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ローツェがストップ高、搬送装置の受注785億円で3四半期連続の過去最高|ベトナムの倉庫をクリーンルームに、100株51万円の連休明けは値幅上下1,000円

Takashi Suzuki Takashi Suzuki
2026年10月12日
株式
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ARM株
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ベトナムにあるローツェの工場で、倉庫だった区画がクリーンルームに作り替えられている。在庫の置き場は外のレンタル工場へ移し、空いた床に半導体ウエハーを運ぶロボットの組立ラインを広げる。8月には現地の従業員の賃金も引き上げた。10月8日の決算説明資料に並んだこの地味な現場の話が、翌9日の株価の理由を一番よく説明している。注文が、作れる量を追い越し始めたのである。

ローツェ(6323)は9日、制限値幅いっぱいの700円高(15.79%高)の5,134円でストップ高のまま取引を終えた。売買高は963万株と前日の4.4倍に膨らんだ。東京市場は12日がスポーツの日で休場のため、次に値段がつくのは13日の火曜日である。

+15.79%
10月9日の終値5,134円(ストップ高、前日比+700円)
785億円
半導体関連装置の6〜8月期受注高(前四半期比+87%)
1,038億円
同・8月末の受注残高(前年同期の2.3倍)
530億円
修正後の通期営業利益予想(期初比+39.3%)

工場の床を広げる理由——受注785億円

ローツェが作るのは、半導体工場の中でウエハーを装置から装置へ運ぶ搬送ロボットと、その周辺の装置だ。露光や成膜の主役ではない。だが、どの製造装置の前にもウエハーを出し入れする「玄関」が要る。この玄関にあたるEFEM(装置前面の搬送モジュール)や、ウエハーを仕分けるソーター、保管するストッカーが主力である。

その半導体関連装置の6〜8月期(同社の第2四半期)の受注高は785億900万円だった。3〜5月期の420億3,000万円から87%増え、1年前の同じ時期の3.2倍、3四半期続けての過去最高である。会社は理由を2つ挙げている。北米のメモリーメーカーからソーターとストッカーの注文が急に増えたこと、そして中国の装置メーカー向けにEFEMの注文が増えたことだ。

半導体関連装置の四半期受注高(億円)

2025年6〜8月期1年前の同じ時期247.0億円2025年9〜11月期229.6億円2025年12月〜26年2月期340.0億円2026年3〜5月期前四半期420.3億円2026年6〜8月期3四半期連続の過去最高785.1億円参考:6〜8月期の売上高受注は売上高の2.1倍369.0億円

読み方:受注高は1年で3.2倍、直近の四半期だけで87%増えた。売上高(最下段)との差が受注残高として積み上がり、8月末で1,038億6,300万円になった。出所:ローツェ「2027年2月期 第2四半期 決算説明資料」(2026年10月8日)。四半期は同社の会計期間(2月決算)。

注目すべきは売上高との差である。同じ6〜8月期の半導体関連装置の売上高は368億9,800万円で、受注はその2.1倍入った。出荷が追いつかない分は受注残高として積み上がり、8月末で1,038億6,300万円と1年前の2.3倍になった。ベトナムの倉庫をクリーンルームに変え、中国・上海臨港の工場を2交代勤務に切り替え、近くに建屋を借り足すのは、この残高を製品に変えるためである。ベトナムの新工場の稼働も、2028年第1四半期の予定から2027年第4四半期へ前倒しした(いずれも会社資料の表記)。

誰が注文しているのか——川上から川下へ

搬送ロボットの注文は、たどると生成AIのデータセンターに行き着く。会社は今後の見通しとして、HBM(AI向けの高速メモリー)の需要を背景に先端メモリーと先端ロジックへの投資が増えると書いている。メモリーの増産投資が先に動いたことは、同業の数字とも合う。サムスン電子の7〜9月期の業績はメモリー価格の上昇が利益を押し上げたことを示していた。

注文がローツェの工場に届くまで(川上→川下)

1需要生成AIのデータセンターが高速メモリー(HBM)と先端チップを求める2投資メモリーメーカーと先端ロジックの工場が設備投資を増やす北米のメモリーメーカーからソーター・ストッカーの注文が急増3装置製造装置メーカーが装置に付ける搬送モジュール(EFEM)を発注中国の装置メーカー向けEFEMの注文が増加4工場ベトナムの倉庫をクリーンルーム化、上海臨港は2交代制へベトナム新工場は2027年第4四半期の稼働へ前倒し5株主100株=51万3,400円(9日終値)、年間配当2,800円

読み方:ローツェの注文は、AI向けメモリーへの投資が装置メーカーを経由して届く。2と3の具体的な注文元は会社が説明資料で挙げたもの。出所:ローツェ「2027年2月期 第2四半期 決算説明資料」(2026年10月8日)、株価は株探。

上期(3〜8月)の売上高を顧客の本社所在地で分けると、米国が239億100万円で全体の30%、中国が209億200万円で26%、台湾が194億600万円で24%だった。上位3地域で8割を占め、日本は6%にとどまる。日本の上場企業でありながら、稼ぎのほとんどは海外の半導体工場から来ている。だからこそ為替の効き方も大きい。会社は通期の想定為替レートを1ドル158円に置いている。9日のニューヨーク終盤(米東部時間16時59分)のドル円は158円24銭前後で、ほぼ想定どおりの水準にある。

上方修正の中身——下期の8割強は受注残で埋まっている

会社は2027年2月期の業績予想を引き上げた。売上高は1,590億円から1,800億円へ13.2%、営業利益は381億円から530億円へ39.3%の上方修正だ。1株利益の予想は159円62銭から217円84銭になり、期末配当は20円から28円へ8円増やす。

項目(2027年2月期)期初予想修正後上期実績下期に残る分
売上高1,590億2,100万円1,800億700万円797億3,300万円1,002億7,300万円
うち半導体関連装置1,324億8,000万円1,529億7,000万円671億3,800万円858億3,200万円
営業利益381億1,200万円530億7,800万円230億9,600万円299億8,100万円
1株利益159円62銭217円84銭91円33銭—
期末配当20円28円——
出所:ローツェ「通期連結業績予想の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ」「2027年2月期 第2四半期決算説明資料」(いずれも2026年10月8日)。「下期に残る分」は修正後の通期予想から上期実績を引いた値。

この表から読み取れるのは、修正後の数字が「これから取ってくる注文」に頼っていない点だ。下期に残る半導体関連装置の売上高は858億円で、8月末の受注残高1,038億円の83%にあたる。残高のすべてが下期中に出荷されるわけではないが、少なくとも数字の大半はすでに注文書がある。期初予想は下期の売上高を上期より小さく置いていた。それが上期比26%増の1,003億円に変わったことが、今回の修正の本質である。

ただし、利益の伸びには為替の追い風も入っている。上期の経常利益は68.4%増と営業利益の42.4%増を大きく上回り、会社は円安による為替損益の改善を理由に挙げた。同じ日に決算を出した安川電機も受注は過去最高だったが、増収分の多くは円安によるものだった。ローツェの場合、営業利益の伸びを支えたのは半導体関連装置の出荷増で、3〜5月期から6〜8月期にかけて営業利益は102億円から128億円へ26%増えた。

100株の持ち主にとっての数字

ローツェは100株単位で売買される。9日の終値で100株を買うと51万3,400円で、新NISAの成長投資枠(年240万円)の2割強にあたる。9日の1日で100株あたりの値上がりは7万円だった。一方、増配後の配当は100株で年2,800円、利回りは0.55%にすぎない。この銘柄を持つ理由は配当ではなく、受注の伸びにある。

100株で換算すると金額・水準計算の根拠
買い付け代金(9日終値)51万3,400円5,134円×100株
9日の値上がり+7万円700円×100株
年間配当(修正後)2,800円28円×100株、利回り0.55%
13日の値幅(上下)±10万円基準値段5,134円の制限値幅1,000円×100株
予想PER(修正後)23.6倍5,134円÷217円84銭
参考:8日終値で見たPER27.8倍(旧予想)→20.4倍(新予想)4,434円÷159円62銭、4,434円÷217円84銭
出所:株価は株探の時系列(2026年10月9日の東京市場の終値)、制限値幅は日本取引所グループの規則、予想値はローツェの10月8日の開示。計算は本誌。

最後の行が、ストップ高の「割高感」を測る物差しになる。8日の終値4,434円は、旧予想で見ればPER27.8倍だった。新予想に置き換えると20.4倍まで下がる。9日のストップ高は、その差を半分ほど埋めた動きと読める。予想PERは修正後でも23.6倍で、旧予想ベースの8日時点より低い。上昇の大部分は利益予想の引き上げで説明できる、というのが現時点での計算である。

連休明けの13日、どこを見るか

ストップ高で引けた銘柄は、翌営業日に買い注文が持ち越されやすい。ただし今回は3連休をはさむ。9日夜の私設取引システム(PTS)では5,198円の値がついた(株探、23時57分時点)。PTSは参加者が少なく、翌朝の始値をそのまま示すものではない。それでも5,198円という水準は、7月1日につけた52週高値5,199円のわずか1円下である。13日はまず、この5,199円を抜けるかどうかが最初の関門になる。

13日に意識される株価の水準(円)

4,0006,3004,134円13日の値幅の下限基準5,134円−1,000円4,434円8日終値決算発表前5,134円9日終値ストップ高5,199円52週高値2026年7月1日6,134円13日の値幅の上限基準5,134円+1,000円

読み方:9日のPTSでは5,198円と、52週高値5,199円の1円下まで買われた。13日の制限値幅は基準値段が5,000円以上になったため上下1,000円に広がる。出所:株探(株価・PTS・52週高値)、日本取引所グループ(制限値幅)。

筆者の見立ては3つに分かれる。確率は本誌の主観である。

シナリオ確率(主観)13日以降の値動きの目安引き金
高値更新が続く40%5,199円を終値で上抜け連休中の米半導体株が落ち着き、受注残の厚さが評価される
高値圏でもみ合う40%4,800〜5,200円の往来ストップ高で買えなかった注文と、利益確定の売りがぶつかる
窓を埋めにいく20%4,634円(9日始値)を割り込む米半導体株の下落が続く、信用買いの手じまいが重なる
本誌の整理。確率は主観で、将来の株価を保証しない。

上振れを抑えかねない材料も2つある。1つは需給だ。株探の表示では信用倍率が30.32倍で、信用で買った人が売った人の30倍いる。値上がり局面で利益を確定したい売りが出やすい構図である。もう1つは米国の半導体株だ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は7日の終値1万3,066から、9日の終値は1万2,572まで3.8%下げた。米国株の主要指数が上げた9日も、SOXは0.4%安だった。8日のハイテク株売りの流れが連休中に強まれば、13日の寄り付きの重しになる。

この見立てが崩れるのは、4,634円を終値で割り込んだときだ。9日に買いが殺到する前の始値であり、ここを下回れば「受注の数字は織り込んだ」と市場が判断したことになる。

工場の外にあるリスク

会社自身が資料で挙げたリスクは調達である。メモリー価格の高止まりや部品の長納期化で、調達コストの上昇や部材の確保が遅れるおそれがあると書き、各社が部材を先に押さえる競争が「過熱化し始めている」とまで記した。上期末の棚卸資産は前期末から59億円増えた。受注増に備えた原材料と仕掛品の積み増しだが、需要が鈍れば重荷にもなる。

子会社のNanoverseも見ておきたい。顧客に納めた評価装置の評価が続いており、会社は今期中の売上計上を目指して交渉中としている。上期には人件費やのれん償却などで合計31億円あまりの費用が営業利益に乗っている。逆に、片づいた懸案もある。川崎重工業が米国で起こしていた特許訴訟は8月3日に和解した。和解の中身は非公開だが、会社は今後の事業への影響はないとしている。

次に現場から届く数字

  • 10月13日(火):連休明けの東京市場。ローツェの制限値幅は上下1,000円(4,134〜6,134円)に広がる。
  • 10月14日(水):半期報告書の提出予定日。受注や地域別売上高の詳しい内訳を確認できる。
  • 次の四半期決算:9〜11月期の受注高が785億円を保てるか。受注が売上高を上回り続ける限り、工場の床を広げる話は続く。

ベトナムの倉庫がクリーンルームに変わるのは、注文が来たからだ。逆に言えば、次にこの工場の拡張が止まる話が出たときが、受注の勢いが鈍ったときの合図になる。数字の発表を待つより先に、工場の話が変化を教えてくれるかもしれない。ほかの日本の半導体関連株の決算は、ディスコの出荷額の記事でも点検している。

主な参照

  • 2027年2月期 第2四半期(中間期)決算短信(受注実績、地域別売上高、財政状態)/ローツェ(TDnet)
  • 通期連結業績予想の修正及び配当予想の修正に関するお知らせ/ローツェ(TDnet)
  • 2027年2月期 第2四半期 決算説明資料(受注高・受注残高の推移、生産能力の拡大施策、想定為替レート、特許訴訟の和解)/ローツェ(TDnet)
  • 株価の時系列、PTS、信用倍率、52週高値/株探
  • 制限値幅/日本取引所グループ、休業日/日本取引所グループ
  • フィラデルフィア半導体株指数とドル円/Yahoo Finance

データ基準日:2026年10月9日の東京市場の終値。PTSの値段は同日23時57分時点の株探の表示で、取引所の終値ではない。SOXは10月7日・9日の米国市場の終値、ドル円は10月9日の米東部時間16時59分時点の気配値で、取引時間中の数値であり終値ではない。信用倍率は株探の表示値で、集計基準日により変わる。受注高・受注残高は半導体関連装置の値で、四半期の値は会社資料の数値を用いた。「下期に残る分」「PER」「100株換算」は本誌の計算である。シナリオの確率は本誌の主観であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。

Tags: AI関連株半導体株日本株
Takashi Suzuki

Takashi Suzuki

大手マーケットメイカーのFXトレーディングデスクで8年以上にわたりキャリアを積み、うち3年は為替フォワードデスク、その後2年は金利(レート)デスクを担当した。さらにシンガポールではアジア・トレーディングデスクのヘッドとして4年間チームを率い、地域全体のフローとリスク管理を統括してきた。 現在もFX・金利・株式など幅広い市場で実際にトレードを行っており、機関投資家の最前線で培った実取引経験は豊富。FX・株式・暗号資産において自己のポジションを保有している。 こうした実務とマーケットでの経験をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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