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ブレント原油110ドル、米がサウジ退避命令|5つの要点

バヒティヨル マダジモフ バヒティヨル マダジモフ
2026年10月22日
マーケット, 商品・貴金属, 経済, 速報
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米国務省は21日(米国時間)、サウジアラビアに駐在する一部の政府職員と家族に退避を命じた。理由はイエメンの親イラン武装組織フーシ派による攻撃の拡大である。これまで戦争の危険は、原油の通り道の問題だった。今回は産油国そのものに危険が及んだと米政府が認めた形だ。北海ブレント原油は22日のアジア時間に1バレル110ドル台へ上げ、米国産のWTIとの価格差は12ドル前後に開いている。

問われているのは、この上げが一時の反応で終わるかどうかである。日本の原油の約6割はサウジとアラブ首長国連邦(UAE)産だ。要点を5つに絞る。

  1. 退避命令:対象はサウジの職員と家族のみ。国務省は湾岸全域への拡大報道を否定した。
  2. 価格差11.67ドル:12月物どうしのブレントとWTIの差。1年前は3.63ドルだった。
  3. 運賃7倍:ゴールドマンによると原油の平均運賃は1年前の3ドルから20ドル超に上がった。
  4. 日本の59%:8月の原油輸入のうちサウジ産とUAE産を合わせた比率である。
  5. 見立て:1〜4週のブレントは横ばい圏を基本に50%、上振れ30%、下振れ20%とみる。

1. 退避命令は「通り道」から「産油国」への移動

結論:市場が織り込む戦争の危険は、海峡の通航からサウジの国内へ広がった。

根拠:国務省の報道官は、緊急でない職員と家族への退避命令を出したと声明で述べた。フーシ派が空港などの重要インフラを攻撃し、民間人に死傷者が出ていることを理由に挙げた。BBCによると、21日には東部ダンマンのキング・ファハド国際空港で1人が死亡し、8人が負傷した。UAE国境に近いシャイバ油田では、迎撃した無人機の破片で2人が死亡した。

攻撃は紅海側だけでなく、湾岸側の空港と油田にも及んでいる。アルジャジーラによると、報道官は湾岸全域の大使館で退避を準備しているとの報道を「不正確」と否定した。一方、ロイターは米当局者4人の話として、他の湾岸諸国の公館も家族の退避を命じる見通しだと伝えている。

次:退避命令がUAEやクウェートに広がるかを見る。広がれば、危険の範囲が湾岸全体に及んだと読む。

2. ブレントとWTIの差は「近い月」に集中している

結論:海上で取引される原油だけが高い。差の大半は、いますぐ届く原油の不足を映している。

ブレントとWTIの価格差(12月物どうし、ドル/バレル)

2025年10月21日1年前3.63ドル2026年2月27日米・イスラエルの対イラン攻撃の前日4.91ドル2026年9月29日8.91ドル2026年10月12日この1年の最大13.79ドル2026年10月15日WTIが急伸して縮小9.42ドル2026年10月21日最新の清算値11.67ドル

読み方:差は1年前の3倍を超える。10月12日に13.79ドルまで開き、15日に9.42ドルへ縮んだ後、再び広がった。出所:Yahoo Financeの限月別日足(ブレント12月物、WTI12月物の清算値)から本誌が計算。

根拠:21日の清算値はブレント12月物が108.82ドルでほぼ横ばいだった。WTI12月物は0.67ドル安の97.15ドルで、3日続落である。差は11.67ドルになった。

同じ日の1月物どうしの差は9.61ドルにとどまる。ブレントは12月物と1月物の差が3.75ドルあり、WTIの1.69ドルの2倍を超える。

なお、一部で報じられた「WTIが4.6%安」は、満期を迎えた11月物の清算値との比較である。同じ12月物で比べた下げは0.7%にすぎない。スポット価格の差がさらに大きい点は、2011年と比べた記事で扱った。

次:1月物どうしの差が12ドルを超えれば、不足は先の月にも広がったと判断する。

3. 運賃7倍が価格差を押し広げる

結論:米国の原油は余っていても、運ぶ費用が中東産との差を埋めない。

根拠:ゴールドマン・サックスは20日付のリポートで、原油の平均運賃を分析した(ロイター)。1年前の1バレル3ドルから20ドル超になったという。中東航路は35ドルを超える。上昇分の半分以上は、ホルムズ海峡の戦争保険料と洋上での積み替えの費用だという。同行は、運賃高が油種間の価格差を広げると指摘している。

同行の基本シナリオは、ブレントが2026年末に90ドル、2027年平均で80ドルだ。いまの110ドル台との差は20ドルある。ただし運賃の高止まりや施設への攻撃は、予想の上振れ要因だと明記している。

米エネルギー情報局(EIA)の週間統計では、米原油在庫が306万バレル減った。市場予想の82万バレル減を上回る減少である。

次:超大型タンカーの運賃が下がり始めるかを見る。下がれば、価格差は縮む方向に向かう。

4. 日本の原油は紅海の南の出口を通る

結論:日本にとって問題は価格だけではない。サウジ産の出荷経路そのものが攻撃の圏内にある。

根拠:資源エネルギー庁の石油統計速報によると、8月の原油輸入は1,236万キロリットルだった。サウジ産が420万キロリットルで34.0%、UAE産が314万キロリットルで25.4%を占める。合計は59.4%になる。中東依存度は60.7%で、前年同月より35.1ポイント低いが、なお6割だ。

サウジは東西パイプラインで原油を紅海側のヤンブーへ送り、そこから積み出している。日本向けはバベルマンデブ海峡を南へ抜けるのが最短の経路だ。日本経済新聞によると、同海峡を通った原油は10月上中旬に日量49万バレルまで減った。経路の詳細は12日の記事にまとめた。

22日11時39分(日本時間)のブレントは110.55ドルだった。ドル円157.91円で換算すると1バレル約1万7,460円になる。次:ヤンブーの積み出しが止まったとの報道が出るかを最優先で見る。

5. 1〜4週の見立てと、見方を捨てる線

結論:基本は横ばい圏だ。退避命令は危険の格上げだが、供給の実害はまだ確認されていない。

ブレント12月物は10月30日に満期を迎える。期近は1月物に替わり、表示上はそれだけで3〜4ドル下がる。そこで水準は1月物で示す。1月物は22日11時39分(日本時間)に106.57ドルだった。

シナリオ確率ブレント1月物引き金
横ばい圏(基本)50%100〜112ドル攻撃は続くが、ヤンブーと東西パイプラインは稼働を保つ
上振れ30%112ドル超、120ドル試しヤンブーの出荷停止、紅海でのタンカー被弾、退避命令の湾岸諸国への拡大
下振れ20%100ドル割れサウジとフーシ派の停戦、ホルムズ海峡の通航回復
確率と水準は本誌の判断。期間は10月22日から4週間。1月物の水準は清算値で判定する。

見方を捨てる線:1月物の清算値が2日続けて112ドルを上回るか、100ドルを下回れば基本シナリオを取り下げる。前日までの値動きは21日の記事を参照してほしい。

30秒まとめ。米国のサウジ退避命令で、戦争の危険は産油国そのものに及んだ。ブレントとWTIの差は近い月に集中し、運賃高と東側の不足を映す。日本は輸入の約6割をサウジとUAEに頼り、ヤンブーの出荷が最大の分かれ目になる。

主な参照

  • 国務省の退避命令と声明、ダンマン空港とシャイバ油田の被害/BBC(10月22日)
  • 報道官の声明、湾岸全域の報道の否定、他公館の見通し/アルジャジーラ(ロイター配信を含む)(10月21日)
  • アジア時間の原油先物、21日の清算値の前日比、EIA在庫/ロイター(ニューズウィーク日本版掲載)(10月22日)
  • 12月物の清算値(ブレント108.82ドル、WTI97.15ドル)/リグゾーン(ブルームバーグ配信)(10月21日)
  • ゴールドマン・サックスの運賃分析と価格予想/ロイター(インフォシーク掲載)(10月21日)
  • 8月の原油輸入と国別内訳/資源エネルギー庁「石油統計速報」、LNEWS(9月30日)
  • 東西パイプラインの送油量/パイプライン・アンド・ガス・ジャーナル(ロイター配信)
  • バベルマンデブ海峡の原油通航量/日本経済新聞(10月22日)
  • 限月別の先物価格とドル円/Yahoo Finance

データ基準日:2026年10月22日11時39分(日本時間)。ブレント110.55ドル、WTI98.33ドル、ブレント1月物106.57ドルは取引時間中の値で、清算値ではない。ドル円157.91円は同日11時49分の値である。108.82ドル、97.15ドルなど21日の値と価格差の推移は清算値で、価格差は本誌の計算だ。輸入比率は速報値で、確報で改定されることがある。シャイバ油田への攻撃の主体はサウジ当局が明らかにしていない。他の湾岸公館の退避見通しはロイターの報道で、国務省は確認していない。ゴールドマン・サックスのリポートはロイターの報道に基づく。確率と水準は本誌の判断で、将来の価格を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。

アイキャッチ画像:「The Seavigour oil tanker (2017)」Kees Torn撮影、Wikimedia Commons(CC BY-SA 2.0)をトリミングして使用。

Tags: WTI原油サウジアラビアブレント原油ホルムズ海峡中東原油地政学リスク
バヒティヨル マダジモフ

バヒティヨル マダジモフ

投資銀行で5年、リテール証券会社で3年の実務経験を積んだのち、現在もFX・株式・オプションなど幅広い市場で実際にトレードを行っている。FX取引歴は10年以上、株式投資・トレード歴は4年以上におよび、オプションをはじめとする複雑な金融商品の実取引経験も豊富。株式・株式オプション・FX・暗号資産において自己のポジションを保有している。 こうした実務とマーケットでの経験をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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