週末のフランスで約2,400人が逮捕される暴動が起き、パリなどに局地的な夜間外出禁止令が出た。それでも、週明けのユーロ円はほとんど崩れなかった。19日は始値177.56円から一時176.73円まで売られたが、終値は177.73円で、始値を上回って引けている(みんかぶ集計)。20日の東京時間11時44分は177.87円前後で推移している。
17日に掲載した前回のユーロ円見通しは、ECBと日銀が同じ週に会合を開く構図を扱った。その後に新しく加わったのは3つである。フランスの暴動と、20日に予定される2027年予算案の最初の重要採決。日本では、食料品の消費税を8%から1%に下げる法案が同じ20日に衆議院で審議入りする。そして通貨オプション市場が示す「想定される値幅」。財政の不安はユーロと円の両側にあるのに、市場が値段を付けているのはどちらか。まず下の4枚を見てほしい。
ユーロ円はなぜ177円台で止まっているのか
ユーロ円の参照レート(2026年7月1日〜10月19日)
読み方:7月末から10月7日まで約10円下げ、その後は176〜178円台で横ばいになった。9月18日の日銀利上げの後も、ユーロ円は大きく動いていない。出所:欧州中央銀行の参照レート(中欧時間14時15分、終値ではない)。
欧州中央銀行(ECB)の参照レートで見ると、ユーロ円は7月30日の186.99円から10月7日の176.85円まで、約10円下げた。この176.85円が2026年の参照レートの最安値である。9月25日以降は180円台を回復していない。ECBが9月に預金ファシリティー金利を2.50%へ上げ、日銀も9月18日に政策金利を1.25%へ上げた。両方の中銀が同じ方向に動いたため、金利差の1.25ポイントは変わっていない。
10月に入ってからは、参照レートが176.85〜178.49円の狭い幅に収まっている。みんかぶの週間まとめによれば、取引時間中の安値は前週(10月5〜9日の週)の176.22円、15日の176.30円で、どちらも下げ止まった。上は16日の177.97円で止まり、178円の壁を越えられていない。下値も上値も固い、典型的なもみ合いである。
財政不安はユーロと円のどちらに値札が付いているか
消費減税の閣議決定(10月9日)から19日までの国債利回りの変化
読み方:約10兆円の財源が先送りされた法案が閣議決定された後も、日本の国債利回りはすべての年限で下がった。国債市場は、日本の財政不安にまだ値札を付けていない。出所:財務省「国債金利情報」から本誌計算(10年債は3.027%→2.935%)。
フランス側の材料は重い。米フォーチュン誌によると、フランスの公的債務は国内総生産(GDP)比119%と第2次世界大戦直後以来の高さで、国債利回りは24年ぶりの水準にある。ルコルニュ首相の2027年予算案は財政赤字をGDP比5.4%から5.0%へ縮める内容で、国民議会の最初の重要採決が20日(火、現地時間)に予定されている。独DWによると、17日の抗議デモは内務省推計で全国55万人に達し、暴動で約2,400人が逮捕された。労働組合は11月5日に次の集会を呼びかけている。
日本側にも財政の材料がある。政府が9日に閣議決定した法案は、飲食料品の消費税率を2027年4月から2年間に限って8%から1%に下げる。2年間で約10兆円の財源は具体化が先送りされたと共同通信は伝えた。ところが財務省の国債金利情報では、10年国債の利回りは閣議決定の9日の3.027%から19日の2.935%へ、むしろ9.2ベーシスポイント(bp)下がっている。日本の財政不安は、少なくとも国債市場ではまだ値札が付いていない。ユーロの側には、みんかぶが「フランス混迷の割にしっかり」と伝えたように、経常赤字がGDP比1%未満と小さいことや、ECBの国債買い入れ措置(TPI)が下支えになっているとの見方がある。
通貨オプションは1カ月で何円の値動きを見込んでいるか
オプション市場が見込むユーロ円の標準的な値幅(現在値177.87円から上下)
読み方:予想変動率から、およそ3回に2回は収まると見込まれる幅を計算した。1週間の下限176.2円は、10月の安値176.22円とほぼ同じ水準にある。出所:みんかぶ(予想変動率は20日10時42分時点の参考値)、本誌計算(現在値×予想変動率×√期間)。
通貨オプションの価格からは、市場が見込む値動きの大きさ(予想変動率)が逆算できる。みんかぶが伝えた20日10時42分時点の参考値で、ユーロ円の1週間物は6.77%、1カ月物は7.57%、3カ月物は7.63%だった。これを現在値177.87円に当てはめると、1カ月で上下約3.9円、つまり174.0〜181.7円が「標準的な値幅(およそ3回に2回はこの中に収まる幅)」になる。
注目したいのは1週間物だ。1週間の標準的な下限は176.20円で、10月の取引時間中の安値176.22円とほぼ重なる。オプション市場も、この1週間は「176円台前半が守られる」範囲を中心に見ていることになる。1週間物(6.77%)が1カ月物(7.57%)より低いのは、大きな材料が来週以降、つまり29日のECBと30日の日銀に集中しているためと読める。
テクニカルで見るべき節目はどこか
ユーロ円の節目(円)
読み方:現在値はすべての移動平均の下にある。日足の終値で178.4円を超えれば50日線の180.8円、176.2円を割れば175.7円が次の目安。出所:欧州中央銀行の参照レートから本誌計算(移動平均は概算)、取引時間中の値はみんかぶ。
ECBの参照レートから本誌が計算した移動平均は、19日時点で20日線が178.11円、50日線が180.82円、100日線が182.88円、200日線が183.63円である。現在値はすべての線の下にあり、流れは円高方向を向いたままだ。最初の関門は178円の壁と20日線が重なる178.0〜178.4円帯で、みんかぶはその上の178.30〜178.40円を「レンジ上限ブレイクの目安」としている。
下は176.2〜176.3円の二重底が支えになる。ここを日足の終値で割り込めば、参照レートで1年前に付けた175.71円(2025年10月20日)が次の目安になる。1日のうちに一時的に割り込んでも、終値で戻れば「だまし」で終わることが多い。判断は日足の終値で行いたい。
今後2週間の日程で何が変わるか
ユーロ円の今後の日程(日本時間)
読み方:前半は財政(フランスの採決と日本の消費減税)、後半は金融政策(ECBと日銀)が材料になる。出所:欧州中央銀行・日本銀行・米連邦準備制度理事会の会合日程、フォーチュン、DW、共同通信。
日程は前半が「財政」、後半が「金融政策」に分かれる。前半の焦点はフランスの予算採決だ。フォーチュン誌によれば、極右のルペン氏が議員に棄権を指示すれば予算案は通る可能性があり、その場合は目先の危機が遠のく。否決や内閣不信任に進めば、フランス国債が売られ、ユーロは対円でも売られやすい。日本の消費減税法案は、与党が11月前半の参議院送付を描いていると共同通信が伝えている。
後半はECB(28〜29日)、日銀(29〜30日)が続く。ブルームバーグは13日、日銀が10月会合で利上げを見送る公算が大きく、12月の可能性は排除していないと関係者の話として報じた。30日の展望リポートで利上げ継続の姿勢がどこまで強く出るかが、円側の綱の強さを決める。
編集部の見立て:2週間は176〜178円台、1〜2カ月は円高寄り
結論を先に示す。10月30日までの短期は、176.2〜178.4円のもみ合いが続く確率が最も高いとみる。1〜2カ月(12月中旬まで)は、日銀の12月利上げが意識されるにつれて円がやや強くなるとみて、中心を174〜179円に置く。オプション市場の1カ月の標準的な値幅(174.0〜181.7円)の、やや下側に寄せた見立てである。確率は編集部の主観だ。
| 期間 | シナリオ | 想定レンジ | 確率(編集部) | きっかけ |
|---|---|---|---|---|
| 10月30日まで | もみ合い継続 | 176.2〜178.4円 | 50% | 仏予算が棄権で通過、ECB据え置き、日銀は12月を示唆するにとどまる |
| 10月30日まで | 円高・ユーロ安 | 174.0〜176.2円 | 30% | 仏予算の否決や不信任、日銀が展望リポートで利上げ継続を強く示す |
| 10月30日まで | ユーロ高・円安 | 178.4〜180.8円 | 20% | 仏予算の通過で安心感、ECBが12月利上げを明確に示す |
| 12月中旬まで | 中心シナリオ | 174〜179円 | — | 日銀12月利上げの織り込みで金利差がやや縮む |
公平のために、見立てが外れる道筋も挙げておく。最大のものは、日本の消費減税をきっかけに円の財政リスクが意識される展開である。いまは国債利回りが下がっているが、財源の議論で国債の増発が意識されれば、長期金利の上昇と円安が同時に進む可能性がある。この場合、日銀が利上げしても円高は進みにくく、ユーロ円は180円台を試しうる。もう一つは、フランスの採決が穏便に通り、ユーロの売り手が買い戻しに動く展開だ。
個人投資家向けチェックリスト:見立ての分かれ目
| 確かめるもの | 円高(ユーロ円下落)を支持 | ユーロ高(ユーロ円上昇)を支持 |
|---|---|---|
| 日足の終値 | 176.2円を割り込む | 178.4円を上回る |
| フランスの予算採決(20日) | 否決、内閣不信任へ | 棄権で通過 |
| 日本の長期金利 | 10年債利回りが3%を下回ったまま | 消費減税の財源論で3%台へ戻る |
| ECB(29日) | 据え置き、12月も明言せず | 12月利上げを強く示唆 |
| 日銀(30日) | 展望リポートで利上げ継続を明記 | 慎重姿勢に戻る |
| オプションの予想変動率 | 1週間物が急上昇(下落の備えが増える) | 1カ月物が6%台へ低下(安心感) |
中央銀行の発表やフランスの採決結果が出た直後は、値が飛びやすい。レバレッジをかけた取引では、数分で損失が膨らむことがある。発表をまたぐ持ち高は小さくしておくのが基本である。よくある誤解は「財政が悪い国の通貨は必ず売られる」という見方だ。10月9日以降の日本の長期金利の動きが示すように、市場が値札を付けるまでには時間差がある。
ユーロ側の事情はユーロドルの見通しで、日本勢のフランス国債保有の規模は10月6日の記事で、ドル円の節目はドル円の見通しでそれぞれ扱った。ユーロ円を実際に取引するにはFX口座が必要で、海外FX業者の比較はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- ユーロ円の参照レート(移動平均・期間の高値と安値は本誌計算)/欧州中央銀行
- ECBの政策金利、会合日程/欧州中央銀行
- 日銀の金融市場調節方針の変更(2026年9月18日)、会合日程/日本銀行
- 国債金利情報(10年・20年・30年・2年国債利回り)/財務省
- FOMCの日程/米連邦準備制度理事会
- 19日の四本値、週間の値動きと節目、ユーロの底堅さ、通貨オプションの予想変動率/みんかぶFX
- フランスの債務比率、予算案と採決日程、ラーマン氏の分析/フォーチュン
- 逮捕者数・デモ参加者数・外出禁止令・次回集会/DW(ドイチェ・ヴェレ)
- 消費減税法案の内容と審議日程(共同通信配信)/熊本日日新聞
- 20日の気配値/グーグル・ファイナンス
データ基準日:2026年10月20日11時44分(日本時間)。20日のユーロ円177.87円は取引時間中の気配値で、終値ではない。19日の四本値(始値177.56円・高値177.78円・安値176.73円・終値177.73円)と10月の取引時間中の安値(176.22円、176.30円)、高値(177.97円)はみんかぶの集計による。ECBの参照レートは中欧時間14時15分時点の値で、市場の終値とは異なる。移動平均、期間の高値・安値、オプションから逆算した値幅は本誌の計算による概算で、予想変動率は20日10時42分時点の参考値である。値幅は将来の相場を保証するものではない。フランスの採決日はフォーチュン誌の報道、日銀の10月見送り観測はブルームバーグの関係者報道、消費減税の財源規模と参院送付の見通しは共同通信の報道にもとづき、いずれも一次資料では確認できていない。逮捕者数は当局の暫定値として報じられたもの。シナリオと確率は編集部の見方である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














