今夜のドルカナダは、同じ時刻に2本の雇用統計を受け止める。日本時間6日22時30分、米国の10月雇用統計とカナダの10月労働力調査が同時に出る。その4時間前、日本時間19時45分時点でドルカナダは1.4071と、前日終値1.3972から0.71%のカナダ安に振れていた。原油はほぼ横ばいだったのに、である。筆者はこの値動きを、原油ではなく株安が売らせたカナダドルとみている。
結論から書く。今夜の本線は1.4150試し、撤退線は終値で1.3930割れだ。根拠は3つあり、以下で順に並べる。
テープ:原油が止まっても、カナダドルは売られた
今週のテープを振り返る。3日から4日にかけてWTI原油先物は96.09ドルから88.12ドルへ8.3%崩れた。普通ならカナダドルが売られる場面だ。ところがドルカナダは1.3983から1.4005へ、わずか0.16%しか動かなかった。原油の急落を、10月28日のカナダ銀行(中央銀行)の利上げが受け止めた格好である。
そして今日だ。WTIは日本時間19時31分時点で90.26ドルと、前日清算値90.52ドルから0.3%しか下げていない。それでもドルカナダは1.40を上抜け、日中高値1.4082を付けた。正直、ここが今日いちばん面白いところだ。売り手は原油を見ていない。見ているのは株である。
5日の米国市場ではナスダック総合指数が5.5%安、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が12.2%安となり、6日の東京では日経平均が3,643円安、韓国総合株価指数(KOSPI)も6.0%安で引けた。この流れの中で、資源国通貨はまとめて売られている。豪ドルは日本時間19時45分時点で0.6870ドルと前日比1.9%安だ。カナダドルの下げは豪ドルの3分の1強にとどまる。投げは出ているが、全面的な投げではない。日経平均の下げの中身は東京市場の番付で整理した。
| 日付 | WTI原油先物 | ドルカナダ | 読み |
|---|---|---|---|
| 11月3日 | 96.09ドル | 1.3983 | 中間選挙の投票日 |
| 11月4日 | 88.12ドル(−8.3%) | 1.4005 | 原油急落でも反応は小さい |
| 11月5日 | 90.52ドル(+2.7%) | 1.3972 | 米株急落、カナダドルはまだ持ちこたえた |
| 11月6日 19時半前後(日本時間) | 90.26ドル(−0.3%) | 1.4071(+0.71%) | 原油は横ばい、アジア株安で売られた |
需給:利上げ直後の買いが、ほどけ始めている
カナダ銀行は10月28日、政策金利を0.25%引き上げて2.5%とした。声明は、原油高が続くなかで消費者物価の上昇率が4月以降3%前後にあり、年末には3.5%前後まで上がる見通しだと書いた。同じ声明は、カナダドルが「71セント前後」まで戻ったとも記している。ドルカナダに直せば1.408前後で、今日の水準とほぼ同じだ。
相場は利上げより先に動いていた。ドルカナダの直近6カ月の高値は10月13日の1.4299で、そこから利上げ期待とともに下げ、11月4日に1.3930まで売り込まれた。高値からの下げ幅は約370ポイントある。今日の1.4071は、この下げの4割弱を戻した位置だ。利上げを先回りして買われたカナダドルが、材料出尽くしの後で手仕舞われている、というのが筆者の読みである。
もう一つ、日柄も効いている。カナダの次の金融政策決定は12月9日で、まだ1カ月以上先だ。それまでカナダドルを買い上げる中銀の材料はない。今夜の労働力調査と、11月中旬に出る10月の消費者物価が、その間の材料のすべてになる。
今夜の2本:数字の置き場所
カナダ統計局によれば、9月の就業者数は6万8,000人減り、失業率は6.5%に上がった。8月の4万2,000人減に続く2カ月連続の減少である。減少は15〜24歳の若年層に集中し、公的部門の雇用者は4カ月続けて減った。10月分は10月11日から17日の週の状況を映す。市場予想は失業率6.5%で横ばいと伝えられている。
米国側は、ダウ・ジョーンズ集計の予想で10月の非農業部門雇用者数が5万9,000人増、9月実績は2万9,000人増だった。失業率は4.2%で横ばいの予想だ。米国は11月1日に夏時間が終わったため、米東部時間の午前8時30分は日本時間22時30分になる。夏時間の切り替わり前後で発表時刻を取り違えやすい人は、タイムゾーン変換ツールで一度確かめておくとよい。
| 組み合わせ | 筆者の想定する初動 | 見る水準 |
|---|---|---|
| 米国が予想超え、カナダが3カ月連続の減少 | カナダ安が加速 | 1.4150、続いて1.4200 |
| 両方とも予想並み | 株価次第。株安が続けばじり高 | 1.4080〜1.4150 |
| 米国が予想割れ、カナダが増加に転じる | カナダ買い戻し | 1.4000、続いて1.3930 |
| 両方とも弱い | 方向感は出にくく、株と原油に従う | 1.4000〜1.4100 |
水準の地図
ドルカナダの水準の地図(2026年11月6日)
読み方:青が現在値、橙が本誌の目標、赤が撤退線。上の目標までは約80ポイント、下の撤退線までは約140ポイント。出所:Yahoo Financeの日足と取引中の値(日本時間19時45分)、50日平均は本誌計算。
上から順に置く。1.4299は10月13日の高値で、直近6カ月の天井だ。1.4150は9月下旬から10月中旬にかけて何度も揉んだ帯の下限で、戻り売りが出やすい。1.4082は今日の日中高値。1.4042は過去50営業日の終値平均で、今日はこれを上抜けて推移している。1.3930は4日の安値で、利上げ相場の底だ。
値幅で言えば、今の位置から上の1.4150までは約80ポイント、下の1.3930までは約140ポイントある。上に近く、下に遠い。今夜の振れが1日平均の倍程度に膨らんでも、1.4150は届く範囲、1.3930は届きにくい範囲だ。
筆者の見立て:短期はドル高・カナダ安、1.4150試し
見立ては強気(ドル高・カナダ安方向)だ。期間は今夜から来週いっぱい、目線は1.4150、伸びて1.4200。根拠は3つある。
- 売りの主語が株に移った。原油が止まった日にカナダドルが0.7%売られた。アジアと米国の株安が続く限り、この売りはやまないだろう。
- カナダの雇用は2カ月で11万人減っている。3カ月連続の減少になれば、利上げの次の一手は遠のく。中銀の買い材料は12月9日まで出ない。
- 利上げ前に買われた分が残っている。高値1.4299から安値1.3930までの下げのうち、まだ4割弱しか戻していない。戻り余地は上にある。
中期、つまり12月9日の金融政策決定までのレンジは1.3950〜1.4250とみる。上限を1.4299の手前に置いたのは、カナダの物価が3.5%に向かうなかで、利上げ打ち止めを早く織り込みすぎるのも無理があるからだ。押し目の目安は1.4040前後、50日平均の近辺である。
逆になったら:撤退は終値1.3930割れ
この見立ての弱点は2つある。1つは、カナダの雇用が予想外に増えるケースだ。若年層の減少が一時的だったと分かれば、利上げ継続の観測が戻り、カナダドルは一気に買い戻される。もう1つは株の急反発である。米国の雇用統計が良い意味で予想を外れ、ナスダック先物が戻れば、資源国通貨の売りは踏み上げに変わる。
撤退線は、ニューヨーク終値で1.3930を割れたときと決めておく。4日の安値を割るということは、利上げ相場の底が抜けるということだ。そこで粘る理由はない。その手前、1.4000を終値で割り込んだ段階で、建玉は半分に落とす。
今夜と来週の監視リスト
| 日本時間 | イベント | 見るところ |
|---|---|---|
| 6日 22時30分 | 米10月雇用統計、カナダ10月労働力調査 | カナダの就業者数が3カ月連続で減るか。米国は5万9,000人増の予想に対する上下 |
| 6日 23時30分〜 | 米国株の取引開始 | ナスダックとSOXの戻りの有無。カナダドルの売りの主語 |
| 7日 早朝 | WTI原油の週末の清算値 | 90ドルを保てるか |
| 11月中旬 | カナダ10月消費者物価 | 3.5%に向かう道筋どおりか |
| 12月9日 | カナダ銀行の金融政策決定 | 2.5%からの追加利上げか据え置きか |
同じ雇用統計を円の側から見た読みはドル円の見通しに、3日時点のドルカナダの水準感は原油7%安の日の記事に、利上げ当日の反応は2017年との比較にまとめた。通貨ペアの基本や取引の仕組みはFX解説ページで扱っている。
主な参照
- カナダの9月労働力調査(就業者数、失業率、次回公表日と調査週)/カナダ統計局
- 10月28日の政策金利引き上げ(2.5%)、物価見通し、カナダドルの水準/カナダ銀行
- 米10月雇用統計の予想(ダウ・ジョーンズ集計)と9月実績、発表時刻/CNBC
- カナダ10月失業率の市場予想/FXStreet
- ドルカナダ、豪ドル、WTI原油先物の日足と取引中の値/Yahoo Finance
- 米国株の5日終値(ナスダック総合指数、SOX)と日経平均、KOSPIの6日終値/Yahoo Finance
データ基準日:2026年11月6日 日本時間19時45分(ロンドン10時45分)。ドルカナダと豪ドルの当日値はこの時点の取引中の値で、終値ではない。前日の値はYahoo Financeの日足終値で、配信元により数ポイントの差が出る。WTIの当日値は日本時間19時31分時点の取引中の値、それ以前は清算値である。米国株は11月5日の終値、日経平均とKOSPIは11月6日の終値。50日平均は本誌がYahoo Financeの日足終値から計算した。カナダの10月失業率の予想は報道にもとづく。見立て・水準・撤退線は本誌の見方であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の通貨の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。















