25%

読み方:1週間では箱の中にとどまる確率が最も高い。1カ月では日銀会合をはさむため、上下に抜ける確率の合計が55%に広がる。確率は本誌の主観的な見立てで、市場の織り込みから計算したものではない。

期間シナリオ確率想定レンジ引き金
1週間(〜10月23日)箱の中でもみ合い55%156.95〜159.00円FRBは発言を控え、全国CPIはほぼ予想どおり。日米の会合待ちで売り買いが細る
1週間下抜け(円高)30%156.40〜157.00円全国CPIの上振れで日銀の10月利上げ観測が強まる。株安が続き、円の買い戻しが出る
1週間上抜け(円安)15%159.00〜160.00円原油高と米金利の反発で10月利上げ観測が戻る。米PMI速報が強い
1カ月(〜11月中旬)レンジ継続45%155.50〜159.50円FRBは10月据え置き・12月に含み、日銀も10月は据え置きで12月以降へ
1カ月円高30%155円前後日銀が10月30日に1.50%へ利上げし、FRBは据え置き。金利差が縮む
1カ月円安・介入の試し25%159.50〜160.50円日銀が据え置き、FRBが12月利上げを強く示す。160円台で当局の対応が焦点になる
読み方:確率は本誌の主観的な見立てで、市場の織り込みから計算したものではない。1カ月の円高シナリオの確率は、本誌が小枝委員の記事で置いた日銀10月利上げの確率(35%)より少し低くしている。利上げがあってもFRBの姿勢次第で円高が続かない場合があるためだ。

1カ月の分かれ目は、日本時間29日3時のFOMCの結果と、30日の日銀の決定・展望レポートである。同じ30日の8時30分には東京都区部の10月分CPIが出る。財務省は同日、9月29日〜10月28日の為替介入の実績を公表する予定だ。9月は0円だったことは介入実績の記事でまとめた。

個人投資家向けチェックリスト:売り・買い・様子見の分岐点

見る材料円高(下抜け)を支持円安(上抜け)を支持
主要レベル日足終値で156.95円を割る日足終値で159.00円を上回る
米2年債利回り4.70%を割る(15日は4.77%)4.85%を上回る(10月5日の4.84%超え)
10月利上げ確率フェドウオッチで20%を割る35%を超えて戻る
日本の物価全国CPIのコアが2.1%を上回るコアが2%を割り込む
当局の発言財務相・財務官の口先介入が強まる160円に近づいても発言が出ない
読み方:1つの材料だけで判断しない。2つ以上の列が同じ側にそろったときに、箱を抜ける可能性が高まる。水準は本誌の判断による目安である。
  • 日中の割れと終値の割れを分ける。157円台前半や159円ちょうどは、日中に一時的に抜けてすぐ戻る「だまし」が出やすい水準だ。判断はニューヨーク終値で行う。
  • 23日8時30分の前後は様子見でよい。指標の直後はスプレッドが広がりやすい。発表前に大きな建玉を持ち越さない。
  • 160円台はレバレッジを落とす。介入が入ると1日で数円動き、逆指値が想定より不利な価格で約定することがある。
  • 介入かどうかは月末の財務省発表で確かめる。急な円高をすぐに介入と決めつけない。

この見方を捨てる条件。日足終値で159.00円を上回り、同時に米2年債利回りが4.85%を超えたら、箱の見立ても1カ月の下抜け優勢の見方も取り下げる。その場合は160円台での当局の対応が次の焦点になる。逆に156.95円を日足終値で割れたら、1週間の箱は崩れたとみて、9月30日の安値156円40銭近辺を次の目安に置く。

日米の金利差は、FXのドル円では毎日のスワップポイントとして受け払いされる。ドルを買う側が受け取り、ドルを売る側が支払う。円高に賭けて売る場合、箱の中で待つ間にもこのコストを払い続けることになる。口座開設の手順はFX解説ページで説明している。米CPI前に本誌が整理した金利差の反対尋問もあわせて読みたい。

主な参照

  • ウォーシュ議長とゲオルギエバ専務理事の対談の日時/国際通貨基金(IMF)
  • 議長の発言/AP通信、CNBC、フェドウオッチの確率と発言/SBS
  • 9月16日のFOMC声明(誘導目標3.75〜4.00%)と2026年の会合日程/FRB、同
  • 金融政策決定会合の日程(10月29〜30日、30日に展望レポート)/日本銀行
  • 全国CPIの公表予定と8月分、東京都区部9月分/総務省統計局
  • 9月の貿易統計の公表予定日/財務省関税局、PMI速報の公表時刻/S&Pグローバル、新規失業保険申請件数/米労働省
  • 米国債利回り/米財務省、日本国債利回り/財務省
  • 来週の見通し・市場予想・片山財務相の発言・テクニカル水準/外為どっとコム、同(DZHフィナンシャルリサーチ)、同
  • ドル円とドル指数の値動き(日足・15分足)/Yahoo Finance

データ基準日:2026年10月16日17時30分(日本時間)。ドル円157.94円(17時27分)とドル指数101.81(17時17分)は取引時間中の値で、終値ではない。図の高値・安値はYahoo Financeの日足(ロンドン時間区切り)による。米国債と日本国債の利回りは各国財務省が公表する15日の値である。ウォーシュ議長の発言は報道に基づく。対談は講演原稿のない形式で、本稿執筆時点でFRBとIMFのサイトに発言録は掲載されていない。フェドウオッチの確率は取得の時刻によって変わり、CNBCは据え置き確率を72.3%と伝えた。片山財務相の発言はDZHの配信記事によるもので、財務省の公式記録では確認できていない。シナリオと確率は本誌の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。

Tags: FOMCFRBFX見通しケビン・ウォーシュドル円ドル円見通し日銀為替介入
Takashi Suzuki

Takashi Suzuki

大手マーケットメイカーのFXトレーディングデスクで8年以上にわたりキャリアを積み、うち3年は為替フォワードデスク、その後2年は金利(レート)デスクを担当した。さらにシンガポールではアジア・トレーディングデスクのヘッドとして4年間チームを率い、地域全体のフローとリスク管理を統括してきた。 現在もFX・金利・株式など幅広い市場で実際にトレードを行っており、機関投資家の最前線で培った実取引経験は豊富。FX・株式・暗号資産において自己のポジションを保有している。 こうした実務とマーケットでの経験をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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