100株で約96万9,000円。AI向けクラウドのコアウィーブ(CRWV)を持つ日本の個人投資家の画面には、19日の終値61.12ドルがこう映っているはずだ。1週間前の12日なら約127万円だった。この日、ゴールドマン・サックスは投資判断を「買い」に引き上げ、株価は一時7%を超えて上げた。それでも引けは0.44%安である。格上げでも止まらない売りの裏には、会社予想で1日あたり15億円を超える利払いがある。
100株で見ると、1週間で約30万円が消えた
コアウィーブ100株の円建て評価額(万円、1ドル=158.55円で固定)
読み方:為替を19日のニューヨーク終値に固定し、株価の動きだけを円に直した。急落前の10月12日から19日までで、100株あたり約30万円が減った計算になる。ゴールドマン・サックスの新しい目標株価106ドルは8月12日の水準に近い。出所:Yahoo Financeと株探の日足終値、為替はフィスコ(株探掲載)、本誌試算。
まず、私たちの口座の数字に直してみる。為替を19日のニューヨーク終値1ドル=158.55円に固定すると、急落前の10月12日の終値80.26ドルでは100株が約127万3,000円、19日の61.12ドルでは約96万9,000円になる。差はおよそ30万3,000円だ。5営業日の下落率は23.8%で、4〜6月期決算の翌日にあたる8月12日の終値107.73ドルからは43.3%下げた。上場来の終値最高値は2025年6月20日の183.58ドルで、そこからは66.7%安い水準にいる。
売買の量も平常ではない。14日から19日までの4営業日の出来高は1日平均で約1億920万株だった。急落前の12日までの50営業日の平均は約2,850万株なので、3.8倍にあたる(いずれもYahoo Financeの日足から本誌計算)。株探の集計では、19日の時価総額は281億9,307万ドル、円にして約4.5兆円である。
19日の値動き:格上げで7%高、引けは小幅安
コアウィーブの終値(2026年9月1日〜10月19日、ドル)
読み方:10月6日の91.72ドルから19日の61.12ドルまで33.4%下げた。14日に社債の急落が伝わり15.5%安、15日に5.9%戻したが16日に11.9%安。19日は格上げで一時7.4%高まで買われたものの、引けは0.44%安だった。出所:Yahoo Financeの日足終値(株探で照合)。
19日の動きを順に追う。ゴールドマン・サックスのガブリエラ・ボルヘス氏は、投資判断を「中立」から「買い」に引き上げた。同時に目標株価は139ドルから106ドルへ下げている。格上げと目標株価の引き下げが同時に出たことになる。株探の日足によれば、株価は65.83ドルで始まり、高値は65.92ドルと前週末の終値61.39ドルを7.4%上回った。だが買いは続かず、安値は59.25ドルまで沈んだ。場中の安値としては2025年5月以来の低さである(Yahoo Financeの日足から本誌確認)。終値は61.12ドル、0.27ドル安だった。時間外では61.44ドルを付けている。
相場全体は戻していた。ナスダック総合指数は1.11%高の2万6,430.89で終えた。フィスコの米国市場ダイジェスト(株探掲載)は、AIの過剰な負債への懸念が後退したと伝えている。エヌビディア(NVDA)は1.38%高の217.09ドルだった。同社が出資する英国のAIクラウド企業エヌスケールが、アンソロピックへの計算能力の追加提供を交渉していると報じられたことが買い材料になった。同じダイジェストは、コアウィーブの負債を擁護する見解が多く出て格上げもあったが小幅安だった、と記している。指数が戻る日に取り残されたことが、19日のいちばんの特徴だ。
上流をたどる:社債の値札はまだ戻っていない
株価の売りをたどると、社債市場に行き着く。2032年満期・表面利率9.625%の無担保社債は、14日に額面100に対して80を割り込んだ。その経緯は15日の記事で詳しく扱った。今回確かめたいのは、その後に値札が戻ったかどうかである。
答えは「ほとんど戻っていない」だ。米CNBCは19日、この社債の満期利回りが14.9%で、前週の15%超の高値をわずかに下回るにとどまったと報じたと伝えられている。社債が返らない場合に備える保険料にあたるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の5年物は、ICEデータ・サービシズのデータで15日に場中1,194.5ベーシスポイント(11.945%)と過去最高を付けた。19日も約1,082ベーシスポイントと報じられている。株の買い手は格上げで戻ってきたが、お金の貸し手はまだ戻っていない。株は気分でも動くが、利回りは貸し手が実際の金額で示した条件だ。
この差は、2週間前から続く構図の延長でもある。国際通貨基金(IMF)は13日、借金で買われた資産が多いと下げ始めたときに売りが連鎖しうると警告した。その中身はIMFの報告書を読んだ記事にまとめている。
家計簿に直す:利払いは1日15億円
稼ぐ力と利払い:四半期あたり(億円、1ドル=158.55円)
読み方:本業のもうけ(調整後営業利益)より利払いのほうが4倍前後大きい。会社予想どおりなら、7〜9月期の利払いは1日あたり約15.5億円になる。調整後営業利益は会社独自の指標(非GAAP)。出所:コアウィーブの4〜6月期決算資料と決算説明会(2026年8月11日)、本誌換算。
なぜ貸し手はこれほど慎重なのか。会社の帳簿を家計簿のように円に直すと、理由が見える。8月11日の決算説明会で会社が示した7〜9月期の予想は、売上高34億5,000万〜36億ドル、調整後営業利益2億〜2億6,000万ドル、支払利息8億6,000万〜9億4,000万ドルである。中央値で比べると、本業のもうけ約365億円に対して、利払いは約1,427億円になる。4〜6月期の実績も、調整後営業利益1億2,800万ドルに対して支払利息は6億4,000万ドルだった。
| 項目 | ドル建て | 円建て(158.55円) | 家計の目線で言えば |
|---|---|---|---|
| 7〜9月期の支払利息(会社予想の中央) | 9億ドル | 約1,427億円 | 1日あたり約15.5億円、1か月あたり約476億円 |
| 4〜6月期の支払利息(実績) | 6億4,000万ドル | 約1,015億円 | 1日あたり約11.2億円 |
| 7〜9月期の設備投資(会社予想) | 115億〜135億ドル | 約1.8兆〜2.1兆円 | 1四半期で、時価総額(約4.5兆円)の4〜5割を投じる |
| 6月末の借入金(リコースとノンリコースの合計) | 350億6,800万ドル | 約5.6兆円 | 手元の現金は55億2,400万ドル(約8,758億円) |
| 6月末の受注残 | 約1,040億ドル | 約16.5兆円 | 7〜9月期初めに250億ドル超の新規契約を別に獲得 |
ここで大事なのは時間差だ。お金を借りてGPU(画像処理半導体)を買い、データセンターを整えるのが先で、利用料が入るのは設備が動き始めてからになる。受注残は約1,040億ドルと厚い。それでも借り換えの金利が上がれば、毎日の利払いはさらに膨らむ。19日の売りは、この「先に出ていくお金」の値段が下がらないことへの反応と読める。
ゴールドマンの言い分と、残る疑問
では、格上げの根拠は何か。TipRanksによれば、ボルヘス氏は計算資源から得られるリターンの上方修正の大きさを、投資家が過小評価しているとみる。供給がひっ迫しているため、電力1メガワットあたりの年間収入は今後24か月で上がるという。資金調達については、借入金の平均コストが1〜2%上がると見込むが、それ以上の上昇余地は限られると書いた。無担保社債の利回りは13.5〜15%で取引されているものの、同社は主に資産を担保にした借り入れに頼っているため、新しい資金の実際のコストを過大に映している可能性がある、という立場だ。106ドルの目標は、16日の終値から約73%上の水準にあたる。
一方で、ゴールドマン自身も目標株価を約24%下げている。信用市場の荒れ、AI需要の行方、顧客構成の変化という3つの論点を認めたうえでの格上げである。15日にはエヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が、コアウィーブの資本コストは「実際には下がっている」と述べたとTheNextWebが伝えた。だが19日の利回りとCDSの水準は、貸し手がまだその見方に乗っていないことを示している。東京では、ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏が株探の取材に、今回の「コアウィーブ・ショック」は利益確定の格好の口実に過ぎないとの見方を示した。ただし、信用不安が他のAI企業に広がることを下振れのシナリオに挙げてもいる。
値動きの物差し:売られすぎの目安と節目
コアウィーブ株の節目(ドル)
読み方:下は19日の安値59.25ドル、上は15日の高値69.76ドルが当面の境目になる。19日の高値65.92ドルは格上げで届いた水準だが、引けまで保てなかった。50日移動平均は86.44ドル(本誌計算)。出所:Yahoo Financeと株探の日足、TipRanks(目標株価)。
過熱感を測る物差しとして、14日RSI(相対力指数)を日足終値から計算した。値上がり幅と値下がり幅の比率を0〜100で表す指標で、30を下回ると「売られすぎ」の目安とされる。本誌の試算では、19日の値は29.3、14日は29.2、16日は29.5だった。上場以来、30割れは2025年11月中旬〜下旬と2026年7月29日にもあった。2025年11月20日(RSI 21.1)の終値69.21ドルからは20営業日後に19.9%高、2026年7月29日(28.6)の60.82ドルからは20営業日後に44.7%高だった。ただし7月の反発には8月11日の決算という材料があり、2回だけの例から次も同じになるとは言えない。売られすぎは「下げが止まる」合図ではなく、「下げが速すぎた」という記録にすぎない。
| 水準 | 中身 | 100株の円建て |
|---|---|---|
| 80.26ドル | 急落前、10月12日の終値 | 約127.3万円 |
| 69.76ドル | 10月15日の高値(終値は69.69ドル) | 約110.6万円 |
| 65.92ドル | 19日の高値。格上げで届いたが保てず | 約104.5万円 |
| 61.12ドル | 19日の終値 | 約96.9万円 |
| 60.55〜60.82ドル | 2026年7月29日の安値と終値 | 約96.0万〜96.4万円 |
| 59.25ドル | 19日の安値。場中では2025年5月以来の低さ | 約93.9万円 |
空売りの状況も確かめておく。ナスダックの集計では、9月30日時点の空売り残高は5,995万株で、9月15日時点の5,494万株から増えた。平均出来高で割った買い戻しに要する日数は1.75日である。急落した10月前半の数字はまだ公表されていない。
3つのシナリオ(編集部の見立て)
| シナリオ | 確率(編集部の見立て) | 値動きの姿 | 確かめる材料 |
|---|---|---|---|
| 戻り | 30% | 59.25ドルを守り、終値で69.76ドルを上抜く。100株は約111万円を回復 | 社債利回りが14%を下回り、CDSが1,000ベーシスポイントを割るか。メタが設備投資計画を維持・上積みするか |
| もみ合い | 45% | 59〜70ドルの範囲で、決算まで方向感が出ない | 利回りが14〜15%台にとどまる。空売り残高の増減 |
| 下抜け | 25% | 終値で59.25ドルを割り込み、2025年5月以来の水準へ。100株は94万円を下回る | 利回りの15%超えが定着。新しい資金調達が高い金利でしかできない、または株式の発行による希薄化 |
私たちが手元でできることは、売り買いの決断より先に、自分の持ち分を円で測り直すことだ。100株なら1ドルの値動きが約1万6,000円、為替が1円動けば約6,100円になる。値動きの幅が大きい銘柄では、この2つを合わせた振れ幅が資産全体に占める割合を確かめておきたい。選択肢は、持ち続ける、一部を減らす、新しく買い始める、様子を見る、のいずれもありうる。どれを選ぶかは、それぞれの資産の配分と許容できる損失で決まる。
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読み方:最初の山はメタの決算、最大の山はコアウィーブ自身の決算である。FOMCの日程は米連邦準備制度理事会、メタの日付は同社の発表、コアウィーブの前年の決算日は米証券取引委員会への提出書類による。
最初の山は日本時間22日早朝のメタ・プラットフォームズ(META)の決算だ。メタは2026年3月、コアウィーブと最大約210億ドルの利用契約を結んだ大口顧客で、そのAI設備投資の計画はコアウィーブの受注の先行きを左右する。井出氏もこの決算を当面のきっかけに挙げている。次が27〜28日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、米金利の行方は借り換えの金利に直結する。そして11月に、コアウィーブ自身の7〜9月期決算が来る。会社はまだ日付を発表していないが、前年の7〜9月期は2025年11月10日に発表した。そこでは売上高が会社予想の34億5,000万〜36億ドルに届くか、支払利息が8億6,000万〜9億4,000万ドルの範囲に収まるか、そして新しい借り入れの金利がいくらだったかを確かめたい。8月の決算前の論点は決算前ブリーフで整理している。
※チャートはTradingViewの埋め込みで、データは遅延する場合がある。同業のネビウス・グループ(NBIS)とオラクル(ORCL)は上部のティッカーで確認できる。
主な参照
- 19日の米国市場とコアウィーブ・エヌビディアの値動き、ドル円終値/株探(フィスコ配信、2026年10月20日6時19分)
- 日足の四本値・出来高・時価総額/株探米国株、Yahoo Finance
- ゴールドマン・サックスの格上げと目標株価、社債利回りの見方(2026年10月19日)/TipRanks、InvesTrade
- 19日の社債利回りとCDS(CNBC報道の要約)/KuCoin News、原文はCNBC
- CDSの過去最高とフアンCEOの発言(2026年10月15日)/TheNextWeb
- 4〜6月期決算と貸借対照表/コアウィーブ(米証券取引委員会への提出資料)
- 7〜9月期の会社予想(2026年8月11日の決算説明会)/コアウィーブ(説明会の記録)
- メタとの最大約210億ドルの契約/コアウィーブの4〜6月期四半期報告書
- 空売り残高/ナスダック
- 井出真吾氏の見方(2026年10月19日)/株探
- メタの決算日/メタ・プラットフォームズ、FOMCの日程/米連邦準備制度理事会
データ基準日:2026年10月19日の米国市場終値(日本時間20日5時)。株価はすべて終値で、場中の高値・安値はその旨を記した。時間外の61.44ドルは株探の表示(米東部時間19日18時36分)。円換算は19日のニューヨーク終値1ドル=158.55円に固定した本誌試算で、実際の為替の変動は含まない。RSI、移動平均、出来高の倍率、過去の売られすぎ局面の騰落率は、Yahoo Financeの日足終値から本誌が計算した。19日の社債利回り14.9%とCDS約1,082ベーシスポイントはCNBCの報道として伝えられた数字で、本誌は原典を直接確認できていない。ゴールドマン・サックスの見方は報道による要約である。コアウィーブの7〜9月期決算の日付は会社から発表されていない。調整後営業利益は会社独自の指標である。シナリオの確率は本誌の見立てで、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。














