イラン国営テレビは22日、ホルムズ海峡で一晩のうちにタンカー7隻が火災を起こすか損傷したと伝えた。イランの攻撃を受けたか、機雷に触れたという。AP通信はこの主張を独自に確認できていない。それでも北海ブレント原油先物は日本時間22日22時32分時点で1バレル112.51ドルと、前日の清算値から3.39%高い。取引時間中の値である。
同日20時台に本誌が書いたブレント原油の記事は、サウジの油田への無人機攻撃と現物価格の弱さを扱った。今回の新しい材料は、戦場が再び海峡そのものに戻ったことだ。まず下の4つの数字を見てほしい。
確かなことと、まだ確かでないこと
今回の材料は、出どころによって確かさが大きく違う。下の表は、22日の報道を確認の度合いで並べたものだ。価格を動かしているのは、いちばん下の段にある「未確認の主張」である点に注意したい。
| 内容 | 出どころ | 確認の度合い |
|---|---|---|
| ブレント112.51ドル(+3.39%)、WTIは日中に100.09ドルまで上昇 | 先物市場の取引価格(22日22時32分時点) | 確認済み(市場データ) |
| 10月は、戦争の初期だった3月以来、商船への攻撃の報告が最も多い月になった | 英国海事貿易機関(UKMTO)、AP通信が引用 | 確認済み(公的な監視機関) |
| イランは、米国が商船の海峡通過を手助けし続けるなら、地域の米軍基地を攻撃すると改めて警告した | イラン国営テレビ(革命防衛隊海軍の発表を引用) | 発言としては確認済み |
| タンカー7隻が一晩で火災・損傷。死傷者には触れていない | イラン国営テレビ(同上) | 未確認。APは独自確認できず、UKMTOも報告していない |
7隻という数字は、APによれば際立って多い。ただし報告しないことを選ぶ船主が増えているなら、UKMTOに記録がないことは「何も起きていない」証拠にもならない。確認の取れない状態が続くこと自体が、保険料と運賃を押し上げる。市場は、真偽が分かるまで高めの値段を払う方を選んだ。
ブレントは5カ月ぶりの高値圏、WTIは再び100ドル
ブレント原油先物の終値(2026年9月1日〜10月22日)
読み方:10月7日の100.20ドルを底に、2週間あまりで12%上げた。22日の値は5月4日(114.44ドル)以来の高さ。出所:Yahoo!ファイナンスの期近物つなぎ足(22日分は日本時間22時32分の値)。限月の乗り換えによる段差を含む。
ブレントの22日の水準は、終値ベースで5月4日の114.44ドル以来の高さにあたる。10月7日の100.20ドルからは、2週間あまりで12%上げた計算だ。WTIは日中に100.09ドルをつけ、21日に割り込んだ100ドルの大台を一時回復した。ロイターもブレントの5カ月ぶり高値を伝えている。
ただし今年の天井はまだ遠い。終値の年初来高値は3月31日の118.35ドル、日中では4月30日の126.10ドルである。いまの112ドル台は、4月の日中高値より約11%低い。戦争の再開を半分ほど織り込んだ水準と読める。
ブレントの節目:114ドルと105ドル
ブレントの節目(ドル)
読み方:上は114.44ドル、下は105ドル前後が本誌の注目する節目。終値で抜けたかどうかで判断する。出所:Yahoo!ファイナンスの日足。
上の節目は114.44ドルだ。5月4日の終値で、ここを終値で超えると年初来高値の118.35ドルまで目立った節目がない。下の節目は105ドル前後で、10月12〜15日に終値が105.69〜106.65ドルの間で4日続けて止まった水準である。そこを割れば、21日の清算値108.82ドルを挟んだ上げは「報道への一時の反応」だったことになる。
この先2週間には、価格を大きく動かしうる日程が2つ並ぶ。10月27日のイスラエル総選挙と、11月の米中間選挙である。APは、イスラエルの安全保障研究所の研究員が「ネタニヤフ首相が明確に勝てば攻撃はほぼ確実」と語ったと伝えた。米国とイスラエルが中間選挙後に短期集中の作戦を検討しているとの報道もある。
円で見た原油は1バレル1万7,700円
ドル建てと円建てのブレント上昇率(9月1日→10月22日、%)
読み方:円高がドル建ての上げを約2ポイント吸収した。円安に戻れば、この差は逆に上乗せになる。出所:Yahoo!ファイナンスの終値から本誌計算。
日本の読者にとって大事なのは、円に直した値段だ。9月1日のブレントの終値94.65ドルは、当時のドル円160.20円で換算すると1バレル約1万5,160円だった。22日の112.48ドルを157.25円で換算すると約1万7,690円になる。ドル建ての上昇率18.8%に対し、円建ては16.7%にとどまった。この間の円高が、上げ幅の約2ポイントを吸収した。
言い換えれば、円高が進まなければ値上がりはもっと大きかった。ガソリンや灯油の店頭価格には数週間遅れて届く。灯油と軽油の需給はこちらの記事で扱った。ドル円の動きはドル円見通しにまとめている。
シナリオ:11月第1週までのブレント
ブレントのシナリオ確率(11月第1週まで)
読み方:同日朝の見立て(上振れ30%、横ばい50%、下振れ20%)から上振れを5ポイント引き上げた。確率は本誌の判断。
本誌は同日朝の5つの要点で、1〜4週のブレントを横ばい50%、上振れ30%、下振れ20%と見た。今回は上振れを35%に上げ、横ばいを45%に下げる。理由は2つある。ブレントが110ドルを終値ベースで超える勢いを見せたこと、そして攻撃の舞台が海峡に戻ったことだ。
| シナリオ | 確率 | ブレントの目安 | 引き金 |
|---|---|---|---|
| 上振れ | 35% | 114.44ドルを終値で超え、118ドル台を試す | タンカー被害の第三者確認、米軍基地への攻撃、イスラエル選挙後の攻撃準備の報道 |
| 横ばい | 45% | 105〜114ドルで上下 | 被害の報告が続くが確認は取れず、間接協議も途切れない |
| 下振れ | 20% | 105ドルを割り、100ドルを試す | 7隻の主張が否定される、または米イランの公式協議の再開 |
個人投資家のチェックリスト
- UKMTOの発表。7隻のうち何隻が第三者に確認されるか。確認が増えるほど上振れの確率が上がる。
- ブレントの終値と114.44ドル。日中の上げは剥げやすい。終値で超えたかで判断する。
- 10月27日のイスラエル総選挙。結果が出た直後の週明けに値が飛ぶ可能性がある。
- ドル円。円高が続けば円建ての原油高は和らぐ。逆に円安に戻ると二重に効く。
- 撤退線。上昇に賭けるなら、105ドルを終値で割った時点で前提が崩れたと見なす。
主な参照
- タンカー7隻の被害の主張、UKMTOの記録、イスラエル総選挙に関する発言/AP通信(グローブ・アンド・メール掲載)
- ブレントの5カ月ぶり高値/ロイター
- ブレント・WTI先物、ドル円の日足と気配値/Yahoo!ファイナンス
- 英国海事貿易機関の警報一覧/UKMTO
データ基準日:2026年10月22日(日本時間22時32分)。ブレント(12月限)とWTIは取引時間中の値で、終値ではない。過去の値は期近物をつないだ日足の終値で、限月の乗り換えによる段差を含む。円建て価格は各日の終値とドル円の終値から本誌が計算した概算である。タンカー7隻の被害はイラン国営テレビの主張として報じられているもので、執筆時点で第三者による確認は取れていない。シナリオの確率は本誌の判断である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















