水曜の大陰線で踏みとどまった買い方は、木曜の寄りを見て腹をくくっただろう。デル・テクノロジーズ(DELL)は14日に11.27%下げ、15日も寄り付きから売られ、米東部時間10時(日本時間23時)時点で459.78ドルと前日終値比9.48%安だ。2日で約2割、9月17日の最高値(終値588.40ドル)からは21.9%下げた。スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)は同じ時刻に8.38%安で、財務責任者の交代が重なった。「もうはまだなり」。今夜のメモは、この格言がどこまで効くかの話である。
テープ:格下げの翌日に、もう一段の投げ
引き金は14日朝のバークレイズの格下げだ。Investing.comによれば、アナリストのティム・ロング氏はデル、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)、ネットアップ(NTAP)の3銘柄を「オーバーウエート」から「イコールウエート」に下げた。デルの目標株価は603ドルから574ドルへ引き下げた。理由として挙げたのは「企業のAI投資に意味のある転換点はまだ見えない」という点と、株価の上がりすぎである。
数字で見ると、14日のデルは572.47ドルから507.93ドルへ下げた。ナスダックの公表データで出来高は1,174万株と、前日の555万株の2.1倍だ。個人の狼狽売りだけで出る量ではない。年金や投信など大口の売りが混ざったとみるのが自然だ。そして2日目の15日も売りが止まらない。初日に投げきれなかった向きが、2日目の寄りで手を離した形である。
同じ格下げを受けたHPEは14日に8.28%安の63.11ドル、15日も10時時点で9.21%安の57.29ドルだ。ネットアップは14日に7.03%安、15日は4.48%安。サーバーとストレージの3銘柄が、そろって2日続けて売られている。1銘柄の悪材料ではなく、業種ごとの値付けのやり直しが起きている。
需給の解剖:「メモリー値上げの転嫁」という土台が揺れた
ロング氏の指摘で値動きに一番効いたのは、デルの好調の多くがメモリー価格の上昇分を販売価格に転嫁した結果だ、という部分だろう。同氏は今後2年で成長が大きく鈍り、メモリー価格は正常化し、下がる可能性もあるとみる。カバーする企業向け7銘柄は年初から約140%上がり、S&P500の14%を大きく上回った。予想PER(2027年予想利益ベース)は約21倍で、過去5年平均の約15倍より高い。決算の上振れ幅も今後は小さくなる、と書いている。
一方で、AIサーバーの売上は今期3倍の750億ドルに増え、2028年度の1,000億ドルという同氏の予想を上回っても驚かない、ともしている。つまり需要そのものは否定していない。否定したのは「この先も予想を大きく上回り続ける」という前提だ。AIサーバーの営業利益率は約5%で落ち着きつつあるとも指摘した。売上は伸びても、1台あたりの儲けは薄い。買い方が一番聞きたくない話である。
年初からの上げ幅が、そのまま投げの燃料になっている。デルの2025年末の終値は125.88ドルで、今の459.78ドルでも年初来265%高だ。含み益の大きい玉ほど、利益を守るために早く売る。格下げはその口実を与えたにすぎない。
スーパー・マイクロ:CFO交代と200日線
スーパー・マイクロは15日、米証券取引委員会(SEC)に臨時報告書(8-K)を出した。取締役会が14日付でマーク・ロング氏を最高財務責任者(CFO)に任命し、即日就任とした。同時にデビッド・ワイガンド氏はCFOの職を離れた。ロング氏は2016年から2019年まで米ウエスタンデジタルのCFOを務めた人物だ。報告書には基本給72万5,000ドル、入社一時金50万ドル、保証賞与年50万ドル、譲渡制限付き株式12万株と15万株分のストックオプションが記されている。業績や見通しについての記載はない。
人事そのものは悪材料と決まったわけではない。経験のあるCFOを外から呼んだことは、むしろ管理体制の強化と読める。だが地合いが悪いときに、財務のトップが前触れなく替わると、相場は悪いほうに受け取る。株価は14日に8.42%安の35.78ドル、15日の10時時点で32.78ドルだ。10月7日の終値44.94ドルから6営業日で27%下げた。年初来ではまだ12%高にとどまっている。
スーパー・マイクロで見る線は1本だけだ。14日までの日足で計算した200日移動平均が32.43ドルで、15日の安値32.38ドルはその真下まで来た。ここを終値で割り込めば、次に意識されるのは2025年末の終値29.27ドル、つまり年初来の上げがすべて消える水準になる。
水準の地図:デルは決算の窓425ドルが視野に
デルの水準の地図(10月15日、米東部時間10時)
読み方:14日の大陰線で50日線を割り、15日は100日線を試している。決算翌日に開けた窓の下限425.00ドルが次の目安。507.93ドルの終値回復で弱気は撤回。出所:ナスダック、Yahoo Financeの日足から本誌計算。15日の値は取引時間中。
デルの水準はYahoo Financeの日足から本誌が計算した(移動平均は14日まで)。上は507.93〜512.76ドルの帯が戻り売りの待ち場所になる。14日の終値と50日移動平均がここに重なる。その上の574ドルはバークレイズの新しい目標株価で、今の値から約25%上にある。下は100日移動平均459.88ドルを10時の時点で試しており、15日の安値は452.42ドルだ。
その下で一番大きい節目は425.00ドルだ。9月1日の終値で、決算発表の翌日(2日)に492.20ドルへ窓を開けて上げる前の水準にあたる。決算の好材料で開けた窓が埋まると、決算で買った向きの利益はすべて消える。下値の目安としては、これ以上わかりやすい線はない。決算当時の分析はデルの5〜7月期決算の記事にある。
筆者の見立て:まだ底ではない、窓埋めの425ドルまで
筆者は弱気だ。デルは今月中に425ドルの窓を埋めにいくとみる。根拠は3つある。
- 2日目の投げに大口の手が入っている。初日の出来高は前日の2.1倍で、2日目も寄りから売られた。格下げの翌日に戻らない銘柄は、売りが一巡するまで日柄がかかる。
- 理由が「成長の鈍化」で、決算まで反証できない。メモリー転嫁の話は、次の決算で数字を見るまで誰にも否定できない。それまでの間、戻りは売られやすい。
- 業種ごと売られている。HPE、ネットアップ、スーパー・マイクロが同時に下げている。個別の押し目買いより、業種のポジションを落とす売りのほうが強い。
スーパー・マイクロについては中立だ。CFO交代は中長期では悪くない材料だが、200日線の32.43ドルを終値で守れるかどうかを見てからでも遅くない。割れたら29ドル台まで待つ。
逆になったら
デルが終値で507.93ドルを回復したら、弱気の見立ては取り下げる。14日の大陰線を丸ごと取り返すことになり、格下げの売りは消化されたと判断できるからだ。スーパー・マイクロは、200日線を割り込まずに35.78ドル(14日終値)を終値で回復すれば、投げは終わったとみる。
日本の投資家への接点も書いておく。デルが公表している主要サプライヤー一覧(2025年12月公表)には、キオクシアの四日市工場が載っている。そのキオクシアは15日の東京市場で12.32%安の1万2,880円で引けた(株探)。メモリー価格の転嫁が成長の柱だというバークレイズの見立ては、裏を返せばメモリーの値段が下がれば作り手と売り手の両方が傷むという話でもある。メモリー株の値動きはCXMTの記事で追った。
明日以降の監視リスト
| 日時(日本時間) | 材料 | 見る水準 |
|---|---|---|
| 16日(金)5時 | 15日の米国株の終値 | デルが100日線459.88ドルの上で引けるか。スーパー・マイクロは200日線32.43ドル |
| 16日(金)9時 | 東京市場の寄り付き | キオクシアが15日終値1万2,880円を守れるか |
| 16日(金)夜 | 米国株の寄り付き | デルが2日続けて戻らなければ、425.00ドルの窓が次の目安 |
| 29日(木)3時 | FOMCの結果発表 | 利上げで金利が上がれば高PER株に逆風。デルの戻り売りの帯507.93〜512.76ドル |
同じ日に起きたメモリー株と光通信株の下げは、仕組みを分けてキオクシアの解説とあわせて読むと見通しやすい。スーパー・マイクロの過去の急騰の経緯は9月の記事にまとめた。
主な参照
- バークレイズの格下げ(デル、HPE、ネットアップ)、目標株価、理由/Investing.com(2026年10月14日)
- CFOの任命と報酬条件(Form 8-K、2026年10月15日提出)/米証券取引委員会(SEC)
- 各銘柄の終値と出来高(2025年12月31日〜2026年10月14日)/ナスダック
- 15日の取引時間中の株価、日足と移動平均/Yahoo Finance
- デルの主要サプライヤー一覧(2025年12月公表)/デル・テクノロジーズ
- キオクシアの15日終値/株探
データ基準日:2026年10月15日(米東部時間10時=日本時間23時)。15日の米国株の値はいずれも取引時間中のものであり、終値ではない。14日以前の終値と出来高はナスダックの公表データで、Yahoo Financeの日足と照合した。移動平均と「窓」の水準は本誌がYahoo Financeの日足から計算したもの。バークレイズのリポートの内容はInvesting.comの報道にもとづき、本誌はリポートの原文を確認していない。筆者の見立ては一つの見方であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。












