米国の半導体株指数(SOX)は10月19日、9営業日ぶりに上昇して1.61%高で引けた。8営業日続いた下げは止まったが、東京の半導体株は傷んだまま決算を迎える。10月22日のディスコ(6146)を皮切りに、30日の東京エレクトロン(8035)とキオクシアホールディングス(285A)まで、主力5社が7営業日のうちに数字を出す。本稿は5社の発表日時と会社の見通し、高値からの下落率、過去8回の決算翌日の値動きを1本にまとめ、本誌の見立てとして上げと下げの確率を置いた。
結論の1枚:高値からの距離がそのまま「期待の残量」
まず下の1枚を見てほしい。10月19日の終値を、過去1年の終値ベースの最高値と比べたものだ。キオクシアは6月22日の高値から62.5%安、ディスコは39.7%安、東京エレクトロンは34.3%安にある。一方でアドバンテスト(6857)は10月6日に高値を付けたばかりで、下落率は17.7%にとどまる。SOXの22.7%安と比べても浅い。
過去1年の高値からの下落率(2026年10月19日終値)
読み方:棒が長いほど高値から遠く、悪材料の織り込みが進んでいる。アドバンテストは10月6日に高値を付けたばかりで、SOXより下げが浅い。出所:ヤフー・ファイナンスの日足終値(株式分割を調整済み)、本誌計算。高値は終値ベースで、キオクシア・ディスコは6月22日、東京エレクトロンは7月1日、信越化学は6月3日。
下げの引き金は10月15日の「コアウィーブ・ショック」だった。株探によれば、米データセンター運営のコアウィーブの社債利回りが15%台に跳ね、日経平均はこの日3,318円安と今年最大の下げを記録した。台湾のTSMCが市場予想を上回る7〜9月期決算を出しても、買い手は戻らなかった。つまり今回の決算は、数字の良し悪しより「AI投資は続くのか」という問いへの答えとして読まれる。高値から大きく離れた銘柄ほど悪材料は織り込み済みで、離れていない銘柄ほど期待が残っている。
発表スケジュール:最後の金曜日に山が来る
決算発表の日程(日本時間)
読み方:時刻を公表済みの4社は大引け(15時30分)以降の発表で、株価の反応は翌営業日に出る。30日に発表が集中し、週末をはさむ。出所:各社のIRカレンダー(ディスコ、信越化学、アドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシア、SCREEN)と株探。
日程は各社のIRカレンダーで確認した。ディスコは22日16時、信越化学工業(4063)は27日15時30分、アドバンテストは28日15時30分、キオクシアは30日18時45分の予定だ。東京エレクトロンは30日の発表で時刻は未公表だが、前回の7月30日は16時だった。4社は東証の大引け(15時30分)以降の発表で、東京エレクトロンも前回どおりなら同じく、株価の反応は翌営業日に出る。30日は金曜日で、SCREENホールディングスやレーザーテックも同じ日に並ぶ。週末をはさむため、30日発表組の反応は11月2日(月)まで持ち越しになる。
過去8回の答え合わせ:平均は小さく、振れ幅は大きい
決算翌営業日の平均騰落率(直近8回)
読み方:棒は平均の方向、小さな文字の「平均振れ幅」は上げ下げを問わない値動きの大きさ。平均が小さくても1回ごとの動きは大きい。出所:ヤフー・ファイナンスの日足終値から編集部試算(発表日終値→翌営業日終値)。対象は2024年10月〜2026年7月の決算で、キオクシアは2025年2月以降の7回。
決算発表日の終値から翌営業日の終値までの騰落率を、直近8回(キオクシアは上場後の7回)について本誌が計算した。平均がプラスなのはアドバンテスト(+4.54%)とキオクシア(+3.77%)だけで、信越化学は−3.29%、ディスコは−1.77%だった。ただし平均より大事なのは振れ幅である。方向を無視した平均の値動きは、キオクシアが10.35%、ディスコが8.18%、アドバンテストが7.40%に達する。「上か下か」を当てるより、「どちらに転んでも大きく動く」と構えておくほうが現実に近い。
極端な例もある。東京エレクトロンは2025年8月1日に18.02%安、キオクシアは同年11月14日に23.03%安となった。逆にアドバンテストは2025年10月29日に22.08%高、ディスコは2026年1月22日に17.07%高を記録している。
7月の前回決算:期待を上回った2社、届かなかった2社
前回(2026年7月)決算の翌営業日の騰落率
読み方:会社予想を大きく引き上げた2社は上げ、市場の期待に届かなかった2社は下げた。キオクシアは7月31日発表で、週明けの8月3日に反応した。出所:ヤフー・ファイナンスの日足終値から編集部試算。
前回の反応は、市場が各社に何を求めているかを映す。アドバンテストは7月29日に今期の純利益予想を6,600億円へ引き上げ、翌日は10.85%高となった。東京エレクトロンも上期予想を売上高1兆6,200億円、営業利益4,580億円へ上方修正し、6.24%高だった。反対に、ディスコは最高益でも市場の期待に届かず12.27%安、信越化学は通期の営業利益見通し7,000億円が市場予想(約7,600億円と報じられた)を下回り8.30%安だった。ディスコの前回決算はこの解説で詳しく扱った。
5社の事前チェック表
| 銘柄 | 発表(日本時間) | 10月19日終値/高値比 | 会社の見通し | 過去の翌日反応(上昇回数・平均) | 編集部の見立て(上昇:下落) |
|---|---|---|---|---|---|
| ディスコ(6146) | 10月22日(木)16時 | 53,360円/−39.7% | 上期:売上高2,428億円、営業利益1,049億円 | 3勝5敗・−1.77% | 45:55 |
| 信越化学(4063) | 10月27日(火)15時30分 | 5,966円/−23.6% | 通期:売上高2兆7,000億円、営業利益7,000億円 | 3勝5敗・−3.29% | 45:55 |
| アドバンテスト(6857) | 10月28日(水)15時30分 | 34,450円/−17.7% | 通期:売上高1兆7,140億円、営業利益8,460億円 | 5勝3敗・+4.54% | 40:60 |
| 東京エレクトロン(8035) | 10月30日(金)時刻未定 | 10,350円/−34.3% | 上期:売上高1兆6,200億円、営業利益4,580億円 | 4勝4敗・−0.93% | 55:45 |
| キオクシア(285A) | 10月30日(金)18時45分 | 13,600円/−62.5% | 7〜9月期:営業利益1兆8,900億円 | 6勝1敗・+3.77% | 55:45 |
見立ての根拠は三つだ。過去の上昇回数、高値からの距離、そして事前に分かっている材料の量である。ディスコは10月6日に7〜9月期の単体売上高1,185億円(前年同期比38.9%増)と、四半期で過去最高の出荷額1,239億円(同60.0%増)を速報済みだ。19日には上期営業利益が1,100億円程度になったとの観測報道も出た。中身はかなり知られており、焦点は10〜12月期の見通しに移る。この点は出荷額速報の検証記事で掘り下げた。
注目の2銘柄:売られすぎのキオクシア、期待が残るアドバンテスト
キオクシア(285A)——売られすぎの代表
高値比62.5%安は5社で最も深い。会社が示した7〜9月期の営業利益1兆8,900億円は、4〜6月期の実績1兆2,700億円を5割近く上回る水準だ。それでも株価が下げたのは、米国のメモリー株安とAI投資の息切れ懸念が重なったからだ。7月には中国勢の参入による供給過剰への警戒からも売られている(経緯は中国メモリーショックの記事を参照)。フィスコは19日朝、株価が52週移動平均線まで下げて支持線として意識されやすいと指摘した。過去7回の決算翌日は6回上昇したが、唯一の下げは23.03%安だった。55:45と上を見るが、振れ幅は5社で最も大きいとみる。
アドバンテスト(6857)——期待の残高が最も多い
アドバンテストは過去8回で5勝3敗、平均+4.54%と5社で最も成績が良い。だからこそ見立ては40:60と下に置いた。高値を付けたのは2週間前で、下落率は17.7%にとどまる。7月に純利益予想を42%引き上げた後なので、市場はさらなる上方修正を前提にしている可能性が高い。上方修正が小幅なら、利益確定の売りが出やすい。逆に修正幅が7月並みなら、高値を取り戻す余地もある。
東証の株価は埋め込みでは表示できないため、米国ADR(ドル建て)を表示している。円建ての株価とは一致しない場合がある。
シナリオ表:何が出たら上、何が出たら下か
| 銘柄 | 上振れのシナリオ | 下振れのシナリオ |
|---|---|---|
| ディスコ | 10〜12月期の売上・利益見通しが7〜9月期を上回り、出荷の勢いが続く | 見通しが横ばい以下。速報で既に知られた数字だけでは買い材料にならない |
| 信越化学 | 半導体シリコンウエハーの回復を示し、通期見通しを上方修正する | 塩化ビニール樹脂の市況悪化が続き、7,000億円の通期見通しを据え置く |
| アドバンテスト | 7月並みの大幅な上方修正。推論AI向けテスト需要の継続を示す | 上方修正が小幅、または据え置き。高値に近い分だけ失望が出やすい |
| 東京エレクトロン | 通期見通しを初めて示し、市場予想並み以上の水準を出す | 下期の受注に慎重な見方を示し、2025年8月の急落が再現する |
| キオクシア | 10〜12月期の見通しで値上げの継続を示し、供給過剰の懸念を打ち消す | 見通しが市場予想に届かず、中国勢の参入による値崩れの懸念が強まる |
東京エレクトロンは7月に上期の見通ししか出しておらず、通期の数字はまだない。IFISの集計では、7月29日時点の市場予想は通期の営業利益9,664億円だった。上期見通しの4,580億円を差し引くと、下期は約5,084億円が求められる計算になる。30日に会社が通期の数字を示すかどうか、示すならこの水準に届くかが最大の焦点だ。直近の東京市場の動きは10月19日の大引け記事で、TSMCの見方はこちらでまとめた。
決算前のチェックリスト
- 翌営業日に反応が出る。時刻を公表済みの4社は大引け後の発表で、東京エレクトロンも前回は16時だった。30日発表の3社は、週末をはさんで11月2日に値が付く。
- 見るのは実績より見通し。ディスコは7〜9月期の売上を速報済み。勝負は10〜12月期の見通しで決まる。
- 振れ幅を前提にする。過去の決算翌日には、方向を問わず平均でおよそ5〜10%動いた。信用取引で建玉を持つ場合は特に注意したい。
- 米国の動きも同時に見る。SOXは19日に反発したが、続落の原因になったAI投資への懸念は消えていない。
- 株価は分割調整後で比べる。東京エレクトロン(1株を5株)とキオクシア(1株を3株)は9月29日に株式を分割した。分割前の株価と比べると下落率を誤る。
主な参照
- 決算発表日時/ディスコ、信越化学工業、アドバンテスト、東京エレクトロン、キオクシアホールディングス、SCREENホールディングスの各IRページ。その他の銘柄の予定日は株探の各銘柄ページ
- 株価・SOX指数の日足終値、株式分割/ヤフー・ファイナンス
- 各社の業績と会社予想、過去の発表日/株探(業績欄)
- 東京エレクトロンの上期予想修正と市場予想(IFIS)/マネックス証券
- ディスコの7〜9月期単体売上高・出荷額の速報/株探(MINKABU PRESS)、上期営業利益の観測報道/株探(フィスコ)
- コアウィーブ・ショックと10月15日の日経平均/株探
- キオクシアの52週移動平均線/株探(フィスコ)、4〜6月期実績と7〜9月期見通し/株探(業績欄)
- アドバンテストの7月の上方修正(純利益4,655億円→6,600億円)/株探(MINKABU PRESS)
- SOXの8営業日続落/Investrade
アイキャッチ写真:「Wafer prober service configuration」Ixnayonthetimmay撮影(Wikimedia Commons、CC BY-SA 3.0)。画像はトリミングしている。
データ基準日:2026年10月19日の東京市場の終値と、同日の米国市場の終値(SOX)。株価はヤフー・ファイナンスの日足終値で、東京エレクトロン(9月29日に1対5)、キオクシア(同1対3)などの株式分割を調整している。高値は過去1年の終値ベースで、取引時間中の高値ではない。決算翌日の騰落率は本誌の試算で、配当や指数全体の動きは除いていない。SOXの8営業日続落について、米市場解説サイトのInvestradeは「2010年以来の長さ」と伝えたが、本誌がヤフー・ファイナンスの終値で数えると8営業日以上の続落は2008年10月以来だった。ディスコの上期営業利益と信越化学の市場予想は報道にもとづくもので、会社の発表ではない。東京エレクトロンの発表時刻は本稿執筆時点で未公表である。上昇と下落の比率は編集部の見立てで、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。
















