10月21日、東京市場の前場の番付を発表する。東の横綱はサイバートラスト(4498)、前引けは2,005円で前日比20.8%高。証券会社へのサイバー攻撃が相次ぐなか、セキュリティー関連株の先頭を走った。西の序二段に据え置かれたのはニデック(6594)、前引け1,771円。日経平均が748円高と大きく上げた朝に0.74%高しかできず、取引時間中には1,748円と、株式分割を考慮すると2016年以来の安値を付けた。
片や過熱、片や売られすぎ。今日の「注目株」は、温度計の両端にいるこの2銘柄である。どちらも個人投資家が飛びつきたくなる形をしているが、本誌の判定はどちらも「今すぐ」ではない。理由を順に示す。
移動平均線からの乖離率(2026年10月21日 前引け)
読み方:サイバートラストは25日線より47%上、ニデックは21%下にいる。同じ朝に温度計の両端にいる2銘柄。出所:Yahoo Financeの日足から本誌計算(前引け11時30分の値を当日分として使用)。
番付表:前場の温度計
| 番付 | 銘柄 | 前引け | 前日比 | 25日線との乖離 | RSI(14日) | 判定 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 東の横綱 | サイバートラスト(4498) | 2,005円 | +20.8% | +47%台 | 約67 | △ |
| 行司役 | 日経平均 | 6万4,823円55銭 | +1.17% | — | — | — |
| 前頭 | マネックスG(8698) | 662円 | +1.4% | — | — | — |
| 前頭 | 岩井コスモHD(8707) | 4,200円 | +1.0% | — | — | — |
| 西の序二段 | ニデック(6594) | 1,771円 | +0.7% | −21%台 | 約28 | △ |
RSI(相対力指数)は、一定期間の値上がり幅と値下がり幅の比率から「買われすぎ・売られすぎ」を測る指標で、一般に70以上が買われすぎ、30以下が売られすぎの目安とされる。ニデックは30を割り、サイバートラストは70に迫る。25日移動平均線との乖離率で見ると差はさらに開き、約70ポイントの開きがある。
東の横綱・サイバートラスト:△(高値追いは土俵際)
前日終値1,660円に対し、1,820円で寄り付き、高値2,060円まで駆け上がった。前場の出来高は約1,012万株で、過去20日の1日平均(約469万株)の2倍を超える。前場だけで普段の2日分が売買された計算だ。
追い風は「証券会社へのサイバー攻撃」というテーマである。マネックス証券は20日、外部委託先のシステムに不審なアクセスの痕跡が見つかったとして、新規の口座開設の受け付けを一時停止した。現時点で情報の流出は確認されていないという。岩井コスモ証券もサイバー攻撃を受けたと報じられている。Yahoo!ファイナンスの値上がり率ランキングには、21日の前場、セキュアヴェイルやブロードバンドセキュリティなど同業の名前も並んだ。
ただし、ここが判定の分かれ目だ。サイバートラスト自身からは、今日の急騰を説明する発表が出ていない。20日に財経新聞がクラウド型の鍵管理サービスを11月に始めると伝えたが、それが2割高の理由だと示す材料はない。テーマ買いの色が濃い。
値動きの荒さも見ておきたい。15日の終値1,522円から16日は1,922円へ26%高、そこから20日には1,660円まで押し戻され、今日また2,005円である。52週の高値は14日に付けた2,237円。1日に2割動く株は、翌日に2割戻すこともある。判定は△。決算発表は29日と伝えられており、テーマではなく数字で上値を正当化できるかを確かめてからでも遅くない。少なくとも、25日線から5割近く上に離れた水準を成行で買う一番ではない。
西の序二段・ニデック:△(売られすぎだが、勝負は月末)
数字だけ見れば、典型的な売られすぎである。9月25日の終値2,840円から20日の1,758円まで38.1%安。前引けの1,771円は、25日移動平均線(約2,258円)を21%台、75日移動平均線(約2,512円)を29%台下回る。52週の高値2,941円からは約4割下だ。RSIは約28と、30を割り込んでいる。
注目すべきは出来高の細り方だ。前場の出来高は約482万株で、過去20日の平均(約1,727万株)を大きく下回る。10月1日には1日で5,200万株が売買されていた。投げ売りの波はいったん引いたとみてよい。それでも株価が戻らないのは、買い手が「次の発表」を待っているからだろう。
売られた理由は会計不正である。ニデックは16日、役員の責任を調べる委員会から、創業者の永守重信氏を含む旧経営陣らに会社法上の損害賠償責任があるとの報告を受けたと発表し、損害賠償請求などの法的措置を検討するとした。20日には報告書を公表している。ブルームバーグは、永守氏の資産が少なくとも9億7,800万ドル減ったと伝えた。
業績の土俵も荒れている。株探によると、2026年3月期の最終損益は5,646億円の赤字で、2027年3月期は1,000億円の黒字を見込む。配当は未定だ。監査法人は2026年3月期の有価証券報告書について意見を表明していない。そこへ物言う株主のオアシスが筆頭株主になったと表明し、非公開化の検討を求めている(10月7日の記事)。
判定は△。RSIの売られすぎは「下げ止まる」合図ではなく、「下げが急だった」記録にすぎない。この銘柄は2025年10月28日から特別注意銘柄に指定されており、内部管理体制の確認書を10月末までに東京証券取引所へ出す必要がある。提出は28日と報じられているが、本誌は会社の公表を確認できていない。東証の審査には数カ月かかるとされる。打診買いを考えるとしても、確認書の提出と中身を見てからにしたい。
敢闘賞・マネックスG:攻撃を受けた側が上げた
意外な一番がこれだ。新規口座の受け付けを止めた当のマネックスグループは、前引けで662円、1.4%高だった。20日に653円まで下げていた分を少し取り戻した形である。岩井コスモホールディングスも1.0%高の4,200円。攻撃を受けた側が売られ続けたわけではなく、守る側の銘柄にだけ資金が集まった。テーマ相場の分かりやすい構図である。同じ構図は、ソースネクストの情報流出のときにも見られた。
来場所の注目取組
| 日付 | 取組 | 見るところ |
|---|---|---|
| 10月21日 後場 | サイバートラストの高値2,060円 | 前場の高値を抜けるか、上ヒゲで終わるか |
| 10月28日(報道) | ニデックが内部管理体制確認書を提出 | 特別注意銘柄の指定解除に向けた中身 |
| 10月29日(報道) | サイバートラストの決算発表 | テーマ買いを数字で支えられるか |
| 未定 | ニデックの4〜9月期決算 | 昨年は11月14日に発表 |
今朝の東京市場全体の流れは寄り付き1時間の記事にまとめている。ニデックの不正発覚からの経緯は社長交代の記事も参照してほしい。
主な参照
- 役員責任調査委員会からの報告(10月16日)、報告書の公表(10月20日)/ニデック、IRニュース
- 報告書の内容、永守氏の資産の減少/ブルームバーグ、ジャパンタイムズ(ブルームバーグ配信)
- 2026年3月期決算と今期見通し/株探
- 特別注意銘柄の指定/日本経済新聞
- マネックス証券の新規口座開設の一時停止/ITmedia
- サイバートラストの鍵管理サービス/財経新聞
- 値上がり率ランキング/Yahoo!ファイナンス
- 株価・出来高の日足/Yahoo Finance(移動平均、乖離率、RSIは本誌計算)
データ基準日:2026年10月21日 東京市場の前引け(日本時間11時30分)。前引けの値は取引時間中の値で、終値ではない。後場の値動きで数字は変わる。移動平均線、乖離率、RSI、出来高の20日平均は日足から本誌が計算した概算で、情報ベンダーの数値とは差が出ることがある。ニデックの安値が2016年以来という比較は株式分割を考慮した月足による本誌の計算。サイバートラストの急騰について会社からの説明はなく、セキュリティー関連のテーマ買いとの見方は本誌の整理である。ニデックの確認書の提出日とサイバートラストの決算日は報道によるもので、会社の公表は確認できていない。番付と判定は本誌の見方であり、将来の株価を保証しない。本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。投資判断はご自身の責任において行っていただきたい。













