2018年10月30日、任天堂は発売2年目のNintendo Switchについて、4〜9月の販売台数を507万台と発表した。年間の計画は2,000万台で、上期で届いたのはその4分の1にすぎなかった。3カ月後、会社は計画を1,700万台に下げた。それから8年後のきょう、2026年11月5日。発売2年目のNintendo Switch 2は、上期に649万台を売った。年間計画1,650万台の39%である。
任天堂の2027年3月期の上期決算は、営業利益が前年同期比49.1%増の2,165億円だった。それでも通期の見通しは据え置かれた。8年前の鏡に映すと、今回の数字は何を語っているのか。同じ点と違う点を分けて確かめる。
発売2年目の上期:年間計画に対する進み具合(ハード台数)
読み方:棒の塗りが上期の販売台数、右端が年間計画である。8年前は計画の25.4%、今回は39.3%まで進んだ。出所:任天堂の決算短信(2018年10月30日、2026年11月5日)、本誌計算。
2018年と2026年の対照表
| 項目 | 2018年度上期(Switch 2年目) | 2026年度上期(Switch 2の2年目) | 同じか、違うか |
|---|---|---|---|
| 上期のハード販売台数 | 507万台(前年同期比3.7%増) | 649万台(同37.4%減) | 違う:今回は前年の発売直後の山と比べている |
| 年間のハード計画 | 2,000万台 | 1,650万台 | 違う:今回は前年実績1,986万台より低い計画 |
| 上期の計画に対する進み具合 | 25.4% | 39.3% | 違う:今回のほうが前倒しで進んでいる |
| 上期のソフト販売本数 | 4,213万本 | 2,449万本(同18.8%増) | 同じ:ハードの台数よりソフトが伸びている |
| 上期の営業利益 | 614億円 | 2,165億円(同49.1%増) | 違う:今回は関税の還付約3億ドルを含む |
| 上期決算での通期見通し | 据え置き(翌年1月に台数計画を下方修正) | 据え置き | 同じ:上期では動かさなかった |
表の要点は2つある。1つ目は、8年前より今回のほうが計画に対する進み具合がよいことだ。25.4%と39.3%では、下期に求められる台数が大きく違う。2つ目は、今回の計画がもともと低く置かれていることである。年間1,650万台は、前期の実績1,986万台より16.9%少ない。
当時、その後に起きたこと
2018年度のSwitch:上期決算から年間実績まで
読み方:8年前は上期決算で計画を据え置き、3カ月後に下げた。下期に年間の70%を売っても、当初計画には届かなかった。出所:任天堂の決算短信(2018年10月30日、2019年1月31日、2019年4月25日、2026年11月5日)。
2018年度のSwitchは、年末商戦を含む下期に1,188万台を売った。年間実績1,695万台の70%である。それでも当初計画の2,000万台には305万台届かず、会社は2019年1月31日に計画を1,700万台に下げた。当時の教訓は、下期の山が高くても、上期の遅れを取り戻しきれないことがあるという点だった。
今回の計画1,650万台に届くには、下期に1,001万台を売ればよい。年間の61%を下期に頼る計算で、2018年度の70%より低い。年末商戦の重みは同じでも、今回の計画は8年前より無理が少ない。会社は10月に「ゼルダの伝説」40周年の特別デザインのSwitch 2を発売した。1月には『メトロイド ラヴェナス』の発売を予定している。
「今回は違う」論の検証
今回が違うと言える点は、利益の構造にある。上期の売上高は12.1%減の9,660億円で、ハードの減少がそのまま響いた。それでも営業利益は49.1%増えた。ソフトの比率が上がったことに加え、米国のIEEPAにもとづく関税の還付を4〜6月期に受けたためだ。会社によると還付は約3億ドルで、売上原価から差し引いた。期中平均の1ドル159.29円で換算すると約480億円になる(本誌試算)。これを除くと、営業利益の伸びは16%前後に縮む計算だ。
上期の営業利益:関税の還付を除くと(億円)
読み方:報告された営業利益2,165億円のうち、約480億円は米国の関税の還付による。これを除いた伸びは16%前後である。出所:任天堂の決算短信と決算説明資料。還付の円換算は上期の平均レート1ドル159.29円による本誌試算。
もう1つの違いは、デジタルと映画の存在である。デジタル売上高は60.5%増の2,496億円で、ソフト売上高に占める割合は60.7%になった。『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』の貢献で、IP関連の売上高は87.9%増の627億円だった。8年前の上期は、デジタル売上高が391億円、スマートデバイス・IP関連収入等が187億円だった。ハードの台数に頼る度合いは、8年前よりはっきり下がった。
一方で、変わらない点もある。会社は通期の営業利益見通し3,700億円を据え置いた。上期だけで58.5%を稼いだのにである。見通しの前提は1ドル150円で、上期の平均159.29円より円高に置かれている。メモリなど部材の値上がりと関税で、約1,000億円の原価増も織り込んでいる。慎重な前提を変えずに上期を終えたのは、2018年と同じ姿勢だ。
歴史が示す3つの教訓
教訓1:計画は上期では動かない。2018年も今回も、任天堂は上期の決算で年間計画を変えなかった。動くとすれば、年末商戦の結果が見える1月末か2月初めの第3四半期決算である。上方でも下方でも、答えはそこで出る。
教訓2:見るべきは台数よりソフトだ。2018年度上期のSwitchは、ハードが3.7%増にとどまる一方、ソフトは約1.9倍に伸びた。今回もハードは37.4%減だが、Switch 2のソフトは18.8%増えた。ハードを持つ人が遊び続けているかどうかが、2年目以降の利益を決める。
教訓3:歴史は韻を踏むが、同じ歌ではない。8年前の下方修正は、計画が高すぎたことから起きた。今回は計画が低めに置かれ、為替の前提も円高寄りである。同じ「据え置き」でも、外れる方向は逆になりうる。
今回固有の監視点と、あすの筋書き
市場の期待は会社の計画よりずっと高い。株予報によると、上期の経常利益3,006億円は、IFISコンセンサスの2,138億円を40.6%上回った。本誌は前日の決算番付で、決算翌日の上昇確率を55%とした。ただし5日の株価は、発表前の時点で6.31%高の8,880円まで上げていた。通期見通しの据え置きをどう受け止めるかで、あすの値動きは分かれる。
| 筋書き | 確率(本誌の見立て) | 起きる条件 | 見る数字 |
|---|---|---|---|
| 続伸 | 45% | コンセンサス超えと増配(中間76円)が評価される | 8,890円(5日の高値)を上回るか |
| もみ合い | 30% | 好決算と見通し据え置きが打ち消し合う | 8,564円〜8,890円(5日の値幅)にとどまるか |
| 反落 | 25% | 据え置きと台数減が嫌われ、前日の上げを吐き出す | 8,564円(5日の安値)を割るか |
番付の55%から続伸の確率を45%に下げたのは、見通しの据え置きと、発表前の上げを重くみたためだ。中間配当は1株76円で、前年の42円から増えた。年間配当の予想162円は変わらず、期末は86円になる。この日の東京市場でAI・半導体株から資金が流れた先は、寄り付き1時間の記事で追っている。
- 年末商戦:下期に1,001万台が必要。2018年度の下期は1,188万台だった。
- 第3四半期決算:2018年度は1月31日に発表された。今回も計画が動くかどうかは、そこで見る。
- 為替:前提は1ドル150円。円安が続けば見通しの余裕は広がる。
- 部材の値上がり:メモリ価格の上昇で約1,000億円の原価増を織り込み済み。上振れするかを見る。
- 撤退の目安:短期で買う場合、5日の安値8,564円を終値で割ったら筋書きの見直しどき、というのが本誌の考えだ。
主な参照
- 2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信(2026年11月5日)/任天堂
- 2027年3月期 第2四半期 決算説明資料(販売台数、関税の還付、見通しの前提)/任天堂
- 剰余金の配当(中間配当)および期末配当予想に関するお知らせ/任天堂
- 2019年3月期 第2四半期決算短信(2018年10月30日)/任天堂
- 2019年3月期 第3四半期決算短信(2019年1月31日、Switchの計画を1,700万台に修正)/任天堂
- 2019年3月期 決算短信(2019年4月25日、年間実績1,695万台)/任天堂
- 上期の経常利益とIFISコンセンサスの比較/株予報(アイフィス)
- 11月5日の株価(終値・高値・安値)/株探
データ基準日:2026年11月5日。株価は同日の東京市場の終値で、決算発表(15時30分)より前の値動きである。販売台数はセルイン(任天堂からの出荷ベース)で、店頭の販売とは異なる。進み具合、下期に必要な台数、関税の還付の円換算と、それを除いた営業利益の伸びは本誌の計算で、還付を受けた時点の為替レートは会社が開示していない。コンセンサスはアイフィスの集計で、ほかの集計とは差が出ることがある。筋書きの確率は本誌の見立てであり、将来の株価を保証しない。アイキャッチ写真:David Offf(Flickr、CC BY 2.0)。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














