20日のニューヨークで157円83銭まで売り込んだ向きは、引けの158円27銭を見て舌打ちしただろう。米住宅指標の弱さと、米国とイランの合意が近いという未確認の報道でドル円は一段安になった。だが報道が否定されると、下げはほぼ全部戻った。東京の高値158円60銭は200日移動平均線とほぼ同じ水準で、上も下も抜けなかった1日である。
新しい材料は2つある。1つは、日銀が10月29〜30日の会合で利上げを見送る公算が大きいというロイターの報道。もう1つは、ニューヨークで158円を割り込んだのに定着しなかったという値動きそのものだ。筆者の見立ては先に書いておく。10月30日の日銀会合までは、158円台後半から159円ちょうどでの戻り売りが本線。下値のめどは157円40銭前後、損切りは159円10銭の上抜けに置く。
20日のテープ——158円を割っても続かなかった
日銀が公表した東京市場のドル円は、9時が158円52〜53銭、17時が158円07〜09銭。東京時間の値幅は158円04銭から158円60銭だった。朝方の高値から下げたきっかけは、20年国債入札の強い結果と、日銀が10月の利上げを見送るとの報道である。後者は普通なら円売りの材料になるが、この日は入札の強さに押されて円が買われた。
財務省によれば、20年国債入札の応札額は3兆1,390億円、落札額は5,371億円で、応札倍率は約5.84倍。前回9月の約4.0倍から跳ね上がった。外為どっとコムやみんかぶは過去最高の倍率と伝えている。平均落札利回りは3.723%、テール(平均価格と最低価格の差)は7銭と小さい。超長期債に買い手がいるとわかれば、円の長期金利が急騰する不安は和らぐ。円が買われたのはその流れだ。
ニューヨーク時間に入ると、9月の米住宅着工件数が前月比5.2%減の年率122万1,000件、中古住宅販売の仮契約指数が7.3%減と、住宅関連の指標が2本とも弱かった。そこへ米イラン合意が近いとの報道が重なり、原油と米金利が下げ、ドル円は157円83銭まで売られた。ところが協議に関わる外交官がこの報道を否定すると、相場は戻した。外為どっとコムの集計で、ニューヨークの終値は158円27銭である。
この日のテープで覚えておくべきは、158円を割り込んでも売りが続かなかったことだ。外為どっとコムの注文情報は、157円台後半に個人投資家の買い注文が並んでいたと伝えている。下では個人の買いが受け止め、上では200日線が蓋をする。今のドル円は、この2つに挟まれている。
需給の解剖——日銀は待ち、FRBは12月
ロイターは20日、4人の関係者の話として、日銀は円安が一段と進んで輸入物価を押し上げない限り10月の会合では政策金利1.25%を据え置く公算が大きいと報じた。原油高を受けて2027年度の物価見通し(7月時点で2.4%)を小幅に引き上げる可能性はあるが、12月の利上げの扉は開けておくという。関係者の1人は「急ぐ理由はほとんどない」と述べた。
市場もそう見ている。米ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)によれば、スワップ市場が織り込む10月30日の利上げ確率は5%未満、12月18日は80%である。米国側は、FRBが9月16日に政策金利を3.75〜4.00%へ引き上げたあとで、10月28日の利上げ確率は20%未満、12月9日の0.25%利上げはほぼ完全に織り込まれている。つまり日米とも、次の一手は12月という読みでそろっている。10月の2つの会合は、どちらも「据え置き」が前提だ。
金利差で見ても動きにくい。米財務省によれば、20日の米2年債利回りは4.79%、10年債は5.12%で、前日の4.77%、5.15%からほとんど変わっていない。ドル円を一方向に押す力は、金利からは出てこない。
そして介入の記憶がある。財務省の公表では、7月30日から8月26日までの為替介入は15兆3,993億円。その後8月27日から9月28日までは実施ゼロだった。片山さつき財務相は16日、「高い緊張感を持って金融市場の動向を注視」と述べている。159円台の上は、当局の目を意識しないわけにはいかない。
水準の地図
ドル円の水準の地図(円)
読み方:上は200日線と9月24日の高値、下は20日の安値と週間の支持線。筆者は158円60銭〜159円の戻りを売り、157円40銭前後で利益確定、159円10銭超えの終値で撤退とみる。出所:日本銀行、外為どっとコム(移動平均線・ピボット)、本誌。
上から順に見ていく。100日移動平均線は外為どっとコムの計算で159円46銭、本誌がECBの参照レートから計算した値も159円44銭とほぼ一致する。その手前の159円03銭は9月24日の高値、158円95銭は10月14日の高値。この2本がすぐ上の壁だ。200日線は158円57〜58銭で、20日の東京高値158円60銭はちょうどここで止まった。
下は、158円16銭が外為どっとコムの週間ピボット、157円83銭が20日の安値、157円64銭が25日移動平均線、157円36銭が週間の第1支持線である。157円台前半まで落ちれば、20日に買った個人の持ち高が含み損に変わる。そこで投げが出るかどうかが、次の値幅を決める。
筆者の見立て——日銀会合までは戻り売り
弱気に傾けている。根拠は3つだ。
- 200日線で止まった。外為どっとコムは20日朝の時点で、200日線が意識されて伸び悩んでいると伝えていた。その日の東京高値158円60銭も、この線とほぼ重なった。節目で止まった相場は、すぐに抜けるより、一度下へ振れることが多い。
- 円の長期金利に買い手が戻った。20年債の応札倍率5.84倍は、超長期債の売り一辺倒が止まったことを示す。日本の金利上昇が円の信認を揺らすという筋書きは、少なくとも今週は後退した。
- 上には当局がいる。夏の介入から2カ月半。159円台に乗せれば財務相の発言は強まるとみる。上値を追う買い手にとって、リスクとリターンの釣り合いが悪い。
戦術としては、158円60銭から159円ちょうどまでの戻りを売り、157円40銭前後で利益を確定する。値幅は1円20銭から1円60銭。外部の見方では、UOBが1〜3週間の値幅を157円50銭から159円05銭とし、ウエストパックは12月末に156円、ゴールドマン・サックスは12カ月後に150円という予想を出していると報じられている。中期で円高方向という点は、筆者の見立てと同じ向きである。
逆になったら——159円10銭を終値で超えたら撤退
見立てが外れる筋も書いておく。23日の全国消費者物価指数が予想を下回れば、日銀の12月利上げの確率が下がり、円は売られやすくなる。BBHによれば、市場予想は生鮮食品を除く総合で前年比2.1%上昇、8月は1.7%だった。もう1つは原油だ。中東情勢が再び悪化して原油が上がれば、日本の貿易赤字が膨らむという連想で円が売られる。
撤退ライン:ニューヨーク終値で159円10銭を上回ったら、この見立ては捨てる。9月24日の高値159円03銭を上抜けて引けるということは、200日線と2本の高値をまとめて抜けたということだ。そのときは100日線の159円46銭、さらに外為どっとコムの第2抵抗線159円56銭が次の目標になり、戻り売りの根拠はなくなる。
監視リスト(日本時間)
| 日時 | 材料 | 見るところ |
|---|---|---|
| 10月21日 8時50分 | 9月の貿易統計 | 赤字の幅。原油高の影響がどこまで出たか |
| 10月22日 2時 | 米20年国債入札 | 米長期金利の需給。日本の20年債との対比 |
| 10月23日 8時30分 | 9月の全国消費者物価指数 | 生鮮食品を除く総合の予想は2.1%。下振れなら円売り |
| 10月29日 3時 | 米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果 | 据え置きが前提。12月利上げの示唆の強さ |
| 10月29日 21時30分 | 米7〜9月期GDP速報、9月の個人消費支出 | 米景気の減速の度合い |
| 10月30日 | 日銀の金融政策決定会合の結果と展望リポート、植田総裁の会見 | 物価見通しの引き上げ幅と、12月への地ならし |
前日の時点での見立ては20年債入札を扱った記事に書いた。158円割れを試すという読みは20日のニューヨークで一度実現したが、定着はしなかった。日銀と円安の関係を長めの視点で見るなら日米金融政策の中期見通しの記事が参考になる。取引口座の選び方はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 10月20日の東京外国為替市場(9時・17時の相場と値幅)/日本銀行
- 20年国債の入札結果(2026年10月20日)/財務省
- 為替介入の実績/財務省(8月27日〜9月28日)、財務省(7月30日〜8月26日)
- 日銀の政策金利(2026年9月18日決定)/日本銀行、会合日程/日本銀行
- 日銀が10月の利上げを見送る公算との報道(2026年10月20日)/ロイター(U.S. News掲載)
- 利上げ確率と消費者物価の予想/BBH
- FRBの政策金利と会合日程/米連邦準備制度理事会
- 米国債利回り/米財務省
- 移動平均線・ピボット・ニューヨークの値動き/外為どっとコム(10月19日)、外為どっとコム(10月21日)、みんかぶ
- 片山財務相の発言(10月16日)/みんかぶ
- UOBの見通し/FXStreet、ウエストパックとゴールドマン・サックスの予想/Exchange Rates UK
データ基準日:2026年10月20日の東京市場(日本銀行公表)とニューヨーク市場の終値、および日本時間21日7時台の気配値。ニューヨークの終値と安値は外為どっとコムの集計で、情報ベンダーにより数銭の差がある。移動平均線とピボットは外為どっとコムの10月19〜20日時点の計算値で、日々変わる。20年国債入札の応札倍率は本誌が財務省の公表値から計算した。過去最高という評価は報道によるもので、本誌は財務省の全履歴を確認していない。米イラン合意が近いとの報道は未確認で、その後否定されている。UOB、ウエストパック、ゴールドマン・サックスの数値は報道の要約にもとづき、原典は確認できていない。戻り売りの水準と撤退ラインは筆者の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














