3連休明けの東京は、AI株の投げで日経平均が1,253円下げた。それでもドル円は動かなかった。13日の日本時間20時26分時点で1ドル=158円08銭。この1カ月、157円台と158円台を行き来しているだけだ。値幅が縮んだ相場は、次の材料を待っている。その材料が、日本時間14日21時30分に出る米国の9月の消費者物価指数(CPI)である。
「もうはまだなり、まだはもうなり」という。この1年、米国のインフレ指標が出るたびに市場は「もうピークだ」と言っては裏切られてきた。今回の結論を先に書く。筆者は総合指数の上振れには乗らず、コア指数だけを見る。理由と水準を順に書いていく。
明日の夜に出るもの——数字の前提
米労働統計局(BLS)の予定では、9月分のCPIは10月14日水曜の米東部時間8時30分、日本時間21時30分に公表される。前回の8月分は、総合が前月比0.4%上昇、前年同月比3.4%上昇だった。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.3%、前年同月比2.4%の上昇である。
中身を見ると、上げているのはほぼエネルギーだ。8月のエネルギー指数は前年同月比16.3%上昇で、ガソリンは27.4%上がった。住居費は前年同月比3.0%の上昇にとどまる。中東の戦火で原油が上がり、それがガソリン価格を通じて総合指数を押し上げている。コアは2%台半ばで落ち着いている。
9月の見込みはどうか。クリーブランド連銀が毎日更新している予測モデル(ナウキャスト)は、10月9日時点で9月の総合を前月比0.53%上昇、前年同月比3.60%上昇とみている。コアは前月比0.20%、前年同月比2.39%である。総合は8月の3.4%から上がり、コアは2.4%前後で横ばいか、わずかに下がる。市場予想も総合で3.6〜3.7%前後と報じられている。
つまり、総合の上振れはすでに織り込まれた数字だ。3.6%が出ても驚きではない。相場を動かすのは、予想とのずれである。そのずれが出やすいのは、ガソリン価格で大半が決まる総合ではなく、コアのほうだ。
需給の解剖——2年債はもう利上げを買っている
次に、市場がどこまで先回りしているかを見る。米連邦準備制度理事会(FRB)は9月16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の誘導目標を0.25%引き上げ、3.75〜4.00%とした。決定は12対0の全会一致だった。声明には「インフレは高止まりしている」と書かれている。10月7日に公表された議事要旨では、年内にもう1回の利上げを見込む声が出ていた。詳しくは議事要旨の記事にまとめた。
米財務省のデータでは、9日の2年債利回りは4.80%だった。政策金利の上限4.00%を0.80ポイント上回る。2年債は向こう2年の政策金利の平均を映す。この差は、市場が追加の利上げをかなり先に買っていることを示している。10年債は5.24%で、今年の最高は10月5日の5.31%だった。
日本側も見ておく。財務省の国債金利情報によると、9日の日本の2年債利回りは1.911%。日米の2年債の金利差は約2.89ポイントある。ドル円を支えているのはこの金利差だ。ここが縮むか広がるかで、ドル円の方向が決まる。
正直、ここが一番怖いところだ。利上げがここまで織り込まれていると、コアが予想どおりの0.2%でも「思ったほど悪くない」と読まれて、2年債が買い戻される。金利が下がり、ドル円は下に振れやすい。強い数字が出たときの上値より、予想どおりのときの下値のほうが大きい。筆者はそう見ている。
水準の地図——上は159円、下は156円40銭
ドル円の水準を地図にする。9月下旬からの1カ月、ドル円はほぼ156円40銭〜159円00銭の箱の中にいる(Yahoo Financeの日足データによる)。上の159円は9月下旬に付けて押し返された水準で、下の156円40銭は同じ時期の安値だ。欧州中央銀行(ECB)の参照レートで見ると、今年の高値は7月28日の163円91銭、9月の安値は9月9日の153円27銭である。
ドル円の水準の地図(円)
読み方:9月下旬からのドル円は、ほぼ156円40銭〜159円00銭の箱の中にある。箱の上下どちらに抜けるかを、CPIのコア指数が決めると筆者はみる。出所:Yahoo Finance(日足・気配値)、欧州中央銀行(参照レート、Frankfurter経由)。
箱の上限の159円を終値で抜けば、日柄をかけて溜めたエネルギーが上に出る。7月の163円台までに目立った戻り売りの節目は少ない。逆に156円40銭を割れば、9月前半の153〜154円台が視野に入る。箱の中にいる間は、どちらにも張らないのが筆者の流儀だ。
筆者の見立て——コア0.2%以下ならドル売り
見立てを言い切る。筆者は、コアが前月比0.2%以下で出て、ドル円は156円台半ばへ下押すとみている。根拠は3つある。
- インフレの中身がエネルギーに偏っている。8月のコアは前年同月比2.4%で、総合との差は1ポイントある。住居費は3.0%の上昇にとどまる。原油の上昇は、まだ物価全体には広がっていない。
- 予測モデルもコアの横ばいを示している。クリーブランド連銀のナウキャストで、コアは前月比0.20%、前年同月比2.39%だ。8月の0.3%から伸びが鈍る。
- 利上げの織り込みが先行している。2年債が政策金利の上限を0.80ポイント上回っている。予想どおりの数字でも、利上げの織り込みを外す買い戻しが出やすい。
ただし、総合が3.7%を超えるような上振れには乗らない。ガソリンの値上がりは家計の予想インフレを押し上げるので、FRBが無視できない数字ではある。だが為替の短期の値幅を決めるのはコアだ。総合の見出しで飛びついた買いは、コアの数字を見た30分後に投げさせられることが多い。
逆になったら——159円の終値で白旗
見立てが外れるのはこういう場合だ。コアが前月比0.4%以上で出れば、物価の上昇がエネルギーの外に広がった証拠になる。10月27〜28日のFOMCでの追加利上げがほぼ確実視され、2年債はさらに売られる。そのときは159円00銭の上抜けを素直に認める。筆者は、ドル円が159円00銭を終値で上回ったらドル売りの見立てを撤回する。その先は、7月の高値163円台までの戻りを試す相場になる。
中間の0.3%なら、8月と同じ伸びで、判断は持ち越しになる。箱の中の往来が続き、決着は月末の日米の中銀会合に持ち越される。この場合、筆者は手を出さない。
コアCPI(前月比)別の筆者のシナリオ
読み方:総合指数は予想段階で3.6%前後と上振れが織り込まれている。為替の短期の値幅を決めるのはコアだと筆者はみる。出所:米労働統計局、クリーブランド連銀、本誌の見立て。
日本株の側から見ると
日本株を持つ人にとっても、明日の夜の数字は他人事ではない。13日は日経平均が1.82%下げ、AI関連株が売られた。米国の長期金利が上がれば、将来の利益で評価されている成長株ほど値下がりしやすい。コアが落ち着いた数字で出て米金利が下がれば、AI関連株には一息つく材料になる。そのぶん円高が進めば、輸出株の重しになる。13日の下げの背景はIMFの報告書を読んだ記事に、日銀の植田総裁の発言はこちらにまとめた。
ここで一つ注意がある。日本の取引時間中にはCPIは出ない。21時30分の発表を受けて最初に動くのは、シカゴや大阪の日経平均先物と夜間のドル円だ。15日の東京の寄り付きは、その夜の値動きをまとめて織り込んだ水準から始まる。信用取引で持ち越す人は、15日の朝に窓を開けて始まる可能性を計算に入れておきたい。
明日からの監視リスト
CPIの後も、月末までに大きな予定が続く。時刻はすべて日本時間で書く。
| 日時(日本時間) | 予定 | 筆者が見る数字 |
|---|---|---|
| 10月14日(水)21:30 | 米9月CPI(BLS) | コアの前月比。0.2%以下でドル売り、0.4%以上で見立て撤回 |
| 10月14日(水)夜〜15日朝 | ドル円と米2年債利回りの反応 | 159円00銭と156円40銭のどちらに触れるか、米2年債が4.80%から上か下か |
| 10月29日(木)3:00 | FOMCの結果(28日の米東部時間14時) | 追加利上げの有無と、声明の「インフレは高止まり」の表現 |
| 10月29日(木)21:30 | 米7〜9月期GDP速報値と9月の個人所得・支出(米商務省経済分析局) | FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価 |
| 10月30日(金) | 日銀の金融政策決定会合の結果と展望レポート(29〜30日) | 利上げの有無と、日米金利差の縮小の度合い |
月末の3日間に、FOMC、米GDP、日銀が集中する。CPIはその前哨戦だ。明日の夜にコアが落ち着けば、FOMCでの利上げ見送りに賭ける動きが広がり、日米の金利差は日銀の会合を前に縮み始める。筆者は159円を背にして、その流れに付く。為替取引の基本はFX解説ページにまとめている。
主な参照
- 8月のCPIと9月分の公表予定(10月14日8時30分=米東部時間)/米労働統計局
- 9月のCPIの予測(10月9日更新)/クリーブランド連銀
- 9月16日のFOMC声明/米連邦準備制度理事会
- 2026年のFOMCの日程/米連邦準備制度理事会
- 米国債利回り(2026年)/米財務省
- 日本国債利回り(2026年10月)/財務省
- 金融政策決定会合の日程/日本銀行
- GDP速報値と個人所得・支出の公表予定/米商務省経済分析局
- ドル円の参照レート(2026年4月以降)/欧州中央銀行(Frankfurter経由)
- ドル円の気配値と日足(10月13日20時26分=日本時間)/Yahoo Finance
- 日経平均の終値(10月13日)/株探
データ基準日:2026年10月13日(ドル円は日本時間20時26分の気配値、米国債と日本国債の利回りは10月9日の終値)。米国債市場は12日がコロンブス・デーで休場だった。CPIの予測値はクリーブランド連銀のナウキャスト(10月9日更新)で、市場予想の3.6〜3.7%は報道ベースの数字であり、本誌は集計元のデータを確認していない。ドル円の156円40銭・159円00銭の節目はYahoo Financeの日足データ、163円91銭・153円27銭はECBの参照レートで、取引時間中の高値・安値とは異なる。シナリオと水準の判断は筆者の見立てであり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













