スイスの物価が、予想を大きく上回った。11月3日に発表された10月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比1.5%上昇で、市場予想の1.2%と9月の1.0%を上回った。前月比も0.2%上昇と、予想の横ばいを上回っている。ドルスイスは発表前の時点ですでに0.81台と、9月下旬以来のドル安・フラン高の水準にある。問われているのは、ゼロ金利のスイス国立銀行(SNB)がこの数字を無視できるかどうかだ。
- 物価:10月のCPIは前年比1.5%、予想1.2%を0.3ポイント上回った。
- SNB:政策金利は0%。9月の見通しは2026年平均0.7%で、上振れが続いている。
- ドルスイス:2日の欧州中央銀行の参照値は0.81963で、9月22日以来の低さ。
- ドル側:米国の政策金利は3.75〜4.00%。原油安と中間選挙でドルは上値が重い。
- 見通し:2週間の想定は0.8100〜0.8300。基本線は0.82を挟んだフラン高寄りの横ばい。
1. 物価:1.5%は予想を0.3ポイント上回った
結論:10月のスイスCPIは前年同月比1.5%上昇だった。市場予想は1.2%、9月は1.0%である。前月比は0.2%上昇で、予想は0.0%だった。指数は101.7(2025年12月=100)である。
根拠:9月の1.0%は、原油高とフラン安を背景に約2年ぶりの高さと報じられた。10月はそこからさらに0.5ポイント上げた。8月は0.8%、7月は0.4%だったから、3カ月で伸び率は4倍近くになった。
次:11月の原油安がどこまで物価に届くか。WTIは2日に96ドル台まで下げた。12月2日発表の11月CPIで伸びが鈍れば、10月は一時的な山と読める。
2. SNB:ゼロ金利と見通しのずれ
結論:SNBは9月24日、政策金利を0%に据え置いた。物価の目標は0〜2%で、1.5%はまだその範囲内にある。
根拠:SNBは9月の評価で、2026年の平均インフレ率を0.7%、2027年と2028年を0.8%と見通した。前提は政策金利0%の据え置きである。10〜12月期に物価がやや上がるとは書いていたが、1.5%は想定より速い。SNBは同時に、必要なら為替市場に介入する姿勢も示している。
次:次の金融政策評価は12月に予定されている。目標の上限2%に近づけば、利上げの議論が現実味を帯びる。現時点では据え置きの見方が強いと本誌はみる。
3. ドルスイス:0.82を割り込んだ
ドルスイスの位置と目安(スイスフラン)
読み方:青が現在地、橙が本誌の目安。値はいずれも欧州中央銀行の参照値(中欧時間14時15分)で、移動平均は本誌計算。100日線の0.8154を終値で割れば、8月の安値0.79899までの下げ余地が開く。
結論:欧州中央銀行(ECB)が公表する参照値で、ドルスイスは2日に0.81963だった。9月22日の0.81942以来の低さである。3日のアジア時間は0.8180前後で推移した。
根拠:10月1日の0.83528から、1カ月で約1.9%のドル安・フラン高になった。参照値から本誌が計算した50日移動平均は0.8219で、すでにその下にいる。100日線は0.8154、200日線は0.7994だ。スイスの10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)も56.7と予想の55.3を上回り、フランを支えた。
次:下値の目安は100日線の0.8154。ここを終値で割れば、8月20日の0.79899までの下げ余地が開く。上値は50日線の0.8219と、0.83の節目である。
4. ドル側:利上げ観測と原油安の綱引き
結論:米連邦公開市場委員会(FOMC)は10月28日、政策金利を3.75〜4.00%に据え置いた。採決は10対2で、反対の2人は利上げを主張した。
根拠:米国とスイスの金利差は3.75ポイント以上ある。それでもドルは伸び悩んでいる。2日は米国とイランの協議進展への期待で原油が急落し、ドル指数は約1カ月ぶりの低さとなる101.76付近まで下げた。物価の上振れ懸念が和らぐと、利上げ観測も後退しやすい。
次:3日は米中間選挙の投票日、6日は10月の米雇用統計である。雇用統計の論点は雇用統計の予習記事にまとめた。
5. 見通し:2週間で0.8100〜0.8300
結論:本誌の2週間の想定レンジは0.8100〜0.8300、基本線は0.82を挟んだ横ばいからフラン高寄りである。確率は、レンジ内の推移が55%、0.8150割れのフラン高が30%、0.8300超えのドル高が15%とみる。
根拠:物価の上振れでSNBの利下げ観測は消え、フランの下支えになる。一方でSNBは為替介入の構えを崩しておらず、急なフラン高には歯止めがかかりやすい。ドル高の15%は、雇用統計が強く、米国の利上げ観測が戻る場合の数字だ。
次:撤退線は0.8300。ここを終値で上抜ければ、フラン高の見立ては外れたと判断する。前回の見通しは10月21日のドルスイス見通しで、下値の目安とした50日線はこの2週間で割り込まれた。
30秒まとめ:スイスの10月CPIは1.5%と予想を0.3ポイント上回り、SNBの利下げ観測を消した。ドルスイスは0.82を割り込み、100日線の0.8154が次の下値の目安になる。0.8300を終値で超えない限り、フラン高寄りの見立てを続ける。
主な参照
- 10月の消費者物価指数(結果と市場予想)/みんかぶFX
- 消費者物価指数の公表資料/スイス連邦統計局
- 9月の金融政策評価とインフレ見通し/スイス国立銀行
- FOMCの決定と採決(10月28日)/米連邦準備制度理事会
- ドルスイスの参照値と移動平均の計算元/欧州中央銀行
- アジア時間のドルスイスと発表前の予想/FXStreet
- スイスの10月PMI/Tradingpedia
- ドル指数と原油安の背景/HDFC Sky
データ基準日:2026年11月3日(日本時間16時30分)。ドルスイスの0.81963は欧州中央銀行が11月2日に公表した参照値(中欧時間14時15分)で、終値ではない。アジア時間の0.8180前後はCPI発表前の取引時間中の値で、発表後の値動きは反映していない。移動平均は参照値から本誌が計算した。CPIの結果はスイス連邦統計局の11月3日の発表(指数101.7、2025年12月=100)による。市場予想はみんかぶの集計である。確率とレンジは本誌の判断であり、将来の相場を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














