21時30分、米9月の生産者物価指数(PPI)は前月比1.3%上昇と、市場予想の0.6%の2倍を超えた。ドル円の5分足は158.01円近辺から158.19円近辺まで跳ねたが、15分足らずで157.75円まで押し戻された。前月比の伸びは約4年半ぶりの大きさなのに、米10年債利回りは前日より14bp以上低い5.04%台まで沈んだ。昨夜、筆者はドル円の撤退線を158.16円と書いた。その線は今日の東京時間に割れている。今夜はその後始末のメモである。
テープ:強い数字に、金利が付いてこなかった
米労働統計局(BLS)の発表では、最終需要のPPIは前月比1.3%、前年同月比6.3%上がった。8月の前年同月比5.6%(改定値)から加速している。セントルイス連銀(FRED)に載る系列で本誌が計算すると、前月比1.3%は2022年3月以来の大きさで、前年同月比6.3%は2022年12月(6.4%)以来の高さになる。中身はエネルギーが前月比10.8%、うちガソリンが20.3%だ。昨日のCPIでガソリンが前月比9.1%上がったのと同じ流れが、卸の段階ではもっと大きく出た。
同時刻の小売売上高も強かった。米商務省センサス局の速報で、9月は前月比0.8%増の7,450億ドル。トレーダーズ・ウェブによれば予想は0.3%増で、8月分も1.1%増から1.3%増へ上方修正された。ただし伸びの大半はガソリンスタンドだ。ガソリンスタンドの売上は前月比6.4%増、前年同月比28.1%増で、ガソリンスタンドを除いた売上は前月比0.2%増にとどまる。値段が上がった分だけ売上が膨らんだ、というのが正直な読み方だろう。
米9月のPPIと小売売上高、項目別の前月比(%)
読み方:PPIも小売売上高も、伸びの中心はエネルギーとガソリンだ。ガソリンスタンドを除いた小売売上高は前月比0.2%増にとどまる。PPIのガソリン単体は前月比20.3%上昇(図には含めていない)。出所:米労働統計局(9月PPI、季節調整済み)、米商務省センサス局(9月小売売上高速報、季節調整済み)。
問題は相場の反応だ。Yahoo Financeの5分足で、米10年債利回りは発表の21時30分の足で5.106%まで上がり、そこが天井になった。22時25分の足では5.043%まで下げている。米財務省が公表した14日の10年債利回りは5.19%だから、強いインフレ指標が出た日に14bp以上も下がったことになる。ザイFX(DZHフィナンシャルリサーチ配信、22時6分)も、10年債利回りが5.04%台まで低下幅を広げるとドル円は失速したと伝えている。
債券を買わせているのはインフレではなく株だ。東京では日経平均が3,318円34銭安の6万4,425円95銭と、4.90%下げて引けた(株探)。ニューヨークも寄り付き後の日本時間22時47分時点で、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が前日終値比3.22%安、ナスダック総合が1.09%安、S&P500が0.42%安だった(Yahoo Finance、取引時間中の値)。AI関連株を売った資金が国債に逃げている。インフレの数字より、株の投げのほうが金利を動かす日だった。
需給の解剖:投機筋の円買いは半分まで減っている
ポジションの側も見ておく。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉報告で、シカゴの円先物の非商業部門(投機筋)は10月6日時点で円の買い越し6万2,325枚だった。買い19万368枚、売り12万8,043枚である。3週間前の9月15日時点の買い越しは12万359枚あったから、ほぼ半分まで減ったことになる。この3週間、ドル円が154円台から158円台へ上がる過程で、投機筋は円買いを手じまってきた。
この減り方には2通りの読み方がある。円買いの投げはもう相当進んだので、ここから円売りで上値を追う弾は細っている、というのが1つ目。2つ目は、株安が続けば円買いを積み直す余地がたっぷり残っている、ということだ。筆者は両方とも同じ方向を指しているとみる。ドル円の上は買い手が減り、下は売り手が増えやすい形である。
FRBは9月16日に政策金利を0.25%引き上げ、誘導目標を3.75〜4.00%とした(12対0の全会一致)。次の米連邦公開市場委員会(FOMC)は10月27〜28日だ。PPIは利上げの理由を1つ増やした。それでも今日の債券は、次の利上げより株安のほうを重く見た。ドル円を支えるはずの金利差が、株の投げで縮む。これが今の相場の形である。
水準の地図:158円台前半が天井、157円台半ばが攻防
ドル円の水準の地図(10月15日、日本時間22時47分)
読み方:PPI直後の戻りは1時間足の移動平均の帯(158.19〜158.29円)で止まった。22時47分の値は日足50日線157.71円の真上にある。筆者の撤退線は158.35円、下の目安は156.99円。出所:Yahoo Financeの5分足・1時間足・日足から本誌計算、ザイFX(DZH)の参考レンジ。取引時間中の値。
水準はYahoo Financeの1時間足と日足から本誌が計算した。値は日本時間22時47分時点で、終値ではない。上から順に並べる。159.00円は9月24日の高値で、昨日(14日)の高値158.94円もこの手前で止まった。158.56円が日足の200日線である。158.19〜158.29円には1時間足の200本線と100本線が重なる。今夜のPPI直後の戻りが158.19円近辺で止まったのは、ちょうどこの帯だ。短期の売り方がここで待っていたとみてよい。
下は157.71円が日足の50日線で、22時47分の値157.73円はその真上にある。今日の安値157.58円(DZHの参考レンジでも157.58円)を割れば、10月2日の安値156.99円が次の目安になる。その下の156.40円は9月30日の安値で、米CPI前の見通し記事で書いた「156円40銭〜159円の箱」の底にあたる。
筆者の見立て:昨夜のドル高は取り下げ、ドル円は157円割れを試す
まず昨夜の見立ての始末をつける。米CPI後のドルの重要水準で、筆者は「ドル円は158.16割れが撤退の線」と書いた。今日の東京時間の朝に割れ、10時半ごろには157.62円まで下げている。ドル円についてのドル高の見立ては、ここで取り下げる。
そのうえで、筆者は10月27〜28日のFOMCまでにドル円が157円を割り込み、156.99円を試すとみている。弱気だ。根拠は3つある。
- 強い数字で金利が上がらなかった。前月比1.3%のPPIでも10年債利回りは前日比で14bp以上下がった。ドルを買う材料が出ても効かない日は、相場の主役が交代しているときだ。
- 戻りが移動平均の帯で止まった。PPI直後の高値158.19円は、1時間足の200本線と100本線の帯(158.19〜158.29円)の下限だった。戻り売りが機能している。
- 円買いの余地が残っている。投機筋の円の買い越しは3週間で半分に減った。株安が続けば、積み直しの円買いが出やすい。
正直、PPIの中身はドルに不利ではない。食品・エネルギー・流通を除いた指数でも前月比0.5%、前年同月比5.0%だ。8月の0.3%から伸びが高まっている。FOMCで利上げが続くという見方が崩れたわけではない。だから下げのスピードは速くないだろう。日柄をかけて157円台前半を固め、株がもう一段崩れたときに157円を割る、という順番を筆者は想定している。
逆になったら
撤退の線は158.35円だ。今日の高値(DZHの参考レンジ)で、1時間足の100本線158.29円のすぐ上にある。ここを1時間足の終値で上抜けて定着したら、株安で金利が下がる局面は終わったと判断し、弱気の見立ては取り下げる。その場合、ドル円は再び159.00円の壁を試しに行くだろう。159円台の上には、昨夜書いたとおり介入という値動きの外の売り手がいる点は変わらない。
もう1つの目安は米10年債利回りだ。前日の5.19%を上回って引ければ、債券が株安よりインフレを重く見始めたことになる。そのときは金利差がドル円を押し上げる元の形に戻る。
明日以降の監視リスト
| 日時(日本時間) | 材料 | 見る水準 |
|---|---|---|
| 16日(金)6時 | 15日のニューヨーク終値 | ドル円が日足の50日線157.71円の上で引けるか。米10年債は5.04%台を割るか |
| 16日(金)9時 | 東京市場の寄り付き | 日経平均が15日終値6万4,425円95銭を維持できるか。株安が止まらなければ円買いが続く |
| 29日(木)3時 | FOMCの結果発表 | 利上げなら158.35円の撤退線、見送りなら156.40円の箱の底 |
| 11月17日(火)22時30分 | 米10月の小売売上高(速報) | ガソリンスタンドを除いた伸びが前月比0.2%を上回るか |
日程は米連邦準備制度理事会と米商務省センサス局の公表にもとづく。米国の夏時間は11月1日に終わるため、11月の小売売上高の発表は日本時間22時30分になる。日経平均が急落した15日の東京市場の流れは前引けの記事に、9月CPIの中身は米9月CPIの記事にまとめた。FXの基本用語はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 9月の生産者物価指数(2026年10月15日8時30分=米東部時間公表)/米労働統計局(BLS)
- PPIの過去の推移(最終需要、季節調整済み・未調整)/セントルイス連銀(FRED)
- 9月の小売売上高速報(2026年10月15日公表)/米商務省センサス局
- PPIと小売売上高の市場予想/トレーダーズ・ウェブ(Yahoo!ファイナンス配信)
- 発表後のドル円と10年債利回り、15日の参考レンジ/ザイFX(DZHフィナンシャルリサーチ、22時6分)
- 米国債利回り(10月14日)/米財務省
- ドル円・米10年債利回り・米株価指数の5分足、1時間足、日足/Yahoo Finance
- 日経平均の15日終値/株探
- 円先物の建玉(10月6日時点)/米商品先物取引委員会(CFTC)
- 9月のFOMC声明とFOMCの日程/米連邦準備制度理事会
データ基準日:2026年10月15日(日本時間22時47分ごろ)。ドル円、米10年債利回り、米国株価指数の値はいずれも取引時間中のものであり、終値ではない。日経平均は15日の終値、米国債利回りの5.19%は米財務省が公表した14日の値である。前月比1.3%が「2022年3月以来」、前年同月比6.3%が「2022年12月以来」という比較は、BLSが今回5〜8月分を改定する前のFRED掲載データを使って本誌が計算したもの。移動平均は本誌がYahoo Financeの1時間足・日足から計算した値で、業者によって異なる。市場予想はトレーダーズ・ウェブの報道値で、BLS・センサス局の発表資料には含まれない。CFTCの建玉は10月6日時点で、その後の変化は反映していない。筆者の見立ては一つの見方であり、特定の通貨や金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。













