昼の東京でユーロ円の売りを持っていた向きは、夕方の欧州勢の買いに押し切られただろう。ユーロ円は4日、日本時間10時45分台に177.14円まで下げたあと、欧州の朝から一本調子で上げ、18時45分台に178.40円を付けた。19時45分時点では178.23円。3日のECB参照レート176.95円から見ると1円28銭の円安・ユーロ高で、10月の上値178.31円(10月5日の高値)を抜けた。
筆者の見立てを先に書く。今週から来週にかけてのユーロ円は、50日移動平均線がある178.95円、その先の9月30日の高値179.30円を試しにいくとみている。強気だ。ただし買うのは177円台後半への押し目で、178円台での飛び乗りはしない。逆になったら、の線は177.10円に置く。今日の安値のすぐ下である。
テープ:ドル安の日に、円はもっと弱かった
今日の値動きを分解しておく。米中間選挙で民主党が上下両院の過半数を取り、ドルは主要通貨に対して売られた。ユーロドルは前日終値の1.1192ドルから、19時40分台には1.1251ドルまで上げている。ふつうなら、ドル安の日にはドル円も下がる。実際、ドル円は昼に157円台半ばまで下げた。その経緯は昼のドル円見通しで書いたとおりだ。
ところが夕方には、ドル円も158.46円まで戻している。ドルが売られ、それ以上に円が売られた。ユーロ円はこの二つを掛け合わせた通貨ペアなので、ユーロ高と円安の両方を一度に取り込んで上げた。昼の記事で「ユーロ円は177.14〜177.81円の範囲にとどまり、円が売られる日でも買われる日でもない」と書いたが、欧州時間に入ってその均衡が円安側へ崩れたことになる。
上げの速さには需給の手触りがある。トレーダーズ・ウェブ配信のザイFX!は日本時間4日昼、178.10円に大きめの損切りの買い注文、176.60〜70円に買い注文があると伝えていた。ユーロ円が178.10円を抜けたのは18時15分台で、その30分後に今日の高値178.40円を付けている。売り方の買い戻しで一段上に持ち上げられた形だ。踏み上げは長続きしないことも多いが、今日は抜けた後に178.2円台で踏みとどまっている点を筆者は評価する。
ユーロ円の水準の地図(円)
読み方:10月の箱(175.07〜177.43円)を上に抜け、現在値は50日線の手前にある。撤退線は177.10円。出所:ヤフーファイナンス(日本時間11月4日19時45分時点、取引時間中)、ザイFX!、本誌計算。
材料:ユーロ圏の物価4.0%は、上げの後に出た
19時に、ユーロスタットが10月のユーロ圏消費者物価(HICP)の速報を出した。前年同月比4.0%で、9月の3.8%から加速した。品目別ではエネルギーが20.8%、サービスが3.3%と、どちらも前月より高い。欧州中央銀行(ECB)の目標は2%で、その倍である。
ただし順番を間違えてはいけない。ユーロ円の上げは18時台に起きており、物価統計はその後に出た。発表後の19時台はむしろ178.2円台で足踏みしている。つまり4.0%は上げの理由ではなく、上げた水準を正当化する材料として働いた。市場は加速をある程度読んでいたということだ。今朝のユーロドル見通しで触れたように、ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁は3日、12月の利上げは「ほぼ確実に必要」と述べている。物価4.0%はその発言の裏付けになった。
政策金利の差も確認しておく。ECBの預金ファシリティ金利は2.50%、日銀の政策金利は1.25%で、差は1.25%ポイントある。日銀は10月30日の会合で据え置いた。次の決定はECBが12月17日、日銀が12月17〜18日の会合で、日程がほぼ重なる。ユーロ円にとって、12月の第3週は利上げを両側から同時に試される週になる。
水準の地図:178.95円の50日線が最初の関門
本誌がヤフーファイナンスの日足終値から計算した移動平均は、50日線が178.95円、100日線が181.84円、200日線が183.19円だ。いまの178.23円はそのどれよりも下にある。ユーロ円は4月17日にECB参照レートで187.72円の最高値を付け、そこから10月23日の175.51円まで下げてきた。大きな流れはまだ下向きで、今日の上げはその中の戻りにすぎない。ここは正直に書いておく。
それでも短期で強気とみるのは、10月の箱を上に抜けたからだ。10月22日から11月3日まで、ユーロ円は日足で175.07〜177.43円の中に収まっていた。値幅2円36銭の狭い箱である。日柄にして2週間近く、売り買いの持ち高がこの中に溜まった。上に抜けた以上、箱の中で売った向きの買い戻しが続きやすい。次の売り場は50日線の178.95円、その上は9月30日の高値179.30円になる。
| 水準 | 中身 | 筆者の使い方 |
|---|---|---|
| 181.84円 | 100日移動平均線 | 今月中に届くとはみていない |
| 179.30円 | 9月30日の高値 | 短期の上値目標 |
| 178.95円 | 50日移動平均線 | 最初の関門、一部利食い |
| 178.40円 | 11月4日の高値(18時45分台) | ここを越えれば上げ再開 |
| 177.43円 | 10月22日〜11月3日の箱の上限 | 押し目買いの場所 |
| 177.10円 | 4日安値177.14円のすぐ下 | 撤退線 |
| 176.60〜70円 | 報道された買い注文の帯 | 撤退後の次の受け皿 |
筆者の見立て:179円試しは55%
今後1〜2週間の見立てを確率で置く。いずれも筆者の主観で、計算から出した数字ではない。
- 上(55%):50日線の178.95円を抜け、179.30円を試す。根拠は三つ。10月の箱を上に抜けたこと、ドル安と円安が同じ日に重なる組み合わせが続いていること、そしてユーロ圏の物価がECBの利上げを後押しする材料として残ることだ。
- 横ばい(30%):177.40〜178.95円で日柄を消化する。50日線で跳ね返され、6日の米雇用統計まで動けない展開である。
- 下(15%):177.10円を割り、176円台半ばへ戻る。きっかけになりうるのは、株安が深まって円が買い戻される場合と、日本の当局が円安をけん制する場合だ。
12月中旬までの中期では、176〜181円の範囲を想定する。200日線の183円台を取り戻すには、ECBの利上げと日銀の据え置きが同時に起きるくらいの材料が要る。そこまでは読まない。
逆になったら:177.10円割れで撤退
177.10円を日本時間の終値ベースで割り込んだら、見立ては引っ込める。今日の上げが踏み上げだけで、実需の買いが続かなかったことの証拠になるからだ。その場合、次の受け皿は報じられた買い注文のある176.60〜70円、その下は10月30日の安値175.07円になる。
もう一つの逆風は円安けん制だ。ドル円が158円台後半から159円に近づく局面では、財務省の口先介入が出やすい。片山財務相は2日、「無秩序な動きや過度に投機的な動きがあれば行動する」と述べている。ユーロ円は介入の直接の対象ではないが、ドル円で円が買われればユーロ円も同時に下がる。ドル円159円は、ユーロ円の買い手にとっても警戒線である。
監視リスト
| 日時(日本時間) | イベント | 見どころ |
|---|---|---|
| 11月5日(木)21時 | 英中銀の金融政策発表 | 欧州通貨全体の地合い |
| 11月6日(金)22時30分 | 米10月雇用統計 | ドル円経由でユーロ円も動く |
| 12月17日(木) | ECB理事会の金融政策決定 | 利上げの有無 |
| 12月17〜18日 | 日銀の金融政策決定会合 | 1.5%への利上げ議論 |
筆者が明日の朝いちばんに見るのは、ユーロ円が178円を保っているかどうかだ。保っていれば押し目を待つ。割れていれば、今日の踏み上げは一晩で終わったとみて、177円台前半の撤退線までの距離を測り直す。ユーロ円は値動きが大きく、少ない資金でも損失が膨らみやすい。取引の仕組みはFX解説ページでも整理している。
主な参照
- ユーロ円のECB参照レート(2026年4月17日の187.72円、10月23日の175.51円、11月3日の176.95円)/欧州中央銀行
- ユーロ円・ユーロドル・ドル円の日足と15分足/ヤフーファイナンス
- ユーロ円の注文情報(178.10円の損切り買い、176.60〜70円の買い)/ザイFX!(トレーダーズ・ウェブ配信)
- ユーロ圏の10月消費者物価速報(4.0%)/ユーロスタット
- ECB理事会の日程(12月16〜17日)/欧州中央銀行
- 日銀の10月30日の決定と会合日程/日本銀行、日本銀行(日程)
- 英中銀の政策発表日/イングランド銀行
データ基準日:2026年11月4日19時45分(日本時間)。為替レートはすべて取引時間中の気配値で、終値ではない。ECB参照レートは各営業日の中欧時間14時15分の公表値。移動平均は日足終値から本誌が計算したもので、情報ベンダーにより差が出る。注文情報は報道にもとづくもので、実在や残高を本誌は確認できない。片山財務相とナーゲル総裁の発言、ECBの預金ファシリティ金利は本誌の既報による。確率は筆者の主観的な見立てであり、将来の値動きを保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















