金曜日の原油市場:協議停滞で買い戻し優勢
金曜日の原油市場は、米国とイランの和平合意がホルムズ海峡の輸送正常化を実現するには至らないとの懸念から、買い戻しが優勢となった。ブレント原油先物は前日比96セント高(+0.94%)の1バレル103.54ドルで取引を終え、WTI原油先物は25セント高(+0.26%)の96.60ドルで引けた。取引時間中には両指標とも一時3%超上昇する場面もあった。
ただし週間ベースで見ると、相場は依然として軟調で、ブレントは5.48%安、WTIは8.37%安と大幅な下落を記録した。米イラン間の和平合意期待が日々のヘッドラインで揺れ動き、極めてボラティリティの高い展開が続いている。プライス・フューチャーズ・グループのフィル・フリン氏は「ヘッドラインがあまりに多く、追いつくのが難しい。今はイランが制裁解除と引き換えにウランを引き渡すという話だが、新聞のインクが乾く前にニュースが変わる」と指摘した。
米イラン協議の現状と外交動向
スウェーデンでのNATO外相会合後、ルビオ米国務長官は「進展はあるが、誇張も矮小化もしない。まだやるべきことが残っている」と慎重な姿勢を示した。米国はパキスタンを仲介役として、イランとの協議を継続しており、またカタールの交渉団も金曜にテヘラン入りしたと報じられている。
しかし、両国は依然として以下の重要争点で隔たりが残る:
- イランのウラン備蓄の扱い
- ホルムズ海峡の管理権
- 制裁解除のスケジュールと範囲
アゲイン・キャピタルのジョン・キルダフ氏は「解決に向かっているようには見えるが、明確さのレベルは極めて低い」と述べ、市場が完全にヘッドライン主導となっていることを認めた。
供給ショックと長期的な需給見通し
戦争前、世界のエネルギー供給の約20%がホルムズ海峡を通過していたが、紛争により日量1,400万バレル(世界供給の14%)が市場から消失している。これにはサウジアラビア、イラク、UAE、クウェートからの輸出が含まれる。PVMオイル・アソシエイツのアナリスト、タマス・ヴァルガ氏は「ホルムズ海峡経由の原油フローが細る中、世界の原油在庫は警戒すべきペースで減少している」と警告した。
UAE国営石油会社ADNOCのトップは、たとえ紛争が即座に終結したとしても、ホルムズ海峡経由の原油フローが完全に回復するのは2027年第1~第2四半期以降になるとの見通しを示した。フィッチ・ソリューションズ傘下のBMIは、こうした供給不足、湾岸エネルギーインフラの修復に必要な時間、紛争後6~8週間の正常化期間を反映し、2026年のブレント平均価格予想を81.50ドルから90ドルに引き上げた。
投資家への影響と日本市場への含意
日本の個人投資家にとって、原油価格の高止まりは複数の経路でポートフォリオに影響を与える。第一に、エネルギー輸入国である日本は原油高がそのまま貿易赤字とコストプッシュ型インフレに直結する。電力・ガス料金の上昇は家計を圧迫し、内需関連株にはマイナスとなる。第二に、ENEOSホールディングス(5020)、INPEX(1605)、出光興産(5019)など資源関連銘柄には追い風となる可能性がある。
一方、OPEC+主要7カ国は6月7日の会合で7月の小幅増産で合意する見通しと4人の関係者が明かしており、増産が決定すれば短期的には価格抑制要因となる。ただし戦争による出荷遅延が続いているため、増産の効果は限定的との見方もある。投資家としては、海運株(郵船、商船三井)や航空株(ANA、JAL)など燃料コストに敏感なセクター、円安と原油高のダブルパンチを受ける素材・化学セクターの動向を注視したい。
ボトムライン
ホルムズ海峡の正常化には数年を要する公算が大きく、原油高の長期化を前提に、エネルギー関連株のオーバーウェイトと燃料コスト敏感株のアンダーウェイトを検討すべき局面である。













