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原油価格の見通し:100ドルは「恐怖の値段」だった——銀行予想80ドルとの17ドル差、年末3シナリオと5つの計器

Takashi Suzuki Takashi Suzuki
2026年7月25日
商品・貴金属
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原油価格の見通し ・ 2026年7月24日
100ドルは「恐怖の値段」だった——スポット97ドルと銀行予想80ドル、17ドルの差をどう読むか
ブレント(7/24)
97ドル前後 前日100.69から−3%台
WTI(7/24)
88ドル前後 −4%超
大手銀の年末予想
80ドル GS・JPMが一致
本稿の結論
年末88〜102ドル 確率50%の中心シナリオ

まず昨日からの動きを整理する。ブレントは23日に一時102ドル・清算値100.69ドルと5月以来の大台に乗せた後、24日は一転して3%超下げ、97ドル前後で推移している。WTIは88ドル近辺まで4%超下げた。軍事情勢は何も好転していないのに、である。フーシ派の紅海封鎖は続き、ホルムズの通航は細いまま、停戦協議に合意の発表はない。それでも売られた——この「悪材料の中の下落」こそ、今の原油を読む最大の手がかりだ。答えを先に言えば、100ドルは需給の値段ではなく恐怖の値段であり、恐怖には賞味期限がある(基準日2026年7月24日。価格は執筆時点の概算値)。

まず1枚目:プロの値付けは「80ドル」で動いていない

スポット97ドル vs 銀行フォーキャスト

読み方:ゴールドマンは100ドルを付けた当日(7/23)に年末80ドル予想を「維持」と明言した。プロは今の値段を恒常状態と見ていない。

$60 $70 $80 $90 $100 $97 スポット(7/24・概算) 恐怖込みの現在値 $80 ゴールドマン 10-12月期予想 7/23に維持を確認 $80 JPモルガン 10-12月期予想 7-9月期は平均86ドル $75 ゴールドマン 2027年平均 6/16に引き下げ $64 JPモルガン 2027年平均 OPEC+の結束に懐疑的

出所:BOE Report(GS・7/23)、Invezz集計(JPM・GS・7/1)、Trading Economics(スポット)。

この17ドルの差が意味するものは何か。銀行の予想が楽観的すぎる可能性もあるが、根拠はむしろ具体的だ。第一に供給の回復力。6月の停戦局面では、イラク南部の生産が90万バレルから150万バレルへ、クウェートも58万バレルから260万バレル方向へと、封鎖で止まっていた供給が数週間で戻る実績を見せた。第二に需要側の破壊。100ドルの原油と米国の追加関税(一律10%が今日失効し、対日12.5%の301条が待機中)は世界の消費と成長を削る——JPモルガンが2027年に64ドルという強気派の半値のような数字を置くのは、OPEC+の増産と需要減速の両面を織り込むからだ。第三に先例。6月17日の停戦合意後、ブレントは2週間で100ドル超から70.65ドルまで約3割下げた。恐怖のプレミアムは、剥がれるときは一気に剥がれる。

2枚目:年末までの3シナリオと価格レンジ

年末のブレント:本稿の3シナリオ(確率は編集部試算)

読み方:現在値97ドルは①の上限寄り。つまり「にらみ合い継続」までは織り込み済みで、ここから上は②の拡戦が必要になる。

$70 $80 $90 $100 $110 $120 現在値97ドル 88〜102 ①にらみ合い継続(確率50%) 封鎖は続くが拡戦なし。恐怖と実需が綱引き 108〜125 ②拡戦(確率20%) サウジ・イラン直接衝突や完全封鎖。120ドル説の世界 72〜85 ③冷却(確率30%) 停戦2.0。6月の前例は2週間で3割下げた

シナリオ・確率は編集部の整理。②の120ドル台はFOXビジネスで紹介された強気予想と整合、③はGS・JPMの基本線に相当。

各シナリオの中身を数字で置く。①にらみ合い継続(50%):封鎖と航行忌避は続くが、サウジもイランも全面戦争を避ける。実需はイラク・クウェート・米シェールの増産で補われ、88〜102ドルのレンジで神経質な往復が続く。年末は90ドル台前半へ緩やかに軟化。②拡戦(20%):サウジがイランへ直接報復する、またはホルムズが機雷等で物理的に閉じる。スペアキャパシティの大半は湾岸内にあり、使えなくなった瞬間に110〜125ドルへ跳ぶ。③冷却(30%):停戦2.0が成立。6月の前例通りなら2〜4週間で70ドル台へ急落し、銀行予想の80ドルを下抜ける場面もあり得る。合成すると期待値はおよそ92ドル前後——現在値とほぼ同じで、市場の値付けは実は合理的だ。ただし分布の形が「上に細く、下に太い」ことは覚えておきたい。上がるには新しい戦争が要るが、下がるには一枚の合意文書で足りる。

3枚目の代わりに:シナリオを見分ける5つの計器

計器何を教えるか①→②の警報①→③の合図
サウジの公式反応拡戦の一次判定。攻撃されたのはサウジ船だ報復攻撃・有志連合の結成「自制」表明・調停役への転身
戦争保険料(船体比%)実質封鎖の深度。現在約5%7%超えと引受停止の拡大3%台への低下
先物カーブの形現物の逼迫度。期近高(バックワーデーション)の傾き期近プレミアムの急拡大カーブの平坦化=恐怖の剥落
米戦略備蓄(SPR)・護衛艦隊政策の冷却カード—(不発なら②寄り)放出表明・紅海護衛の開始
停戦協議のヘッドライン③への最短経路交渉決裂の公式発表ジュネーブ・ドーハ型の枠組み再開
個人投資家は毎朝この5つを上から順に確認すれば足りる。価格そのものを追うより、計器を追うほうが早い。

日本の投資家への含意と、この見方の無効化ライン

ポジション別に整理する。資源株(INPEX・商社)の保有者:①のレンジ相場は追い風の持続を意味するが、株価は既に原油高をかなり織り込んだ。②への上振れを追って買い増すより、③の急落リスク(2週間で3割)に耐えるサイズかを先に点検したい。ガソリン・電気代が気になる家計:補助金が吸収する間に、③が来れば店頭価格のピークは今四半期で終わる公算。インフレ・金利の観点:①が続く限りFRBのタカ派バイアスと円安163円の構図は不変で、日本の輸入インフレは秋のCPIに乗ってくる。最後に無効化ラインを明示しておく。ブレントが105ドルを終値で超えたら①は死に、②を本線に格上げする。逆に85ドルを割れたら③が進行中であり、資源株の利益確定を機械的に進めるべき局面だ。90ドル時点の整理から変わった最大の点は、価格ではなく「銀行予想との乖離」という物差しが使えるようになったことである。

主な参照(データ基準日:2026年7月24日)
  • 価格:Trading Economics、Fortune(7/24朝)、Bloomberg
  • 銀行予想:BOE Report(GS 7/23)、Invezz(大手4行集計)
  • 6月の前例・供給回復:IndexBox(停戦後70.65ドル)、OilPrice.com

免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品への投資を勧誘・推奨するものではない。シナリオ・確率・無効化ラインは編集部の分析であり将来を保証しない。軍事情勢は急変し得る。価格は2026年7月24日執筆時点の概算値。投資判断はご自身の責任で行われたい。

Tags: WTI原油ブレント原油中東原油
Takashi Suzuki

Takashi Suzuki

大手マーケットメイカーのFXトレーディングデスクで8年以上にわたりキャリアを積み、うち3年は為替フォワードデスク、その後2年は金利(レート)デスクを担当した。さらにシンガポールではアジア・トレーディングデスクのヘッドとして4年間チームを率い、地域全体のフローとリスク管理を統括してきた。 現在もFX・金利・株式など幅広い市場で実際にトレードを行っており、機関投資家の最前線で培った実取引経験は豊富。FX・株式・暗号資産において自己のポジションを保有している。 こうした実務とマーケットでの経験をもとに、金融市場・暗号資産・FX・経済指標について、信頼性・正確性・迅速性の高い情報を届けることを目的としている。記事の内容は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、最終的な投資判断はご自身の責任において行ってください。

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