10月20日の20年国債入札に、売り出し額の5.84倍の買い注文が集まった。財務省の公表値で、9月の4.01倍、8月の3.98倍を大きく上回る。結果が出た昼過ぎから円がじわりと買われ、ドル円は朝の158円59銭から15時47分には158円17銭まで下げた。金利が下がったのに円が強くなる。この組み合わせが、今後2週間のドル円を読む手がかりになると筆者はみている。
結論を先に書く。10月30日の日銀会合までは157円〜159円のレンジが本線で、下に抜ける確率を上より高く置く。日本の財政への不安が少し和らいだことが、円の下支えになり始めたからである。見立てを撤回する線は、ニューヨーク時間の終値で159円を上回ったときとする。
20年債の買い注文はどれほど強かったのか
まず下の1枚を見てほしい。2026年の20年債入札10回の応札倍率である。財務省の入札結果から、価格競争入札の応募額を募入決定額で割って本誌が計算した。今回は応募額3兆1,390億円に対し、募入決定額は5,371億円だった。本誌が2025年1月以降の22回を確認した範囲では、5倍を超えたのは今回だけである。
20年国債入札の応札倍率(2026年)
読み方:棒が長いほど、売り出し額に対して多くの買い注文が集まったことを示す。10月20日の5.84倍は、本誌が確認した2025年1月以降の22回で最も高い。出所:財務省の入札結果(価格競争入札の応募額÷募入決定額で本誌計算)。
価格も強かった。平均落札利回りは3.723%で、前日19日の20年物の流通利回り3.776%(財務省の国債金利情報)を約5bp下回った。前日の市場より高い値段で買われたことになる。平均落札価格と最低落札価格の差(テール)は7銭で、9月の15銭から縮んだ。7月の0銭ほどではないが、入札の後に値崩れを恐れる札は少なかったと読める。超長期債の入札が荒れた局面は10月6日の10年債入札の記事でも追っている。
金利が下がったのに、なぜ円が買われたのか
教科書どおりなら、日本の金利が下がれば日米の金利差が広がり、円は売られる。ところが20日は逆になった。みんかぶFXは13時10分、入札が好調で「財政悪化懸念がやや緩和しており円も買われている」と伝え、ドル円は158円20銭台に軟化した。円が売られていた理由の一部が、金利差ではなく日本の財政への不安、つまり「日本売り」だったことを示す動きである。
数字で確かめる。米財務省と財務省の公表値で、日米10年金利差は16日の2.13ポイントから19日には2.22ポイントへ広がった。それでもドル円は158円台から上に行けていない。金利差だけで円安が進む局面は、いったん終わっているとみてよい。ただし、同じ時間帯に米金利の動きも重なっており、20日の円高をすべて入札で説明できるとまでは筆者も考えていない。20日の高値からの下げも40銭ほどにとどまる。
前回の見立ては当たっているか
本誌は19日のドル円見通しで、10月30日までの想定レンジを156円50銭〜159円50銭とし、159円台は売り場と書いた。その後の高値は19日のニューヨーク時間の158円55銭と、20日朝の158円59銭で、159円には届いていない。安値も158円07銭(20日15時30分ごろ)で、レンジの中にいる。いまのところ見立ては外れていない。
新しいのは、上値を抑える理由が1つ増えたことである。19日時点の根拠は介入への警戒と日銀の日柄だった。20日の入札で、日本の財政に対する不安が和らぐと円が買われる回路がはっきり見えた。今回は想定の上限を159円50銭から159円へ下げ、下限も157円へ引き上げて幅を狭める。
どの水準で流れが変わるのか
ドル円の水準の地図(10月20日)
読み方:青が現在値、オレンジが本誌の撤退線、灰色はテクニカルの節目。20日の高値158円59銭は200日線でちょうど止まった。出所:みんかぶFX(13時20分時点の節目)、Google Finance(気配値)。
みんかぶFXが13時20分に示したテクニカルの節目では、158円57銭に200日移動平均、158円01銭に21日移動平均がある。20日の高値158円59銭は、ちょうど200日線で止まった。下は21日線の158円ちょうどが最初の関門で、ここを日足の終値で割り込めば、157円13銭のボリンジャーバンド下限(2σ)が次の目安になる。上は158円89銭の2σ上限、159円43銭の100日移動平均と節目が続く。
通貨オプションも値幅の目安を出している。みんかぶFXによると、10時42分時点のドル円の予想変動率(インプライド・ボラティリティ)は1週間物が5.85%、1カ月物が7.50%だった。本誌の計算では、158円17銭を起点に1週間で上下1円28銭、1カ月で上下3円40銭が「1σ」(約68%の確率で収まる幅)にあたる。1週間なら156円89銭〜159円45銭で、19日の想定レンジとほぼ重なる。
今後2週間と3カ月の見通し
10月30日までのシナリオ確率(本誌の見立て)
読み方:3つの筋書きに確率を割り振った。下抜けを上抜けより厚くしたのは、財政不安の後退と日本の物価指標が円買いの材料として重なりうるため。本誌(筆者)の見立てであり、相場の結果を保証しない。
10月30日の日銀会合までの確率は、157円〜159円のレンジ維持が50%、157円を割り込んで156円50銭を試すのが30%、159円を上抜けて100日線の159円43銭から160円をうかがうのが20%とみる。下を厚くしたのは、23日の全国消費者物価指数(CPI)と30日の東京都区部CPIが強く出れば、日銀の12月利上げ観測が強まり、財政不安の後退と合わせて円買いの材料が重なるからだ。
1〜3カ月(1月中旬まで)では、中心を155円〜158円に置く。日銀の政策金利は9月の利上げで1.25%になった。年内にもう一段の利上げがあれば、金利差の縮小と財政不安の後退が同時に円を支える。一方で、米国の物価が高止まりして米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測が戻れば、160円台の再訪もありうる。その確率を2割とみている。
| 期間 | 本誌の想定レンジ | 確率の配分 | 主な根拠 |
|---|---|---|---|
| 2週間(〜10月30日) | 157.00〜159.00円 | レンジ50%/下抜け30%/上抜け20% | 200日線で頭打ち、財政不安の後退、日米会合待ち |
| 1〜3カ月(〜1月中旬) | 155.00〜159.00円(中心155〜158円) | 155円台以下40%/156〜159円40%/160円超20% | 日銀の追加利上げ、20年債など超長期債の需給改善 |
見立てが外れるのはどんなときか
撤退線は159円に置く。欧州中央銀行(ECB)の参照レートで見ると、ドル円は9月3日以降一度も159円に届いていない。最高は9月24日の158円85銭である。ここをニューヨーク時間の終値で上回れば、財政不安の後退より金利差が勝っていると判断し、下に厚い見立てを取り下げる。159円43銭の100日線も抜ければ、上抜けが本線になる。
そうなる筋書きは2つある。ひとつは米国の指標が強く、28日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げへの傾きが示される場合。もうひとつは、今回の好調が一度きりで終わり、次の超長期債入札で再び買い手が引く場合である。財政への不安は、入札1回で消えるものではない。
月末までに何が起きるのか
月末までの日程(日本時間)
読み方:日米の会合が2日違いで並び、30日は朝の物価指標から日銀の発表まで材料が続く。出所:みんかぶFX、e-Stat(総務省統計局)、米連邦準備制度理事会、日本銀行の公表日程。
日米の中央銀行の会合が2日違いで並ぶ。FOMCの結果は日本時間29日午前3時、日銀は30日に結果と経済・物価情勢の展望(展望リポート)を出す。同じ30日の朝には東京都区部CPIもある。イベントの直前と直後は値が飛びやすく、指値の注文が想定外の値段で約定することもある。レバレッジを使う取引では、この週の建玉を小さくしておくのが無難だ。
個人投資家向けチェックリスト:円高と円安の分かれ目
| 見るところ | 円高(下抜け)を支持 | 円安(上抜け)を支持 |
|---|---|---|
| ドル円の水準 | 21日線158円01銭を日足終値で割り込む | ニューヨーク終値で159円を上回る |
| 日米金利差(10年) | 2.1ポイント台へ縮む | 2.3ポイント台へ広がる |
| 日本の物価(23日・30日) | 上振れで12月利上げ観測が強まる | 下振れで利上げ観測が後ずれ |
| 超長期債の入札 | 応札倍率が4倍台以上を保つ | 3倍割れなど買い手が引く |
| FOMC(29日3時) | 据え置きで利上げを急がない姿勢 | 利上げ、または利上げを示唆 |
同じ日のユーロ円の動きはユーロ円見通しに、16日時点のドル円の見立てはこちらにまとめた。円金利の動きは、FX口座で受け払いするスワップポイントにも影響する。取引口座の仕組みはFX解説ページで扱っている。
主な参照
- 20年利付国債(第198回)の入札結果(10月20日)/財務省。過去の回は財務省の入札カレンダーから各回の結果
- 国債の流通利回り(10月19日まで)/財務省(国債金利情報)
- 米国債利回り(10月19日まで)/米財務省
- 入札後の円買いの報道(13時10分)/みんかぶFX、テクニカルの節目(13時20分)/みんかぶFX、予想変動率(10時42分)/みんかぶFX、19日の高値158円55銭/みんかぶFX
- ドル円の気配値と日中の高値・安値(20日)/Google Finance
- ドル円の参照レート(9月3日以降の最高値158円85銭の確認)/欧州中央銀行(Frankfurter経由)
- 金融市場調節方針の変更(9月18日、政策金利1.25%)と会合日程/日本銀行
- FOMCの日程/米連邦準備制度理事会
- 全国CPI・東京都区部CPIの公表日/e-Stat(総務省統計局)
データ基準日:2026年10月20日15時47分(日本時間)。ドル円の158円17銭は取引時間中の気配値で、終値ではない。20日の高値158円59銭(9時51分ごろ)と安値158円07銭(15時30分ごろ)もGoogle Financeの1分足から読んだ取引時間中の値である。19日の158円55銭はニューヨーク時間の取引中の高値。国債と米国債の利回りは各日の公表値(終値ベース)で、20日の日本国債の流通利回りは含まない。応札倍率は財務省の応募額と募入決定額から本誌が計算した値で、比較は本誌が確認した2025年1月以降の22回の範囲に限る。テクニカルの節目と予想変動率は報道時点の値で、日々変わる。確率とレンジは本誌(筆者)の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















