11月2日の東京市場は、業績予想を引き上げた会社ほど売られた。住友化学(4005)は通期の最終利益予想を28.6%引き上げたにもかかわらず9.47%安で引けた。京セラ(6971)は売上高予想を上げて4.69%安、住友商事(8053)は最高益予想をさらに上積みして1.16%安だった。3日は文化の日で休場となり、次の取引は4日の水曜日である。その間に米国では中間選挙の投票がある。引け後に経常利益予想を31.1%引き上げた商船三井(9104)を加えた3銘柄を、休場明けの注目株として図で整理する。
まず1枚:上方修正の日に、株価は下を向いた
11月2日に決算・修正を出した主な銘柄の騰落率(終値、前週末比)
読み方:上方修正や増配を出した会社が、そろって下げて引けた。プラスは10月30日に修正を出していた丸文だけ。出所:株探(11月2日終値)。
2日に決算や業績修正を出した主な会社の終値の騰落率を並べた。プラスで引けたのは、10月30日の引け後に業績と配当の予想を引き上げていた丸文(7537)のストップ高だけである。2日の取引時間中に発表した住友化学(13時30分)、住友商事(13時)、日本航空(12時)、マクニカホールディングス(15時)、京セラ(15時ごろ)は、そろって下げて引けた。
共通するのは「数字は良いが、先が弱い」という読まれ方だ。住友化学は上期の好調分を通期予想に足したことで、計算上の下期が大きく落ち込む。京セラは上期の営業利益が56.4%増でも、7〜9月期だけを取り出すと29.4%減だった。日本航空は上期の売上高が11.7%増と再上場後で最高だったが、中東情勢に伴う燃料費の高騰と円安で最終利益は42.2%減っている。足元の四半期と下期の見通しに、売り手は反応している。
指数の引け:日経平均は208円安、値下がりは値上がりの2倍
日経平均への寄与度(11月2日終値、円)
読み方:上位2銘柄の押し上げ(約444円)は、指数の下げ幅208円の2倍を超える。指数の小幅安は、多くの銘柄の弱さを隠している。出所:株探。
日経平均の終値は6万3,081円86銭で、前週末比208円25銭(0.33%)安と続落した。TOPIXは3,930.28で34.79ポイント(0.88%)安と、日経平均より下げがきつい。東証プライムの値上がりは502銘柄、値下がりは1,007銘柄で、値下がりが値上がりのほぼ2倍だった。33業種のうち上げたのは10業種にとどまる。
指数を支えたのは半導体の大型株だ。東京エレクトロン1銘柄で日経平均を248円押し上げ、アドバンテストが196円で続く。この2銘柄だけで444円となり、指数の下げ幅の2倍を超える。反対にキオクシアホールディングスが150円、リクルートホールディングスが124円押し下げた。前場の動きは前引けの番付で扱った。日経平均先物の12月物は大阪の日中取引を6万3,260円で終えている。
注目株1 住友化学:下期は「66.5%減」の計算
住友化学の最終利益:上期実績と通期予想、下期の計算(億円)
読み方:通期予想900億円から上期実績828億円を引くと、下期は71.2億円しか残らない。売りはこの引き算に向かった。出所:株探(会社発表に基づく)。
住友化学の4〜9月期の最終利益は前年同期の2.1倍の828億円で、会社の従来予想700億円を上回った。通期予想は700億円から900億円に引き上げ、年間配当も16円から17円に増やした。ここまでは強い。
問題は引き算である。通期900億円から上期828億円を引くと、10〜3月期(下期)は71.2億円しか残らない。株探の試算では、前年同期比66.5%減にあたる。7〜9月期だけ見ても最終利益は420億円と前年同期比4.8%減で、売上高営業利益率は13.7%から13.0%に下がった。発表直後の13時30分に593.1円の高値を付けた株価は、15時16分に506.0円まで下げ、終値は511.5円だった。出来高は6,240万株に膨らんでいる。
本誌の見方では、下期の数字は会社が保守的に置いた可能性がある。上期に予想を128億円上回った会社が、下期だけ急に失速すると読むのは早い。ただし、それを確かめる材料は決算説明資料の事業別見通しで、4日朝までに市場が読み込む時間は十分にある。1日で9.47%下げた後の株価が、発表前の水準と安値の間のどこで落ち着くかが最初の手掛かりになる。15時36分時点の私設取引システム(PTS)は514円だった。
注目株2 商船三井:まだ一度も取引されていない上方修正
商船三井の経常利益予想(2027年3月期、億円)
読み方:通期の修正幅700億円のうち360億円は上期で生まれた。残りは下期の市況が想定より強い前提である。出所:株探(11月2日15時30分の発表)。
商船三井は大引け後の15時30分に業績予想の修正を出した。2027年3月期の連結経常利益は従来予想の2,250億円から2,950億円へ、31.1%の上方修正である。上期(4〜9月期)の経常利益も1,260億円から1,620億円に引き上げた。理由として会社は、ドライバルク(鉄鉱石や穀物を運ぶばら積み船)とエネルギー輸送の市況が想定を上回ったこと、持分法適用会社でコンテナ船を運航するOCEAN NETWORK EXPRESS(ONE)の業績が想定を上回る見込みであることを挙げた。
2日の終値は7,579円で、修正の発表前に引けている。株探によると、配当予想は修正されていない。決算本体の発表予定日は11月9日で、4日の再開は修正分を織り込む最初の取引になる。中東の海運の混乱が運賃を押し上げている構図は、原油高と同じ根から来ている。原油の地合いはOPECプラスの記事に整理した。米国とイランの協議が進み、海峡の通航が正常に戻る方向に動けば、運賃の追い風は弱まる。上方修正の中身は追い風が続く前提で読む必要がある。
注目株3 京セラ:売上は上げ、利益は据え置き
京セラの4〜9月期は、売上高が前年同期比8.8%増の1兆783億円、営業利益が56.4%増の656億円、最終利益が32.2%増の734億円だった。だが7〜9月期だけでは営業利益が29.4%減の165億円、最終利益が30.1%減の128億円となる。通期予想は売上高を2兆800億円から2兆1,200億円に引き上げた一方、営業利益1,600億円と最終利益1,600億円は据え置いた。会社はAIや半導体向け部品の需要が堅調だとし、上期に窒化ガリウム(GaN)デバイス事業の減損など一時的な損失を計上したと説明している。
終値は3,269円で、前週末比161円(4.69%)安。PTSは15時34分に3,215円と、さらに下で取引された。京セラは日経平均を43円押し下げた銘柄でもある。売上の見通しを上げながら利益を据え置いたのは、減損で上期の利益が削られたためだ。下期の利益が上期より厚くなる計画なので、4日以降は「AI向け部品の需要がどこまで利益に届くか」という問いに株価が答えることになる。年間配当56円は据え置きだった。
休場中の48時間に起きること
休場をはさむ日程(日本時間)
読み方:4日の寄り付きには、米国の2営業日分と選挙の材料が一度に入る。出所:米サプライマネジメント協会、株探。
4日の朝、東京市場は米国の2営業日分と中間選挙の結果をまとめて受け止める。米国では今週、パランティアやアームなどの決算も控えている。日程と、決算後の値動きを予想した記事は今週の決算の記事にまとめた。選挙が相場に与える影響は中間選挙の記事で扱っている。
4日の朝に見るもの:3銘柄のシナリオ
| 銘柄 | 2日終値 | 強い筋書きの合図 | 弱い筋書きの合図 | 本誌の傾き |
|---|---|---|---|---|
| 住友化学 | 511.5円 | 2日の安値506.0円を割らずに寄り付き、下期の保守性が意識される | 506.0円を割り、500円の節目を試す | 反発6割 |
| 商船三井 | 7,579円 | 修正幅を素直に織り込んで高く始まる | 米イラン協議の進展で運賃の先行きが疑われ、上げ幅が縮む | 上昇6割 |
| 京セラ | 3,269円 | PTSの3,215円より上で始まる | 3,200円を下回り、7〜9月期の減益が売られ続ける | 五分五分 |
表の「本誌の傾き」は、2日の値動きと発表内容から本誌が置いた目安で、確率の計算ではない。住友化学は売られた理由が会社の見通しの置き方にあるため、新しい悪材料が出なければ戻りを試しやすいと見る。商船三井は、修正の理由が市況という外部の要因で、その市況を左右するのが中東の協議である点に注意したい。京セラは減益の四半期という事実が残るため、方向感を決めるのは米国の半導体株の地合いだろう。
個人投資家向けチェックリスト
- 上方修正の記事を読んだら、通期予想から上期実績を引いて下期の数字を自分で出す
- 引け後の発表(商船三井)と取引時間中の発表(住友化学、京セラ)を分けて考える。前者はまだ株価に入っていない
- PTSの値段は取引量が少なく、4日の寄り付きを約束しない
- 休場中の米国の2営業日と中間選挙の開票は、4日の寄り付きにまとめて出る
- 指数が小幅安でも値下がり銘柄が2倍ある日は、持ち株の多くが指数より弱い
主な参照
- 日経平均の終値、騰落銘柄数、寄与度/株探
- TOPIXの終値/株探(フィスコ)
- 住友化学の上期決算と通期予想の修正/株探
- 商船三井の業績予想の修正と理由/株探
- 京セラの上期決算と通期予想/株探(MINKABU PRESS)
- 住友商事の上期決算と通期予想/株探
- 日本航空の上期決算/株探
- マクニカHDの業績予想の修正/株探
- 米国の連邦公開市場委員会(FOMC)の日程/米連邦準備制度理事会
- 米ISM製造業景況指数の発表日程/米サプライマネジメント協会
データ基準日:2026年11月2日の東京市場の終値(15時30分)。PTSの値段は15時34〜36分時点の取引で、夜間の取引は反映していない。商船三井の修正は大引け後の発表で、2日の終値には織り込まれていない。住友化学の下期の数字は株探が会社の上期実績と通期予想から試算したもので、会社が公表した数字ではない。寄与度は情報ベンダーにより差がある。各社について市場予想との比較は確認できなかったため扱っていない。シナリオ表の「本誌の傾き」は本誌の判断であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













