金が2日で5%戻した。ニューヨーク商品取引所の金先物(期近)は日本時間11月5日19時41分に1トロイオンス4,137.0ドルと、前日の清算値4,073.0ドルから1.57%高い取引時間中の気配値を付けた。前日4日の米国市場では、金現物に連動する上場投資信託(ETF)SPDRゴールド・シェア(GLD)が終値で3.68%上げ、8月19日以来の大きな上げ幅となっている。米中間選挙で民主党が上下両院を握ったとの予測を受け、ドル、原油、米長期金利がそろって下げたためだ。
本誌は4日の記事で、金が4,000ドルの線を回復した夜を描いた。きょうの論点はその先にある。4,000ドルの回復は終わった話で、問われているのは4,200ドルの壁を越えられるかどうかだ。しかも金利先物市場は、12月の米利上げをなお8割前後の確率で織り込んでいる。利息を生まない金にとって最大の逆風が残ったまま、なぜ上がったのか。その答えは、6日の米10月雇用統計で試される。まず下の1枚を見てほしい。
結論の図:4,200ドルまで残り63ドル、撤退線は3,989ドル
金先物の節目マップ(ドル/トロイオンス)
読み方:現在地(青)から4,200ドルの壁までは63ドル、撤退線の3,989ドルまでは148ドル。上値の節目が近く、下値の撤退線は遠い。基本シナリオは4,200ドル手前のもみ合いとみる。出所:グーグル・ファイナンス(気配値)、FXエンパイア(節目・シティの目標)、撤退線は本誌設定。
図の青い点が現在地だ。上には二つの節目がある。FXエンパイアは5日、4時間足の終値で4,146ドルを上回れば4,212ドルが視野に入ると分析し、別の記事では4,200ドルを最初の抵抗線、4,400ドルを次の抵抗線とした。同じ記事によれば、シティグループは3カ月後の目標を4,500ドルとしている。下の支持線は4,075ドル、その次が3,989ドルである。
本誌の見方は、4,200ドルの手前で一度もみ合うというものだ。理由は単純で、上昇を支えた材料のうち、雇用統計の前に追加で出てくるものが少ない。逆に、上げ相場の前提が崩れたと判断する線は3,989ドルに置く。ここを日足終値で割り込めば、4,000ドル回復は一時的だったことになり、10月30日に現物が付けた3,870ドルの安値の再試しを想定する。
今年何番目の上げか:11月4日は2026年で7番目
GLDの1日の上昇率、2026年の上位7日(終値ベース)
読み方:11月4日の上げは年内7番目。8月19日(3.84%)以来の大きさだが、2月3日の6.36%には遠い。出所:ナスダックのGLD日次終値(1月5日〜11月4日)から本誌計算。
GLDの日々の終値で比べると、4日の3.68%高は2026年に入って7番目の上げ幅だった。最大は2月3日の6.36%で、上位6日は1〜3月と8月に集中している。4日の上げは大きいが、異例というほどではない。GLDは1月29日の終値495.90ドルから11月4日の372.49ドルまでで24.9%低く、年初の398.28ドルと比べてもまだ6.5%下にある。
現物の史上最高値は、ロイターの報道で1月29日の5,591.61ドル、CBSニュースの集計では1月28日の5,589.38ドルとされる。時差のずれを除けば、おおむね5,590ドル前後だ。現在の4,100ドル台は、その頂から約26%下に位置する。下落率は本誌計算で、比べている価格の種類(現物と先物)が異なるため目安である。
なぜ利上げ観測の中で上がったのか
金が上がった順番:選挙から金まで
読み方:金が反応したのは12月の利上げそのものではなく、その先の利上げの減少である。だから12月の1回を左右する雇用統計が次の分岐点になる。出所:日本経済新聞、FXエンパイア、グーグル・ファイナンス。
この上げの起点は原油だ。民主党の勝利で米国とイランの外交が再開するとの見方が強まり、原油は急落した。日本経済新聞は5日朝、「金が急騰、2日で5%高 原油安で米利上げ継続の思惑後退」と報じている。原油が下がれば物価の先行きが下がり、FRBが利上げを重ねる必要も薄れる。米10年債利回りの指数は4日に4.894%で取引を終え、前日の4.952%から0.058ポイント下げた。ロイターによると、5日のアジア時間の早い段階では4.87%前後だった。
ただし、ここに穴がある。FXエンパイアがCMEのフェドウォッチを引いて伝えたところでは、12月会合での利上げ確率は5日時点で約82%だ。「利上げ継続の思惑後退」とは、12月の1回が消えたという意味ではない。その先の追加利上げの道筋が細くなった、というのが正確な読みである。金は利上げを1回は受け入れたうえで、2回目、3回目の可能性が減ったことに反応した。だからこそ、12月の1回そのものを揺さぶる雇用統計が次の試金石になる。
円建てでは:1グラム2万3,012円、戻りはドル建てより小さい
田中貴金属の金の店頭小売価格(円/グラム、税込、9時30分公表)
読み方:11月2日から5日にかけて4.8%戻したが、3月3日の水準より23.2%低い。ドル建ての高値は1月、円建ての高値は円安が進んだ3月だった。出所:田中貴金属工業の日次金価格推移(2025年12月以降の表示範囲)。
日本の個人投資家が実際に払う値段も見ておく。田中貴金属工業が5日9時30分に公表した金の店頭小売価格(税込)は1グラム2万3,012円で、前営業日比764円高い。11月2日の2万1,961円から4.8%戻した。それでも、同社が公表する日次表の範囲で最も高かった3月3日の2万9,969円と比べれば23.2%下にある。ドル建ての高値は1月だったが、円建ての高値は円安が進んだ3月にずれた。
東京証券取引所では、国内の金庫に現物を保管する純金上場信託(1540)が5日、前日比510円高の1万9,460円(2.69%高)で取引を終えた。理論上の円建て価格は、先物4,137.0ドルとドル円158.39円(いずれも日本時間19時41〜50分の気配値)から計算すると1グラム約2万1,067円になる。店頭価格との差は、消費税と販売手数料に相当する部分だ。ドル円が158円台で動かない限り、円建ての金はほぼドル建ての値動きをなぞる。ドル円の見通しは本日の記事で検証した。
シナリオ:雇用統計の後の3つの道
米労働統計局は6日米東部時間8時30分(日本時間22時30分)に10月の雇用統計を公表する。9月分は非農業部門の雇用者数が2万9,000人増、失業率は4.2%だった。FXエンパイアによると、ファクトセットが集計した10月の市場予想は5万5,000人増である。
| シナリオ | 確率 | きっかけ | 想定する値幅 |
|---|---|---|---|
| 基本:4,200ドル手前でもみ合い | 45% | 雇用者数が予想並み(3万〜8万人増)、12月利上げ確率は7〜8割台を維持 | 4,050〜4,250ドル |
| 上振れ:4,200ドルを突破 | 30% | 雇用者数がマイナス、または失業率4.3%以上。利上げ確率が6割を割る | 4,300〜4,400ドル |
| 下振れ:4,000ドルを再び割る | 25% | 雇用者数が10万人超、または原油が反発。利上げ確率が9割を超える | 3,870〜3,990ドル |
基本シナリオを最も重く見るのは、予想並みの雇用ではFRBの12月利上げが動かないからだ。上振れには利上げそのものが揺らぐ弱い数字が要る。下振れの条件は二つあり、強い雇用か、原油の反発である。イラン情勢をめぐる見出し一つで原油が数ドル動く局面は続いており、原油の行方はこちらの記事にまとめた。10日には10月の消費者物価指数(日本時間22時30分)、12月8〜9日には連邦公開市場委員会(FOMC)が控える。
銀も同じ方向を向いている。銀先物は19時40分に1オンス52.905ドル、1.19%高だった。FXエンパイアは54.45ドルを抵抗線、51.24ドルを割れば戻りの形が崩れるとみる。銀は工業需要の比重が大きく、金より値幅が出やすい。銀の位置づけは3日の記事を参照してほしい。
個人投資家向けチェックリスト
- 4,146ドル:4時間足の終値で上抜ければ、4,200ドル台の試しが近い合図。
- 3,989ドル:日足終値で割れば、本誌の基本シナリオは撤回。3,870ドルの安値が次の目安。
- 12月利上げ確率:8割台から6割を割り込むかどうか。金の上値余地はこの数字に連動しやすい。
- 原油:イラン関連の見出しで反発すれば、金の上げの起点が逆回転する。
- ドル円:円建てで買う場合、158円台からの円高は円建て金価格を押し下げる。
- 中央銀行の買い:WGCによれば7〜9月期の購入量は321トンで前年同期比42%増。下値を支える材料として残る。
最後に需給の土台を確認しておく。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が3日に公表した7〜9月期の需要動向では、中央銀行の購入量が321トン、金ETFへの流入が211トンで、世界の金ETFの保有量は過去最高の4,256トンに達した。一方で宝飾品需要は17%減の313トン、地金・金貨は19%減だった。値段が下がっても公的部門とETFは買い、個人の宝飾品は買い控えた。4,200ドルを越えるには、この構図に投機の買い戻しが加わる必要がある。
主な参照
- 金先物・銀先物・ドル円・純金上場信託の気配値と終値(日本時間11月5日)/グーグル・ファイナンス
- GLDの日次終値(2026年1月2日〜11月4日)/ナスダック
- 米10年債利回り指数(TNX)の終値/グーグル・ファイナンス(シカゴ・オプション取引所)
- 金の節目、12月利上げ確率、雇用統計の予想、シティの目標/FXエンパイア(11月5日8時25分GMT)
- 4,146ドル・4,212ドル、銀の節目/FXエンパイア(11月5日6時30分GMT)
- 「金が急騰、2日で5%高」/日本経済新聞(11月5日)
- 9月の雇用統計と10月分の公表日程/米労働統計局
- 金の店頭小売価格(日次)/田中貴金属工業
- 7〜9月期の金需要動向/ワールド・ゴールド・カウンシル
- 史上最高値/ロイター(ビジネス・レコーダー転載)、CBSニュース
データ基準日:2026年11月5日(日本時間19時41分、金先物の気配値)。金・銀先物とドル円は取引時間中の気配値で、終値ではない。前日比の基準は11月4日の清算値。GLDの騰落率と順位は米国市場の終値(1月5日〜11月4日の日次)による本誌計算。米10年債利回りは11月4日の終値、純金上場信託は11月5日の東京市場の終値。田中貴金属の価格は5日9時30分の公表値で、その後の値動きは含まない。日次表で最も高い価格は2025年12月以降の表示範囲での比較である。円建ての理論価格は1トロイオンス=31.1035グラムで本誌が換算した。史上最高値は現物の日中値で、報道機関により数値と日付に差がある。12月利上げ確率、雇用統計の市場予想、シティの目標、テクニカル上の節目はFXエンパイアの報道によるもので、本誌は原典を確認していない。シナリオの確率は本誌の判断で、将来の価格を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














