銅の国際価格は、最高値の手前で足踏みしている。ロンドン金属取引所(LME)の3カ月物は10月19日、1トン1万4,342ドルと、9月10日に付けた最高値1万4,875ドルを3.6%下回る水準にある。中国の7〜9月期成長率は予想を上回ったが、同じ日にLMEの在庫は2カ月ぶりの多さに増えた。
まず下の数字を見てほしい。東京の非鉄・電線株は、銅そのものよりはるかに大きく下げている。値動きの差がどこから来ているのかを、4枚の図で分解する。
最高値から3.5%、銅は「高値圏の横ばい」にある
COMEX銅先物の終値(2026年8月3日〜10月19日)
読み方:8月以降、銅は6.3〜6.8ドルの帯の中を往復している。最高値圏を保ちながら、更新もできていない。10月19日は米東部時間14時56分の取引時間中の値、それ以外は終値。出所:ヤフー・ファイナンス(COMEX期近)。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の銅先物(期近)は、米東部時間19日14時56分時点で1ポンド6.5895ドルと、前営業日16日の終値6.531ドルから0.90%高い。9月22日に取引時間中に付けた52週高値6.83ドルからは3.5%下にある。8月以降の値幅は、9月14日の安値6.281ドルから高値6.83ドルまでのおよそ9%に収まっている。
移動平均で見ると、足元の価格は20日移動平均(6.603ドル)のわずかに下、50日移動平均(6.580ドル)のわずかに上にある。上にも下にも抜けていない。最高値を更新する勢いはないが、崩れてもいない——これが現在の銅の位置である。
上げ材料と下げ材料は、ほぼ同じ日に出ている
19日に出た材料:上げ要因と下げ要因
読み方:上げ材料は「工場の需要」と「米国の関税」、下げ材料は「在庫」と「供給の回復」。どちらも19日に同時に出たため、価格は大きく動かなかった。出所:中国国家統計局、ロイター(Mining.com掲載)。
上げ材料の筆頭は中国である。国家統計局が19日に発表した7〜9月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4.5%増と、ロイター調査の予想4.4%を上回った。9月の工業生産は前年同月比5.5%増で、3月以来の伸びとなった。一方で9月の小売売上高は1.1%増にとどまり、1〜9月の固定資産投資は7.2%減である。工場は動いているが、建設と消費は弱い。銅の需要にとって、この組み合わせは手放しで喜べるものではない。中国の統計の詳しい読み方はこちらの記事にまとめた。
下げ材料は供給側から出た。ロイターによると、チリのセンティネラ銅山(アントファガスタ)で10月7日に始まったストライキが終わった。LMEの指定倉庫では米国の倉庫に8,225トンが搬入され、すぐに引き出せる在庫は14万7,450トンと2カ月ぶりの多さになった。LMEの3カ月物は19日16時(英国時間)時点で0.4%安の1万4,342ドルだった。
東京の銅関連株は、銅の何倍も売られた
10月14日→19日の騰落率:銅と国内の銅関連株
読み方:銅はほぼ横ばいなのに、電線株は2桁の下落となった。下げの大半は日経平均が3,318円安となった10月15日に集中しており、銅価格ではなくAI・半導体株の売りに連動した動きである。出所:株探(東京市場の終値)、ヤフー・ファイナンス(COMEX銅、19日は取引時間中の値)。
10月14日から19日までの4営業日で、COMEXの銅はほぼ横ばい(0.3%安)だった。ところが同じ期間に古河電気工業は14.5%、フジクラは13.8%、JX金属は11.5%下げている。住友金属鉱山も7.9%安だ。下げの大半は10月15日の1日に集中しており、この日は日経平均が3,318円安となった全面安の日だった。銅は同じ日に1.5%下げただけである。
つまり、電線株や非鉄株の下落は銅価格の問題ではない。光ファイバーや電力ケーブルでデータセンター需要を取り込んできた銘柄が、半導体・AI関連株の売りに巻き込まれたと見るのが自然だ。銅価格が高値圏を保っている以上、銅の値段だけを理由にこれらの株を売る根拠は薄い。逆に言えば、銅が上がってもAI関連株の地合いが戻らなければ、これらの株価はついてこない可能性がある。
見るべき価格帯と、今後1〜3カ月のシナリオ
COMEX銅:見るべき価格帯(ドル/ポンド)
読み方:6.28ドルと6.83ドルが今のレンジの両端である。どちらかを終値で抜けたときに、本誌の基本シナリオ(もみ合い)を見直す。出所:ヤフー・ファイナンス、本誌計算。
銅価格をもう一段押し上げうる材料は、米国の関税である。ロイターによると、精錬銅(カソード)は米国の銅関税の対象から外れたままで、半製品だけが課税されている。精錬銅にも関税がかかるとの観測がある限り、米国への銅の流入とCOMEXの割高な値付けが続く。ドイツ銀行のダニエル・ガリ氏は、関税の脅威を一時的なリスクではなく「戦略的な転換」と表現した(ロイター、19日)。19日にロンドンで開かれたLMEのセミナーでも、参加者が最も値上がりを見込む金属に銅が選ばれた。
中期の強気見通しも残っている。UBSは10日、2026年の銅市場は21万9,000トンの供給不足になると予想し、2027年の価格を1トン1万5,500ドル前後と見込んだ(ヤフー・ファイナンス英国版の報道)。現在のLME価格から8%上の水準である。
| シナリオ | 確率(本誌) | COMEX銅の想定レンジ | 引き金 |
|---|---|---|---|
| 高値圏のもみ合い | 55% | 6.30〜6.83ドル | 中国の工業生産は堅調、在庫は緩やかに増加。関税の結論は出ない |
| 最高値の更新 | 25% | 6.83ドル超〜7.00ドル | 米国が精錬銅への関税に動く、または大型鉱山で新たな供給障害 |
| 調整の深まり | 20% | 6.00〜6.28ドル | LME在庫の増加が続き、中国の建設需要の弱さが鮮明に |
本誌の基本シナリオは「高値圏のもみ合い」である。中国の工場の需要と供給障害が下値を支える一方、在庫の積み上がりとストライキの終結が上値を抑える。この見方を取り下げる線は2本ある。上は6.83ドルを終値で上回ったとき、下は9月14日の安値6.281ドルを終値で割り込んだときだ。
個人投資家のチェックリスト
- LMEの在庫:14万7,450トンからさらに増えるか。増加が続けば上値は重い。
- 米国の関税:精錬銅が対象に加わるかどうか。加われば価格の上振れ要因になる。
- 中国の需要:11月中旬に出る10月の工業生産と固定資産投資。建設の弱さが和らぐかを見る。
- 電線・非鉄株:銅価格ではなく、半導体・AI関連株の地合いに連動している。値動きの理由を取り違えない。
- 為替:円建ての銅価格はドル円の水準でも動く。円安が進めば国内の銅関連株には追い風になる。
貴金属の動きは銀と白金の記事で扱っている。金と銀が最高値から大きく離れているのに対し、銅は最高値の近くにとどまっている。同じ「金属」でも、値動きを決める材料はまったく違う。
主な参照
- LME銅相場、在庫、センティネラ銅山のスト終結、関税をめぐる発言(ロイター配信、10月19日)/Mining.com
- LME銅の最高値(9月10日、1万4,875ドル)/Fastmarkets
- 中国の7〜9月期GDP、9月の工業生産・小売売上高・固定資産投資/中国政府(国家統計局の発表)
- UBSの銅価格見通し(10月10日)/ヤフー・ファイナンス英国版
- COMEX銅先物の価格と日足/ヤフー・ファイナンス
- 住友金属鉱山・三菱マテリアル・JX金属・古河電気工業・フジクラの終値/株探
データ基準日:2026年10月19日。COMEX銅は米東部時間19日14時56分(日本時間20日3時56分)時点の取引時間中の価格で、終値ではない。比較に使った10月16日以前の数値は終値。LME銅は英国時間19日16時時点の価格。日本株は東京市場19日の終値。52週高値6.83ドルは取引時間中の値で、終値ベースの高値は9月9日の6.8035ドル。移動平均は19日の取引時間中の価格を含めて本誌が計算した。COMEXの在庫量など、取引所の一次資料で確認できなかった数値は掲載していない。シナリオの確率は本誌の判断であり、将来の価格を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















