暗号資産交換業者大手のバイナンスは11月3日、10月29日に起きた約63億4,000万ドル相当の流出について、初期調査の結果を公表した。攻撃者の侵入は2026年6月に始まり、偽の採用面接や社内のAIツールを経て、約5カ月後の10月29日に実行されたと説明した。ビットコインは日本時間4日7時57分時点で7万7,781ドルと、24時間で1.29%上昇した。
凍結または差し止めた額は約28億5,000万ドル。流出した利用者資産の98%は10月31日までに補填済みで、損失は利用者ではなく同社が負担するとした。流出の原因について同社自身は特定せず、米連邦捜査局(FBI)が北朝鮮によるものとしていることを引用した。
主要数値
| 項目 | 数値 | 時点 |
|---|---|---|
| 流出の影響を受けた資産 | 約63億4,000万ドル | 11月3日公表 |
| 凍結・差し止め | 約28億5,000万ドル(照合と価格変動で変わる可能性) | 11月3日公表 |
| 利用者資産の補填率 | 98% | 10月31日時点 |
| 流出したXRP | 2億3,346万XRP(ホットウォレット5つから) | 10月29日 20時05〜09分(UTC) |
| 流出したビットコイン | 1万8,270BTC | 10月29日 |
| 流出したソラナ | 約97万500SOL | 10月29日 |
| 流出したオプティミズム | 4,420万OP | 10月29日 |
| 最後の不正送金 | 2,961.9ETH | 10月29日 23時56分(UTC) |
| 2026年に検知・阻止した北朝鮮関連とみられる事案 | 57件 | 11月3日公表 |
流出したビットコイン1万8,270BTCは、4日7時57分時点の価格で約14億2,000万ドルに相当する(本誌試算)。同じ方法で計算すると、XRPは約2億9,900万ドルである。
侵入の経緯:6月から10月29日まで
バイナンス流出までの経緯(バイナンスの説明)
時刻はUTC(日本時間は9時間進める)。出所:バイナンス公式ブログ(2026年11月3日)。
同社の説明によると、最初の侵入口は2026年6月だった。ウォレット運用を担う技術者が、改ざんされたHomebrew(開発者向けのソフトウェア導入ツール)のパッケージを導入した。同社は検知して端末を交換し、認証情報を更新したが、この技術者の役割と同僚のアクセス権限は攻撃者に知られた状態が残った。
9月には別の技術者が偽の採用活動の標的になった。課題として渡されたリポジトリを実行した結果、開発ツールの構成要素が不正なものに置き換えられた。10月20日、攻撃者は乗っ取った端末と社内のAIツールを使い、他の技術者のアカウントを掌握し、コンテナを配備するためのトークンを見つけた。
10月29日の17時15分から19時56分(UTC)にかけて、攻撃者はさらに別の技術者の端末に入り、盗んだトークンでコンテナを配備して攻撃用のスクリプトを起動した。XRPの流出はその直後の20時05分に始まった。イーサリアムでは、口座が実行権限をスマートコントラクトに委ねられる仕組み(EIP-7702)が悪用された。同社は10月30日0時10分(UTC)に不正な委任を解除した。
関係者の発言
バイナンスはブログで、盗まれた資金の財務的な影響は利用者ではなく自社が吸収すると述べた。必要額の100%を超える資金を確保したとしている。独立した第三者のサイバーセキュリティ専門家に調査の検証を依頼する。
CNBCによると、リチャード・テン共同CEOは、攻撃者は「何カ月もかけて内部に入り込んだ」と述べた。同じ報道によると、テザー、サークル、リップルとバイナンスは約30億ドル相当の資産を凍結した。コインベースは不正に使われたウォレットへの送金を止めた。
韓国の聯合ニュースによると、FBIはサイバー警報で、北朝鮮のハッカー集団「TraderTraitor」が10月29日ごろ60億ドルを超える暗号資産を盗んだとした。資金は主にイーサリアムに換えられているとして、各交換業者に関連アドレスの遮断を求めた。北朝鮮は関与を否定していると報じられている。
市場反応
- ビットコイン:10月29日0時(UTC)8万1,274ドル、10月30日0時(UTC)7万7,839ドル。流出をはさむ24時間で4.2%安(CoinGeckoの日次データ、本誌計算)。
- ビットコイン:11月3日0時(UTC)7万6,709ドル。4日7時57分(日本時間)は7万7,781ドル、円建てで1,233万8,998円。
- イーサリアム:4日7時57分(日本時間)2,290.77ドル、24時間で1.69%高。
- 米国のビットコイン現物ETF:11月2日は差し引き3億9,900万ドルの資金流出(SoSoValue集計、TokenPost報道)。ブラックロックのIBITは4億500万ドルの流出だった。11月3日分は本稿執筆時点で未集計。
ビットコイン・マガジンは3日、アナリストが200日指数平滑移動平均の7万6,264〜7万6,476ドルを下値の支えとして挙げていると報じた。9月の安値は7万4,967ドル、上値は50日指数平滑移動平均の約8万800ドルとしている。
バイナンスが出金を再開した11月2日の値動きはこちら、ブラジルの交換業者で起きた2件目の流出と中間選挙の論点はこちらで扱った。イーサリアムETFの過去最大の資金流出はこちらにまとめている。
今後の日程
- 11月4日以降:米中間選挙の開票。暗号資産の市場構造法案(CLARITY法案)の扱いに影響する。
- 11月4日(米国時間):ビットコイン現物ETFの11月3日分の資金流出入の集計。
- 時期未定:バイナンスが依頼した第三者の検証結果、残る流動性の低い資産の補填の完了。
- 11月6日:米10月雇用統計。
主な参照
- 流出の初期調査結果(金額、補填率、経緯、流出資産、EIP-7702、北朝鮮関連の阻止件数)/バイナンス公式ブログ(11月3日)
- テン共同CEOの発言、凍結への協力企業/CNBC(11月3日11時26分、米東部時間)
- FBIの発表(聯合ニュース)/The Korea Times(11月1日)
- ビットコインとイーサリアムの価格、日次データ/CoinGecko
- ビットコイン現物ETFの資金流出入(11月2日)/TokenPost(SoSoValue集計)
- テクニカルの水準、CLARITY法案の状況/Bitcoin Magazine(11月3日)
データ基準日:2026年11月4日7時57分(日本時間)。価格はCoinGeckoの集計値で、取引時間中の数値である。日次データは各日0時(UTC)時点の価格で、終値ではない。流出額、凍結額、補填率はバイナンスの公表値で、同社は照合と価格変動により変わりうるとしている。流出額は調査会社によって差がある。FBIの発表は報道を通じて確認したもので、原文は本誌で確認していない。北朝鮮が関与を否定したとの内容は報道によるもので、本誌は原文を確認していない。ドル換算額は本誌の試算である。ETFの資金流出入は集計会社により差が出る。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の暗号資産の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















