11月5日の東京市場は、指数と中身が正反対を向いた前場になった。日経平均株価は前日比275円12銭安(−0.44%)の6万1,913円51銭で前引けを迎え、4日続落の形だ。ところが東証プライム市場では値上がりが1,278銘柄、値下がりは260銘柄にとどまり、上げた銘柄が8割を超えた。TOPIX(東証株価指数)は11時29分時点で1.57%高である。日経平均を下げたのはアドバンテスト1銘柄でほぼ説明がつく。
まず下の1枚を見てほしい。前場の東京は「AI・半導体が売られ、それ以外は買われた」相場だった。米中間選挙で民主党が上下両院の多数派を取ったことを受け、データセンター投資への逆風を警戒する売りが半導体株に集まった。その一方で、トランプ政権の通商姿勢が和らぐとの思惑から自動車株が、原油安を手がかりに小売株が買われた。
指数を下げたのは5銘柄——寄与度の内訳
日経平均への寄与度(前引け、円)
読み方:緑が押し上げ、赤が押し下げ。下げ側の上位5銘柄で−1,433円、上げ側の上位5銘柄で+628円と、指数を動かす力は下げ側が倍以上だった。出所:株探(前引けの寄与度集計)。
寄与度で見ると構図ははっきりしている。アドバンテストが1銘柄で日経平均を686円08銭押し下げ、東京エレクトロン(371円15銭)、ソフトバンクグループ(174円76銭)、イビデン(140円10銭)、TDK(61円18銭)が続いた。この5銘柄の押し下げは合計1,433円27銭で、指数の下げ幅275円の5倍を超える。アドバンテストを除いて計算すると、日経平均は前場で約411円高だったことになる。
押し上げ側の首位はファーストリテイリングで376円21銭。コナミグループ(88円66銭)、リクルートホールディングス(60円17銭)、テルモ(53円26銭)、バンダイナムコホールディングス(49円35銭)がこれに続く。上位5銘柄で627円65銭と、下げ側の半分にも届かない。日経平均は株価の高い銘柄ほど影響が大きい指数であり、値がさの半導体株が崩れると、ほかの銘柄が広く上げても指数は下を向く。
主役銘柄の前引け——下げは半導体、上げは消費と自動車
主役銘柄の前引けの騰落率(前日終値比、%)
読み方:上げたのは消費・娯楽と自動車、下げたのはAI・半導体関連で、業種の色分けがはっきりしている。イビデンは10時34分に一時ストップ安(−18.66%)。出所:株探の前引け時点の株価から本誌計算。
下げのきつさではイビデンが目立った。前引けは12.93%安の6,998円で、10時34分には制限値幅の下限となる6,537円(−18.66%)まで売られ、一時ストップ安を付けた。アドバンテストは9.20%安、東京エレクトロンは7.60%安。キオクシアホールディングスは6.05%安の1万85円で、10時20分には9,591円と再び1万円を割り込み、4日続落となった。株探によれば、前日の米国市場でサンディスクが急落したことが重荷になった。サンディスクの4日の終値は1,037.40ドル、前日比7.91%安である。
上げ側では、ファーストリテイリングが一時11.13%高の8万5,980円まで買われ、前引けは6.01%高の8万2,020円だった。株探は、原油先物の急落を受けて消費の押し上げを期待する資金が小売株に流れたと伝えている。ただし同社が4日に公表した10月の国内ユニクロ既存店とEコマースの合計売上高は前年同月比5.5%減であり、足元の売上が支えた上げではない。トヨタ自動車は5.81%高の3,204円で、9時12分には3,284円(+8.45%)を付けた。今週の決算番付で取り上げた4〜9月期決算は、きょう13時55分に開示される予定だ。
前場の値動き——1,319円の振れ幅
日経平均の前場の動き(11月5日)
読み方:高値と安値の差は1,319円。半導体株の安値は10時20分前後にそろって付いており、そこから戻した。出所:株探(日経平均の四本値と前引け)。
寄り付きは6万2,384円73銭と、前日の米国株高を受けて高く始まった。9時30分に6万2,653円98銭の高値を付けたあと、半導体株への売りが強まり、10時20分には6万1,334円50銭まで下げた。高値と安値の差は1,319円48銭に及ぶ。安値からは戻したが、前引けは前日比マイナス圏にとどまった。TOPIXも10時20分に3,914.86の安値を付けており、半導体の売りが一時は市場全体を巻き込んだことが分かる。
業種別では33業種中26業種が上昇した。値上がりの上位は不動産、ゴム製品、輸送用機器、医薬品で、値下がりの上位は海運、鉱業、非鉄金属だった。原油の急落で鉱業が売られ、関税の重荷が軽くなるとの見方で輸送用機器とゴム製品が買われた。前日の原油8%安と中間選挙の結果が、そのまま業種の明暗に表れている。
NT倍率は15.6倍台へ——指数の「顔」が変わる日
日経平均をTOPIXで割ったNT倍率は、4日の終値ベースで15.96倍だった。前場の数字(日経平均の前引けとTOPIXの11時29分の値)で計算すると15.65倍で、半日で0.3ポイントほど下がった計算だ。NT倍率の低下は、値がさの半導体株に頼った日経平均の上げが巻き戻され、銀行や内需株を多く含むTOPIXが相対的に強いことを示す。
個人投資家にとっての意味は単純である。日経平均だけを見ていると「また下げた」と映るが、東証の8割の銘柄は上げている。日経平均連動の投資信託やETFを持つ人と、TOPIX連動や個別の内需株を持つ人とで、同じ日の損益がまったく違う。きょうの前場はその差がもっとも大きく出た半日だった。
後場のシナリオ
| シナリオ | 確率(本誌の見立て) | きっかけ | 日経平均の目安 |
|---|---|---|---|
| 半導体の下げ止まりで小幅高に転じる | 35% | アドバンテストが3万1,000円台を保ち、トヨタ決算が好感される | 6万2,200〜6万2,650円 |
| 前引け水準でのもみ合い | 40% | 半導体安と内需高の綱引きが続く | 6万1,700〜6万2,200円 |
| 前場安値を割り込む | 25% | キオクシアが1万円を再び割り、半導体の投げが広がる | 6万1,334円割れ |
後場最大の材料は13時55分のトヨタの決算である。通期予想をどこまで修正するかで、前場に買われた自動車株の上げが続くかどうかが決まる。もう一つは半導体株の戻りの強さだ。前場の安値は10時20分にそろって付いており、そこからの戻りが後場にも続けば、売りの一巡を示すことになる。
後場のチェックリスト
- 13時55分:トヨタ自動車の4〜9月期決算。通期の営業利益予想の修正幅と、関税の影響額の見直し。
- アドバンテスト3万1,000円:前場の安値は3万410円。前引けからそこまで下げるだけで、日経平均への押し下げは約210円増える。
- キオクシア1万円:前場は1万円をはさんで売り買いが交錯した。売買代金は前場だけで約7,300億円に達した。
- ファーストリテイリングの上げ幅:一時11%高から前引けは6%高に縮んだ。後場に上げ幅を守れるか。
- 大引け後:任天堂とソニーグループの決算発表。翌6日の東京の地合いを左右する。
前日の米国市場とのつながり
4日の米国市場は、ダウ工業株30種平均が1,569.40ドル高(+3.03%)の5万3,356.12ドルと急伸した一方、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は3.13%安の1万268.65で取引を終えた。S&P500種株価指数は1.58%高、ナスダック総合指数は1.44%高である。選挙の不透明感が晴れたことで景気敏感株や消費関連株が買われ、AI関連の半導体株だけが売られるという米国の構図が、そのまま東京に持ち込まれた形だ。前日の東京の動きは4日の寄り付き1時間にまとめている。
ドル円は11時26分時点で1ドル=157円95銭前後と、前日から小幅な円高にとどまった。為替が大きく動いていないため、輸出株の上げは円安ではなく、通商政策への思惑で説明される。この点は後場のトヨタの決算でも確かめられる。
主な参照
- 日経平均の前引け、騰落銘柄数、寄与度、業種別の騰落/株探
- 前場の主要ヘッドライン(ファーストリテイリング、トヨタ、キオクシアほか)/株探・MINKABU PRESS
- ファーストリテイリングの上昇理由と10月の国内ユニクロ売上高/株探、ファーストリテイリング
- キオクシアの4日続落とサンディスク安/株探
- トヨタの上昇理由と決算開示時刻/株探
- 日経平均・TOPIX・各銘柄の始値、高値、安値、前引け/株探
- 米国株指数と為替の水準/Google Finance
- サンディスクの日足/stockanalysis.com
データ基準日:2026年11月5日の東京市場の前引け(11時30分)。日経平均の前引け値は株探の配信記事による。TOPIXは11時29分時点の値で前引け値ではない。個別銘柄は前引け時点の値、ドル円は11時26分時点の気配値である。米国株指数とサンディスクは11月4日の米国市場の終値。寄与度の集計は情報ベンダーにより差がある。上昇・下落の理由は報道にもとづくもので、各社からの発表ではない。シナリオの確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













