今朝の時点で、ユーロドルの上の壁は1.1265ドルだった。日本時間4日22時台、その壁を値段が越えた。8時30分に1.1196ドルにいたユーロが、米中間選挙での民主党の両院制覇を受けて10時30分には1.1251ドルまで上がり、ユーロ圏の物価速報を挟んで22時台に1.1275ドルを付けた。1日で約0.7%、ユーロドルとしては大きな値幅である。
筆者の見立ては、短期は上だ。ただし、壁を越えたのはまだ取引時間中の値段にすぎない。今夜のニューヨークの引け(日本時間5日7時)で1.1265ドルの上に残れるか。そこで見立てが確定する。以下、テープ、需給、水準、見立て、撤退線の順に書く。
テープ:二段で上げた一日
今日のテープは二段に分かれる。一段目は東京の午前だ。米国の開票が進むにつれてドルが売られ、ユーロドルは8時30分の1.1196ドルから10時30分の1.1251ドルまで、2時間で55ポイント上げた。その後は東京の午後に1.1230ドル前後まで押したが、1.1225ドルは一度も割っていない。押し目は浅かった。
二段目は欧州の時間帯である。日本時間19時、ユーロスタットが10月のユーロ圏消費者物価(HICP)の速報を出した。前年同月比4.0%で、9月の3.8%から加速した。発表の前後でユーロは1.1266ドルまで買われ、いったん1.1241ドルまで押したあと、21時30分以降は1.127ドル前後で推移した。22時15分に出た米ADPの10月の民間雇用は8万6,000人増で、市場予想の6万7,000人を上回ったが、ドル買いは続かなかった。
正直、ここが今日のいちばん大事なところだとみている。米国の雇用の数字が予想を上回ったのに、ドルが戻らなかった。悪い材料に反応せず、良い材料にも戻らない。ドルの売り手がまだ手を緩めていない証拠である。ドル指数は前日終値の101.87から、日本時間22時30分時点で101.29まで下げた。
ユーロドルの4日の値動き(30分足の終値、日本時間、ドル)
読み方:一段目は東京の午前の選挙、二段目は欧州の時間帯の物価速報。東京の午後の押し目は1.1230ドル前後で止まった。点は30分足の終値(時刻は足の終わり)で、高値そのもの(1.1275ドル)ではない。出所:ヤフーファイナンス。
需給:踏み上げの燃料は残っている
値動きの次は、誰が持っているかである。今朝のユーロドル見通しでも触れたとおり、投機筋はこのところユーロの売り越しを積み上げてきた。売り越しが大きい相場で上の壁を抜けると、損切りの買い戻しが出る。いわゆる踏み上げだ。今日の上げ方は、一段目が選挙、二段目が物価と材料が続き、そのたびに浅い押し目で買われている。売り方の買い戻しが混じっている形に見える。
材料の中身も、売り方に不利だ。10月のHICPは総合で4.0%。内訳はエネルギーが20.8%(9月は18.9%)、サービスが3.3%(同3.2%)、食品・アルコール・たばこが1.6%(同1.3%)だった。欧州中央銀行(ECB)の目標は2%である。エネルギーと食品を除いた指数は2.5%で9月と同じだったから、物価の加速は燃料価格によるところが大きい。それでも総合で4%に乗った以上、12月の利上げを主張する理事会メンバーの声は通りやすくなる。
米国の側では、金利が下がった。米財務省の公表で11月3日の10年債利回りは4.95%。4日の日本時間22時27分の気配では4.921%と、選挙後も上には戻っていない。金利が下がり、株価指数先物は上がる。ドルにとっては、安全資産としても高金利通貨としても買われにくい組み合わせである。
| 材料 | 数字 | ユーロドルへの効き方 |
|---|---|---|
| 米中間選挙(民主党が両院を制覇) | ユーロドル 1.1196→1.1251ドル(日本時間8時30分→10時30分) | ドル売りの起点 |
| ユーロ圏10月HICP速報 | 前年比4.0%(9月3.8%)、エネルギー20.8% | ECBの12月利上げ論を後押し |
| 米10月ADP民間雇用 | 8万6,000人増(予想6万7,000人) | 上振れでもドル買い続かず |
| ドル指数 | 101.87→101.29(前日終値→22時30分) | ドルの全面安 |
| 米10年債利回り | 4.95%(3日)→4.921%(4日22時27分の気配) | 金利面のドルの支えが細る |
水準の地図:1.1265ドルの次は1.1355ドル
ユーロドルの水準の地図(ドル)
読み方:オレンジは本誌が判断に使う水準、灰色は過去のECB参照レート。4日22時30分に終わる30分足の終値は1.1270ドルで、1.1265ドルのすぐ上にいる。出所:ECB参照レート(Frankfurter経由)、ヤフーファイナンス、本誌。
水準を整理しておく。ECBの参照レート(中欧時間14時15分の値)で見ると、1.1269ドルは10月6日の水準だ。それより上は10月1日の1.1298ドル、9月30日の1.1355ドルと続く。今日の値段は、ほぼ1カ月ぶりの高さにいる。下を見ると、10月2日の1.1225ドルが今日の東京の押し目の下限とほぼ重なる。その下は10月29日の1.1130ドルで、8月以降の参照レートの安値である。
相場の古い言い回しに「抵抗線は抜けると支持線に変わる」というものがある。今朝まで壁だった1.1265ドルが、今夜から床として働くかどうか。これが次の数日の値動きを決める。床として働けば、次の目標は1.1355ドル。ここまでは参照レートで見て、目立った節目がない。1.1355ドルは8月21日の高値1.1699ドルから10月29日の安値1.1130ドルまでの下げの約4割戻しにあたる水準でもある。
筆者の見立て:1〜2週間で1.1355ドルを試す
筆者は短期で強気だ。1〜2週間で1.1355ドルを試す確率を50%と置く。1.1225〜1.1355ドルの間でのもみ合いが30%、1.1225ドルを割って元のレンジへ戻るのが20%である。根拠は3つある。
- 良い米指標でもドルが戻らない。ADPの上振れを売り方が無視した。材料に対する反応の非対称は、トレンドの初期によく出る形である。
- ユーロ側の材料が先に出た。10月のHICPは4.0%と、ECBの目標の2倍に乗った。12月17日の理事会まで、利上げ観測はユーロの下値を支え続ける。
- 売り越しの巻き戻しが始まったばかり。一段目、二段目とも押し目が浅い。売り方の買い戻しが残っている間は、下げても買いが入りやすい。
| 筋書き(1〜2週間) | 本誌の確率 | 想定レンジ | 引き金 |
|---|---|---|---|
| 上抜け継続:1.1355ドルを試す | 50% | 1.1265〜1.1360ドル | 今夜の引けで1.1265ドル超え、6日の米雇用統計が鈍い |
| もみ合い | 30% | 1.1225〜1.1355ドル | 米雇用統計が予想並み、ECB理事の発言が割れる |
| だまし:元のレンジへ | 20% | 1.1130〜1.1225ドル | 米雇用統計が大幅に上振れ、米金利が急反発 |
逆になったら:1.1225ドル割れで撤退
見立てを言い切る以上、撤退線も先に書いておく。終値で1.1225ドルを割ったら、強気の見立ては捨てる。今日の東京の押し目の下限であり、ここを割れば今日の上げは選挙の一日だけの値動きだったことになる。その場合は、今朝の記事で示した1.1110〜1.1265ドルのレンジに戻ったとみる。
もう一つの撤退条件は、6日の米雇用統計である。非農業部門の雇用者数が大きく上振れ、米10年債利回りが5%台を取り戻すようなら、1.1225ドルを割る前でも強気の手は引く。今日のドル安は、米金利が下がっていることが前提だからだ。前提が崩れれば、値段の根拠も崩れる。
投資家の立場によって、意味は変わる。外貨預金や外貨建ての投資信託でユーロを持つ人にとって、ユーロドルの上昇はドル建ての資産との比較で有利に働く。一方、円から見たユーロの値段はユーロ円で決まる。ユーロ円は今日178円台を回復しているが、そちらの水準はユーロ円見通しで別に整理した。
明日以降の監視リスト
| 日時(日本時間) | 見るもの | 筆者が見る水準・数字 |
|---|---|---|
| 11月5日 0時 | 米10月ISM非製造業景況指数 | 強ければドルの戻り。1.1265ドルで止まるか |
| 11月5日 7時 | ニューヨーク市場の引け | 1.1265ドルの上で引けるか。見立ての確定 |
| 11月5日 21時 | 英中銀の政策金利発表 | ポンド経由でユーロにも波及。対ドルの流れが続くか |
| 11月6日 22時30分 | 米10月雇用統計 | 大幅上振れなら撤退条件。米10年債5% |
| 12月17日 | ECB理事会 | 12月利上げの有無。1.1355ドル超えの燃料 |
英中銀の決定を控えたポンドの水準はポンドドル見通しに、選挙が株式市場に与えた影響は米中間選挙とAI株の記事にまとめている。海外FX業者の選び方はFX解説ページを参照してほしい。
主な参照
- ユーロ圏10月HICP速報(総合4.0%、内訳)/ユーロスタット
- ECB参照レート(8月21日・9月30日・10月の各日)/欧州中央銀行(Frankfurter経由で取得)
- 米10月ADP民間雇用/ADP、CNBC、市場予想はストリートインサイダー
- 米国債利回り(11月3日)/米財務省
- ユーロドルの30分足(時刻は各足の終わり)、ドル指数・米10年債利回りの気配値/ヤフーファイナンス
データ基準日:2026年11月4日、日本時間22時45分時点。ユーロドル、ドル指数、米10年債利回りの4日の値は取引時間中の気配値で、終値ではない。1.1275ドルは30分足の高値で、業者によって数ポイントの差がある。ECB参照レートは中欧時間14時15分の値で、取引時間中の気配値とは時刻が異なる。HICPは速報値で、確報で改定されることがある。確率と想定レンジ、撤退線は本誌の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨や金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















