10月21日水曜、午前9時29分。東京・兜町の株価ボードで、日経平均株価は6万5,404円63銭を映していた。前日比1,329円21銭高。前の晩、太平洋の向こうでスペースXが上場後初の黒字決算を出し、イーロン・マスクはテスラとの統合を話し合う特別委員会の設置を明かしていた。その熱が、寄り付きから30分で東京の半導体株に燃え移っていた。
だが、それがこの日の頂点だった。15時30分の大引けは6万4,621円24銭、545円82銭高。3日ぶりの反発ではあったが、朝に積み上げた上げ幅の59%を、残りの6時間で手放した。TOPIXは34.52ポイント高の4,043.73で、上げ幅の6割強を守っている。崩れたのは市場全体ではなく、指数を朝に押し上げた一握りの値がさ株だった。
10月21日の日経平均:高値は9時29分だった
読み方:上げ幅のピークは寄り付きから29分後。午後は安値近辺で2時間以上もみ合った。出所:株探(日経平均の始値・高値・安値・終値と時刻)、ヤフー・ファイナンスの15分足。
前夜:太平洋の向こうからの知らせ
話は20日の米国にさかのぼる。スペースXが発表した7〜9月期決算は、売上高が前年同期比161%増、純利益は44億ドルで黒字に転じた。株探によると、売上高と1株利益はいずれも市場予想を上回った。ITmediaによると、売上高は145億7,500万ドルで、「SI」に改称したAI事業の売上高は830%増の75億6,000万ドルと全体の半分を超えた。最高経営責任者(CEO)のマスクは同じ日、テスラとの経営統合を議論するため、両社が特別委員会を設けたと明らかにしている。
ニューヨークの株式市場は、この知らせを半分だけ喜んだ。ダウ工業株30種平均は529ドル85セント高の5万2,495ドル88セントと1.01%上げた。一方でナスダック総合指数はほぼ横ばい、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は小幅に下げて終わっている。AI相場の復活を告げる知らせは、ニューヨークではまだ確信に変わっていなかった。
9時:東京は先に走った
東京はニューヨークより先に走った。日経平均は810円高の6万4,885円95銭で寄り付き、29分後に高値を付ける。主役は前日まで売られていた半導体株だった。アドバンテストは一時3万5,780円と前日比5.6%高、キオクシアホールディングスは一時1万4,145円と7.6%高まで買われた。ソフトバンクグループも一時5.3%高の4,794円を付けている。
株探の昼の記事によれば、宇宙開発関連の中小型株も「一斉蜂起の様相」だった。スペースXへの出資企業とされるアステリアが急伸し、アストロスケールホールディングスやシンスペクティブも買われた。前夜の決算は、東京では二つの顔を持っていた。AI半導体の復活と、宇宙という新しいテーマである。この日の朝の動きは寄り付き1時間の番付に詳しい。
9時45分:売り手が戻ってきた
高値から15分後、流れが変わる。ヤフー・ファイナンスの15分足では、9時45分からの15分間で日経平均は6万5,262円から6万4,757円へ、500円あまり下げた。前日20日の東京は841円安で、後場にアドバンテストが失速して下げ幅を広げていた。前日の大引けの記事が描いたその売り手が、朝の高値で戻ってきた形だ。
10時台に一度は6万5,100円台まで戻した。だが11時の15分足で再び6万4,790円まで押し戻され、前場はその近くで終わる。昼休みのあいだに為替は少しだけ円高に振れた。ドル円は12時30分からの30分間で158円24銭から158円02銭まで下げている。動きは小さいが、買い手を勇気づける材料にはならなかった。
13時16分:安値、そして膠着
後場は静かに沈んだ。13時16分、日経平均はこの日の安値6万4,558円60銭を付ける。上げ幅は483円まで縮んでいた。そこから先は、2時間以上にわたって6万4,600円から6万4,800円のあいだを行き来するだけだった。15時30分の終値は、安値からわずか62円64銭上である。
終わってみれば、朝の主役たちはそろって上げ幅を削られていた。アドバンテストは高値から1,340円下げて3万4,440円、上昇率は5.6%から1.7%へ。キオクシアは1万3,510円で2.8%高、ソフトバンクグループは4,622円で1.5%高にとどまった。東京エレクトロンは一時3.4%高から0.7%高まで縮んだ。株価はいずれもヤフー・ファイナンスの日足による。
| 銘柄 | 終値 | 前日比 | 日中高値の上昇率 | 日経平均への寄与 |
|---|---|---|---|---|
| アドバンテスト(6857) | 34,440円 | +1.7% | +5.6% | +122.98円 |
| ソフトバンクグループ(9984) | 4,622円 | +1.5% | +5.3% | +55.02円 |
| イビデン(4062) | 9,500円 | +3.6% | +8.5% | +44.90円 |
| 東京エレクトロン(8035) | 10,160円 | +0.7% | +3.4% | +37.92円 |
| TDK(6762) | 2,902.5円 | +2.4% | +4.0% | +34.64円 |
| KDDI(9433) | 2,910円 | −1.1% | +0.1% | −12.74円 |
| ファーストリテイリング(9983) | 75,210円 | −0.2% | +0.6% | −12.14円 |
寄与度の上位5銘柄で合計295円46銭。日経平均の上げ幅545円82銭の54%を、5社だけで作っている。逆にいえば、朝の1,329円高を作ったのも、それを削ったのも、ほぼ同じ顔ぶれだった。
同じ頃、プライム市場の大半は
指数の外では、別の物語が進んでいた。東証プライム市場の値上がりは979銘柄、値下がりは520銘柄、変わらずは48銘柄。33業種のうち24業種が上げた。上昇率の首位は非鉄金属の2.62%で、銀行業2.33%、保険業2.12%、証券業1.66%と金融株が続く。下げたのは小売業の0.88%安を筆頭に、パルプ・紙、鉱業、水産・農林業、輸送用機器だった。
TOPIXの値動きがこの違いを映している。TOPIXの安値は寄り付き直後9時2分の4,035.00で、高値は9時44分の4,063.58。午後にはほとんど崩れていない。日経平均が上げ幅の41%しか残せなかったのに対し、TOPIXは63%を残した。半導体の値がさ株から資金が抜けても、銀行や保険には買いが残っていたことになる。この日の終値ベースの二つの指数の上昇率は、0.85%と0.86%でほぼ並んだ。
個別では、東京応化工業が前日比4.8%高の8,291円、AIメカテックが3.8%高の6,320円と買われた。株探によると、両社は20日の取引終了後、次世代の半導体パッケージ向け装置を手がける合弁会社の設立を発表している。宇宙株では、アストロスケールが5.7%高の1,070円で引けた。
エピローグ:テスラの数字を待つ
朝の熱を東京が持ち続けられなかった理由は、まだ答えの出ていない問いにある。前夜の知らせはスペースXのものだった。統合の相手であるテスラの数字は、まだ出ていない。テスラは21日の米国市場の取引終了後に7〜9月期決算を発表し、説明会は日本時間22日の6時30分に始まる。テスラ決算のプレビューによると、市場予想は調整後1株利益0.45ドルで、前年同期を1割下回る。
その先にも日付が並ぶ。日本時間29日3時には米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果が出て、同じ29〜30日には日銀の金融政策決定会合がある。朝9時29分の6万5,404円63銭は、それらの答えが出るまで、この週の天井として記憶されることになるかもしれない。ドル円の見立ては同日のドル円見通しにある。
主な参照
- 日経平均の始値・高値(9時29分)・安値(13時16分)・終値、前日終値/株探(日経平均)
- TOPIXの始値・高値(9時44分)・安値(9時2分)・終値/株探(TOPIX)
- 騰落銘柄数、日経平均への寄与度/株探ニュース(21日大引け)
- 東証33業種の騰落率/株探(フィスコ)
- 宇宙開発関連株、スペースXの決算の市場予想比、東京応化工業とAIメカテックの合弁/株探(話題株ピックアップ昼刊)
- スペースXの7〜9月期決算(売上高161%増の145億7,500万ドル、純利益44億ドル、AI事業830%増)/ITmedia NEWS
- テスラとスペースXの特別委員会の設置/ITmedia NEWS
- 日経平均とドル円の15分足・30分足、個別株の日足、米国株の終値/ヤフー・ファイナンス
- 日銀の会合日程/日本銀行
データ基準日:2026年10月21日の東京市場の終値。ドル円と日経平均の時間帯別の値は取引時間中の15分足・30分足で、終値ではない。米国株は20日の米国市場の終値。寄与度の集計は情報ベンダーにより差がある。スペースXの決算の内容と市場予想比は報道にもとづく。テスラの決算の市場予想は本誌の別記事にもとづくもので、発表前の値である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















