ビットコインの10月場所、中日を過ぎての番付を発表する。10月15日のニューヨーク時間正午、ビットコインは8万2,400ドル前後で、2025年10月6日の史上最高値12万6,080ドルから約35%下、7月1日の安値5万8,566ドル(日次)からは約4割戻した位置にいる。東京で日経平均が4.90%下げたこの日、アジア時間に一時8万ドルを割ったが、米国時間には半導体株が売られるなかで0.9%上げた。強気と弱気の材料を東西に並べて格付けし、10月末と年末の見通し、そして下値のリスクに順位を付ける。
今場所の番付:強気の東、弱気の西
東に強気の材料、西に弱気の材料を置いた。評価は、いま相場にどれだけ効いているかの強さで、◎が最も強く、○、△、×の順に弱くなる。
| 番付 | 東(強気の材料) | 評価 | 西(弱気の材料) | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 横綱 | 原価の壁:主な買い手の平均コストが7万4,000〜8万2,000ドルに集中 | ◎ | 米金利と利上げ:10年債5.1%、12月までの利上げ確率91% | ◎ |
| 大関 | 目標の引き上げ:シティは12カ月先11万3,000ドル、TDコーエンは年末10万9,000ドル | △ | ETFの資金流出:10月は14日までに5億3,740万ドルの流出 | ○ |
| 関脇 | 軽いレバレッジ:資金調達率は中立以下、建玉は9月のピークから15%減 | ○ | 半減期サイクルの暦:過去3回、ピークの翌年の10〜12月は下落 | ○ |
| 小結 | ハイテク株との切り離し:10月15日は半導体株安のなかで上昇 | △ | マウントゴックスの弁済期限:10月31日、残り約3万4,000BTC | △ |
総合判定は西(弱気)のわずかな勝ち越し。東西の横綱は互角だが、大関同士の取組、つまり実際に動いているETFの資金流出と、紙の上の目標の引き上げとでは、西が勝る。年初来の成績でも、ビットコインは株価指数に大きく負け越し、金にも届いていない。
2026年の年初来騰落率の番付(ドル建て、10月15日時点)
出所:ビットコインはCoinGecko(2026年1月1日の値と10月15日12時台=米東部時間の値)、ほかはstockanalysisの日次終値(2025年12月31日比、S&P500は10月14日終値、その他は10月15日の取引時間中の値)。イーサリアムは現物ETF「ETHA」で代用。
東の取組:強気の材料
横綱「原価の壁」◎
東の横綱は、大口の買い手が持つ平均コストの集まりだ。分析会社グラスノードによると、米国の現物ビットコインETFの保有者の平均コストは約8万1,500ドルで、10月8日と13日には一時これを割り込んだが、終値ではいずれも上回った。15日にも一時割り込んでいる。活発に売買する投資家の平均取得価格を示す「真の市場平均」は約7万8,000ドルだ。世界最大の保有企業ストラテジー(MSTR)は84万8,250BTCを平均7万5,444ドルで買っている(10月13日の米証券取引委員会への届け出)。保有期間の短い投資家の平均コストは7万4,338ドル(BGeometrics、10月8日)だった。
7万4,000ドルから8万2,000ドルの間に、損をしたくない買い手の原価が何層にも重なっている。ここは下げ止まりの足場になりやすい。ただし、この壁は割れた瞬間に意味が逆転する。含み損に転じた買い手の売りが、次の下げを呼ぶからだ。
大関「目標の引き上げ」△
金融機関の見通しは、9月以降に上向いた。シティは9月末、12カ月先の目標を8万2,000ドルから11万3,000ドルへ引き上げた。TDコーエンは10月8日、年末の予想を9万7,500ドルから約10万9,000ドルへ戻した。バーンスタインは8月26日時点で年末約12万5,000ドル、スタンダードチャータードは年末10万ドルで、8月21日には「低すぎるおそれがある」と述べている。一方、10xリサーチは7月4日に、10〜12月期に4万6,000〜4万7,000ドルまでの下落を予想していた。強気の目標がそろう一方、年末時点の目標はいずれも最高値(12万6,080ドル)に届かない点は押さえておきたい。シティも12カ月以内の最高値更新は想定していない。目標は何度も書き換えられており、相場を押し上げる力としては弱い。
関脇「軽いレバレッジ」○
借金で膨らんだ買いは、すでにかなり整理された。暗号資産交換業者バイナンスの先物の建玉(未決済の契約)は9月22日のピークから15%減り、先物の買い方が売り方に払う資金調達率は、9月中旬以降一度も中立の水準(8時間あたり0.01%)を上回っていない。10月14日から15日にかけては、24時間で約9億5,100万ドルの強制決済が起き、うち8億7,600万ドルが買い方だった(コイングラス)。投げ売りの燃料は、相当に燃え尽きている。
小結「ハイテク株との切り離し」△
10月15日の米国時間、フィラデルフィア半導体株指数が2.07%下げ、ナスダック総合指数も0.33%安だったのに対し、ビットコインは0.9%高、ストラテジー株は4.1%高だった。前日14日は、ナスダックとほぼ同じ1.85%安だった。1日だけの切り離しでは格は上がらない。AI関連株の調整と距離を置けるかどうかは、来週以降の取組で見極める。
西の取組:弱気の材料
横綱「金利と利上げ」◎
西の横綱は米国の金利だ。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日に政策金利を3.75〜4.00%へ引き上げた。10月14日発表の9月の消費者物価指数は前年比3.7%、食品とエネルギーを除くコアは2.6%で予想を上回り、15日の生産者物価指数は前月比1.3%と2022年3月以来の伸びだった。CMEのフェドウォッチでは、10月28日の利上げ確率が29.3%、12月9日までに少なくとも1回の利上げが91%と織り込まれている。米10年債利回りは10月7日に取引時間中で5.37%と2002年以来の水準をつけ、15日も5.09%台にある。
利息を生まないビットコインにとって、5%を超える国債利回りは重い。実際、10年債利回りが取引時間中に5.37%まで上がった10月7日、ビットコインは約2.7%下げた。翌8日もAI関連株の売りにつれて1.9%下げている。金利が下がらない限り、東の横綱「原価の壁」は守るだけの相撲になる。
大関「ETFの資金流出」○
米国の現物ETFには9月に差し引き26億4,770万ドルが流れ込み、9月21日の1日だけで9億9,900万ドルが入った。その流れが10月に逆転した。英ファーサイド・インベスターズの集計では、10月は14日までに5億3,740万ドルの流出で、7日には1日で4億8,490万ドルが出た。前回の大きな下げの前にも、同じ形があった。5月15日から6月3日までの13営業日連続の流出(約44億ドル)のあと、7月1日の安値が来ている。流出が連続しはじめたら、黄信号と読む。
関脇「半減期サイクルの暦」○
ビットコインは約4年ごとに新規発行が半分になる「半減期」を迎え、価格はこれに沿った周期で動いてきた。前回の半減期は2024年4月で、今回の天井は約17カ月半後の2025年10月6日だった。コインメトリクスのデータを本誌が集計すると、天井の翌年の10〜12月期は、2014年が−17.6%、2018年が−44.2%、2022年が−15.0%と3回とも下落している。過去の底は天井のおよそ12カ月後に来ており、単純に当てはめれば今がその時期にあたる。10月は2013年以降13回中10回上昇した月だが、今年は14日までで約2.5%安と、季節の追い風は吹いていない。
小結「マウントゴックスの期限」△
2014年に破綻した交換業者マウントゴックスの管財人は、債権者への弁済期限を2026年10月31日としている。分析会社アーカムによると、管財人の口座には9月30日時点で3万4,387BTC(約28億ドル)が残る。期限は過去に何度も延長されており、前回の延長は期限の4日前に発表された。延長されれば材料は消え、弁済に動けば売り圧力として意識される。期限前の口座の動きに注意したい。
三賞
- 殊勲賞:ブラックロックのIBIT。ETF全体が流出に傾いた10月も、IBITは14日までに2億4,450万ドルの流入を保った。保有は80万3,667BTC、純資産は657億ドルに達する。
- 敢闘賞:ストラテジー。平均取得単価をわずか9%上回る水準でも買いを続けている。ただし直近の買いは週250BTCと細り、年15億6,000万ドルの優先株の配当負担を抱える。保有ビットコインの時価に対する企業価値の倍率(mNAV)は1.15倍と、余裕は大きくない。
- 技能賞:円建てのビットコイン。円建ては約1,302万円で、最高値の1,896万円(2025年10月8日)からの下げは約31%と、ドル建ての約35%より小さい。円安が日本の保有者の下げを和らげている。
見通し:10月末と年末のシナリオ番付
まず市場の値付けを確認する。デリバティブ取引所デリビットの10月30日の期日のオプションは約123億ドルで、売り手の損失が最も小さくなる価格(最大の痛み)は7万9,000ドル、最も建玉が多いのは9万5,000ドルのコールだった。12月25日の期日は約108億ドルで、最大の痛みは7万5,000ドル。予測市場のカルシでは、2027年1月1日の価格が10万ドル以上となる確率は約15%、7万ドル未満は約19%で、中央は8万〜8万5,000ドルの帯にある。予想変動率の指数(DVOL)は39と過去1年の33〜90の幅の下の方にあり、市場は大きな動きをまだ織り込んでいない。そのぶん、動いたときに不意を突かれやすい。
これを踏まえた本誌の見立ては次のとおりだ。
| 順位 | 10月末まで(短期) | 確率 | 年末まで(中期) | 確率 |
|---|---|---|---|---|
| 1位(本命) | 7万8,000〜8万8,000ドルのもみ合い | 55% | 7万5,000〜9万5,000ドル | 50% |
| 2位(対抗) | 7万4,000〜7万8,000ドルへ下押し | 20% | 6万5,000〜7万5,000ドル | 22% |
| 3位(単穴) | 8万8,000ドル超 | 15% | 9万5,000ドル超 | 18% |
| 4位(大穴) | 7万4,000ドル未満 | 10% | 6万5,000ドル未満 | 10% |
短期の本命はもみ合い。10月28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げが見送られれば、7万9,000〜8万8,000ドルでのもみ合いを見込む。30日の期日の前は、最大の痛みの7万9,000ドル付近が意識されやすい。FOMCで利上げとなるか、ETFの流出が続けば、7万4,000〜7万8,000ドルの原価の壁を試す。9月21日の高値8万7,397ドルを終値で上抜ければ、9万ドルから9万5,000ドルのコールの山が次の目標になる。
年末の本命は7万5,000〜9万5,000ドル。12月の利上げはほぼ織り込み済みで、それ自体は下げの決め手にならない。勝敗を分けるのは、金利の天井が見えるかどうかと、ETFの資金が戻るかどうかだ。銀行の目標が並ぶ10万ドル台は、利上げ局面の終わりが見えない限り遠い。予測市場も年内に10万ドルに一度でも届く確率を約25%と見ており、年末の終値で10万ドル以上となると約15%に下がる。カルシの値付けでは年末に9万5,000ドル以上が約22%、6万5,000〜7万5,000ドルが約17%で、本誌は予測市場よりやや弱気に見ている。
撤退線:日足の終値で7万4,000ドルを割り込んだら、本命のシナリオは撤回する。短期保有者の平均コスト(7万4,338ドル)とストラテジーの平均取得単価(7万5,444ドル)を同時に割り込むことになり、原価の壁が崩れたと判断する。その場合の次の目安は6万5,000〜7万ドルで、予測市場でも年内に7万ドルまで下げる確率は約38%とされている。
下値リスクの番付
下げの引き金になりうる材料を、起こりやすさと影響の大きさで順位付けした。
- 米国の追加利上げと長期金利の上昇。10月28日に利上げとなれば、12月の2回目の利上げ(現在の確率は25.6%)まで意識される。米10年債が再び5.3%を超えれば、10月7日の下げが再現されかねない。
- 原価の壁の崩落による連鎖。ストラテジーの平均取得単価は7万5,444ドル。同社は6月に企業価値が保有ビットコインの価値を下回る局面があり、5月には4年ぶりに32BTCを売った。最大12億5,000万ドルのビットコイン売却の枠も取締役会が承認済みだ。上場マイナーの現金コストも1BTCあたり約7万5,500ドル(コインシェアーズ)で、この水準を割り込めば採掘会社の売りも加わりうる。
- ETFの連続流出。5〜6月の13営業日連続・約44億ドルの流出のあと、7月の安値が来た。10月の流出が週ごとに積み上がるかを見る。
- マウントゴックスの弁済。10月31日の期限までに延長がなく、管財人の口座が動けば、約3万4,000BTCの売り圧力が意識される。
- AI関連の信用不安の波及。AI向けデータセンターのコアウィーブの2032年償還債は利回りが15%近くまで上がり、14日にはAI向け事業に転じた採掘会社の株も9〜12%下げた。現時点でビットコイン価格への直接の波及を指摘する分析は見当たらないが、株と社債の売りが広がれば、換金売りの対象になりうる。
- 円高(日本の投資家に固有のリスク)。ドル円は158円台。日本の当局は7月に円買い介入をしており、仮にドル円が150円まで円高に振れれば、ドル建ての価格が変わらなくても円建ては約5%目減りする。技能賞の円安効果は、逆回転しうる。
番外として、規制と事故もある。米国の暗号資産の市場構造法案(クラリティ法案)は9月15日に上院の手続き採決で49対50で否決され、予測市場ポリマーケットでは年内成立の確率が約7%(9月24日時点)とされた。9月24日には交換業者ビットゲットで3億8,750万ドルの流出が起き、北朝鮮の関与が指摘されている。日本では7月15日に改正金融商品取引法が成立し、施行が2027年度なら2028年1月から約20%の分離課税となる見通しだが、年内の追い風にはならない。暗号資産と株・FXの税金の違いはこの記事で比べている。
来場所の注目取組
| 日付(日本時間) | 取組 | 見る点 |
|---|---|---|
| 10月16日ごろ | 採掘難易度の調整(約6.7%上昇の見込み) | 採掘会社の採算の悪化と売り |
| 10月28日(米国時間) | ストラテジーの臨時株主総会 | 優先株の配当を日次払いにする議案 |
| 10月29日(木)未明 | FOMCの結果(27〜28日の会合) | 利上げか据え置きか、12月への示唆 |
| 10月30日(金)17時 | デリビットの月末オプション期日(約123億ドル) | 最大の痛み7万9,000ドル、9万5,000ドルのコール |
| 10月31日(土) | マウントゴックスの弁済期限 | 延長の有無と管財人の口座の動き |
| 12月10日(木)未明 | 12月のFOMCの結果(8〜9日の会合) | 12月までの利上げ確率91%の答え合わせ |
| 12月25日(金)17時 | デリビットの四半期オプション期日(約108億ドル) | 最大の痛み7万5,000ドル |
9月21日に8カ月ぶりの高値をつけた局面はこちらの記事で、クラリティ法案の採決を前にした値動きはこの記事で扱った。10月の番付は、FOMCと月末の二つの期日を越えたところで改めて組み直す。
主な参照
- ビットコインの価格・史上最高値・円建て価格/CoinGecko、CNBC(コインベース)
- 米国の現物ビットコインETFの資金流出入/Farside Investors、IBITの保有/iShares
- ストラテジーの保有と平均取得単価(10月13日の届け出)/米証券取引委員会(SEC)、mNAV/Strategy
- ストラテジーの優先株の配当負担/The Block、6月の売却と売却枠/ForkLog
- ETF保有者の平均コストと真の市場平均/Glassnode、短期保有者の平均コスト/BGeometrics
- 政策金利の決定(9月16日)と会合日程/FRB、FRB
- 利上げ確率/CME FedWatch
- 9月の消費者物価指数・生産者物価指数/米労働統計局、米労働統計局
- 米国債利回り/米財務省
- 金融機関の予想/シティ(Decrypt)、TDコーエン(investingLive)、バーンスタイン(The Block)、スタンダードチャータード(crypto.news)、10xリサーチ(Coinpedia)
- オプションの建玉とDVOL/Deribit
- 予測市場/Kalshi、Polymarket
- 強制決済と建玉/The Block、CoinGlass
- 季節性と半減期サイクルの集計元データ/Coin Metrics
- マウントゴックスの弁済期限/マウントゴックス管財人、残高/Crypto Briefing(アーカム)
- 採掘会社の現金コスト/CoinShares、難易度調整/mempool.space
- コアウィーブの社債/ブルームバーグ、採掘会社株の下落/Benzinga
- クラリティ法案の採決/DLA Piper、ビットゲットの流出/Coinpaprika(チェイナリシス)
- 改正金融商品取引法と分離課税の見通し/CoinPost
データ基準日:2026年10月15日12時台(米東部時間、日本時間16日1時台)。ビットコインの価格は取引時間中の値で、終値ではない。ETFの資金流出入は10月14日までの集計。シナリオの確率と撤退線は本誌の見立てであり、将来の価格を保証しない。季節性と半減期サイクルの数値はコインメトリクスの日次データから本誌が計算した。オプションの最大の痛みや予測市場の確率は取得時点の値で、時々刻々と変わる。暗号資産は価格変動が非常に大きく、元本を大きく割り込むことがある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産や金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













