13日の大引け後、15時30分にイオンが中間決算を出した。見出しは「営業収益・営業利益ともに過去最高」である。だが夜間のPTSは22時50分時点で1,198円と、昼の終値1,200円から2円安いだけだった。出来高も6万7,600株しかない。過去最高という言葉に誰も飛びつかなかった、と筆者は読む。理由は短信の中にある。3〜8月の合計では増益でも、6〜8月の3カ月だけを取り出すと、経常利益は前年より23.5%減っていた。
株価は10月8日に1,190円50銭まで売られ、年初来安値を付けたばかりだ。1月5日の年初来高値2,542円からは半値を割っている。今夜はこの決算を値動きの側から解剖し、明日の寄り付きから見るべき水準を地図にしておく。結論を先に言えば、筆者は1,290円を終値で取り戻すまでは戻り売りで構える。
テープ:過去最高の見出しと、動かないPTS
まず昼のテープから。13日のイオン(8267)は1,214円50銭で寄り、9時12分に1,224円50銭の高値を付けた。だが9時38分には1,195円50銭まで押され、終値は1,200円。連休前の9日終値1,211円から11円安(0.91%安)で引けた。出来高は1,184万株である。この日の日経平均は1,253円安の6万7,777円だったが、TOPIXは0.14%高で引けている。半導体株に下げが集中した日の値動きはこちらの記事にまとめてある。指数が崩れた日でもなかったのに、イオンは小売株として買われなかったことになる。
決算はその後に出た。中間期の営業収益は5兆9,041億円で13.8%増、営業利益は1,307億円で10.7%増だった。会社はどちらも過去最高と書いている。純利益は133億円で、前年の40億円から3.3倍になった。数字だけを並べれば、明日は高く寄ってもおかしくない。それでもPTSが反応しないのは、夜のうちに短信を読んだ向きが、累計の数字の内訳に気付いたからだろう。
中身の解剖:伸びたのはツルハとモール、沈んだのはスーパー
増益の正体ははっきりしている。1月に連結に加えたツルハを含むヘルス&ウエルネス事業の営業利益が、227億円から597億円へ370億円増えた。イオンモールを含むディベロッパー事業も132億円の増益だった。一方で足を引っ張ったのが本業の売り場である。総合スーパー(GMS)は営業損益が2億円の赤字から126億円の赤字へ広がり、スーパーマーケット事業も129億円の黒字から1億7,600万円の赤字に転じた。
イオンの事業別営業利益、前年同期からの増減(3〜8月、億円)
読み方:増益はツルハを含むヘルス&ウエルネスとモール事業の2本だけで、総合スーパーとスーパーマーケットはそれぞれ120億円超の減益だった。事業別の合計(約197億円の増益)と連結の営業増益(約126億円)の差は、調整額などによる。出所:イオン中間期決算短信のセグメント情報(前年同期は新区分に組み替え)、本誌計算。
つまり今回の過去最高は、ドラッグストアを買って連結の枠を広げた効果であって、売り場の稼ぐ力が上がった結果ではない。会社自身も説明資料で、価格政策や販促策が十分に機能しなかったことを内部要因に挙げている。傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)は9日、通期の営業利益予想を100億円から10億円に下げた。同社が2030年度までにマルエツ、カスミ、いなげやの約100店を閉めるとも報じられている。どの店を閉めるかはまだ出ていない。
3カ月ごとに切ると、勢いの変化はもっとはっきり見える。7月に出た第1四半期(3〜5月)の短信と今回の中間期の差から、6〜8月だけの数字を出せる。営業利益は555億円で前年同期比10.2%減、経常利益は447億円で23.5%減だった。純利益は約4億9,000万円の赤字である。3〜5月は営業利益752億円で前年の563億円から大きく伸びていたから、夏の3カ月で流れが逆を向いたことになる。経常段階の落ち込みが大きい背景には金利負担がある。上期累計の支払利息は236億円から340億円へ、100億円以上増えた。
特別損失には災害による損失42億円(41億9,800万円)が入った。会社によれば主に7月28日の熊本の地震によるもので、同日夕にはイオンモール熊本で爆発事故が起き、会社は7人の死亡を確認している。吉田昭夫社長は会見の冒頭で謝罪したと報じられている。会社は社外の有識者だけで構成する調査委員会を設けており、報告書は受け取り次第開示するとしている。損失の最終的な額はまだ固まっていない。
需給の解剖:下で待つ買いが見えない
次に需給を見る。株価は9月末に1,289円で引けたあと、ほぼ毎週安値を切り下げてきた。月末の終値でたどると、2025年11月の2,827円50銭が今は1,200円である。1年足らずで6割近く下げた計算になる。下げのいちばん大きかった4月の理由は、筆者の手元の資料では特定できない。だから4月の下げの理由は書かない。確かなのは、上に買値を持つ株主が厚く積み上がっていることだ。戻るたびに「やれやれ売り」が出やすい形である。
13日にはイオンが自己株式134万3,016株を、グループのイオンディライトとイオンペットから取得した。値段は9日終値の1,211円で、総額は約16億円。ただしこれは市場の外での相対取引で、市場で株を買い支えるものではない。需給の支えにはならないと見るべきだ。
値段の物差しも軽くはない。13日終値で会社予想ベースのPERは45.49倍、PBRは2.75倍、配当利回りは1.25%である。中間配当は記念配当50銭を含む7円50銭で、年間15円の予想は据え置かれた。配当を理由に下で拾う向きが出る水準には、まだ遠い。
水準の地図
筆者が明日から使う水準を1本の線に並べた。下は10月8日の安値1,190円50銭で、ここを割ると2025年10月以降の日足には参考になる節がない。上は9月末終値の1,289円、その上に9月4日の高値1,433円と7月7日の高値1,477円が控える。
イオン株の水準の地図(円)
読み方:青が足元、橙が筆者の損切り(見立て撤回)の線、灰色は過去の節目。1,190円50銭と1,200円は近いため、地図上では上下に振り分けた。出所:Yahoo!ファイナンスの日足(東証)。PTSは13日22時50分(日本時間)時点。
筆者の見立て:1,290円までは戻り売り
見立ては弱気だ。決算を見て買い上がる理由より、戻りを売る理由のほうが多い。根拠は3つある。
- 通期予想が重い。会社は営業利益3,400億円、純利益730億円の予想を据え置いた。中間期の進捗は営業利益で38.4%、純利益で18.2%にとどまる。下期だけで営業利益2,093億円が要る。上期の1.6倍だ。6〜8月が減益だった流れのままでは届きにくい。据え置きは下方修正の先送りに見える、というのが筆者の読みである。
- 増益の中身が買収頼み。ツルハを連結に加えたのは1月で、1年たてば前年同期と比べたときの上乗せは消える。売り場の赤字が残ったまま、比較のかさ上げだけがなくなる。
- 上に売りが待っている。1年で6割近く下げた銘柄は、戻るたびに上で買った株主の売りを浴びる。1,290円台はちょうど9月末の終値で、9月に買った向きの買値に重なる。
救いが全くないわけではない。9月の月次では、イオンリテールの既存店売上高が前年同月比102.6%、イオンモールの既存専門店売上高が106.5%だった。秋口の客足は戻りつつある。ただ、既存店の売上が戻っても、値下げで客を呼んでいるなら利益は増えない。上期の赤字はまさにその形で生まれている。筆者は月次の売上より、11月以降の決算で売り場の営業損益が黒字に戻るかを待つ。同じ週に決算を出した小売では、セブン&アイの上期も国内の売り場で計画を下回った。ファーストリテイリングの来期予想と並べて読むと、国内の売り場の苦しさはイオンだけの話ではないことがわかる。
逆になったら:損切りの線
見立てを引っ込める線も先に書いておく。終値で1,290円を回復したら、筆者は弱気を撤回する。9月末の終値を取り戻せば、9月以降に買った株主の売りをこなしたことになり、需給の読みが外れたと認めるほかない。逆に、明日の寄りで1,190円を割り込み、引けまで戻せなければ、節のない下へ値幅が出やすい。そのときは戻りを待たずに見送る。押し目買いを狙う向きにも、1,190円を割った日に慌てて拾わないことを勧めたい。
明日の監視リスト
| 時刻(日本時間) | 見るもの | 筆者の着眼点 |
|---|---|---|
| 14日 9:00 | イオン(8267)の寄り付き | PTSの1,198円より下で寄るか、1,190円50銭を守るか |
| 14日 前場 | USMH(3222)、イオン九州(2653)、イオン北海道(7512) | 子会社の決算と閉店報道に売りが続くか |
| 14日 大引け | イオンの終値 | 1,190円台を終値で守れるか、1,211円(自己株の取得価格)を上回るか |
| 14日 21:30 | 米9月消費者物価指数(CPI) | 円相場と日本株全体の地合い |
| 11月以降 | イオンの月次と第3四半期決算 | GMSとスーパーの営業損益が黒字に戻るか |
子会社の数字も並べておく。イオン九州の中間期は営業収益が2,825億円で過去最高だったが、純利益は災害損失を計上して86.9%減の4億7,000万円だった。イオン北海道も売上高は1,882億円で過去最高、純利益は92.8%減の8,500万円である。売上は過去最高で利益は大きく減る。グループのどこを見ても、同じ形が出ている。
米CPIの見どころは8月分の記事で整理した。物価が上振れて円安に振れれば、輸入品の仕入れ値が上がり、値上げしにくい食品スーパーにはさらに逆風になる。イオンの売り場の苦戦は、為替とも無縁ではない。
主な参照
- 2027年2月期 中間期決算短信(2026年10月13日)/イオン(TDnet)
- 2027年2月期 中間期決算説明資料/イオン(TDnet)
- 2027年2月期 第1四半期決算短信(2026年7月10日)/イオン(IR BANK掲載の写し)
- 自己株式の取得結果(2026年10月13日)/イオン(TDnet)
- 2026年9月度 月次営業概況/イオン(TDnet)
- 通期業績予想の修正(2026年10月9日)/ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(TDnet)
- イオン九州 中間期決算短信/TDnet、イオン北海道 中間期決算短信/TDnet
- 熊本の地震と爆発事故に関するお知らせ(2026年7月30日)/イオン(IR BANK掲載の写し)
- 会見での社長の謝罪/産経新聞(Yahoo!ニュース、10月13日)
- USMHの約100店閉店計画/朝日新聞(Yahoo!ニュース、10月9日)
- 株価・PTS・指標/Yahoo!ファイナンス
データ基準日:2026年10月13日。株価はいずれも東京証券取引所の終値(13日)で、PTSの1,198円は同日22時50分(日本時間)時点のジャパンネクストPTSの気配であり、終値ではない。PER・PBR・配当利回りは13日15時30分時点の値。6〜8月の数字は、イオンの第1四半期短信と中間期短信の差から本誌が計算したもので、会社の開示値ではない。セグメントの前年同期は新しい区分に組み替えた数字である。USMHの約100店閉店と会見での発言は報道によるもので、会社の開示資料では確認していない。災害による損失には熊本の地震以外の災害の分も含まれる。見立てと水準は筆者の判断であり、将来の株価を保証しない。アイキャッチ画像は日本のスーパーの店内で、イオンの店舗ではない(撮影:Yuya Tamai、CC BY)。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。












