まず自分の負けを認めるところから始める。筆者は9月1日の決算プレビューで「決算をまたがず見送り」を◎に置き、当サイトのフェアバリューを370〜380ドルと書いた。デルは日本時間9月2日の朝に決算を出し、調整後EPSは7.04ドル。会社計画4.80ドル、市場予想4.95ドルに対して43%の上振れである。時間外で10.23%高の468.47ドル。見送りは間違いだった。そして間違い方が重要なので、今日はそこから書く。
テープ描写——売られた日の夜に、化け物が出た
皮肉な一日だった。9月1日の通常取引でデルは6.80%安の425.00ドル。前日の456.01ドルから31ドル削られている。決算を前にした投げと、金利上昇による高PER株の売りが重なった。S&P500も0.71%安だった。投げ切ったところに決算が出た。
時間外は10.23%高の468.47ドル。ここで数字の置き方に注意がいる。468.47ドルは、8月31日の終値456.01ドルに対しては2.73%高にすぎない。派手に見える時間外の上昇は、その日の下げを埋め戻した分が大半である。相場はまだ、この決算を本気で評価していない。
値動きは下のチャートで確認してほしい。期間を切り替えると、8月の高値圏からの調整と、決算前の急落までの流れが一枚で追える。
中身の解剖——筆者の弱気論は、どこで壊れたか
| 項目 | 2-4月期(前四半期) | 5-7月期(今回) | 会社計画・市場予想 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 438億ドル | 469.7億ドル(+58%) | 計画440〜450億/予想449億 |
| 調整後EPS | 4.86ドル | 7.04ドル(+203%) | 計画4.80±0.10/予想4.95 |
| 調整後営業利益 | — | 59.29億ドル(+160%) | — |
| 調整後営業利益率 | 8.3% | 12.6% | — |
| ISG売上 | 290.1億ドル | 318億ドル(+89%) | — |
| ISG営業利益率 | 10.5% | 15.0% | — |
| AIサーバー売上 | 161億ドル | 164億ドル | 計画155億ドル |
| AIサーバー受注 | 244億ドル | 609億ドル(+150%) | — |
| 受注残 | 513億ドル | 950億ドル(+85%) | — |
| 株主還元 | 21億ドル | 43億ドル | — |
| 次期(8-10月)売上計画 | — | 490億ドル(+81%) | 報道による予想 約414億ドル |
| 次期 調整後EPS計画 | — | 6.50ドル(+151%) | 報道による予想 4.48ドル |
筆者の弱気論の芯は一つだった。「AI売上は利益率の低い売上である。売上構成比が上がるほど全社の利益率は薄まる」。プレビューでは、ISGの営業利益率10.5%とAIサーバーの営業利益率が一桁台半ばという会社発言を根拠に、受注残が積み上がっても利益は積み上がらないと書いた。
この芯が折れた。ISGの営業利益率は10.5%から15.0%へ、4.5ポイント上がった。全社の調整後営業利益率も8.3%から12.6%へ跳ねている。AIサーバー売上が164億ドルと過去最高を更新しながら、利益率は薄まるどころか厚くなった。売上が+58%なのに営業利益が+160%というのは、そういうことである。
正直に書けば、この結果は筆者の想定の外にあった。理屈としては、規模の拡大で固定費が薄まり、メモリー高の転嫁が想定より効き、構成の中で利益率の高い部分が伸びた、あたりが候補になる。だが「なぜ」の確定は電話会議の中身待ちであり、いま断定はできない。確実なのは、利益率が薄まるという前提が今回は成立しなかったという事実だけだ。
受注残950億ドルという桁
数字の整合も取っておく。期初の受注残513億ドルに今期の受注609億ドルを足し、売上計上した164億ドルを引くと958億ドル。発表の「950億ドル」と符合する。受注が四半期で2.5倍になった結果だ。
桁の意味を押さえたい。受注残950億ドルは、今回引き上げられた通期AIサーバー売上計画740億ドルを上回る。すでに手元にある注文だけで、1年分の計画を超えている。プレビューで「受注残は利益の予約ではない」と書いた立場は変えないが、需要の実在を疑う段階は終わった。
本当の爆弾は、実績ではなく次期計画だった
7.04ドルという実績EPSは確かに大きい。だが値動きを数カ月動かすのは過去3カ月ではない。会社が示した8-10月期の計画である。
デルは次期の売上を490億ドル(前年比+81%)、調整後EPSを6.50ドル(同+151%)と置いた。報道によれば、発表前の市場予想は売上約414億ドル、EPS4.48ドルだった。会社の計画そのものが、市場のモデルを売上で約18%、EPSで約45%上回っている。
ここが今回の異質さだ。よくある好決算は「実績は上振れたが、次期計画は市場並み」で終わる。今回は実績が大幅に上振れ、そのうえ次期計画まで市場予想を大きく超えてきた。アナリストは今後、当期だけでなく来期以降の数字も書き換えることになる。目標株価の引き上げが続く土台がここにある。
水準の地図——上がったのに、安くなった
デル株の梯子——通期EPS計画25.50ドルに対する各水準の倍率
株価は上がったのに倍率は下がった。8月31日の456.01ドルは旧計画17.90ドルに対して25.5倍だったが、時間外の468.47ドルは新計画25.50ドルに対して18.4倍である。当サイトが7月に用いた20.7〜21.2倍という物差しを新計画に当てると527.85〜540.60ドルになる。535ドルはその中心にあたる。
通期ガイダンスは総取り替えになった。最高財務責任者は「通期の売上見通しを250億ドル引き上げ、1,920億ドルとする」と述べている。売上1,920億ドル(+69%)、調整後EPS25.50ドル、AIサーバー売上740億ドル。前回の計画は売上1,650〜1,690億ドル、調整後EPS17.90ドル、AIサーバー約600億ドルだったから、EPS計画は一四半期で42%引き上げられた。
ここが今日いちばん言いたい点だ。株価は上がったのに、倍率は下がった。8月31日の456.01ドルは旧計画17.90ドルに対して25.5倍だった。時間外の468.47ドルは新計画25.50ドルに対して18.4倍である。値段が上がったのに割高感は消えた。分子より分母のほうが速く増えたからだ。
そして7月に置いた当サイトの物差しが、そのまま使える。当時のフェアバリュー370〜380ドルは、EPS17.90ドルに対する20.7〜21.2倍という倍率だった。同じ倍率を新しい25.50ドルに当てると、527.85〜540.60ドルになる。プレビューで「456ドルが約21倍で正当化されるにはEPSが約21.70ドルへ上がる必要がある」と書いた。会社が出してきたのは25.50ドルだった。自分で置いた再審条件が、想定より強い形で満たされた。
筆者の見立て——強気に転じる。まず500ドル、抜ければ535ドル
見立てを言い切る。強気に転じる。数営業日で500ドルを試し、52週高値の514ドルを終値で抜ければ530〜550ドルまで走るとみている。根拠は四つ。
根拠1。倍率が18.4倍まで落ちた。この会社が過去1年に付けてきた予想倍率は23〜25倍台である。18.4倍は、成長が加速しているさなかの水準としては低い。500ドルでも19.6倍、514ドルで20.2倍、535ドルでようやく21.0倍にすぎない。550ドルでも21.6倍である。
根拠2。次期計画が市場モデルを45%上回った。実績の上振れは一度で織り込める。だが会社計画が市場予想を大きく超えた場合、アナリストは来期以降の数字を順に書き換える。目標株価の引き上げは一日では終わらない。これが数日から数週間かけて効く。
根拠3。時間外の上げ幅が小さすぎる。468.47ドルは8月31日終値からわずか2.73%高だ。EPS計画が42%上がり、次期計画が予想を45%上回った決算に対する反応として、これは軽い。決算前にオプション市場が織り込んでいた変動幅は10〜11%程度と報じられていた。その幅すら、8月31日を起点にすれば使い切っていない。
根拠4。下期計画になお保守の癖が残る。通期AI売上740億ドルから上期325億ドルを引くと下期415億ドル、四半期あたり207億ドル。上期平均162億ドルに対し+28%だ。受注609億ドル、受注残950億ドルという手元在庫を考えれば、これでもまだ低い可能性がある。前回筆者は「下期の減速計画は保守設定」と読み、それは当たった。
| 時間軸 | 筆者の予想レンジ | その水準のPER | 条件 |
|---|---|---|---|
| 翌営業日(9月2日) | 465〜490ドル | 18.2〜19.2倍 | 時間外の水準を通常取引が追認するか |
| 3〜5営業日 | 490〜515ドル | 19.2〜20.2倍 | 目標株価の引き上げが出そろう |
| 強気ケース | 514ドル突破 | 20.2倍 | 52週高値。ここから上に価格帯の抵抗が薄い |
| 1〜2週間の目標 | 530〜550ドル | 20.8〜21.6倍 | 当サイトが7月に置いた21倍の物差しと一致 |
| 弱気ケース | 456ドルを回復できず | 17.9倍 | 見立てが早すぎたことになる |
514ドルを明確に抜けた場合、そこから上には過去の価格帯による抵抗がほとんど残っていない。節目を抜けた後のほうが値動きは速くなりうるとみている。順張りの資金、AIテーマの投資信託、売り方の買い戻し、目標株価の引き上げが同じ方向に重なるからだ。
逆になったら(撤退ライン)。9月2日の米国市場で終値が456.01ドル(8月31日終値)を回復できない場合、この見立ては早すぎたことになる。時間外の上げを場中に消す動きは、決算を評価していない証拠だからだ。さらに425.00ドル(9月1日終値)を終値で割り込んだ場合は、強気転換そのものを取り消す。その水準は、市場が7.04ドルという数字より別の何か、たとえば利益率の持続性や受注の質を警戒したことを意味する。なお420〜430ドル台まで戻る展開になった場合、ファンダメンタルズ面では決算前より明らかに安い価格になる点も併せて置いておく。
最大の敵はデル自身ではない。マクロである。9月1日は原油高と長期金利上昇でナスダックが売られ、デルもその流れで6.80%下げた。米10年債利回りが4.78%まで上がり、金曜には米雇用統計が控える。市場全体がリスクオフに傾けば、好材料を売る展開はありうる。だからこそ、456ドルの回復を最初の関門に置いている。
明日の監視リスト——最初に反応するのは東京だ
時差の順番が大事だ。デルの決算は日本時間9月2日の朝5時台に出た。米国市場が開くのは同日22時30分。つまりこの決算を最初に売買する市場は、9月2日9時の東京である。
| 銘柄 | 9月1日終値 | 筆者の見立て | 理由 |
|---|---|---|---|
| アドバンテスト(6857) | 33,380円 | 買われる | AIサーバー数量の拡大は検査工程に直結する。受注609億ドルは数量の証拠 |
| ディスコ(6146) | 56,590円 | 買われる | 高値比−38%と出遅れており、戻り余地が大きい |
| イビデン(4062) | 20,545円 | 買われる | AI向けパッケージ基板。数量連動 |
| キオクシア(285A) | 51,000円 | 注目 | デルがメモリー高を転嫁しながら利益率を上げた。供給側の価格支配力を裏づける |
| 東京エレクトロン(8035) | 54,980円 | 連動は限定的 | 装置需要は各社の設備投資で決まる。指数寄与度で機械的に動く点のみ注意 |
もう一つ、同じ水曜の米国市場引け後にブロードコムの決算が控える。ただし読み替えには注意がいる。デルが積んでいるのは主にエヌビディアのGPUを載せたサーバーであり、ブロードコムが売るのはハイパースケーラー向けのカスタム半導体だ。顧客も製品も違う。デルの好決算は「AIインフラ投資が加速している」という広い意味での追い風にはなるが、ブロードコムの受注をそのまま保証しない。今週の日程で書いたとおり、順番はデル、ブロードコム、金曜の米雇用統計である。
それでも残る三つの問い
- 利益率の改善は続くのか。今回15.0%まで上がったISGの営業利益率が、次の四半期も維持されるかは未確認である。一度の四半期で構造が変わったと決めるのは早い
- 受注609億ドルの中身は誰か。前年度の年次報告書では1社が売上の12%を占めていた。受注が2.5倍になったいま、集中度が上がっている可能性がある。四半期報告書の注記で確認する必要がある
- 粗利率はどうだったか。発表の見出し部分に粗利率の記載がなかった。営業利益率は明確に改善したが、粗利段階で何が起きたかは資料の詳細を待つ
筆者はこの銘柄で一度外している。370〜380ドルと書いた株価は、いま468ドルにいる。だからこそ、今回の強気転換にも同じ確率で間違う可能性があることは書いておく。撤退ラインを先に置いたのはそのためだ。
重要な注意事項。本記事に記載した目標株価535ドル、および各銘柄の見立ては、すべて執筆時点における筆者個人の予想であり、将来の株価を保証するものではない。デルの株価は9月1日の通常取引だけで6.80%下落しており、決算前後の値動きは極めて大きい。時間外の価格は流動性が薄く、通常取引の始値がこの水準から大きく乖離することがある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断は必ずご自身の責任と判断において行っていただきたい。
主な参照
- 2027年度第2四半期決算および通期見通し(2026年9月1日発表)/デル・テクノロジーズ
- 臨時報告書(Form 8-K、2026年9月1日提出)/米証券取引委員会
- 株価・時間外価格・市場予想(2026年9月1日)/CNBC、TheStreet
データ基準日:2026年9月1日(米国市場終値および時間外取引、日本時間9月2日朝5時30分時点)。日本株は9月1日の東京市場終値。株価・為替は常に変動し、記載の数値は執筆時点のものである。












