2024年1月18日の夕方、スーパー・マイクロ・コンピューター(SMCI)は四半期決算の発表を待たずに、売上高の見通しを大きく引き上げた。会社の見通し27億〜29億ドルに対し、36億〜36億5,000万ドル。翌19日、株価は1日で35.94%上げた。AIサーバーの銘柄として、ここから3月の最高値まで駆け上がった。
それから2年9カ月後の2026年10月20日、同じ会社が同じことをした。7〜9月期の売上高の見通しを145億〜155億ドルから185億〜195億ドルへ、上限で約26%引き上げたのである。だが今回、株価は翌日に9.55%上げただけで、11月2日には30.44ドルと、上方修正の発表前の32.47ドルを下回った。そのSMCIが、日本時間4日朝に正式な決算を発表する。
スーパー・マイクロの終値(2026年9月1日〜11月2日、ドル)
読み方:10月20日の大引け後に売上高の見通しを大きく引き上げ、翌21日は9.55%上げた。だがその上げは12日間で消え、11月2日の終値は速報前を下回った。9月以降の終値の最高値は10月7日の44.94ドルで、そこから32.3%安。出所:stockanalysis.comの日足終値、本誌計算。
2024年1月と2026年10月、同じ点と違う点
2つの場面を並べると、会社の行動はほとんど同じである。違うのは市場の受け止め方だ。当時と今回を、対照表で整理しておく。株価は2024年10月の10対1の株式分割を調整した値である。
| 項目 | 2024年1月(当時) | 2026年10月(今回) |
|---|---|---|
| 発表の形 | 決算前の速報(1月18日) | 決算前の速報(10月20日) |
| 売上高の見通し | 27億〜29億ドル→36億〜36億5,000万ドル | 145億〜155億ドル→185億〜195億ドル |
| 引き上げの理由 | AI向けの需要 | AI向けプラットフォームの需要増 |
| 粗利益率 | 速報では1株利益の見通しも引き上げ | 12.0〜12.5%(見通しは10.4〜10.8%)。ただし直前の4〜6月期の17.5%は下回る |
| 翌日の株価 | 35.94%高 | 9.55%高 |
| その後 | 3月13日の最高値まで上昇を続けた | 2週間足らずで上げを全て返し、発表前を下回った |
| 市場全体の空気 | AI関連株の上昇局面の入り口 | ナスダック100が最高値から10.4%安の調整局面 |
奇しくも、売上高を見通しの上限から約26%上回る水準へ引き上げたという点まで似ている。当時は上限29億ドルに対し36億5,000万ドル、今回は155億ドルに対し195億ドルだ。同じ規模の驚きに対して、市場の反応は4分の1にとどまった。
当時、その後に起きたこと
2024年の物語には続きがある。株価は3月13日に分割調整後で118.81ドルの最高値を付けた。だが8月28日、年次報告書の提出延期が伝わった日に19.02%下げる。10月30日には監査法人のアーンスト・アンド・ヤングが辞任したことを開示し、1日で32.68%下げた。11月14日の終値18.01ドルは、3月の最高値から84.8%安である。
ここで注意しておきたい。2024年の急落の引き金は、売上や需要ではなく、会計と企業統治への疑いだった。AI需要という物語自体は崩れていない。実際、会社の2026年6月期の売上高は391億ドルと、前の期の220億ドルから大きく伸びている。歴史は繰り返すのではなく、韻を踏む。今回の株価の弱さが当時と同じ種類の不安から来ているという証拠は、いまのところ見当たらない。
「今回は違う」論の検証
今回の反応が鈍い理由として、構造的に異なる点を3つ挙げられる。第一は利益の質である。4〜6月期の粗利益率は17.5%と、前の四半期の9.9%から跳ね上がっていた。7〜9月期の速報の12.0〜12.5%は会社の見通しを上回るが、直前の四半期からは5ポイント以上低い。売上が増えても、1ドルあたりの儲けは薄くなっている。
第二は市場全体の空気だ。2024年1月はAI関連株の上昇が始まったばかりだった。今回は、AIへの設備投資が回収できるのかという疑いが広がり、ナスダック100が調整局面に入っている。個別の好材料が、セクターの売りに飲み込まれやすい。11月2日もSMCIは7.62%安で、AMDやインテルと同じ方向に動いた。
第三は驚きの「鮮度」である。2024年は速報が最初の驚きだった。今回は会社が8月に通期の売上高を650億〜720億ドルと見通しており、大幅な伸び自体はすでに知られていた。速報が示したのは、その道筋が前倒しで進んでいるという確認にとどまる。
歴史が示す3つの教訓
- 速報の後の本決算は「見通し」で動く。売上高はすでに出ている。4日に問われるのは10〜12月期の見通しと、通期650億〜720億ドルを上げるか据え置くかである。
- 粗利益率は売上より重い。2024年も2026年も、売上の伸びは疑われていない。株価を左右するのは、薄くなった利幅がどこで止まるかだ。
- 下げの理由は業績以外から来ることがある。2024年の84.8%安は会計と企業統治が原因だった。決算の数字だけでなく、監査や開示に関する記述にも目を配りたい。
今回固有の監視点と筋書き
決算の説明会は米東部時間3日17時、日本時間では4日午前7時に始まる。本誌は決算翌日の値動きを次のように見る。10%を超える上昇が35%、上下10%以内が40%、10%を超える下落が25%である。株価がすでに速報前の水準を下回り、売上の上振れがほぼ「タダ」で手に入る位置にあることを、上昇側の35%に反映した。下落側の25%は、10〜12月期の見通しで粗利益率がさらに下がる場合の確率だ。
- 通期見通し:650億〜720億ドルの上限引き上げなら上昇側。据え置きなら、速報分の上振れを下期で取り返されるとの見方が出やすい。
- 粗利益率の見通し:10〜12月期が12%台を保てるか。10%を割り込む見通しなら下落側の筋書きに近づく。
- 同じ夜のAMD決算:AIへの設備投資をめぐる空気は、AMDの見通しでも左右される。AMDの論点はAMD決算の反対尋問で扱った。
- 撤退線:押し目を狙うなら、2日の安値30.27ドルを終値で割り込んだら手放す、と先に決めてから入る。
今週の米国のほかの決算は今週の決算の予習に、4日の東京市場への波及は東京再開の宿題の記事にまとめてある。
主な参照
- 2027年6月期第1四半期の速報(10月20日)/米証券取引委員会への提出書類
- 2026年6月期決算と見通し(8月11日)/米証券取引委員会への提出書類
- 速報の内容と説明会の時刻/スーパー・マイクロ
- 2024年1月の速報と株価の反応/CNBC
- 2024年10月の監査法人の辞任/Accounting Today
- 株価の日足終値(分割調整後)/stockanalysis.com
- ナスダック100の調整入り/TheStreet
データ基準日:2026年11月3日(日本時間16時)。株価は11月2日の米国の終値で、決算発表後の値動きは反映していない。2024年の株価は10対1の株式分割を調整した値である。10月20日の数字は会社の速報で、監査法人の確認を受けておらず、正式な決算で変わる可能性がある。筋書きの確率は本誌の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














