10月15日の番付を発表する。東の横綱は台湾積体電路製造(TSMC)の決算である。7〜9月期の売上高は自社見通しの上限を超え、10〜12月期は最大543億ドルを見込んだ。一方、西の序二段に落ちたのはアドバンテストで、14.96%安、1銘柄で日経平均を1,303円11銭押し下げた。TSMCの最大の顧客層が買い続けていると数字で示した日に、東京の半導体株はそろって大きく下げた。
日経平均の終値は6万4,425円95銭で、前日比3,318円34銭安(4.90%安)、6日続落だった。前引けは3,255円23銭安。TSMCは台湾市場の取引終了(日本時間14時30分)後に決算を発表したが、東京の大引けの下げ幅は前引けより63円11銭広かった。TOPIXは2.38%安の3,999.34で、下落率は日経平均の半分以下にとどまった。日本経済新聞は売りの理由に、米国の早期利上げ観測の再燃、高止まりする原油、米コアウィーブの社債急落を挙げている。業績ではなく、金利と資金繰りへの不安で売られた一日である。
番付表——10月15日の勝ち越しと負け越し
| 番付 | 力士(銘柄・材料) | 15日の結果 | 日経平均への寄与 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | TSMCの7〜9月期決算 | 売上高467.2億ドル、自社見通しの上限を2.0%上回る | —(東京の取引時間中に発表) | ◎ |
| 西の横綱 | 良品計画(7453) | 4,804円、+9.51%、上場来高値 | +28.11円 | ◎ |
| 東の大関 | 武田薬品工業(4502) | 6,183円、+4.99%、約8年8カ月ぶり高値 | +9.91円 | ○ |
| — | (以下、負け側) | |||
| 西の序二段 | アドバンテスト(6857) | 34,340円、−14.96% | −1,303.11円 | × |
| 東の三段目 | 東京エレクトロン(8035) | 10,365円、−7.78% | −442.45円 | × |
| 西の三段目 | ソフトバンクグループ(9984) | 4,852円、−9.33% | −403.72円 | × |
負け側の3銘柄だけで2,149円28銭、下げ幅全体の64.8%になる。アドバンテスト1銘柄でも39.3%だ。日経平均の構成225銘柄では、上昇87に対し下落136だった。指数の下げ幅は歴史的だが、売りが集中した先ははっきりしている。半導体とAI関連の値がさ株である。寄与度の仕組みはこの解説にまとめた。
10月15日の日経平均への寄与度(円)
読み方:日経平均の下げ幅3,318円34銭のうち、上位3銘柄で2,149円28銭(64.8%)を占めた。上昇側で最も大きく押し上げたのはファーストリテイリングの45円31銭。出所:株探(2026年10月15日の東京市場の終値)。
東の横綱・TSMCの決算——◎
7〜9月期の売上高は1兆4,942億4,000万台湾ドルで前年同期比50.9%増、ドル建てでは467億2,000万ドルだった。7月に示した自社見通し(446億〜458億ドル)の上限を2.0%上回る。純利益は7,630億6,000万台湾ドルで68.7%増、1株利益は29.43台湾ドルで、四半期の純利益としては4〜6月期の7,065億6,000万台湾ドルを上回り、過去最高を更新した。月次の売上高は10月8日に公表済みで、その時点の分析からの新しい材料は、利益率と10〜12月期の見通しである。
新しい材料は3つある。1つ目は10〜12月期の見通しで、売上高は523億〜543億ドル。中央値の533億ドルは7〜9月期の実績より14.1%多い。売上総利益率は65〜67%、営業利益率は56.5〜58.5%を見込む。2つ目は顧客の構成で、HPC(AI向けを含む高性能計算)が売上高の68%を占め、前期比22%伸びた。北米の顧客が79%を占める。3つ目は利益率の低下で、売上総利益率は66.4%と前期から1.3ポイント下がった。会社は最先端の2ナノ(N2)の立ち上げ費用を理由に挙げる。2ナノはウエハー売上高の8%と、前期の3%から拡大した。
TSMCの四半期売上高:実績と見通し(億ドル)
読み方:7〜9月期は7月の見通しの上限を超え、10〜12月期の見通しの中央値は7〜9月期の実績より14.1%多い。出所:TSMCの7〜9月期決算説明会資料・決算説明資料(2026年10月15日)。見通しは1ドル=31.8台湾ドルが前提。
日本の投資家にとって最も重要なのは設備投資の数字だ。7〜9月期は138億4,000万ドルで、1〜9月の累計は406億4,000万ドルになった。この資金は露光、成膜、洗浄、検査といった装置の購入に充てられ、東京エレクトロンやスクリーン、ディスコ、レーザーテックの売上高につながる。前日のASML決算に続き、装置を買う側の需要に陰りは見えない。判定は◎。数字の上では非の打ちどころがない。
西の序二段・アドバンテスト——×
14.96%安の3万4,340円。下落率は日経平均の構成225銘柄で最も大きく、2位のSUMCO(13.85%安)、3位のレーザーテック(13.56%安)を上回った。日経平均を1,303円11銭押し下げ、指数の下げ幅の約4割を1銘柄で占めた。同社はAI向け半導体の検査装置で稼ぐ。AIへの期待をもっとも多く織り込んできた銘柄が、もっとも速く売られた。
ここが番付を読むときの勘所になる。TSMCの好決算は、アドバンテストの土俵際を救わなかった。売りの理由が需要ではなく、米金利と資金繰りへの不安、つまり株価の評価倍率の側にあるためだ。好材料を受けて戻さなかったことは、15日の売りの性質を物語る。判定は×。決算発表は10月28日の予定で、そこで受注の数字が示されるまで、評価倍率の縮小に抵抗する材料は乏しい。
東の三段目・東京エレクトロン、西の三段目・ソフトバンクグループ——×
東京エレクトロンは7.78%安の1万365円で、寄与度は−442円45銭。TSMCの設備投資から最も直接に恩恵を受ける銘柄の一つだが、その好決算を受けても大引けまでに下げを縮めることはなかった。半導体製造装置ではディスコが8.47%安、スクリーンが10.58%安と、そろって負け越した。
ソフトバンクグループは9.33%安の4,852円で、寄与度は−403円72銭。同社はAI投資の資金を借り入れと社債に頼る度合いが大きく、米金利の上昇とAI関連の社債安がそのまま株価の重しになる。キオクシアホールディングスも12.32%安(寄与度−128円13銭)だった。ここまでの銘柄はいずれもAIへの投資マネーの流れに敏感で、TSMCの好決算とは別の土俵で負けた。
西の横綱・良品計画と東の大関・武田薬品——◎と○
良品計画は9.51%高の4,804円で、上場来高値を更新した。14日の取引終了後に示した2027年8月期の計画は、売上高が9.8%増の1兆140億円と初めて1兆円を超え、営業利益は10.2%増の1,140億円である。外需のAIとは関係のない、国内外の既存店と出店で稼ぐ銘柄が買われた。判定は◎。
武田薬品工業は4.99%高の6,183円で、約8年8カ月ぶりの高値をつけた。株探によると、ナルコレプシータイプ1の治療薬「オーゼイフル」(一般名オベポレクストン)を日本と中国で発売したと発表したことが材料視された。米国は規制物質の分類手続きを経て来月の発売を予定する。判定は○。寄与度は9円91銭と小さく、指数を支える力士ではなかった。
三賞——殊勲・敢闘・技能
殊勲賞はファーストリテイリングである。0.74%高で寄与度は+45円31銭と、225銘柄の中で最も指数を押し上げた。3,318円の下げに対しては焼け石に水だが、上昇側で最大の寄与を残した。
敢闘賞は台湾のTSMC株に贈る。15日の終値は2,440台湾ドルで、2.01%安にとどまった。台湾加権指数が3.41%安(1,655.96ポイント安)と、台湾メディアが史上6番目と伝える下げ幅を記録した日に、指数の下落率を下回った。ただし台湾の終値は決算発表の前に確定している。決算への評価は今夜の米国預託証券(ADR)と、16日の台湾市場で決まる。
技能賞はTOPIXだ。2.38%安と、日経平均の4.90%安の半分以下で踏みとどまった。韓国総合株価指数(KOSPI)は取引時間中の13時17分(現地時間)に8.13%安まで下げ、12時38分には売買を20分間止めるサーキットブレーカーが発動した。半導体比率の高い指数ほど深く沈んだ一日だった。
見立て——好決算が効かない相場で、何を待つか
筆者の見立てでは、15日の下げは需要の問題ではなく、評価倍率の問題である。TSMCの10〜12月期見通しは前期比14%増、設備投資の累計は9カ月で400億ドルを超えた。それでも装置株が売られたのは、米国の利上げ観測で、将来の利益を今の株価に引き直す割引率が上がったためだ。米9月CPIの上振れがその起点になった。この種の売りは、業績が良くても金利が落ち着くまで止まりにくい。
シナリオは2つに分けて考える。1つ目は、今夜のTSMCのADRと16日の台湾株が好決算を素直に評価する場合だ。台湾のTSMC株が14日終値の2,490台湾ドルを回復すれば、東京の装置株にも買い戻しが入りやすい。2つ目は、好決算でもADRが下げる場合で、これは「良い材料が効かない」局面が続く合図になる。その場合、東京の半導体株の下げ止まりは各社の決算(10月28日〜30日)か、米金利の低下を待つことになる。見立てを撤回する条件は、TSMCが説明会で来年の設備投資の抑制や、AI顧客の発注先送りに言及したと確認された場合だ。そのときは評価倍率ではなく需要の問題になり、前提が崩れる。
来場所の注目取組
| 日付 | 取組 | 見どころ |
|---|---|---|
| 10月15日夜(米国時間15日) | TSMCのADR、米国の半導体株 | 決算への最初の評価。好決算でも下げるかどうか |
| 10月16日 | 台湾市場のTSMC株 | 15日終値2,440台湾ドルから、14日終値2,490台湾ドルを回復できるか |
| 10月28日 | アドバンテストの決算発表 | AI向け検査装置の受注と通期見通し |
| 10月30日 | 東京エレクトロン、キオクシアの決算発表 | TSMCの設備投資が受注にどこまで表れるか |
13日にキオクシアと東京エレクトロンが急落した背景はこの記事で、前四半期のTSMCとASMLの好決算後に株価が下げた経緯はこちらで扱っている。
主な参照
- TSMC 2026年7〜9月期決算(売上高、利益、利益率、技術別・用途別・地域別の構成、設備投資)/TSMC 決算説明資料(Management Report)、TSMC プレスリリース
- TSMC 2026年10〜12月期の見通しと7〜9月期の当初見通し/TSMC 決算説明会資料
- TSMCの決算発表が台湾市場の取引終了後だったこと/風傳媒
- 台湾加権指数とTSMC株の15日終値/經濟日報、ETtoday
- 日経平均とTOPIXの終値、寄与度、構成銘柄の騰落数、各銘柄の終値と決算発表予定日/株探
- 日経平均の前引け/共同通信(Yahoo!ニュース)
- 15日の売りの背景(利上げ観測、原油、コアウィーブの社債)/日本経済新聞
- 良品計画の2027年8月期計画、武田薬品の「オーゼイフル」発売と株価/株探
- 武田薬品「オーゼイフル」の日本での承認/武田薬品工業
- KOSPIの下落率とサーキットブレーカー/The Korea Herald
データ基準日:2026年10月15日の東京市場と台湾市場の終値。TSMCの株価は決算発表前の終値であり、決算への市場の評価は反映していない。KOSPIの8.13%安は現地時間13時17分時点の取引時間中の数値で、終値ではない。寄与度の集計は情報ベンダーにより差がある。武田薬品の発売に関する記述は株探の報道にもとづき、本稿執筆時点で同社の該当リリースは直接確認できていない。TSMCの決算説明会での発言内容は、本稿執筆時点で反映していない。番付と判定は本誌の整理であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













