イエメンのフーシ派によるサウジアラビアへの攻撃が、空港から石油施設へ広がっている。10日にはリヤドの空港で12人が死亡した。11日、同派は紅海沿岸ラービグの製油所も攻撃したと主張した。ホルムズ海峡が詰まったいま、日本に届くサウジ産原油は紅海側から出ている。その出口が射程に入ったことが、日本の投資家にとっての論点である。
要点5つ
- 死者12人:10日のリヤド空港攻撃で、サウジ当局は12人死亡、309人負傷と発表した。
- ラービグ:フーシ派は紅海沿岸の製油所を攻撃したと主張した。サウジ側は確認していない。
- 34%:8月に日本が輸入した原油の34%はサウジ産で、国別の首位だった。
- 15%:住友化学はラービグの製油・石化会社ペトロ・ラービグに15%を出資している。
- 105.65ドル:ブレント原油は12日19時42分(日本時間)時点で、9日終値比0.9%高。
1. リヤド空港で12人死亡、攻撃は連日
結論:攻撃は一度きりではなく、連日続いている。
根拠:サウジの民間航空当局によると、10日の攻撃で12人が死亡し、309人が負傷した(アルジャジーラ)。犠牲者には米国人も含まれる。時事通信によると、死者はその後13人に増えた。11日にも同じ空港が攻撃され、1人が死亡、11人が負傷した。
アルジャジーラは、サウジ国内への攻撃として10年余りで最悪と伝えた。日本の外務大臣も談話で攻撃を非難している。リヤドの学校は1週間、遠隔授業に切り替わった。
次:サウジは「断固として」報復すると表明した。トランプ米大統領は参戦について「あるかもしれない。検討する」と述べた。
2. 標的が紅海側の石油施設に
結論:空港の次に名指しされたのは、紅海沿岸の石油施設だった。
根拠:フーシ派は、ラービグのアラムコ製油所をミサイルと無人機で攻撃し、火災が起きたと主張した。サウジ当局はすぐには確認していない。同派はアラムコの石油施設とリヤドの空港を、サウジの「最も貴重な資産」と呼んだ。
紅海側への攻撃は初めてではない。フーシ派は7月にサウジへの海上封鎖を宣言した。8月24日には、ヤンブー沖でサウジ国営海運バハリのタンカーを弾道ミサイルで攻撃したと主張した。バハリは「海上での事案」があったと認め、乗員は全員無事だとした。
次:ラービグの被害をサウジ側やアラムコが認めるかどうか。認めれば、紅海側の出荷への不安が一段と強まる。
3. 日本の原油の3分の1が紅海から来る
結論:サウジ産原油の出口は、いま紅海側に移っている。
根拠:資源エネルギー庁の石油統計速報(9月30日公表)によると、8月の原油輸入は1,236万キロリットル。首位はサウジの420万キロリットルで、全体の34.0%を占めた。2位は米国の416万キロリットルだった(LNEWS)。
日本の8月の原油輸入、国別上位5カ国(万キロリットル)
読み方:輸入全体は1,236万キロリットル。サウジ産はいま主に紅海側のヤンブーから積み出されている。中東依存度は60.7%で、前年同月から35.1ポイント下がった。出所:資源エネルギー庁「石油統計速報」2026年8月分(9月30日公表、速報値)をLNEWSが報じたもの。構成比は本誌計算。
ホルムズ海峡が使えないため、サウジは原油を東西パイプラインで紅海側のヤンブーへ送っている。フォーチュン(ブルームバーグ配信)によると、輸送量は3月に日量700万バレルの上限に達した。ヤンブーからの原油輸出は日量約500万バレルだった。ラービグはそのヤンブーと同じ紅海沿岸にある。
次:9月分の石油統計速報(10月末公表の見込み)で、サウジからの輸入量が維持されたかを確認したい。迂回路の経緯は7月の記事で扱った。
4. 住友化学のラービグ15%
結論:ラービグは、日本の上場企業が出資する現場でもある。
根拠:住友化学(4005)の2025年10月22日の開示によると、ペトロ・ラービグ株の一部をアラムコに売る取引は同年10月8日に完了した。住友化学の持ち分は37.5%から15%に下がった。アラムコが60%を持つ筆頭株主となった。ペトロ・ラービグは今も住友化学の持分法適用会社である。
フーシ派が攻撃したと主張する「アラムコの製油所」が、ペトロ・ラービグの設備を指すのかはわからない。住友化学は12日時点で、この件について発表していない。同社株の9日終値は572.7円だった。
次:13日の東京市場で同社株がどう動くか。会社や現地当局の発表があるかも見ておきたい。
5. 原油は一時下げ、夕方に戻した
結論:原油は停戦期待とフーシ派の攻撃の間で揺れている。
根拠:ブレント原油先物(期近)は、12日19時42分(日本時間)に1バレル105.65ドルだった。9日終値の104.72ドルより0.9%高い。同日朝は、ロシアとウクライナのエネルギー施設をめぐる停戦への期待で、1時間足の終値が102.97ドルまで下げていた(Yahoo Finance)。
停戦合意の中身は本日の別記事で検証した。現物と先物の価格差は5つの要点で整理している。
次:米国の参戦判断と、イランの動き。時事通信によると、イランのアラグチ外相はサウジ側に、フーシ派との対話を支援する用意を伝えた。
30秒まとめ。フーシ派の攻撃は、リヤドの空港から紅海沿岸の石油施設へ広がった。日本の原油の34%を占めるサウジ産は、いま紅海側から出荷されている。ラービグの被害が確認されるか、米国が参戦するかが次の分かれ目になる。
主な参照
- リヤド空港攻撃の死傷者、ラービグ攻撃の主張、サウジとトランプ氏の反応(10月11日)/アルジャジーラ
- 11日の攻撃の死傷者、イラン外相の発言(10月12日)/時事通信
- ヤンブー沖のタンカー攻撃の主張とバハリの説明(8月24日)/アルジャジーラ
- 8月の原油輸入(資源エネルギー庁「石油統計速報」)/LNEWS、経済産業省
- 東西パイプラインとヤンブーの輸出量(3月28日)/フォーチュン(ブルームバーグ配信)
- ペトロ・ラービグ株の売却完了と持ち分(2025年10月22日)/住友化学(東京証券取引所の適時開示)
- 原油先物と住友化学の株価/Yahoo Finance
データ基準日:2026年10月12日19時42分(日本時間)。ブレント原油の105.65ドルは取引時間中の値で、清算値ではない。102.97ドルは1時間足の終値で、日中の安値とは限らない。9日の104.72ドルと住友化学の572.7円は終値である。原油輸入の数字は速報値で、確報で改定されることがある。ラービグの製油所への攻撃はフーシ派の主張で、サウジ当局は本稿執筆時点で確認していない。攻撃対象がペトロ・ラービグの設備かどうかも確認できていない。死者数は発表の時点により12人と13人の違いがある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















