11月4日水曜、日本時間18時。欧州の株式市場が開いてちょうど1時間がたったとき、STOXX欧州600指数は前日比0.71%高の650.26にいた。同じ時刻、ドイツの建材大手ハイデルベルク・マテリアルズは7.63%高、デンマークの洋上風力大手オーステッドは7.59%高。反対側では、英防衛大手BAEシステムズが5.13%安で沈んでいた。米中間選挙で民主党が上下両院を制した翌朝、欧州の投資家は勝ち組と負け組をはっきり分けて取引を始めた。
この朝の欧州は、東京とは逆の顔を見せた。同じ日の東京市場では、日経平均が寄り付きから948円安となり、AI関連の規制強化への警戒が半導体株を押し下げた。欧州では、その不安を抱えた銘柄が少ない。代わりに、銀行と再生可能エネルギーという、別の物語の主人公たちがいた。
夜明け前:先物は1.4%下げていた
時計を数時間巻き戻す。ロイターによると、欧州の取引開始前、STOXXの先物は一時1.4%下げていた。米国の開票が進み、民主党の優勢が伝わるにつれて、AI関連株の売りが世界に広がっていたからだ。その流れを変えたのは、民主党が両院で勝ったことが固まり、トランプ大統領が結果を受け入れたことだった。不確かさが一つ消えると、先物は下げ幅を取り戻していった。
日本時間15時36分、コペンハーゲン。ノボノルディスクが7〜9月期の決算を発表した。為替の影響を除いた調整後の営業利益は27%増の317億2,000万デンマーク・クローネで、通期の見通しを引き上げた。ロイターは、飲み薬タイプの肥満症薬「ウゴービ」の売れ行きが市場予想を上回ったと伝えた。見通しの引き上げは今年3度目だと、デンマークの業界紙メドウォッチは書いている。
同じ朝、ドイツでは自動車部品大手コンチネンタルが決算を出した。同社の発表によると、7〜9月期の調整後の営業利益は5億1,400万ユーロで、前年同期の4億8,200万ユーロから増えた。利益率は14.9%。会社は通期の見通しを引き上げた。開場の鐘が鳴る前に、欧州の朝には好決算が二つ並んでいた。
11月4日、欧州市場の朝(日本時間)
読み方:取引開始前の先物安から、決算と銀行株の買いで上げ幅を広げた。出所:ロイター、各社発表、ユーロスタット、ヤフーファイナンス。数値は取引時間中の値。
最初の1時間:銀行と風車が走った
日本時間17時、フランクフルトとパリ、ロンドンで取引が始まった。ロイターの集計では、開始16分後の17時16分にSTOXX欧州600は0.5%高。銀行株は2%を超える上げで、最初から先頭を走った。米国で規制の目が緩むかもしれないこと、出遅れていた域内の銀行に資金が戻ってきたことが理由に挙げられている。
もう一つの主役は風車と太陽光パネルだった。ブルームバーグは日本時間18時56分、民主党の早い段階での優勢を受けて「世界の太陽光関連株が上昇」と報じた。民主党の議会は、再生可能エネルギーへの支援を守る側に立つという見方である。オーステッドに続き、ドイツの太陽光機器メーカーSMAソーラーが18時の時点で6.76%高、風力タービンのノルデックスが5.70%高、ヴェスタスが4.08%高だった。
| 銘柄 | 業種 | 18時(開始1時間) | 19時29〜45分 | 材料 |
|---|---|---|---|---|
| ハイデルベルク・マテリアルズ | 建材 | +7.63% | +8.69% | 7〜9月期決算が予想を上回る |
| オーステッド | 洋上風力 | +7.59% | +6.96% | 再生可能エネルギー株の買い |
| SMAソーラー | 太陽光機器 | +6.76% | +11.27% | 同上 |
| コンチネンタル | 自動車部品 | +6.12% | +5.62% | 通期見通しの引き上げ |
| ドイツ銀行 | 銀行 | +3.91% | +5.99% | 銀行株への資金流入 |
| ノボノルディスク | 医薬品 | +3.91% | +2.33% | 通期見通しの引き上げ |
| ラインメタル | 防衛 | −2.46% | −1.67% | 米国の国防費への懸念 |
| シーメンス・エナジー | 電力機器 | −2.80% | −0.45% | AI規制への警戒 |
| サーブ | 防衛 | −3.34% | −2.75% | 米国の国防費への懸念 |
| ヘンゾルト | 防衛電子 | −4.03% | −2.61% | 同上 |
| BAEシステムズ | 防衛 | −5.13% | −3.71% | 同上 |
沈んだ側:防衛株と電力機器
同じ選挙結果が、別の銘柄には重しになった。インベスティング・ドットコムは日本時間18時57分時点の株価を伝えた記事で、民主党の議会が軍事費への監視を強め、予算の採決が2027年まで持ち越されかねないとの見方を伝えた。米国向けの売上が大きい英国のケムリングとエイボンが名指しされている。BAEシステムズは開始1時間で5.13%安と、この朝の最大の敗者になった。
AIの陰も欧州に届いていた。ロイターは、シーメンス・エナジーやシュナイダー・エレクトリック、ASMLといったAI関連の電力機器・半導体装置株に、規制強化への警戒の売りが出たと伝えた。ただ、その下げは浅かった。シーメンス・エナジーは18時の2.80%安から、19時半には0.45%安まで戻している。東京で半導体株が受けた打撃と比べれば、かすり傷に近い。
1時間後の景色:南欧が先頭に
| 指数 | 前日終値 | 18時(開始1時間) | 19時29〜30分 |
|---|---|---|---|
| STOXX欧州600 | 645.66 | 650.26(+0.71%) | 653.85(+1.27%) |
| ユーロ・ストックス50 | 6,144.56 | 6,197.25(+0.86%) | 6,245.46(+1.64%) |
| ドイツDAX | 25,864.62 | 26,017.03(+0.59%) | 26,229.32(+1.41%) |
| 英FTSE100 | 10,638.43 | 10,678.07(+0.37%) | 10,740.85(+0.96%) |
| 仏CAC40 | 8,020.31 | 8,064.07(+0.55%) | 8,127.70(+1.34%) |
| 伊FTSE MIB | 49,941.83 | 50,625.99(+1.37%) | 50,998.94(+2.12%) |
| 西IBEX35 | 18,807.2 | 19,141.3(+1.78%) | 19,256.5(+2.39%) |
開始1時間の時点で上げが大きかったのは、スペインとイタリアだった。両国の指数は銀行株の比重が高い。銀行が走れば、指数もついていく。ロイターは日本時間18時27分、STOXX欧州600が1%近く上げ、銀行株は4%近い上げで業種別の首位だと伝えた。その後も上げは続き、19時半にはSTOXX欧州600が1.27%高、DAXは1.41%高まで来た。
その間、19時にはユーロスタットがユーロ圏の10月の消費者物価の速報を出した。前年同月比4.0%で、9月の3.8%から加速した。エネルギーは20.8%の上昇である。欧州中央銀行の利上げを後押しする数字だが、この朝の株式市場はそれを気に留める様子を見せなかった。為替では同じ頃、ユーロが円に対して178円台に乗せている。その経緯は中間選挙とAI株の記事とあわせて読むと、選挙が国ごとに違う顔を見せた一日の全体がつかめる。
エピローグ:今夜のニューヨークへ
物語はまだ終わっていない。欧州の上げは、銀行と再生可能エネルギーという、米国のAI株とは別の場所に資金が向かったことを示した。では米国の投資家は、今夜どこに資金を向けるのか。S&P500の先物は日本時間19時49分の時点で前日比約1%高の7,669と、欧州の空気を引き継いでいる。答えが出るのは、日本時間23時30分の米国市場の取引開始からだ。
欧州の舞台にも、次の幕が控えている。5日木曜の日本時間21時、イングランド銀行が金融政策を発表する。政策金利は3.75%で、市場の一部は利上げを予想している。銀行株が走った翌日、その燃料になる金利の行方が試される。そして日本時間6日の朝には、今夜の米国市場が、東京の半導体株にもう一度宿題を渡すことになる。
主な参照
- 指数と個別株の5分足/ヤフーファイナンス
- 先物の下げ、銀行株と再生可能エネルギー株の上げ、AI関連株の売り(ロイター)/ユーロネクスト(ロイター配信)、デブディスコース(ロイター配信)
- ノボノルディスクの7〜9月期決算/ノボノルディスク(グローブニューズワイヤー)
- コンチネンタルの7〜9月期決算/コンチネンタル
- ハイデルベルク・マテリアルズの決算/インベスティング・ドットコム
- 欧州防衛株の下落/インベスティング・ドットコム
- ユーロ圏の10月消費者物価速報/ユーロスタット
- イングランド銀行の政策発表日/イングランド銀行
データ基準日:2026年11月4日19時49分(日本時間)。株価と指数はすべて取引時間中の値で、終値ではない。「開始1時間」はヤフーファイナンスの日本時間18時(協定世界時9時)の5分足の値。ロイターの報道にある騰落率は記事の時点の値で、本稿の表の値とは時刻が異なる。ノボノルディスクの「今年3度目の引き上げ」とウゴービの飲み薬が予想を上回った点、ハイデルベルク・マテリアルズの決算内容は報道による。SMAソーラーの上昇について同社の発表は確認できていない。業種別の騰落はロイターの集計で、STOXXの公表値は確認できていない。イングランド銀行の利上げ予想は一部の市場参加者の見方である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















