ソフトバンクグループ(9984)の孫正義会長兼社長が、湾岸諸国の投資家に最大1,000億ドル(約15兆8,000億円)の拠出を打診している。英フィナンシャル・タイムズ(FT)が10月9日に報じ、共同通信が同日15時56分(日本時間)に配信した。東京市場の大引けは15時30分で、同社株の終値5,803円はこの報道を織り込む前の値である。
資金は企業を買収し、AIなどの技術で収益性を高める新たなファンドに充てるとされる。同社はロイターのコメント要請に応じていない。東京は12日がスポーツの日で休場のため、国内の現物市場がこの報道に反応するのは13日の寄り付きとなる。
報道と開示の数字
| 項目 | 金額・条件 | 時点 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 湾岸投資家への拠出打診 | 最大1,000億ドル | 2026年10月9日報道 | FT報道(関係者)。会社は未確認 |
| OpenAIへの累計投資額 | 646億ドル(持ち分約13%) | 2026年10月1日 | 会社発表 |
| OpenAI追加投資の最終回 | 100億ドル(1兆5,796億円) | 2026年10月1日実行 | 会社発表 |
| 外貨建て社債の発行総額 | 約111億ドル(約1兆7,632億円) | 2026年9月24日条件決定 | 会社発表 |
| 同社債の利率 | 年7.125〜9.750% | 同上 | 会社発表 |
| アーム株を担保とする借入枠 | 250億ドル(50億ドル増額) | 2026年9月18日報道 | ブルームバーグ報道。会社はコメントせず |
| ビジョン・ファンド1号の出資約束総額 | 約986億ドル | 2020年時点 | 米証券取引委員会への提出書類 |
ソフトバンクグループをめぐる資金の規模(億ドル)
読み方:打診額の上限はビジョン・ファンド1号とほぼ同じ規模で、OpenAIへの累計投資の1.5倍。打診額と借入枠は報道ベースで、会社は確認していない。出所:ソフトバンクグループの発表資料、米証券取引委員会の提出書類、FT・ブルームバーグ報道。
打診額の上限1,000億ドルは、2017年に組成したビジョン・ファンド1号の出資約束総額約986億ドルとほぼ同じ規模である。OpenAIへの累計投資額646億ドルの1.5倍にあたる。9月に発行した外貨建て社債約111億ドルの約9倍になる。
背景
同社は10月1日、OpenAIへの追加投資300億ドルの最終回となる100億ドルを、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2を通じて実行したと発表した。追加投資は2月27日に公表していた。これで累計投資額は646億ドル、持ち分は約13%となった。最終回の資金には9月24日に条件を決めた社債を充てた。3月27日に契約した400億ドルのブリッジローンは、未使用の100億ドル分を9月30日付で解約し、借入はすべて返済済みである。
9月の社債は5本で構成される。ドル建ては2030年償還が10億ドル・利率8.625%、2032年償還が45億ドル・9.250%、2034年償還が45億ドル・9.750%だった。ユーロ建ては2030年償還が5億ユーロ・7.125%、2032年償還が5億ユーロ・8.000%である。いずれも額面価格で発行した。発行を支援した法律事務所とロイターは、ハイイールド社債として世界最大の案件と伝えている。会社の発表資料にこの表現はない。同社は10月9日、2027年1月償還のユーロ建て社債(利率2.875%、残高4億510万3,000ユーロ)を10月22日に額面で全額繰り上げ償還すると別途発表した。
今回のファンド構想では、ロボティクス事業の新会社「Roze」が中心的な役割を担うと報じられている。FTは4月30日、同社がRozeを設立し、早ければ2026年中に米国で上場させる計画で、評価額1,000億ドル前後をめざすと報じた。上場計画について会社の正式な発表はない。
ビジョン・ファンド1号の出資者は、サウジアラビアの政府系ファンドPIFが最大450億ドル、アブダビのムバダラが150億ドルだった。今回の報道で名前が出ているのは「アラブ首長国連邦(UAE)を含む湾岸の要人」までで、個別の出資者は特定されていない。
関係者の発言・表明
- ロイター:報道内容を「すぐには確認できなかった」。ソフトバンクグループはコメント要請に「応じなかった」。
- FT(インベスティング・ドットコムの要約):協議が合意に至る「保証はない」。
- ソフトバンクグループ:アーム株担保の借入枠に関するブルームバーグの取材にコメントせず。
- ユーロニュース(10月9日、OpenAI売上をめぐる報道について):差額は「OpenAIが目標を外したことや、売上を失ったことを意味しない」。
市場反応:報道前の2日間で8.0%安
| 日付 | 終値(円) | 前日比 | 日中安値(円) | 出来高(万株) |
|---|---|---|---|---|
| 10月2日 | 6,310 | −5.83% | 6,247 | 5,984 |
| 10月5日 | 6,497 | +2.96% | 6,400 | 5,621 |
| 10月6日 | 6,295 | −3.11% | 6,271 | 3,930 |
| 10月7日 | 6,310 | +0.24% | 6,301 | 3,291 |
| 10月8日 | 6,040 | −4.28% | 6,027 | 3,780 |
| 10月9日 | 5,803 | −3.92% | 5,600 | 7,226 |
10月9日の終値は5,803円、前日比237円安(3.92%安)だった。日中安値5,600円は前日終値比7.3%安である。出来高は7,226万株で、前日の3,780万株の1.9倍だった。7日終値6,310円からの2日間の下落率は8.0%。6月2日の日中高値9,074円からは36.0%下の水準である。
8日は相場全体が下げた日だった。原油高によるインフレ懸念と米長期金利の上昇が売りの理由として報じられ、日経平均は9月16日以降に6,500円超上げていたことから利益確定売りも出た。同日の日経平均は993円60銭安の6万9,042円11銭で、同社株1銘柄の押し下げ寄与は約218円だった。9日の下げは、OpenAIが投資家に示した年換算売上高が約500億ドルで、従来報じられた約700億ドルを約200億ドル下回るとのFT報道が材料とされた。
このOpenAIの売上をめぐる数字の違いは、売上を総額で数えるか純額で数えるかの差と説明されている。詳細はOpenAIの売上「200億ドル少ない」の解説記事にまとめた。8日の相場全体の下げは日経平均993円安の記事で扱っている。
米国の預託証券(SFTBY)は9日の米国時間に取引される。本稿執筆時点(米東部時間9時40分)では寄り付き直後で、報道後の値動きは確認できていない。東京の現物が次に取引されるのは13日9時である。
今後の日程
- 10月9日(米国時間) 米預託証券SFTBYが報道後初めて取引される。
- 10月12日 スポーツの日で東京市場は休場。米国株式市場は通常取引。
- 10月13日9時 東京市場で報道後初の取引。
- 10月22日 2027年1月償還のユーロ建て社債(4億510万3,000ユーロ)を額面で繰り上げ償還。
- 11月10日15時30分 2027年3月期第2四半期の決算短信を公表。16時30分から決算説明会。
同社の社債と株式の位置づけは1兆円の個人向け社債の記事で、AI投資会社としての評価はソフトバンクグループ株の分析記事で扱った。
主な参照
- 湾岸投資家への打診(FT報道、10月9日)/共同通信(中日新聞、15時56分)、Investing.com、ロイター配信記事
- OpenAIへの追加投資の完了(2026年10月1日)/ソフトバンクグループ
- 外貨建て社債の条件決定(2026年9月24日)/ソフトバンクグループ、世界最大との評価はモリソン・フォースター
- ユーロ建て社債の繰り上げ償還(2026年10月9日)/ソフトバンクグループ
- アーム株担保の借入枠(2026年9月18日)/The Edge Malaysia(ブルームバーグ配信)
- ビジョン・ファンド1号の出資約束総額/米証券取引委員会の提出書類、PIFの出資はPIF、ムバダラの出資はムバダラ
- Rozeの米国上場計画(FT報道、2026年4月30日)/CNBC
- 10月8日・9日の株価材料/財経新聞(10月8日)、財経新聞(10月9日)、ユーロニュース
- 日足の株価・出来高/stockanalysis.com
- 決算発表日(2026年11月10日)/ソフトバンクグループ
- 休場日(2026年10月12日)/日本取引所グループ
データ基準日:2026年10月9日。株価は東京証券取引所の10月9日終値で、FT報道の配信は大引け後である。湾岸投資家への打診はFTが関係者の話として報じたもので、ソフトバンクグループは確認していない。打診額は上限であり、出資者の名前、条件、時期は報じられていない。アーム株担保の借入枠250億ドル、社債がハイイールド債として世界最大という評価、Rozeの上場計画は、いずれも報道または第三者の表明であり、会社の発表ではない。ビジョン・ファンド1号の約986億ドルは2020年の提出書類の記載である。本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断は各自の責任において行われたい。














