ビットコイン1枚、1,297万円。日本時間20日午前4時18分の価格である。ドル建てでは8万1,850ドルで、ドル円の158.53円を掛けるとこの数字になる。10月に入ってからの値動きは、この相場にしては驚くほど小さい。米国では19日、「ビットコインの値動きが約2年半ぶりの狭さになった」との分析が報じられた。
静けさは本物なのか。そして、私たちの財布にとって何を意味するのか。取引画面の1枚から出発して、値動きの大きさを円に直し、上流の資金の流れまでたどる。
画面の数字:1日に動くのは「約22万円」
まず、ふだんの1日でどのくらい動くのかを確かめる。本誌が直近30日の日々の値動きから計算した変動率(ヒストリカル・ボラティリティ、年率換算)は32.2%だった。1日あたりに直すと約1.69%である。1枚1,297万円なら、ふつうの1日で上下に約22万円動く計算になる。
この32.2%という水準は、8月18日の23.4%以来、約2カ月ぶりの低さだ。ビットコインの値動きの大きさを示すもう一つの物差しに、デリビット取引所が算出する予想変動率指数(DVOL)がある。オプション市場が今後30日にどれだけ動くと見ているかを示す指数で、19日時点で37.52だった。9月17日には33.59と、2023年9月以来の低さを付けている。
「2年半ぶりの狭さ」は確かめられるか
米24/7ウォール・ストリートは19日、バーチャートの分析を引用し、ビットコインの値動きの幅が約2年半ぶりの狭さになったと報じた。物差しはボリンジャーバンドの幅である。過去20日の平均値の上下に値動きのばらつきの2倍の線を引き、その間隔が平均値の何%にあたるかを見るもので、幅が狭いほど値動きが小さいことを示す。
ところが、本誌がヤフー・ファイナンスの日足終値で同じ計算をすると、19日のバンド幅は7.48%で、10月11日の5.58%や9月9日の5.56%、8月15日の4.25%のほうが狭かった。日足で見る限り、「2年半ぶり」は再現できない。週足や別の期間設定を使えば結論が変わる可能性はあるが、少なくとも「この数カ月で最も静か」とまでは言えない。報じられている数字として受け止めるのが妥当である。
ビットコインの日足終値(2026年8月1日〜10月19日、ドル)
読み方:8月中旬に値動きが縮んだ後、ビットコインは3日で2割上げた。10月は8万ドル台を中心に、9月より狭い幅で推移している。19日は日本時間20日4時18分時点の値。出所:ヤフー・ファイナンス(UTCの日足終値)。
私たちの財布に直すと:静けさの後に来るもの
値動きが縮んだ後には、大きく動きやすい。ただし方向は決まっていない。過去の2つの例がそれを示す。2024年6月10日、バンド幅がその年の最小を付けた日のビットコインは6万9,512ドルだった。その後30日以内に、最大で22.7%下落した。一方、2026年8月18日、変動率が23%台まで下がった日の終値は6万4,681ドルだった。3日後の8月21日には7万8,335ドルと、21%上昇している。
同じ「静けさ」から、片方は2割強の下落、片方は2割強の上昇に向かった。これを手元の資金に置き換えたのが下の表である。
| 保有額(円) | ふつうの1日(±1.69%) | 2026年8月型(3日で+21%) | 2024年6月型(30日で最大−22.7%) |
|---|---|---|---|
| 10万円 | ±約1,690円 | 約+2万1,000円 | 約−2万2,700円 |
| 100万円 | ±約1万6,900円 | 約+21万円 | 約−22万7,000円 |
| 1枚(約1,297万円) | ±約21万9,000円 | 約+272万円 | 約−294万円 |
注意したいのは、円で持つ私たちにはドル円の動きも加わることだ。ビットコインがドル建てで横ばいでも、円高が1円進めば1枚あたり約8万2,000円目減りする。
上流をたどる:お金はどこから来て、どこへ行ったか
画面の1,297万円から上流へ:値段を決めている流れ
読み方:国内の価格はドル建ての価格とドル円の掛け算で決まり、ドル建ての価格は米国のETFや大口の買い手の資金で動く。いまは上流のどこにも強い流れがない。出所:ヤフー・ファイナンス、SoSoValue(報道経由)、デリビット、本誌整理。
値動きが小さいのは、買い手も売り手も決め手を欠いているからだ。米国の現物ビットコイン上場投資信託(ETF)は、10月12〜16日の週に2億2,858万ドルの純流出となり、2週続けての流出だった。前週は6億8,110万ドルの流出である(SoSoValueの集計)。最大の買い手とされる米ストラテジーの購入も、直近は267BTCにとどまった。この点はこちらの記事で詳しく扱っている。
季節性も期待を裏切っている。10月は上がりやすい月として「アップトーバー」とも呼ばれる。本誌がヤフー・ファイナンスの月足で計算すると、2014〜2025年の10月の平均騰落率はプラス16.6%で、12年中9年が上昇した。だが2026年10月は、9月末の終値8万3,554ドルから19日時点で約2.1%安い。最高値の12万6,198ドル(2025年10月6日、取引時間中)からは35%下にある。
生活防衛と投資の接点:現実的な選択肢
ここでは推奨ではなく、選択肢を並べる。値動きが大きくなる前に、自分がどちらに動かれても耐えられるかを確かめておくことが先である。
- 保有額を「2割動いても困らない額」に合わせる:上の表で、2割下がった場合の金額が生活費に響くなら、保有額そのものが大きすぎる可能性がある。
- あらかじめ水準を決めておく:24/7ウォール・ストリートは、日足終値で8万4,262ドル(約1,336万円)を上回れば強気、7万9,676ドル(約1,263万円)を下回れば2024年型の下落に近づくとみている。10月15日の安値は7万9,736ドルだった。
- 積立なら方針を変えない:毎月一定額を買う方法は、値動きの方向を当てる必要がない。静けさの後の急変にも、買う量の調整で自動的に対応する。
- 円建ての損益を見る:ドル建てで利益が出ていても、円高で相殺されることがある。
本誌は、今後2週間で日足終値が8万4,262ドルを上回る確率を35%、7万9,676ドルを下回る確率を35%、どちらにも抜けない確率を30%とみる。方向の手がかりは乏しい。ETFの資金が流入に戻れば上抜けの側に、流出が3週目に入れば下抜けの側に、この見方を傾ける。
次に画面へ届く変化の日付
- 10月23日(金):米ETFの週間の資金の流れが出そろう。流出が3週連続になるかどうか。
- 10月27〜28日:米連邦公開市場委員会(FOMC)。結果は日本時間29日午前3時。追加利上げ観測が強まればリスク資産には逆風になる。
- 10月30日(金):ビットコインのオプションの大型満期。詳しくはこちらの記事を参照。
主な参照
- 「値動きが約2年半ぶりの狭さ」の分析と水準(10月19日)/24/7ウォール・ストリート
- 予想変動率指数(DVOL)/デリビット
- 米現物ビットコインETFの資金の流れ(10月16日)/Crypto Briefing
- 米現物ビットコインETFの週間集計(SoSoValueのデータ)/Pintu
- ビットコインとドル円の価格・日足/ヤフー・ファイナンス
データ基準日:2026年10月19日(米東部時間15時18分=日本時間20日4時18分)。ビットコインとドル円は取引時間中の気配値で、ビットコインは24時間取引のため終値の概念がない。過去の価格は協定世界時(UTC)の日足終値。変動率、ボリンジャーバンド幅(20日・2標準偏差)、10月の平均騰落率は、ヤフー・ファイナンスのデータから本誌が計算した。「約2年半ぶりの狭さ」は24/7ウォール・ストリートが報じた分析であり、本誌の日足による計算では再現できていない。ETFの資金の流れはSoSoValueの集計を伝える報道に基づく。確率は本誌の判断であり、将来の価格を保証しない。暗号資産は価格変動が大きく、元本を失うおそれがある。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















